ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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急いで書いたためグダグダです


真実を話そう

 ザザァーーン

 

 

 コウスケは波の音が好きだ。規則的な音で妙に心が落ち着くのだ。本当なら何も考えず、ずっと波の音を聞いて海を見つめていたいところだが、そういう訳にはいかなかった。

 

「……」

 

「……」

 

 コウスケの隣にはハジメは同じように海を眺めている。表情は笑っているのでもなく顰めているわけでもない。ただ、何も言わず、コウスケの口が開くのを待っている。

 

 メルジーネ海底遺跡からの大脱出後の翌朝。コウスケはハジメにすべてのことを打ち明けようとして人気のない桟橋にハジメを誘い2人並んで海を見つめていたのだ。ハジメは快く了承しホッとするコウスケ。他の仲間達にも説明はするべきだが、まずはハジメにだけどうしても先に伝えたかった。

 

「……」

 

 だがまずは何から言えばいいのか、頭を悩ませるコウスケ。声は出かかっているのだが、どうにも言葉で言おうとしても口が閉じてしまう。悩んでいる間にも時間は進んでいく。朝食を食べた後に誘ったのだが気が付けば太陽は真上でさんさんと輝いている。

 

 雲一つない見事な快晴の中、うんうん悩む男一人(見た目はイケメン)に、何も言わず黙っていて時たま吹かれる風を気持ちよさそうに感じている少年が一人

 何ともおかしな空間だった。そんな変な雰囲気の中やっとでコウスケは覚悟を決めて口を開く

 

「…なぁ南雲…俺さ」

 

「うん」

 

「好きな、なろう小説があるんだ」

 

「うん?初耳だね」

 

「初めて話すからな。その物語はな、異世界転移のありふれた物語なんだ」

 

「…テンプレのよくある奴だね」

 

「…そうありふれた話だ」

 

 チラリと表情を伺うがハジメの顔は変化がない。何を思っているのかはわからないが、このまま突き進む

 

「俺その話が好きでさ、よく何回も読み直したことがあるんだ」

 

「…どんな内容なの」

 

「ある学校のクラスが異世界に勇者とその仲間たちとして召喚される話だ。主人公は普通の少年でオタクなんだけどその学校一の美少女に好かれているっていう中々羨ましい奴なんだ。…もっともそのせいでクラスからハブられているけどな」

 

「話を戻すぞ、異世界召喚された主人公たちは、その世界で魔人族によって劣勢になっている人間族を救ってほしいと願われるんだ。クラスのリーダー格の正義感が強い奴がその話を承諾して、主人公たちは異世界で戦う事になったんだ」

 

「クラスの皆が強いステータスの中なぜか主人公はとても弱く、しかもほかの皆が戦闘職なのに何故か一人だけ非戦闘職なんだ。主人公はできる限りの事をして強くなろうとするんだがうまくいかなくて…」

 

「そんなある日主人公たちは実地訓練としてある迷宮で訓練をすることになった。最初は順調だった。このままいけば問題ないかと思った。だけど事故が起きて、クラス全員が命の危機に陥った」

 

 コウスケはもうハジメの顔を伺うことはできない。顔は穏やかな海に向けている。ただ横で驚いているような気がした

 

「クラス全員がパニックになる中無能で最弱と罵られていた主人公はただ独り冷静に行動して、クラスの皆の危機を救ったんだ。だけど、その結果主人公はたった一人奈落の底に落ちてしまったんだ」

 

「…その主人公はどうなったの」

 

 静かな声だった。震えているような声に聞こえるのはコウスケの気のせいか。構わず話を続ける。

 

「主人公は運良く生き延びていた。 ……だけどそこから悲惨だった。主人公は何とか脱出しようと足掻くんだけどさ、魔物に太刀打ちできなくて左腕を食われちまったんだ」

 

 隣で物音がする、恐る恐る視線を向ければハジメが左腕を右腕で摩っているところだった。

 

