ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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遅くなりましたー
気が付いたら投稿してから一年経ってました。
これも皆さんのおかげです。深い感謝を

なんか思ったより長いです!貯め過ぎた!


交流して訓練をしてやる気に満ち溢れる

 

普通の高校生?

 

「さっきからドンナ―を見てるけど、どうしたのさ清水」

 

「…南雲、お前のその銃なんだけどさ」

 

「?」

 

「何で、銃を作ることができたんだ?」

 

「え、ああ僕の父親が銃の資料を持っていて」

 

「だから出来たってか?…いや、だからと言ってできる訳ねぇだろ」

 

「でも実際ここにあるんだけど」

 

「…普通ってなんだ?」

 

 

 

普通っていう奴ほど…

 

「で、グレネードランチャーにマシンガン、挙句の果てには上空からの衛星攻撃か」

 

「後は車にバイク潜水艇にドローン等々!」

 

「ドヤるな、…やっぱ変だろお前」

 

「そうかな?錬成能力がなければ普通の高校生だよ」

 

「…だから普通じゃねぇって!んな物騒なもんホイホイ作れるお前はただの変態だ!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 装備更新 白崎編

 

「という訳で仲間も増えたから装備品を増やしていこうと思うんだ」

 

「ほうほう まずは誰からだ」

 

「んーそれじゃあ白崎さんからにするよ」

 

「南雲の彼女だからな、優先順位が高いのは当たり前か」

 

「か、彼女じゃないってば!」

 

「んまームキになっちゃって」

 

「むぅー」

 

「むくれんなって それよりもどうするんだ?」

 

「白崎さんは治癒術師だから、真っ先にやられたら駄目なんだ」

 

「ヒーラーがやられたら誰が回復するんだってな」

 

「そう言う事 って訳でこれを用意しました」

 

「白いフード付きのローブ?…あぁ有名RPGのあれか」

 

「ヒーラーって言ったらこれでしょ?流石にもう一つのアレはどうかと思うし…」

 

「ああ、アレは無いな」

 

「ユエとシアに頼んで作ってもらったのを元にしてあるものだから、見た目は女の子っぽくなってるし、いろいろ手を加えたから防御力も格段にある、後でコウスケにも手を加えてもらえばまぁ大丈夫かな」

 

「ふむふむ、…それだけ?」

 

「後は杖とかも作っていいんだけど…実はそこまで考えていない」

 

「雑ぅ!」

 

「ヒーラーが攻撃に参加するってよっぽどのことだからね、そこら辺は適当に考えておくよ。後は詠唱の短縮化でユエやティオと同じように魔法が使えるようになるし魔力の消費を削減して負担が少なくなるなど、色々な技能をぶち込んだ首飾りを用意してあります!」

 

「おお!」

 

「これもまたユエやシアの助言を聞いて女の子っぽい物を作りました。白崎さんの魔力光に合わせた白菫の形をしています …喜ぶかな?」

 

「喜んでくれるさ しかし白菫か…確か花言葉は…ッフ」

 

「何さそんなにニヤニヤして」

 

「なんでもなーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 清水編

 

「次は清水なんだけど、とくには考えていません!」

 

「清水ェ」

 

「冗談だよ。清水は攻撃魔法もできるけど基本は状態異常がメインだから成功率が上がる様に装備品を整えてみました」

 

「俺達ができないことができるやつだからな」

 

「こっちも杖には闇属性の魔法が強くなるように補助を入れてあるから、後は名前だけだね」

 

「名前付けかぁー これは清水自身が決めた方が良いな。名前を付けると愛着がわく」

 

「防具の方もローブにしました。こっちも色々できるんだけど…ここら辺は清水と相談して作ろうかな」

 

「それが良い。自分に見合った装備品を選ぶってのもきっとアイツのためになる」

 

 

 

 

 ノイン編

 

「で、最後の問題児なんだけど」

 

「…ノインの事か」

 

「どうやら彼女本人は短槍の方が良いみたいだから、何かギミック入りの槍でも考えてみようと思う」

 

「槍かぁ…どっかの戦乙女を思い出す」

 

「一応投げても使えるようにとか三節棍の様にとかやってみようかな?近距離も遠距離も使えるようにしてかつ頑丈さも上げる…中々難易度が高いけど、やりがいがある。ふふ錬成師冥利に尽きるね」

 

「まーた目をキラキラさせやがって…防具の方は?」

 

「それはノイントとして使っていたのを参考にでもしようかな。あんまり重いものは使いにくいみたいだから」

 

「シアと同じような軽装が良いのかな?」

 

「あそこまで無防備なのは嫌みたい。ほどほどで良いってさ。取りあえずノースリーブ型でそこに胸当てをメインにしようかな」

 

「ノースリーブ…」

 

「?流石に軽装すぎるかな?でも本人はこれでいいみたいだから…」

 

「美少女の脇出しとはエヒト、糞野郎のくせに分かってんじゃねぇか!」

 

(もしかして性癖ドストライク?)

