ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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出来ました。ようやくここまで来た…後少しですね
少し?無理矢理かもしれませんが受け入れてくれると嬉しいです


王都防衛線 ⑦

 

 

 中村恵里にとって天之河光輝は絶対に手に入れるべき存在だった。その思いは異世界に来たことでますます強固になり自分の天職降霊術師の能力を駆使して天之河光輝を手に入れるための計画を練った。光輝が奈落に落ちたときは我を失ったがその程度では死ぬはずはないと断定し計画を進めた。

 自分の理想郷を作り上げる為にまずは南雲ハジメに火球を放った檜山大輔に交渉と言うの名の脅しを使い自分の好きなようにできる手駒を獲得し、次に王宮の身分の低い物から次々と檜山に始末させ自分の傀儡にしていった。

 そんな中騎士達も自分の傀儡にしようという段階で清水幸利を勧誘する事が出来たのは幸運だった。清水の闇魔法があれば洗脳により傀儡特有の虚ろな表情が無くなりスムーズに事を運べるからだ。増々順調に計画通りに事が進んでいった。

 

(この世界の神…エヒト神だったっけ?そんな神なんてどうでもいいけど幸運の神様っていうのはいるんだねぇ)

 

 全てがあまりにも順調だった。誰もが自分の本性に気付かず、誰もが平和に見える中での異変に気付かない。何度も嘲笑をしたくなったがすべては天之河光輝を手に入れるために我慢をした。その為だけでありそれ以外は全てどうでもよかったからだ。

 

 故に魔人族が攻めてくるという事を()()()()から聞いたときに自分の計画を実行することにした。その人物曰く『上手く行けば必ず天之河光輝を明け渡す』というのだ。交渉をしてきた者の思惑など恵理にとってはどうでもいい、今はただ近くにいない光輝が現れ自分のモノになる光景を夢見るばかりだった。

 

 伝えられた情報通り大結界が壊れ、八重樫雫がクラスメイト達を纏め上げていた時はニヤつくのをこらえたものだ。いつもの気弱だが冷静な参謀役のふりをし、自分の傀儡となっている騎士団と合流させることも容易だった。そして一緒に召喚されてきたクラスメイト達が虚う騎士団に包囲されたとき恵里はまさしく有頂天となっていた。

 

「始まりの狼煙だ。注視せよ」

 

 清水に操られ傀儡となったホセの言葉で閃光が走り光がはぜた。その直後に響き渡る肉を裂く異様な音と痛みによるくぐもった声虚ろの騎士たちによって奇襲され次々と倒れ伏していくクラスメイト達

 

「な、こんな……」

 

 多少の誤算があったとするならば八重樫雫だけが騎士の剣を防いだところぐらいだろうか。しかしこれも全ては予定調和だった。だからこそ恵理は初めて本性を現した。もう自分の本性を隠す必要はない。クラスメイトの殆どが倒れ伏した時点で自分の勝利は揺るがないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらら、流石というべきかな? ……ねぇ、雫?」

 

「え? えっ……何をっ!?」

 

 いつも凛々しくどんな時でも気丈な顔だった雫の美貌は咄嗟の事にうろたえていた。大結界が壊れたと言う情報を聞きクラスメイト達を叩き起こしどうするべきかと言う状況で中村恵里から騎士団と合流すべきだと意見されそれもそうだと納得し皆から反対する声もなく、騎士団と合流した結果が襲われるという想像もつかない状況だった。

 

 自分に向けられた凶刃をとっさに防ぎ、何事かと辺りを見回せば呻き倒れ伏しているクラスメイト達。その中でただ一人だけニヤついた表情で話しかけてくる友人…中村絵里にどういうことかと聞きだす雫。異常な事態に余裕を見せるその表情と只住まいから雫の中で嫌な予感が急増していた。

 

「どういうことなの…何を知っているの恵里!」

 

「アハハ… まぁ君が倒れないのは想定済みってことだよ」

 

「なにを言って…っ!?」

 

 恵里の言葉に身構えた雫は直後、地面から伸びてきた黒い手の様なものに足をつかまれてしまった。力を籠めようにも黒い手はがっちりと雫の足をつかみ振りほどくことができない。もがけばもがくほど締め付けを強くする黒い手に抵抗虚しく雫は地面に引きずり倒されてしまった

