ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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短いですが少しづつ投稿します


王都防衛線 ①

 

 

「道順は大丈夫かリリアーナ?」

 

「問題ありません。こっちです」 

 

「雫ちゃん…、皆、無事でいて…」

 

 夜闇に紛れ王宮の隠し通路内を走るリリアーナ、香織にコウスケ。真っ先に生徒たちの救出を願った香織の意思を尊重しクラスメイトたちのもとへ走っているのだ。

 

「…コウスケさん」

 

「ん?どったの香織ちゃん?」

 

「本当に恵理ちゃんが皆の事を裏切っているの?コウスケさんを疑う訳じゃ無いけど…どうしても」

 

「信じられない…か。そうだな今まで一緒だったクラスメイトの友達を疑えっていうのは難しいよな」

 

 コウスケは香織に裏切者…すなわち中村恵理こそが友人たちを危険にさらしていると説明したのだ。当初は皆を危険にさらすような事をする子ではないと否定をしていた香織もコウスケの説得とリリアーナから聞いた王宮の人達の現状を聞き渋々納得したのだ。

 

「でもな、檜山と一緒に騎士や貴族たちを殺し回って自分の傀儡を増やしているのは間違いないんだ。だから決して優先順位を間違えないでくれよ」

 

「…うん。どういう結果になっていたとしても雫ちゃんたちを助ける。それが私がするべきこと」

 

「その通りだ。ついでに檜山にも注意すること。香織ちゃんを殺してでも自分のものにしようって言う阿保なことを考えているんだから」

 

「そこは心配しないで。私はハジメ君の物だから檜山君の好きにはさせないよ」

 

「香織…この非常事態にサラッと惚気ないでください。それよりもコウスケさん、今までの出来事やこれから起きる事を知っているのは本当なのですか」

 

 隣で走るコウスケを見上げるリリアーナの表情は困惑と戸惑いにあふれている物でそれがコウスケには一番堪えるのだ。

 

「…まぁね。大体の事は知っているよ。だから…」

 

「…すみません。責めている訳ではないのです。貴方にも考えがあっての事だというのは理解しています。しかし…いえ今は目の前の事に集中しましょう」

 

 そう締めくくるとリリアーナは前を向いてしまった。リリアーナに対する気まずさと申し訳なさを感じながらも息を一つ吐くとコウスケは今後の事を考え始める。

 

(今はリリアーナの言う通り目の前の事に集中しよう。ほかの事を考えて失敗してしまったら意味ないからな。さて…まず合流したら真っ先にメンヘラを制圧。返す刀で檜山もぶっ飛ばす。どのタイミングで出会えるか分からないけど多分これが一番ベストだと思うけど…まぁいいなるようになれだ。いざとなったら殺すことも覚悟しておこう)

 

 自分がするべきことを考えると次は懸念事項…ほかの仲間たちの事を考える。仲間たちはそれぞれ原作通り、ハジメとティオは愛子の救出、ユエとシアは魔人族の相手をしてもらったのだ。コウスケがリリアーナと香織に同行したのはすぐさまメンヘラこと中村絵里と檜山大介を制圧したかったのだ。

 

(銀髪の女…エヒトの人形『ノイント』に南雲は勝てるのか?…アイツを信じるしかないか。そのために空中で大剣二刀流を相手にした時の訓練をしていたんだから。ユエとシアは…大丈夫だよな?魔人族って言ってもそこまで強いわけじゃ…でも数が数だし…ああもぅ考えるのはやめやめ!ネガティブなことばかり考えていたらダメだっての!)

 

 仲間たちは強い。コウスケは信じてはいるものの、自分と言うイレギュラーがどこでどんな異常事態を生み出すのかが不安だった。今までは多少道筋が違っても原作通りだった。しかし、これからもそうなるとは確証は持てない。悩めば悩むほど不安は尽きない

 

「この時間なら、皆さん自室で就寝中でしょう。……取り敢えず、雫の部屋に向かおうと思います」

 

「それで行こう。八重樫ならすぐに状況を察してくれるしほかの子たちの説得も楽になる。もしいなかったら…騎士が集まっている場所だ。多分そこにいる」

 

「雫ちゃんならすぐに察してくれるから恵理ちゃんを止めてくれるのに力を貸してくれるよ」

 

 香織が親友の事を考えて力強く頷いたそんな時だった。

 

ズドォオオン!!