 

「ック あんな美少女の軍団を作って自分好みの服を着せるなんて、とんでもねぇふてぇ野郎だ!」

 

「まぁろくでもない奴だってのは認めるけどさ」

 

 

 

 

 

 まさかコイツが…

 

「という事で俺達の旅についてくることになったノインだ」

 

「ノインです。始めまして…ですよね清水様?」

 

「お、おう… なぁちょっとコウスケいいか」

 

「?なに」

 

「お前が良いってのなら反対はしないけどよ、あいつ大丈夫なのか?元エヒト側の奴だったんだぞ」

 

「ノイン?んー大丈夫でしょ 多分」

 

「多分って…はぁ」

 

「そこまで警戒する必要はないと思うけど、ってそうか清水は一度ノインが『ノイント』だった時にあっているんだったな」

 

「そういう事だ、頭ではお前のいう事を信じようと思うんだけど、どうにもな」

 

「ふーむ でももうそんな敵対するような事はしないよ」

 

「そうですよ、そんな無駄なことする必要を感じられません」

 

「うぉおっ!?」

 

「昔の私が迷惑をかけたでしょうが今の私はそんな愚かなことはしません」

 

「だってさ清水。だからもう大丈夫だよ」

 

「それに何か私が仕出かしたとしてもマスターの管理不足ってことになりますので、その時は存分にマスターを非難してください」

 

「そうそうノインが何かしても俺が責任を…ってうぉい!?何言ってんのこの子は!?」

 

(確かにあの時とは違うな、なら信じてもいいかもな)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん!」

 

 ユエは憤慨していた。激怒していた。腹の内から煮えくり返っている言っても過言ではないほど怒っていた。怒りは爆発しそうなほど

ユエの心を荒れ狂い何かに八つ当たりをしたいほどだった。

 

(私は慢心していた!図に乗っていた!勘違いをしていた!)

 

 だがユエは誰かに起こっていたわけではない、何故なら怒っていた対象は、まぎれもない自分だった。

 

 そもそもユエが自分に腹を立てている原因は清水が使った魔法『闇龍』が原因だった。だがこれ自体清水に非は全くない。ユエ自身も『闇龍』を見たときは自身が得意とする魔法と同じような魔法を使う清水を凄いと素直な賞賛の気持ちが溢れていた。

 

 だが問題はその後だった。清水の挨拶が終わり、それぞれが自由行動をしている中で、ふと思い出してしまったのだ。

 

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 その事が頭をよぎった時その瞬間ユエは頭が電流を走った様な強い精神的ショックを受けた。なんて事だろうか!

 

(私は生まれたときから魔法と共にあった!なのに清水はたった数か月で私と同じレベルに達している!)

 

 ユエは生まれたときから先祖返りの魔力を持っていた。子供の時に力を目覚めてからそこから魔法は常にユエと共にあった。自分と同じ吸血鬼族の中でも群を抜いており、ハジメ達と共に旅に出てからは魔法の鍛錬を怠ることもなく自分こそが最も魔法と魔力を持っているという自負がどこか心の中にあった。

 

 旅の中で様々な敵がいた。しかし自分の魔力が活路を見出したことがあり、だからこそこの仲間内では最も『魔法』に関して譲れぬ思いとプライドがあった。

 

 しかし今清水の魔法を見てそのプライドは粉々に砕け散った。何物にも負けない確かなものが崩れていくのがユエの中にあった。

 

 清水に聞いた。どうして龍の形をしているのかと

 

『そりゃ…龍ってカッコイイからな。なんかそんなものをオレもできないかなって思ったんだ」

 

 なるほど、龍に憧れる気持ちは分かる。ユエ自身竜に思い入れがある。

 

 清水に聞いた。どうしてその魔法を作ろうとしたのか

 

『…俺の取柄は闇魔法しかない。だったら何か一つでも切り札がほしかった」

 

 なるほど、魔法の中でも切り札を作ろうとするのはなにもおかしくない。実際自分の魔法『五天龍』も切り札のうちの一つだ。

 しかし竜の形をした魔法とはユエ自身の魔法適正と研鑽、そして何よりも神代魔法『重力魔法』を使ってようやくできたものだ。それを今まで魔法なんてものに触れたことさえなかった少年がたった数か月でできてしまった!