 

「あぐっ!ぐっ振りほどけない…何なのコレは!?」

 

「そいつはオレの闇魔法でできた手だ。貧弱そうに見えるが結構丈夫でな。まぁお前じゃどうやっても振りほどく事とはできねぇよ八重樫」

 

「貴方は…清水君!?」

 

 声が聞こえてきた方を見ればそこにいたのは失踪したが愛子に連れられて戻ってきたはずの清水が悠然と立っていた。驚く雫を冷たく見下していた清水は傷ついて呻いているクラスメイト達を気にすることもなく歩み寄ってくる。

 

「それにしても…ハッ! 本当に無様だな八重樫。洞察力が鋭いはずのお前なら異変に気付くとでも思って二重三重に策を考えていたんだが…なんて事のない只の女子高生って所か。まさかこんなにも簡単に行くなんてよ…失望したぜ」

 

「貴方…本当に清水君…なの」

 

「あ?それ以外の誰に見えるってんだ」

 

 八重樫雫は清水幸利と言う人間をよくは知らない。ただのクラスメイトであり、話をしたことも顔を見合わせたこともなかった。分かっているのは印象が薄いというだけ。

 しかし、今目の前で自分を見ている清水幸利は冷たいを通り越していっそ冷酷と言えるほどの目と傷ついているクラスメイト達が眼中にないという態度をとっているのだ。目の前にいるのは同じ日本出身のクラスメイトだというのに清水に対して何か薄ら寒いものを雫は感じていた。

 

 粘つくような声で嘲り笑う中村恵里にクラスメイト達に関心を示さない清水幸利。異常な行動をしている2人に雫は混乱するばかりだった。

 

「貴方達…いったいどうして…何でこんな事を」

 

「うん?そうだねぇ…教えてあげてもいいんだけど…」

 

「言ってやれよ中村。どうせこいつらにお前の目的を言っても支障はねぇだろ」

 

「そうだね、どうせ後々殺すんだし言っちゃおうか。僕はね雫、光輝君がほしかったのさ」

 

「光輝を…」

 

「そう!本当ならあの時何が何でも引き留めたかったんだけど君達のせいで上手く行かなかったからね。どうしようかと考えながら取りあえず王宮の人間を傀儡にしているときに()()()から交渉をされてね」

 

 恵理はニヤついた顔を浮かべながら嬉々として話し出す。その表情はいつも一緒にいた中村恵里ではなく、別人に見えた。

 

「騎士団や君たちを殺してくれれば光輝君を手に入れるのに協力してくれるって言ってね。それで邪魔な君たちを殺して僕の降霊術で傀儡にしようと思ったんだ。そこにいる騎士たちの様にね」

 

「そんな…それじゃ、この人たちは!」

 

「もっちろん死んでいるよ~アッハハハハハ!」

 

 狂ったような…実際狂っている恵里の言葉に雫は歯ぎしりをした。違和感は少なからずあった。訓練の時や私生活の時もどこかよそよそしく何か隠されているような気配があった。しかし何か伝えたくない事でもあるのだろうと思い詮索しなかったのが仇となってしまった。

 

 雫と恵理とのやり取りを眺めていた清水は自分を責め苦渋の表情を浮かべる雫と先ほどから狂笑しいる恵里を一瞥し肩をすくめると恵里の間違いを正す。

 

「はぁ…騎士団を傀儡にしたのはオレの闇魔術だろ。間違えんなよ。あとこいつらを無力化した後はオレがもらうって話だろ」

 

「んん?ああそういえばそうだったね。でも君の洗脳を食らった人間は悉くが廃人になっているんだから別に違わないんじゃないかな」

 

「ふん。…まぁそういう訳だ。運が悪かったと思って諦めろ」

 

 清水の宣言により騎士たち全員がクラスメイト達に剣を向ける。重傷を負いながらも、直ぐには死なないような場所を狙われたらしく苦悶の表情を浮かべて生きながらえているクラスメイト達はそれぞれ諦めたように呆然とする者隙を伺う者、死にたくないと叫ぶ者全員の反応は違っていたがそれぞれがこれから起こる事に恐怖していた。