「何とか危機を脱出できた主人公は何日も救助を待った。だけど助けは来ず、飢餓感と幻肢痛で主人公がどんどん摩耗していって…ある日優しかった主人公は変貌した。それまで苦笑して争いごとが苦手だった少年は、敵はすべて皆殺しにするっていう男になってしまった」

 

「変貌した主人公は生きて地球へ帰ることを決意し武器を作り迷宮を進んでいく。そしてそこで物語のメインヒロインである吸血鬼の可愛い女の子と出会うんだ。その女の子を助けて好意を持たれて…迷宮最深部にいるボスを協力して倒して…結ばれてさ」

 

 言葉が途切れ途切れにあるのは自分が言いたくないことで、伝えたくないからだろうか。自分のことながらコウスケはよくわからない。分かるのは隣から小さな声で「…ユエ」と聞こえたぐらいだ

 

「主人公とヒロインの女の子はその迷宮から脱出するとき誓い合うんだ。2人揃って最強だって。まぁ話の展開的に2人っきりになるはずないんだけど…まぁいいや、そこからは脱出した先で助けを求めてきた兎人族の美少女と出会ってなし崩し的にその子の家族を助けて思いっきり惚れられて旅の同行者になったり、ある場所で戦った竜人族の美女に変な性癖目覚めさせて惚れられたり、分かれた学校一の美少女と再会して告白されたりとまぁこんな旅をすると言うのが話の内容かな」

 

「…その主人公の名前は」

 

 

「…主人公の名前は『南雲ハジメ』、その小説の正式名称は『ありふれた職業で世界最強』…俺の好きな小説だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 驚愕…と言うほどは驚いてはいない。しかしやはり心にショックがあるのはハジメは否定できなった。コウスケの隠し事、色々考えてはいたものの、やはり本人から直接聞いた方が良いと考えていた。何か話しにくそうだったがそれでもよかった。

 きっと自分たちの事を考え言いにくいのだろうと。

 

 まさか話した内容が『お前は小説の人物だ』と言われるとは考えもしなかったが。

 

「驚いたよ、まさか俺がありふれに召喚されるなんて思いもしなかった。しかも天之河になっててさ、本当に訳が分からなかった。でもずっと混乱しているわけにはいかなかった。すぐにアイツが言いそうなセリフを思い出して演技をしたよ。この世界を救うなんてさ。これっぽちもそうは思わなかったけどな」

 

 だからあの時助けを求めるように自分を見ていたのか、とハジメは思った。何故なら自分が主人公だったから、性格も知っているのなら

尚更だろう

 

「…俺はすべてを知っていた。だからお前が奈落に落ちるのも分かっていたんだ。止めたかったんだけど自分が『天之河が余計なことをしなければいい』と気楽に考えていたのがあのざまだったんだけどな。あとはお前の知っている通りだ。」

 

「…どうして今になって話したの」

 

 色々思う事はあるがなぜ今になって話そうと思ったのか。ハジメにはそれが疑問だった。

 

「…香織に気付かれたからだ。『あなたはなんで天之河君の事を知っているの』って、そりゃ傍から見たら知らないはずなのにいきなり演技しているんだもんな。変に思われるわけだ」

 

(……つまりそれって香織さんが言わなければずっと黙っていたの?……ムカッ)

 

 非常にイラッとしたしムカつく、別に黙っていたことが悪いと言いたいわけではない。自分も同じような境遇だったら黙っているからだ。しかしそれはそれとして、香織が疑問を抱いて話したから言ったわけで、()()()()()()()()()()()()()言ったわけではないからだ。その事が非常に癪に障る

 

「すまん南雲。俺はどうしても言えなかった。本当は」

 

「コウスケ」

 

「?なんだ」

 

「言いたいことはいっぱいあるけど、取りあえず…歯ぁ食いしばれぇ!」

 

「ふごぉ!」

 

 聞き返してきたコウスケの無防備な顔に全力で拳をぶつけるハジメ。奇怪な悲鳴を上げ吹っ飛ぶコウスケはすぐに受け身をとる

 

