「で、この後どうする」
「…っは!?」
ハジメの疲れたような声を聴きやっとで我に返るコウスケ。面倒だったことが終わった事に喜んでつい我を忘れてしまったのだ。すぐに思考を切り替え自分がまず何をすべきなのか判断する。
「そうだな…取りあえず王都の人たちが心配だから、香織ちゃん!ちょっとこっちに来てくれ!」
今自分が何をすべきか、そんなのは決まっている。脅威は去ったとはいえどこかで怪我をした者が居るのかもしれない。
今もまだ命の危機が迫っている人がいるかもしれない。なら自分の力を使う必要がある。無論この世界の最高峰の治癒術師である香織にも協力を要請する
「それでコウスケさんどうすればいいの?」
「俺の手に手のひらを重ねて」
近寄ってきた香織に自分の差し出した手を重ね合わせるように頼む。不思議そうな顔をする香織だったがすぐにコウスケの手に自分の手を重ね合わせる。
「そのまま再生魔法を使ってくれ。誰に使うかなんて考えず只々人を治すことだけ考えて魔法を使ってくれ。細かいところは俺が調整する」
コウスケの言葉に従い再生魔法を使い始める香織。香織が唱える再生魔法をコウスケが範囲を広げる。
「…治って」
(…範囲拡大、対象無差別、命に差は無しってなぁ!)
魔法の範囲は王都全域、怪我の大小を問わず全員が魔法の恩恵を受けるように空間魔法を使い香織の力を拡大させる。
「おいおい紅い雨の次は蒼の雪ってか?お前らほんと規格外だな」
空を見た清水が呆れたように声をあげる。空からはコウスケの魔力光である蒼の光が雪の様にひらひらと舞い落ち当たった者誰構わず怪我を癒していく。その中には身動きができないでいる檜山や中村も含まれていた。
(これで多少は楽になるはず…だよな)
蒼の雪にはコウスケの技能『快活』の力も含まれているので今なお王都を駆けまわっている騎士たちや兵士たちの体力や気力をも回復させる力がある。人を助けるのには時間と体力が必要だとコウスケが考えていからだ。
「これで王都の人たちは大丈夫かな?」
「ん、きっと問題はないさ。ありがとう香織ちゃん。君のおかげで怪我人はだいぶ減ったはずだ」
「ううん、コウスケさんの力があるからだよ」
2人でと協力魔法の成果を語り称え合う。前々から何か試してみようと考えていた魔法の効果が上手く行ったのだ。
「コウスケ上手く行ったの?」
「ああ、これで魔人族による侵攻の被害はだいぶ抑えれた…はず」
「そう、じゃあ次、この清水は何?敵?味方?どっち」
そんな2人の作業が終わった頃合いを見たハジメがさっきから隣にいる清水の事を聞きだす。ハジメからしてみればウルの町でコウスケが回復させたのを見て最後だったのだ。今はコウスケの隣で事の推移を見守っているようだが腹の底まではハジメにはわからない。
クラスメイトの裏切者檜山と中村を事前に封殺したとの話なのだが、ハジメにはまだ疑わしかった。自然と右手がドンナ―に伸び目がうっすらと険しくなっていくのがハジメ自身感じ取れていた。まだ信用できないと
「オレか?…そうだなお前にとって分かりやすく言うのなら…」
ハジメの様子に気付いたのか気づいていないのか清水はしばし眉間に手をやり考えニヤリと不敵な笑みを見せ言い放った
「『オレはしょうきにもどった』って奴だな」
ガチャッ!