 

 そんな中ただ独りだけ声を張り上げるものがいた。

 

「嘘だ……嘘だよ! ぅ…エリリンが、恵里が…っ…こんなことするわけない! ……きっと…何か…そう…操られているだけなんだよ! っ…目を覚まして恵里!」

 

 恵里の親友である鈴が痛みに表情を歪め苦痛に喘ぎながらも声を張り上げた。その手は、恵里のもとへ行こうとでもしているかのように地面をガリガリと引っ掻いている。恵里は、鈴の自分を信じる言葉とその真っ直ぐな眼差しにニッコリと笑みを向けた。そして、おもむろに鈴に近づくとこの日一番のとびっきりの笑顔を見せた。

 

「ねぇ、鈴? ありがとね? 日本でもこっちでも、光輝くんの傍にいるのに君はとっても便利だったよ?」

 

「……え?」

 

「参るよね? 光輝くんの傍にいるのは雫と香織って空気が蔓延しちゃってさ。不用意に近づくと、他の女共に目付けられちゃうし……向こうじゃ何の力もなかったから、嵌めたり自滅させたりするのは時間かかるんだよ。その点、鈴の存在はありがたかったよ。馬鹿丸出しで何しても微笑ましく思ってもらえるもんね? 光輝くん達の輪に入っても誰も咎めないもの。だから、“谷村鈴の親友”っていうポジションは、ホントに便利だったよ。おかげで、向こうでも自然と光輝くんの傍に居られたし、異世界に来ても同じパーティーにも入れたし……うん、ほ~んと鈴って便利だった! だから、ありがと!」

 

「……あ、う、あ……」

 

 その笑顔は教室で鈴と共に笑いあっていた恵理の笑顔そのもので、だからこそ、その言葉が嘘偽りのない本音だという事鈴は理解してしまった。

 

 衝撃的な恵里の告白に、鈴の中で何かがガラガラと崩れる音が響く。親友と築いてきたあらゆるものが、ずっと信じて来たものが、幻想だったと思い知らされた鈴。その瞳から現実逃避でもするように光が消える。

 

「恵里っ! あなたはっ!」

 

「ふふ。怒ってるね? 雫のその表情、すごくいいよ。僕ね、君のこと大っ嫌いだったんだ。光輝くんの傍にいるのが当然みたいな顔も、自分が苦労してやっているっていう上から目線も、全部気に食わなかった。だからね、君は僕が特別にじっくりとなぶり殺しにしてあげる」

 

 雫は、全力で体を動かし黒い腕から抵抗しようとするも脱出はできずせめて最後まで眼だけは逸らしてやるものかと恵里を激烈な怒りを宿した眼で睨み続けた。

 

 それを、やはりニヤついた笑みで見下ろす恵里は、最後は自分で引導を渡したかったのか、近くの騎士から剣を受け取りそれを振りかぶった。

 

「じゃあね? 雫。君との友達ごっこは反吐が出そうだったよ?」

 

 雫は、恵里を睨みながらも、その心の内は親友へと向けていた。届くはずがないと知りながら、それでも、これから起こるかもしれない悲劇を思って、世界のどこかを旅しているはずの親友に祈りを捧げる。

 

(ごめんなさい、香織。どうか……生き残って……幸せになって……)

 

 逆手に持たれた騎士剣が月の光を反射しキラリと光った。そして、吸血鬼に白木の杭を打ち込むが如く、鋭い切っ先が雫の心臓を目指して一気に振り下ろされた。

 

 ベキッ!

 

 がその凶刃は雫の命を奪わず代わりに聞こえてきたのは何かが折れる音だった。

 

 

「え?」

 

 呆然と前を見る雫の目の前には腕があらぬ方向に折れ曲がり苦悶の表情を浮かべる恵里と手に持った杖を恵里に振りかぶる清水幸利がそこにいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そぅれもう一発!」

 

 ガギッ!