 

「私は…侮っていた」

 

 先の魔人族との交戦なんてものがその一例だろう。ユエに怪我はなかった。力量なんて比べる事さえ哀れなほど彼らと自分では格が違った。だから慢心していた。世界の実力者はそんな物だろうとどこかで無意識で決めつけていた

 

「…負けない」

 

 誇りは打ち砕かれプライドはずたずたに引き裂かれた。だがユエの目には力が宿っていた。溢れる気力がユエに力を与えていた。

 

 清水に惜しみない称賛とありったけの感謝をユエは送る。

 

 清水の魔法が無ければ自分はどこかで慢心してこの世界で最も強いなどと言うバカげた自惚れを抱いていたかもしれなかった。そんな愚行は犯さない。まだまだ上を目指すと今度こそ気合を入れるのだ。

 

「すーーはーー …ん!」

 

 深呼吸を一回。肺に新鮮な空気を入れ先ほどまでの怒りを鎮静化させる。なら次にすべき目標を定めるべきだ。まずは…自分が何をできるのか、一つ一つ丁寧に魔法の事を知る事が始まりの一歩になる。

 

 

 王宮の秘蔵図書室へ向かうユエの足取りは力強く闘気に満ち溢れていた 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁコウスケ」

 

「なに清水」

 

「さっきユエさんがオレを見て鼻息荒くしていたけど…なんか怒らせちまったのか?」

 

「俺に女心なんて分かるわけないだろ」

 

「それもそうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇシアさん」

 

「?なんですか」

 

「私達…ちゃんと地球へ帰れるかな」

 

 王宮にあるサロン。そこでシアが園部優花とお茶会をしていた時だった。先ほどまで和やかに話をしていたのだが、話題が無くなって紅茶を飲んでいた時に優花が漏らしたのだ。

 

 シアが優花と会ったのは偶々で以前わずかに面識があっただけなのだが、優花の方からお茶に誘ってきたので快く承諾し話を咲かせていたのだ。

 

「問題い無しですぅ。優花さんはちゃんと故郷に帰れますよ」

 

「そっか。ゴメンね、いきなり暗いこと言っちゃって」

 

「いえいえ。不安を漏らしたくなる時は誰かってありますから、…もしよかったら聞きますよ?」

 

 シアの言葉で元気が出たのか優花の顔が明るくなった気がした。もしかしたら誰かに不安を聞いてほしかったのでは?だから自分をお茶に誘ったのだろうとシアは考えた。その考えも優花の様子から見るとどうやらあっているみたいだった。

 

「なら…私のお母さんとお父さん、大丈夫かな」

 

「ご両親ですか」

 

「うん、私は、ほらこの通り大丈夫だけど、お父さんとお母さんが私を心配して体を壊していないかなって思っちゃうんだ」

 

 遠い目をし故郷に居る両親を思い返す優花。そんな優花にシアはピンとうさ耳を立てた。

 

(なるほど、心配事の大本はご両親だったんですね~)

 

 園部優花と言う少女が心優しい少女だというのは先ほどの雑談で分かったシアだ。そんな優花を育てた両親がどんな人たちなのか察するのはたやすい事だった。

 

 目の前で両親の事に心配する少女がいるのならシアは放って置くつもりなど毛頭ない。気休めでも何でもこの少女の不安を取り除くのが先決だ。

 

「なら占ってみますか?」

 

「占い?」

 

「はい、私これでも天職が『占術師』なんですぅ。だから今優花さんのご両親がどうしているのかをうらなってあげますぅ」

 

「本当!?ありがとうシアさん!」

 

「ふっふっふ~お礼を言うのはまだ早いですぅ~」

 

 優花から感謝され自慢げに胸を前に出すシアだったが内心冷や汗ものだった。何故なら占いなんて物は同族の間で遊びやっていたのを最後にずっとやっていなかったのだ。

 

 むしろ

 

(やばいですぅ!つい今思い出した設定を話しちゃったですぅ!)

 

 天職なんてものに全く縁がなく忘れてさえいたのだ。ハジメ達と共に旅をして占いなんて物に頼る事なんてなく遊びなんてユエと買い物に出かけたりティオと雑談するなど占いに毛ほども触れてすらいなかったのだ。

 

(…でもここで、分からないなんて言うのは絶対に駄目!こうなりゃあやってやる!ですぅ!