「コイツ敵だ!」
「まてまて落ち着け南雲ぉ!おい清水お前もなに笑っているんだよ!?」
「あっはは やっぱりこいつらおもしれ―」
即座に清水にドンナ―を向けるとハジメと慌ててハジメを止めるコウスケ。そんな2人を見て清水は愉快そうに笑うばかりであった。
「まぁまぁ落ち着け南雲今のはオレの冗談だ」
「あぁ?」
「そう睨むな。オレは正真正銘お前たちの味方だ。いろいろ話せば長くはなるがな、そこだけは絶対だ」
威圧を放ち常人なら倒れ伏してもおかしくないプレッシャーを放つハジメだが清水は決してハジメから目を逸らさない。清水の目、それは以前の時とは違って力強い意思がある目だった。澱んだ眼を持ち目をそむけていたあの時とはまるで別人だと思うほどの
「…ふぅん 前見た時とはだいぶ雰囲気が変わっているみたいだけど?」
「まぁな…『俺』が生まれ変わって『オレ』に変わったというべきか…そこら辺の事情は追々話す。今は信じてくれとしか言えない」
「な、清水なんか前会った時と違っていい奴になったみたいだからドンナ―を向けるのはやめようぜ南雲」
「はぁ…わかったよ」
清水の変わりように警戒していたが、コウスケの説得によりハジメは溜息を一つ吐くとドンナ―を下ろす。ホッと一息を吐くコウスケは、どうにもいつもとは違ってイラついているらしい親友をなだめることにする。
その間に手のジェスチャーで清水には離れるよう頼み込むと肩をすくめて清水はクラスメイト達の所へ戻っていった。恐らく清水は清水で事後処理をするのだろう
「どした?なんか気がたっていないか?いつものお前らしくないぞ?」
「そんなつもりは……いや、そうかもね。ちょっと疲れているんだ」
「ん?なにがあった?」
「コウスケが教えてくれたノイントって敵なんだけど、アレ情報とは全く持って違ったよ」
「マジ?」
コウスケが教えた内容は『銀の翼を持ち、大剣の二刀流で魔法を使ってくる戦乙女の様な銀髪碧眼の女性』だったのだが
「あっているのは女性で銀髪碧眼だけ、僕より背丈は小さくて香織さんと一緒ぐらいに銀の翼は無い、しかも武器は大剣の二刀流じゃなくて短槍一本のシンプルな戦闘方法。おかげでえらい目に遭った」
見ればハジメの衣服のあちこちに裂けた跡があった。傷は先ほどの魔法で治ったらしいのだが…今の今まで暗くわからなかったのだ。
「マジか…そりゃすまなかった」
「いいよ謝らなくても。それよりも僕は疲れたんだ、早く休みたいのが本音なんだけど」
明らかに疲れた顔をするハジメ。ノイントとの戦闘やイシュタルたちの相手にストレスでも溜まっているのか随分とやけっぱちな態度だった。どこか宿でも取るべきかそれとも屋外でキャンプでも張るべきかとコウスケが悩んでいるところで傍に近寄ってきたリリアーナが提案をしてきた
「それなら王宮の客室を使ってください、細かいことは明日にして体をお休め下さい」
「良いの?勝手に決めても迷惑とかにはならない?」
「構いません。あなた方はこの王都を救っていただいたのですから」
「今も王宮の人たち混乱していると思うけど…」
「城の者たちは優秀な者たちです。多少混乱していてもすぐに冷静さを取り戻します」
頑としてリリアーナは意見を取り下げる気はない様だ。どうしたものかと周りを見てもメルドはすでに姿を消し生徒たちは畑山先生と再会し喜び合っている。ティオは事の成り行きをみているだけで口を挟まない。香織も同じようだ。隣のハジメはついにもたれ掛かってきたのでコウスケはリリアーナの提案を受け入れることにした
「それじゃ…世話になるよ」
「はい!」
リリアーナは返事を返すと城に案内をしようとし、急に立ち止まりコウスケ達に振り向き、深々と頭を下げた
「…改めて本日はありがとうございました。あなた方のおかげで城の者も城下の人たちもみんな助かることができました。誰よりも先に言わせてもらいます。皆様、私たちをお救いしてくださり本当に有難う御座いました」
リリアーナの真摯なその声に特に何もしていないコウスケは少々ばかり気まずそうに頬を掻くのであった
「あっと忘れ物忘れ物」
「む?コウスケ何をしようとしているのじゃ?」
「んーー檜山と中村に魔法をかけるのをね」
「魔法?」
「『魂魄魔法』だよ …どうやら俺が一番うまく使いこなせるみたいだから」
少しづつ進めていきます