「な、なにすんだよ!」

 

「当然の報い。その話ってさ、もしかして香織さんが言わなければずっと黙っていたわけ?何で黙っていたの?」

 

「そ、それは…」

 

「大方僕に嫌われるとでも考えていたんでしょ。『どうして話してくれなかったの?あの時教えていてくれれば』とか何とか僕に言われるのが怖くて嫌われたくなくてずっと黙っていたんでしょ」

 

「……」

 

「図星かぁ…そういうところが本当にイラつくんだよ!」

 

 距離を摘め、顔面に繰り出した拳は今度はコウスケに防がれる。

 

「なんで、なんで僕を信用してくれないのさ!僕がそんな事言う訳ないだろ!コウスケはずっと僕を助けてくれていたじゃないか!それなのに嫌う訳がないよ!」

 

 あの奈落に落ちてからずっとコウスケは自分を助けてくれた。もしいなかったらさっきの話の様に左腕をなくし性格が変貌していたかもしれない。しかしそんな事にはならなかった。目の前の親友がずっとそばにいてくれていたからだ。だから嫌うはずもないのにどうして怖がるのか、それがハジメにはとてもつらく悲しくそして途方もなくイラつくのだ。

 

「そうかもしれない。俺もそう思いたかったよ。でもな俺が話していればお前はあんな過酷な目に合わなかったんだ!ずっとずっと引っかかっていたんだ!もっと早く話していたらってさ!でも言えるわけがないだろう!俺はすべて知ってる、お前は小説の人物だって!どの面さげてそんなこと言えばいいんだよ!」

 

 コウスケが繰り出した拳を受け止めさらに倍の力で殴りつける。もはや会話で無くお互いが言いたいことを言い合うだけになってきている。

 

「うるさい!そういうとこがイラつくんだよ!何度も言っているじゃないか僕は君を絶対に嫌わない味方だって!大体なんだよ!ユエと一緒にいる時妙に距離を取る時があるなと思ったらメインヒロインだって?それは小説内の話で合って僕達に当てはめるな!」

 

「仕方ねぇだろうが!どうすればいいのか分からねぇし、邪魔になるのかなって思って距離を取っていたんだよ!文句を言うのならユエに手を出したお前に言えよ!」

 

「この世に存在しない人間に文句が言えるか!そいつがどんな奴か知らないけど僕があのロリッ娘に手を出すわけないだろ!現実と小説の区別位つけろ!この馬鹿!」

 

「うるせぇ!実際小説と同じような展開になっているんだからそう思っちまうだろうが!大体そっちこそなんだよ!香織に惚れられておきながら何普通ぶっているんだよこのボケ!毎朝毎朝あんな可愛い女の子に楽しそうに話しかけられる高校生活なんてうらやましいんだよ!」

 

「その可愛い女の子に話しかけられるからこっちはボッチになっているんだよ!」

 

「ボッチなのはテメェが趣味に全力を掛け過ぎているからだろうが!生活態度改めておけばお前なら友達の2人や3人ぐらい余裕だろうが!何いつも授業中寝ているわけ!?何で授業態度改善しない訳!?いくらコネ入社できるからって高校生活舐めすぎだろ!!」

 

「何をーー!!人の生活知ったような気で話して!」

 

「実際知っているんだっつの!」

 

 

 人気のない桟橋で大声で騒ぎながら素手で全力の喧嘩をする2人。遂にはお互い防御も忘れ殴り合い顔が腫れ上がりつつもどこかその顔は非常に楽しそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんな可愛い女の子達から特に過程もなくモテやがってふっざけんな!この糞ハーレム体質が!もげろ!」

 

「だから小説の人と現実の僕を一緒にするな!」

 

「知っているわ!これはただの八つ当たりじゃこのボケェ!」

 

「コイツなんて糞野郎だ!」

 

 

 

 

 

 




やっぱシリアスって無理ですわぁ
気楽にグダグダが性に合ってます
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