 

 一発本番のアドリブ勝負。シアは腹に気合を込めるとズイっと優花に顔を近づけさせた。驚く優花にかまわず両手を優花の頬にそっと当て優花の瞳をのぞき込む。

 

「シ、シアさん!?」

 

「動かないでほしいですぅ、こうやって相手の瞳を見て占うのがハウリア流なんですぅ」

 

「そ、そそうなんだ!?」

 

 もちろん嘘だ。そもそも相手の目を見て何故遠くの人間の現状が分かるのか。嘘でたらめを言いながらも思考は優花に何を言うべきか模索する。

 

(優花さんのご両親は…この子の性格から考えれば善人なのは間違いないですぅ。なら…)

 

「うーん どうやらお父さんの方がちょっとダウンしているようです」

 

「お父さんが!?どんな感じなの!?大丈夫!?」

 

「むむむ、どうやら大丈夫ですね。そばにいる女の人…優花さんのお母さんが看病している様子を見るに問題はなさそうですぅ」

 

「本当に?」

 

「ですぅ。このうさ耳に誓ってあなたのご両親は大丈夫ですよ」

 

「…そっか よかった~」

 

 シアの真摯な言葉に安心したのかほっと息をつき机の上でぐてーっとなる優花。一方シアの方はこれまた内心でほっと溜息をついている。

 

(ふぅ これで問題はないですぅ。…もし仮に何かあったとしても香織さんが居れば並大抵の病気は治るから…)

 

 少しばかり後ろ暗い事を考えながらも優花を見るシア。目の端に光るものを少しばかり出して両親の無事に安堵している優花にシアは自分の父親と今は無き母親の事を思い出す。

 

「そう言えばシアさんのお父さんとお母さんは?」

 

「私のですぅか?母様は幼いころに病気で亡くなりました。父様は森で一族の皆と一緒に住んでいるですぅ」

 

 シアが遠い目をしていたのy通貨が感ず居たのか、話題に出してきたので素直に答えるシア。母親が無くなっていると聞き優花はしまったと慌てて謝った

 

「ご、ごめんなさいシアさん。私」

 

「いいんですよ。ちゃんと母様の事は心の整理がついていますから、だからそんなに悲しそうな顔をしないでください。女の子を悲しませるなんて母様が知ったら怒られちゃいますぅ」

 

 寂しくないかと言えばうそになる。現に海上の町『エリセン』にいたときはミュウの母親レミアと一緒にいたぐらいだ。しかしシアの中ではもう整理したこと。むしろ今気がかりなのは…

 

「うん…じゃあ、シアさんのお父さんは?一族の族長さんだったっけ」

 

「……で、すぅ」

 

「え?どうしたのその沈黙は?」

 

「な、なな何でもないですよ!それよりも優花さんの両親の話が聞きたいですぅ!何でも喫茶店を経営しているとか!?私これでも皆さんの料理当番をしているのでぜひいろいろ話を聞きたいですぅ!」

 

 慌てて話を変えるシア。そんなシアに驚きながらも律義に自分の両親や喫茶店の話をする優花。いきなりの話題返還にシアは申し訳なく感じながら性格が激変してしまった父親たちの事を思い出す

 

(ハジメさんたちのせいで父様達おかしくなってしまったんですよね…はぁ父様たち今頃何でどうしているのやら)

 

 こっそりと優花に気付かれないように溜息を吐くシアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜ…はぁ…ぜ…はぁ…南雲殿、まだ続けなければ」

 

「ん?話せるってことは余裕があるみたいだね。さ、後百セット頑張ろうか」

 

「さ、流石にこれ以上は…」

 

「おかしいな、弟子になりたいって言ったのはそっちだよね?なら死ぬ気での挑むのが筋って話でしょ?それとも…もしかして弟子になりたいってのは嘘だったのかな」

 

「……ぬぅぅうう!!確かにその通りじゃ!これしきの事で折れては職人の名折れ!皆の者文字通り死ぬ気で気張るぞい!」

 

 王都にある錬成師の工場にてハジメは筆頭錬成師ウォルペン達職人たちを鍛え上げていた。王都にある結界を修復する話になった時、自分の錬成を見てウォルペンたちが弟子にしてくれというのが話の発端だった。

 

 そこで、根気よく説得してきたウォルペン達に根負けしたのもあり纏めてハジメが錬成の能力を見ているのだ。

 

 ウォルペンたちに出した課題は『自分の魔力の底をついてでも錬成をし続けろ』それだけだった。しかしその事だけを何より徹底的にやらせていたのだ。

 

「やっているのぉハジメ」

 

「ティオさんギブギブギブ!!しまってる!首が締まってる!?」

 

「ティオ?どうしたの…おまけにソレ」

 

「いやなに、お主が錬成を誰かに教えているのが気になっての。ちょっと様子を見に来たのじゃ」

 

「ティオさん胸が当たってるって!…うごぉ!?ググッ!これだから巨乳キャラって奴は!!?…ぐへっ!っ!??…………」

 

 後ろから声をかけてきたのはティオだった。こんな場所に来るのは珍しいなと思いつつ視線をウォルペンたちに戻すハジメ。ティオにヘッドロックを掛けられて泡を吹いているコウスケは取りあえず放置することにした。大方コウスケが何か言ったのだろう。

 