 

「あぐっ!?」

 

「うし、今度はちゃんと当たった当たった」

 

 振りかざした杖を今度は間違いなく恵理の頭部に振り下ろした清水は、軽く杖を振り体の伸びをする。バキボキと音のなる背中を肩をぐるぐる回すことでほぐしていく。

 

「君は…いったい何を!」

 

「あ?…ッチ結構力込めたんだが気絶しなかったか。やっぱりそう上手くはいかないってことだな。まぁいい、それじゃ副団長、この茶番劇の協力ありがとさん。後は好きなようにしてくれ」

 

 頭を押さえ呻きながら突如殴ってきた清水に腕を抑えながら怒りの目で問い詰めようとする恵理をさして気にした風でもなく清水は無視するとホセに向かって声をかける。声を掛けられたホセから黒い霧のようなものが出てくると頭を数度振り苦虫を潰したような顔で清水と恵理を見る。

 

「…っぐ、なんとも凶悪な魔法ですね。もしこれほどの使い手が我らの敵だったら…いえそれにしてもまさか本当に裏切っていたとは」

 

「だから言ったろ?裏切者が居るって。そんな事よりほかの奴らの魔法を解くから、さっさと動いた方が良いんじゃねーの」

 

「…そうでしたね。総員!第1、第2部隊は入り来る魔物の討伐を!第3、4部隊は民の避難を!第5部隊は王宮に居る残りの傀儡兵を始末せよ!」

 

 未だふらつく恵理を見たホセはすぐに意識を切り替え同じように黒い霧が体中から抜けてきた部下達に指示を出していく。指示を出された騎士たちは皆それぞれが騎士としてのの役割を果たすべく駆けて行く。

 ホセは召喚されて国を救うべきだった『神の使徒』と呼ばれていた少年少女たちを苦い顔で一瞥すると自らもまた部下たちと同じように駆け出していく。

 

 後に残ったのは突然の騎士達の行動に戸惑いと困惑を隠せない傷ついたクラスメイト達と腕を抑えながらふらつく恵里だけだった。

 

「暗き炎渦巻いて…」

 

「させねぇよ『言葉繰りの者共、静寂に真実を求め、暫し言葉忘れよ… 沈黙』」

 

「っ!?…………!」

 

 恵里が放とうとした詠唱を清水が闇魔法で妨害する。声を出すことができず、怨嗟にこもった目で清水を睨みつけるがやはり清水はどこ吹く風で、恵里に歩み寄ると躊躇なく手に持った杖で恵里を攻撃する。魔法を封じられ攻撃する手段をなくしてしまった恵里は火事場の馬鹿力と言うか落とした剣を片手で持って清水の攻撃を防いでいく。

 

「……っ!?」

 

「何だよその顔。もしかしてオレが接近戦ができねぇとでも思っていたのか?…はぁーどうしてこうお前の考え方ってのは極端なんだ?何で全部上手く行くと思ったんだ?オレが簡単にコイツ等を見捨てるとでも思ったのか?」

 

 溜息をつきながらも杖を振る清水に容赦はなく、恵里を追いつめていく。数回の剣戟の後ついに恵里は剣を弾き飛ばされてしまった。武器をなくしてしまった恵里を清水は足払いをかけ床に引き倒す。

 

「やれやれ こんな杜撰な計画を立てた奴が障害になるとは思えないんだが…もしかして補正って奴でも入っていたのか?どうにも他の奴らはお前に対してノーマークだったし…まぁいいか。もうすべては終わったことだ」

 

 愚痴を吐き倒れ伏している恵里の上に馬乗りになりながらも清水はテキパキと魔力封じの枷を恵里に取り付ける。枷がはまったことを確認すると今度は呆然と事の成り行きを見てい居た雫に向かって声をかけた。

 

「これでチェックメイトってな。 おい八重樫何をボーっとしているんだ。もう魔法は解いたぞ」

 

「え?…へ?消えてなくなっている…」

 

 キョトンとしている雫に呆れそうになるが仕方ないかと肩をすくめる清水。何せ魔物と魔人族の大軍が一挙に襲い掛かってきているという状況に加え 騎士たちによる攻撃と中村恵里の裏切り、そしてさらにその中村恵里を裏切った自分がいるのだから混乱しているのも仕方ないと言えるだろう。

 

 見ればクラスメイト達も混乱している様子で這いずりながらも何とかそれぞれが応急手当てをしようとしているところだった。そんな時だった。

 