 

 

 

パキャァアアン!!

 

 

 

 砲撃でも受けたかのような轟音が響き渡り、直後、ガラスが砕け散るような破砕音が王都を駆け抜けたのだ。衝撃で大気が震え、コウスケ達のいる廊下の窓をガタガタと揺らした。

 

 

 

「コレは…まさか!?」

 

「早いな!?もうちょっとがんばってくれよ大結界!」

 

 王都の夜空を見れば大結界の残滓たる魔力の粒子がキラキラと輝き舞い散りながら霧散していく光景が広がっていた。まだ合流もしていないうちに王都を守る大結界が壊れてしまったのだ。結界が壊れるという事はすなわち魔人族が王都まで攻め込んでくるまで残された時間がわずかしかなかったのだ

 

「ほんとにも~!外から頑丈だけど中からは脆すぎだ‼欠陥品もここまでくると清々しいな!」

 

「欠陥品ではありません!不測の事態に弱いだけです!」

 

「それを欠陥品っていうんだよ!この国の人たち危機管理能力が低すぎるんじゃないのか!」

 

「普通内通者がいるって思わないですよ!」

 

「戦争してんだから寝返るやつとかいるだろうが!本当に戦争やっているって自覚あるのか!?駄目すぎんでしょ!」

 

「2人とも騒いでないで走って!時間がないの!」

 

 脆くも崩れ去った大結界が決壊したことでコウスケとリリアーナが言い争うので香織が止める。その時コウスケの懐が突然光り出した

 

「うぉ!?」

 

「きゃ!?」

 

 一瞬目が眩むほどの光が放ち徐々に収まっていく。突然の事であっけにとられることしばしば。ハッとし我に帰ったコウスケは自分の懐をごそごそ漁る

 

「さっきのは一体何なんですか?」

 

「分かんない。なんかここから光ったような…?」

 

 余りにも不可思議なことに今の状況を忘れ懐を漁って出てきたものは以前エリセンでハジメから渡されたものだった

 

「コレは…迷宮の攻略の証?なんでこれが?」

 

「でも現に今も淡く光ってますよね?」

 

「んー光ったところなんて見たこともないんだが…まぁ今考えても仕方ないことだ。さっさとっ!?」

 

 香織の言う通りハジメから渡された大迷宮の攻略の証の四つは今もまだ自己主張するかのように淡くされど確かに光っている。いったい何なんだと考えるものの今考えても仕方ないので先に進もうとした時だった。

 いきなり攻略の証がが強く光始めたのだ。それと同時に感じる体がどこかに転移されようとする感覚。コウスケはとっさに目を丸くしている2人に叫んだ。

 

「なんっ!?くっそ!ああもうチクショウ!こんなのは原作になかったぞ!2人とも先に行ってくれ!俺も後で追いつ」

 

「コウスケさん!?」

 

 コウスケが最後まで言い終わらないうちに光が一瞬強く光り放ち2人が目をつぶり、再び目を開けたときにはその場からコウスケは忽然と姿を消してしまったのだ

 

「…え?コウスケさん?」

 

「いない…」

 

 リリアーナと香織が顔を見合わせるも、コウスケはどこにもいない。先ほどまでは確かにそこにいたはずのコウスケはまるでそこには誰もいなかったかのようにきれいさっぱりいなくなってしまったのだ。

 

「…仕方がありません。私たちは進みましょう」

 

「…そうだよね。コウスケさんなら私達よりもずっと強いから何があっても大丈夫だよね」

 

「ええ、彼の事を信じましょう。今は私たちがすべきことをするだけです」

 

 消える直前のコウスケの言葉通りにリリアーナと香織は雫たちのもとへと先を急ぐのであった。

 

 

 

 

 

 

 




次はもうちょっと長くする予定です。
では
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