「ふむやっとで黙ったか。やはり耐久力は恐ろしい男じゃのコウスケは」

 

「…一応聞くけどコウスケ何かしたの」

 

「この前失礼なことを言われての。その仕返しじゃ」

 

「さいですか」

 

 やっぱりなーと思いつつ、後で香織に見せてみようと思考の端っこで考えながらもウォルペンたちの錬成を観察する。ティオはそんなハジメの様子にふむと首を傾げ話を聞いてみることにした。もちろんコウスケは放置だ。

 

「で、どうして教えているのじゃ?」

 

「うん?…そうだね。今後何が起きるかわからないから戦力を増やしたいと思っただけ」

 

 確かにエヒトが手を出してきたことを考えるとできることはしてい置いた方が良いだろう。しかしそれにしてはハジメの様子がどこかティオにはおかしく感じた。

 

「本当にそれだけかの?」

 

「あはは…ティオは鋭いね」

 

 観念したかのようにハジメが肩をすくめると遠い昔の事を思い出しながら話し始めた。

 

「なんていうのかな。彼らを見ていたらふと思ったんだ」

 

「なにをじゃ?」

 

「もし僕が奈落に落ちなかった時、どうしていたのかなって」

 

 もし奈落に落ちなかったら。以前ティオに聞かれたときハジメは同じことを繰り返すと話した。しかしこうしてウォルペンたちと触れ合っていたら思ったのだ。

 

 もし、自分が奈落に落ちずに無事王都へ帰ってくることができたのなら 

 

「ほぅ…もしもの話じゃが、たしかに気になるのぉ お主が奈落に落ちた…つまりその時が運命の分かれ道ともいえる」

 

「うん。で、もし帰ってくることができたのなら、僕は彼らと一緒に錬成していたんだと思ったんだ」

 

 結局のところあの訓練の内容ではハジメが戦闘職に勝ることは一つもなかったし、レベルも能力も格段に上がることはなかった。

 だからハジメは考えたのだ。もし自分が奈落へ行かなかったのならウォルペンたちのもとで錬成のイロハを教えてもらう事になっていたのではないかと。

 

「だからまぁ、そんな事を考えていたら、IFの話だけど彼らが師匠になっていたかもしれないから、今ここで僕が教えてみるのも悪くないんじゃないかなって」

 

「ふむ、あり得た未来の師匠に教えるというのも中々面白いかもしれぬな」

 

「でしょ?」 

 

 悪戯っぽく笑うハジメは年相応の少年でティオは頬が緩むのを感じた。

 

「…実は相談があるのじゃが良いかのハジメ」

 

 だからこそ薄々感じていた事をハジメに話すことにした。ハジメが話してくれたのなら自分もまた話すのが仲間だろうとティオは思ったのだ。ハジメもティオからの相談とは珍しいので驚きながら聞くことにした。

 

「正直に聞くぞ。妾はお主の仲間として役に立っておるのか?」

 

「え?それって?」

 

 一瞬ポカンとした顔になるハジメ。しかしそれも仕方がなかった。ティオは仲間として十分に役に立ってるし助けられてもいる。それなのにどうしてと顔に出せば、ティオは僅かに苦笑して事情を話した。

 

「…前にコウスケに言われたのじゃ。『お前には取り柄が無い』と」

 

 実際にティオは悩んでいた。魔法ではユエに及ばず、守るという力はコウスケが圧倒的に上、腕力はそれなりにあるとは思えど、シアには劣っていた。そしてありとあらゆる面でハジメには届かない。

 

「香織は治癒術じゃから比べるのは違う。おまけに加わったほかの2人の事を考えると…」

 

「清水は状態異常の闇術師でノインは遠近物理魔法型…か」

 

「うむむ」

 

「でも、そこまで悩まなくてもいいんじゃないの?高度な魔法ができる人が多いだけでも戦力になるんだし」

 

 悩めるティオにハジメは当たり障りのない事を言うのだがそれでもティオの顔は晴れない。難しい問題を持ってきたなと伸びている親友に溜息を吐くとティオにしかできないことを考え始めた

 

(って言ってもティオにしかできないことなんて…)

 

「ティオ、君の変身は?」

 

 ティオは竜人族だ。初めて出会ったときも火山から脱出するときもティオは変身し竜になった。だが、ティオはその答えが出てくることを予測していたかのように、首を横に振る

 

「…駄目じゃ。アレを使うには広い場所と言う場所の制約が出てくる。いつでも出来るとは限らぬのじゃ」

 

「だよねぇー」

 

 確かに変身はティオだけができることだ。しかし竜になったティオは七メートルほどの巨体になる。あくまで野外で変身する事が前提であり狭い場所ではむしろその巨体が邪魔になる。迷宮の踏破がハジメたちの大きな目標となる以上あまりにも使いずらい。

 

(でもそれ以外になんて…変身は大きさがネックか、うーん…んん!?)