「ふ、ふふふ 清水君、君がどういう腹積もりかはわからないけど、『彼』の目的は達成できそうだね」

 

「あ?」

 

「皆ーーーー!!」

 

 足元で何が面白いのかニヤついている恵里の声に疑問を抱き、続けて声がした方を見ればそこにいたのはクラスメイトであり南雲ハジメと一緒に旅に出た白崎香織と王女リリアーナがこちらに駆け寄ってくるのが遠目で見えた。

 

「ぅわ本当に来やがった。こんな大イベントだから来るとは思っていたけど…ってああそういう事か」

 

 必死に駆けつけてくる香織とリリアーナ。その2人に横から近づいていく影…檜山大介を見ながら清水は恵理の言葉の意味が分かった。檜山は剣を持ち、瞳に狂気を宿しながら待ちに待ったモノに飛びつくようにして走っている。

 

「がお”り”ぃぃいいいいい!!」

 

 大方香織を殺し恵里に降霊術を使わせて自分専用の傀儡にでもしてもらうという魂胆だろう。

 

(って言うかそういう契約しているんだっけ?)

 

 恵里の計画では檜山は何かイレギュラーがあった時の為の対応として待機していたはずだが、いきなり共犯者の清水が裏切ってしまい驚いている間に騎士たちが正気に戻ってしまったのでどう対応すればいいのか分からなくなってしまったのだろう。

 そこに檜山にとっての本来の目的である香織が来たので混乱に混乱を重ねた檜山の頭は香織を自分のモノにすると言うただそれだけのために後先考えずに行動していると清水は分析した。

 

「アッハハハ! 僕の光輝くんに当然の様に傍にいるあの女なんて死んでっぶぎっ!」

 

「ペラペラうるせぇんだよこのタコ!お前のその逆なで声どうにかならねぇのか!あとリアル僕っ娘なんて気色悪ィんだよ!反吐が出そうだ!」

 

 足元でニヤついている恵里に対してサッカーボールキックを放つ清水。足から伝わる感触からして鼻の骨と前歯を数本へし折った様な感触がしたが全く気にせず止めとしてのけぞり白目をむいている恵里の頭にストンプを放つ。 

 

 息を吐き面倒な相手が完全に沈黙しているのを確認した清水が香織たちを見れば今まさに檜山が香織に飛びかかろうとしていたところだった

 

「ったく、オレがその辺手を抜くわけねぇだろうが…なぁ団長さん」

 

 檜山が飛びかかる瞬間、黒い影が一気に檜山に体当たりをする。体当たりを食らった檜山は紙屑の様に吹き飛んでいくが黒い影はそのまま檜山に追い付き体を押し倒し馬乗りになる。

 

「どうして…どうしてなんだ!なんであそこまで酷いことができるんだ!答えろ大介!」

 

 黒い影…重装備のメルド・ロギンスがそのまま檜山にマウントを取りながら拳を振り下ろしていく。拳を次々と振り下ろしていくメルドの目にはうっすらと涙が見えているところや話している内容からするとここに現れるまでに何人かの顔見知りの傀儡兵を殺して回ったのだろう。

 

 一方殴られている檜山の状況は悲惨だ。筋肉がみっちり詰まっているメルド(おまけに鎧などを着用しているためかなりの重量と思われる)の体当たりを食らいあまつさえ太く頑丈な拳を次々と食らっているのだ。腰にさしている騎士剣を抜かない辺りメルドにもそれなりの優しさがあるのだろうが、檜山の顔は見るも無残に腫れあがっていく。恐らく目も当てられない顔になってしまっているだろう。

 

「ま、あれはあのままにしておこう、それよりも白崎が来たってことは…」

 

 南雲ハジメについて行った白崎が現れたのだ。なら当然南雲ハジメ(主人公)も近くにいる。そして南雲ハジメの横には…

 

 

 

 

 

「なぁにこれぇ」

 

 

 

 

 

(こんな時に遊戯王かよ…相変わらず変な奴)

 

 いきなり虚空から現れた、清水が待ちに待った相手は相も変わらず変なことを言いながらもついに清水の前に現れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




後少し終わったら、やっとでやりたいことができるようになります。
それまで頑張ります

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