ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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香織ちゃんの口調がおかしい気がします
始まりのところもっとうまく表現することができればと考えてしまいます


どうして知っているの?

 

 

「私達が召喚されたとき、あの時コウスケさんも一緒に召喚されたというのなら可笑しいことがあるの」

 

「貴方は天之河君の事を知らないはずなのにどうして天之河君が言いそうな言葉を言うことができたの?」

 

 香織はずっと疑問だった。コウスケは召喚されたときから天之河光輝の身体だったという。きっと本当なのだろう。しかしここで疑問が起きる。

 自分が誰になっているかをよく知らない筈なのになんでこの世界を救うなんて光輝が言いそうな言葉を何故言い切る事が出来たのか。

 

「変だなと思ったの。もしあなたの言う事が本当ならなんで召喚されてよくわかっていない状況のはずなのに天之河君が正義感が強い男の子だと知っていたの?どうして、私と雫ちゃん坂上君と天之河君が親しいと知っているの?何でクラスの皆をまとめるような男の子だと知っているの?」

 

「貴方は天之河君と出会っていないのにどうして性格や、行動を真似することができたの?」

 

 

 

 

 

 

 香織の怒涛な疑問にコウスケは何も答えることはできない。確かにその通りだったからだ。自分は天之河光輝を知らないという前提で行動していたはずが今になって香織から疑問に思われてしまった。どうして知っているのかと

 

(…確かに知らない人間をすぐに真似できるなんておかしいよな)

 

 思えば召喚された直後から、何とか天之河光輝の演技をしてなぜかばれないことに安堵をしていたのだ。まさか中身が違うという事に誰も気づかないだろうと慢心をして。その結果がこれだ。 

 

(前どこかで見かけたから真似することができたとか言ってみるか?…駄目だなすぐにばれる)

 

 いくつかのその場しのぎの嘘を思いつくことも出来はするのだが…正直コウスケは疲れていた。

 

(……いつまで隠し事をすればいいんだろう。誤魔化すのか?俺を信じようとしているこの娘の気持ちを無視して?……ははは、もう…どうでもいいや)

 

「はぁーーーーーー」

 

 深い深いため息が出てきた。コウスケは疲れてしまったのだ。いつまでも嘘をつくという事、隠し事をしているという事、何より仲間だと思ってくれている皆に対しての罪悪感が限界に達してしまったのだ

 

「…コウスケさん?」

 

「そうだね、確かにおかしいよね。俺は天之河光輝を知らないはずなのに性格や行動、言動何もかも真似できるのは流石に変だよね」

 

「…ならどうして」

 

「説明したいけど…ごめん、この事を最初に言うのは君じゃない。南雲に話すのがスジなんだ」

 

「スジ?」

 

「うん。だって始まりからずっと俺は南雲に隠していたから、だからアイツにすべての事を話したいんだ」

 

 思えばハジメが奈落に落ちると知ったうえでオルクス迷宮に行ったのだ。あの時無理やりにでもハジメを待機させておけばハジメは酷い目に遭わなかったはずだ。何が起きるかを知っていたのに何も言わなかった。ずっと黙って隠して知らないふりをして。

 

「疑問に思うだろうし、怪しく見えるかもしれない、でも今だけは何も言わないでくれないか」

 

「…ちゃんとハジメ君に説明をしてくれるなら」

 

「ありがとう」

 

 気まずい雰囲気ながらもコウスケは香織を促し、一番遠くに鎮座する最大級の帆船へと歩みを進める。

 

(…潮時って奴なのかな…)

 

 ハジメに対してどう切り出せばいいのかという悩み、言った所でハジメはどうするのかという不安ともしかしたら別れないといけないのかと言う寂しさと肩の荷が下りる一株の開放感、そしてそのすべてを上回る恐怖を心の中に押しとどめながらコウスケは前に歩むしかできなかった。

 

 

 

 

「もう知っているかもしれないけどメルジーネ海底迷宮のコンセプトは『狂信者の末路』又は『神の凄惨さ』だ」

 

 今まで見てきた中でひときわ目立つ豪華な客船を見ながらコウスケは口を開く。

 

「そういえば、さっきの人たちも確かに神の名のもとにって叫びながら殺し合いをしていた…」

 

「そう、だからこの中も同じように殺戮と狂気が蔓延している。だから心の準備をする事。OK?」

 

「うん分かった。そういうコウスケさんは平気なの?」

 

「俺か?どうにもそこら辺壊れちゃったみたいで特に何も感じないんだよなぁ。寧ろ血沸くっていうか…」

 

 香織との雑談をしながらもコウスケはこの先に起こることを説明する。知らないふりをするの疲れたし、何より香織に対して遠慮をするのが面倒になったのだ。もしくは一種の逃避の様なものか。

 

「まぁいいや、とりあえず上がるとしよう。戦闘準備はしなくていいよ。最初はただパーティーをしているだけだから」

 

 とにかくコウスケはこの迷宮で起こることを説明するように話をする。そのコウスケに香織は何も言わない。先ほどハジメに説明するという言葉を信じてくれているという事だろうとコウスケは考える

 

 香織を抱え足に力を籠め一気に跳躍し豪華客船の最上部にあるテラスへと降り立つ。するとコウスケの言葉通り周囲の空間がゆがみ、周囲は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしていた。

 

「…本当に変わった…」

 

「でしょ?それにしても知っていたとはいえ、想像以上の豪華さだな~なんだかお腹が空いてきた」

 

 香織は言われていたとは言え言葉通りに変わったことに驚き、コウスケは自分の想像以上の華やかさに驚いていた。

 

 運ばれる料理やテーブルの上にある料理に目を奪われる。匂いはしないとはいえ、ご馳走が並ぶのは目に毒だ。

 