 

「ねぇティオ」

 

「何じゃハジメ」

 

「ちょっとした考えがあるんだけど…聞いてみない?」

 

 ティオのことを思い考えてふと思いつくハジメ。そしてあることをティオに提案するその顔はやっぱり年相応の少年だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが白崎がコウスケを疑った原因か」

 

「疑ったって言うと、違うんだけど…疑問に思ったが正しいかな」

 

 王宮の香織に当てられている客室で清水と香織はこれまでの話をしていた。話題は丁度メルジーネ遺跡の事を話し終えコウスケに事についてだった。

 

「でもおかしいとは思わない清水君。だってコウスケさん光輝くんの事知らないってそぶりしているのに召喚されたとき光輝くんのふりをしていたんだよ。全く似てなかったけど」

 

「確かに考えてみればおかしいよな。知らない人間のふりなんてできるはずないもんな。似てなかったけど」

 

 お互い最初に召喚された日を思い出す。あまりにもお粗末だった光輝のふりをしたコウスケを思い出しどちらともなく笑いあう。

 

「種を明かせばオレ達を元にした小説なんて物を知っているからっていう想像もつかないもんだったけどな」

 

 肩をすくめて苦笑する清水。原作なんてものがあるとは未だに驚きものだがどこか納得いくのもまた一つ。やれやれと思いつつさて次はオルクス迷宮でコウスケが助けに来た時の事でも聞こうかしたところで香織がじっと見つめているのに気が付いた。

 

「なんだ?じっと見たところで何もでないぞ」

 

 今更美少女に照れるわけでもない清水は何しているんだろうなと思いながら聞けば香織は気を悪くしてしまったと思ったのか慌ててた様子で説明した

 

「えっと、清水君変わったなと思って、じっと見ててごめんね」

 

「…別にいいけど、南雲以外の男にはすんなよ。もしかして気があるのか!って勘違いする馬鹿が量産されかねぇからな」

 

「それは大丈夫!ユエから惚れた人とそれ以外の異性とのやり取りを骨の髄まできっちり叩き込まれたから!」

 

「…今のこの現状については?」

 

「清水君は紳士だから」

 

「さいですか」

 

 なんとも奇妙な信頼だが大方コウスケに言われたのだろう、微妙な気持ちにはなりながらも今更香織に対して甘酸っぱいものを思う事もなくあるのはハジメの彼女でありこれから共に冒険する仲間という信頼だけだ。

 

「それで話を戻すけど清水君本当に変わったね」

 

「そうか? …そうかもな」

 

「そうだよ。前は…なんていうかずっと下を向いてたんだけど、今は真っ直ぐ前を見ている」

 

 確かに香織の言う通り召喚され…厳密にはあの時まではずっと俯いて生きてきた。ずっと自分は一人だと誰かに理解されないままなんだと絶望していた。

 

「アイツが居なければオレは死んでいた。でもアイツに命を引き上げられた。それにただ命を助けられたんじゃない。オレは救われたんだ」

 

 今でも思い出すあの涙に濡れたコウスケの顔。一人ではないと自分をだれよりも見てくれた清水にとってたった一人の勇者。

 

「…うん、やっぱり清水君良い顔をしている。コウスケさんの事が好きなんだね」

 

「よせよせいくらいった所でぇえ!?」

 

 香織の爆弾発言に思いっきり椅子から転げ落ちる清水。いくらなんでもそれは無かった。たとえ今の自分がなんか枯れているなとは感じていても

それだけは絶対になかった。いったい香織は何を考えているのだと見て見れば香織はきょとんとしていた。

 

「違うの?友達の事が好きになるってそんなにおかしいのかな」

 

「…あーそういう意味か。はいはい俺はあいつと一緒に入れて嬉しい。これで満足か?」

 

「そうだよね!友達と一緒なのは嬉しいもんね」

 

「はぁ…南雲の奴大変だな」

 

 香織が言っていたのは友情的なもので清水が危惧している物ではなかった。天然がいまだに抜けない香織に溜息をつくと天然娘に惚れられているハジメに同情する清水だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あったた…全くティオの奴」

 

 首をコキコキと鳴らしながら王都の中を歩くコウスケ。ティオの折檻から回復した後特にすることもないので町をふらふらと歩いていたのだ。

 

 町の中は今現在も復興の最中で壊れた建物の修繕に町の人たちは忙しく走り回っているという状況だった。

 

(……)

 

 しかして町の人々が憂鬱に項垂れているかと言うとそうでは無く、ある者は忙しくも快活にある者は頭を悩ませながらも苦笑しており人々は前を向いて生きている。

 

 復興をしている人たちは町の人が大勢だったがその中には騎士もいれば王都で働くもの、またハジメのクラスメイト達の姿もちらほら見かけた。

 

(…なんか面白くないな)

 

 コウスケの身体は『勇者天之河光輝』なので見つかると騒がれるかもしれなかった。そうなると非常に厄介でありストレスが一気に溜まってしまうので気配を薄くし誰にも気づかれること行動していたのだ。

 

 誰にも気づかれない。だから目の前で行われている復興や町の人々の生活がどこか遠くに感じていた。まるでブラウン管の向こうの世界の様な映像だけの世界、自分とは全く持って関わり合いのない世界。そのように感じてしまっていた

 

「はぁ…帰るか」

 

 ここは自分の居場所ではない。急に何もかもがつまらなく感じたコウスケはさっさと王宮に帰ることした。王宮に帰っても何かが変わるわけではないのだが、居心地の悪いこの場所よりはいいだろうと考えさて歩き出したその時

 

「そこにいるのは…コウスケさん?」

 

 どこか懐かしい声がした。この王都で知り合いは居ない筈。しかしその声が気になったので周りを見渡せば、一人の青年がこちらを驚いた顔で見ていた。

 端正な顔つきでどこか人の良さそうなその顔の青年はコウスケの傍まで歩みる寄ると一層顔を輝かせた。

 

 その顔にコウスケは見覚えがあった。以前、以来の中で救助し、その後自分の夢をあきらめずに冒険者になった青年

 

「君は…ウィル?」

 

「はい!お久しぶりですねコウスケさん」

 

 その青年はコウスケに冒険者になると言ったウィル・クデタだった。

 

 

 

 

 

 

「まさかここで出会えるなんて思ってもみませんでした」

 

「そりゃこっちもだ」

 

 冒険者ギルドの酒場兼食事処の隅でコウスケとウィルは簡単に食事をしていた。再会した後取りあえずどこか店に入ろうという話になったので

一緒に昼食を取る流れになったのだ。

 

「ウィルはどうしてここに?」

 

 温いエールで再会の乾杯した後、運ばれてきた料理を食べながらコウスケはウィルがここにいる理由を聞く。

 

「コウスケさんからの依頼ですよ。メルド団長に剣を渡してくれっていう」

 

「あ~そう言えばそんな事頼んだな。その様子だと渡してくれたみたいだな。ありがとうウィル」

 

 もしメルドがノイントと戦闘することになっても生き延びれるように身体強化を付与された剣を渡してくれとウィルに頼んだのだ。清水のおかげでその必要性は薄れてしまったが何せよ依頼を完遂してくれたことに感謝するコウスケ

 

「いえいえこっちも王都に一度は来てみたかったのですから何も問題はありませんよ」

 

 にこやかに問題ないと笑うウィルは実に気持ちがいい。先ほどまでの鬱屈した感情はどこか消え失せてしまった。

 

「しかし驚きましたよ。メルド団長に剣を渡した後、ここを拠点にしていたら魔人族や魔物が襲撃してくるんですから」

 

「はっはっは災難だったな。うん?ってことはあの時ウィルは…」

 

「町の中をひたすら走り回ってましたよ。まだまだ冒険者としては素人な私ですが何かできると思って……あぁなるほどコウスケさんがこの王都にいる理由はその関係でしたか」

 

「まぁそんなところだ」

 

 ふぅと息を吐きながらもすぐにコウスケが王都にいる理由に思いついたのか一人納得するウィル。どうやら洞察力の方は相変わらず 良いみたいだ。

 

 改めてウィルの格好を見るとまさに冒険者と言った装備品になってた。体には使い込まれたのか小さな切り傷が付いた革鎧を装備しておりウィルの手元には鞄が置かれている

 

「うん?これですか?中には回復薬などが入っています。もしもの時にすぐに使えるようにって」

 

 他にもウィル曰く今現在は必要最低限の軽装だが止まっている宿屋にはほかにも荷物があり寝袋や武器なども置いているらしい。

 

「町の中にまで完全に武装しているわけではありませんけどね。剣や弓などは宿に置いていますよ」

 

「弓!?ウィルって弓使えるの!?」

 

「どうやら適性があったみたいなので使えますよ。…最も矢代がかかりますのでそんなに無駄撃ちはできませんが…」

 

「ほぇ~」

 

 少々肩を落とすウィルだったがそれでもコウスケにとっては喜ばしい事だった。知り合いがどんどん成長していくのだ。自分の事の様にに喜ぶとはまさしくこの事だったのだろう。

 

「実家にいたときは何一つ不自由はしませんでしたから冒険者になると金銭事情がこんなにもつらくなるとは思いませんでしたよ」

 