「このパーティはいったい何のために…」

 

「終戦を祝うための物らしい。最も全部無駄なことなんだけどさ」

 

「無駄なこと?」

 

 香織の目の前にいるすべての人間はとても楽しそうであり心の底から幸せそうでもある。その人達は人間族だと思っていたがよく見れば亜人族や魔人族もいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた。

 

「こんなに皆が誰分け隔てなく幸せそうなのに、無駄に終わるって…」

 

「徒労。又は意味のないことかな?あ~どいつもこいつも神様の玩具と言えば種族関係ないか。そういうところはやけに平等なんだよね~」

 

 コウスケは香織に説明しながら力なく笑っている。それが香織には泣いているように見えた。

 

「コウスケさん。この後一体何が」

 

「んーそろそろグロ注意かな。一応覚悟しておいて」

 

 香織の質問に答えながら、壇上に登り始める初老の男…正確に言えばその傍に控えているフードの人物に目を向ける。

 

(……あれ?思ったより背が低い?)

 

 フードの人物が誰なのかをコウスケは知っている。知ってはいるのだが…想像よりも背が低かった。もっと長身な人物だと思っていたのだが、香織より少し小さいかもしれない。

 

(まぁいいか。どうせそこまで注意を払うもんじゃないし)

 

 コウスケが考えている間に初老の男の演説が始まった。演説の内容は特に面白みのないものだ。戦争が和平と言う形で

終戦で来たことを人々に感謝しねぎらうかのような話で、この後の事を知っているコウスケには実に詰まらないものだった

 

 

 

 その後に起きたことを説明するのならば、演説していた男の号令でいきなり殺戮が始まったという話だろうか。

混乱する亜人族や魔人族の人たちに対して剣を振るうやら魔法を放つなどで一方的な展開だった。先ほどまで華やかなパーティーはすぐに血と内臓と人の腕や首が転がるスプラッタ劇場に早変わりしていた。

 

「…ぅ」

 

「平気?我慢するぐらいなら吐いた方が楽になるよ。これからもっとえぐい船内に入るんだから」

 

 覚悟はしていたとは言え香織の表情は青い。コウスケが心配するも香織は首を振り自分は大丈夫だと目で訴えてきた。

 

 景色はいつの間にか元の朽ちた豪華客船に早変わりし、先ほどまでの異様な光景はみじんもない

 

「それじゃさっさと船内に入ろうか。そうだ、ちゃんと気はしっかりと持ってよ?この先にいるのは亡霊がほとんどで意識を失ったら、体を乗っ取られるから」

 

「……」

 

「どうして詳しいって?そりゃもちろん知っているからだよ。と言っても何が起きるかを知っているだけで道案内は期待しないでほしいんだけど」

 

 コウスケは力なく笑うとカンテラを腰につけ(ハジメ作の錬成カンテラ。中々かっこいい)船内の扉を開ける。香織は何も言わずただその背に追う。

 

 船内は、完全に闇に閉ざされていた。外は明るいので、朽ちた木の隙間から光が差し込んでいてもおかしくないのだが、何故か、全く光が届いていない。コウスケのカンテラが辺りを照らす中2人の足音だけが響き渡る。

 

「…さっきのは人族の人がほかの種族の人を裏切ったってことなのかな」

 

「さぁどうだろ。これっぽちも興味がないからなぁ。元からだったのか、神に頭をいじくりまわされたのか、おそらく後者かな?どうでもいいけど日本人である俺達にとっては神を信仰するっていうのはよくわからないんだよね」

 

「…うん。イシュタルさんみたいなのはちょっと引いちゃうよね」

 

 暗い船内をコウスケが先導しながら香織と雑談をする。時折亡霊やら幽霊が現れるが光子剣で遠慮なく切り捨てていく。もはやコウスケにとってここに敵はいなかった。

 

「…ゴメンね」

 

「え?」

 

「本当ならここは君と南雲が一緒に行動する場所だったんだけどねー俺がその役目を奪っちゃった。本当にごめんね。好きな男の子と2人になるタイミングを俺が壊しちゃった」

 

「コウスケさん?」

 

「うーん、この埋め合わせはいつかするけど…失敗したな、幽霊船に男女2人がいるって最高のタイミングなのになんで俺がいるんだろうっな!」

 

 ブツブツ呟きながらコウスケは歩く。かと思たったら急に光子剣を天井に向けて突き刺す。香織が上を向くとそこには光子剣に顔面を突き刺されている髪の長い女がいた。

 

「っひ」

 

「まったく。これじゃホラーじゃなくてただのB級スプラッタ映画だ。俺的にはバイオハザードの様な奴よりも静かに恐怖させるようなホラー物の方が怖いんだけど…これじゃ怖がることもできないな」

 

 肩をすくめやれやれと思うコウスケ。この幽霊船に出てくる亡霊は光子剣や魔力で全て対処できるというのが、恐怖感をなくしている。対処ができない、どうすることもできないというのが幽霊の強みだというのにこれではただのお化け屋敷だ。

 

 結局、船倉についても特に苦労することもなく、倉庫の一番奥にある魔法陣についてしまった。

 

「もう着いたの?」

 

「これで終わり。結局何が来るか知っていれば対処は簡単だって話か」

 

 ここにコウスケの敵はいなかった。しかしこれからが本当の意味での本番だ。先に行けば必ずハジメと合流する。何を言えばいいのか、どうすればいいのか、何もわからない、しかしいつか来る時が今日来ただけだ。

 

(…行くんだ。アイツに会いに、本当の事を話すんだ)

 

 どうしようもない不安と恐怖で振る手を握りめ、コウスケは魔法陣の中へ進んでいくのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これから先戦闘描写は少なくなります
それよりも会話が多くなります
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