 ウィル曰く何をするにもお金が掛かり懐がかなりカツカツになっているというのだ。宿に泊まるのも食事も、武器や装備品の補修や維持代、薬の補給。何もかもお金がないとひどくさもしいとか何とか。

 

「でも自分でなろうと思ったんですからこの苦労もまた良い経験なんですけどね」

 

 苦笑しながら話すウィルは苦労はしていても、悲しんでいる様子はない。自分の夢だった冒険者になったこの状況を楽しんでいるのだろう。それがコウスケにとってひどく羨ましかった。だからもっともっとウィルの話を聞きたかった。

 

「なぁなぁウィル 冒険の話を聞いてもいいか?」

 

「良いですけど…貴方が思うほど面白くはありませんよ?迷子探しや落し物の捜索、ゴブリン退治なんて失敗してしまいましたし」

 

「ゴブリン!?良いじゃ良いじゃん聞かせて!」

 

「…そうでした、約束…でしたね。分かりました。それではお話ししましょう!新人冒険者のありふれた物語を」

 

 微笑むウィルに身を乗り出しワクワクと期待するコウスケ。酒場の一角で新人冒険者の冒険譚がひっそりとはじまった。 

 

 

 

 

 

 

 

「そもそも青ランクの冒険者なんて下っ端ですからね。雑用しか回ってきませんでしたよ」

「あー青は最低ランクだったっけ」

「と言うのもありますけど、どうやら両親が裏で手を回していたみたいで危険な依頼は受けられなかったんです」

「我が子が心配で仕方ないって奴だな」

「心配してくれるのは嬉しいんですけどね…だからまずはフューレンから出る資金を稼ぐのがが私の最初の目標でしたね」

「最初のミッション!」

 

 

 

「依頼と言うのは情報が何より大切です。そんな大切なことを私は甘く見ていました」

「と言うと?」

「先ほどのゴブリンですが…数が多すぎたのです」

「うわぁ」

「一匹一匹だったら問題はなかったのですが、やはり数は脅威ですね。あの時は本当に死ぬかと思いました」

「戦争は数だよ兄貴ぃ!」

「??? ともかくどんな実力者でも数には勝てない。そしてちゃんと事前の準備を怠らない。当たり前の事ですけど身に沁みました」

 

 

 

 

 

 

「探すというのは簡単ではないのです」

「よくある話だな」

「どこで、なにを、どういう状況だったのか。…依頼者の話を組み合わせた結論が」

「が?」

「下水道の中でした…」

「わーお」

「下水って本当にひどい匂いがするんですね…匂いが体に染みついて泣きたくなりました」

「普段そんなところいかないからなおキツイ」

 

 

 

 

 

 

「野宿とは辛いものですね。火を絶やさず、かつすぐにでも起きれるような体の休め方、何をしても初めての経験です」

「一人だと何から何までしないといけないからな…そう言えば」

「?なんでしょうか」

「ウィルってずっと一人なのか?誰かとパーティーを組まないのか?」

「勿論考えましたが…」

「?」

「今はまだ一人で冒険をしたいんです。誰かと苦労を分かち合うのも魅力的ではあるのですが…どうにも迷惑をかけてしまうのではないかと考えて」

「そっか。ならともかくは言わないけど、気を付けるんだよ」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばコウスケさんは冒険者の仕事と言えば何を思い浮かべますか?」

「何だろ?やっぱり護衛とか討伐とかかな?」

「ですよね。私もそんな腕っぷしが必要な物ばかりだと思っていたんですが、実際は先ほど言った通り、雑用が結構あるんですよ」

「ほうほう」

「お陰で掃除に家事、料理に帳簿の計算、事務処理に弁論や交渉、値切りや客商売等々、命のやり取りとは無縁なものが多かったんです」

「…冒険者って体の良い便利屋なのか?」

「勿論、戦闘能力が必要な依頼もあります。ですが取りあえず引き受けてみようと片っ端等から選んだものがそういう雑多な事だったんです。おかげで今では緑ランクまで行きました」

「おお!?…緑ってどこぐらいのランクだっけ?」

「下から5番目で上から5番目。ちょうど真ん中です、最も私がそこまでの実績があるとは到底思えないんですが…」

「そんなことないじゃん!まだ冒険初めて数か月でそこまではいけないだろ!?凄いよウィル!こりゃ祝うっきゃねぇ!すいませーん一番高いお酒下さーい!!!」

「あはは…ともかくそんな感じでボチボチとやっています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでコウスケさん、話があるんです」

 

 ウィルの冒険を聞きながら食事をしお酒を飲み、話がひと段落した時だった。ウィルがいささか真剣な表情で話し始めた。コウスケも取りあえず緩んでいた顔を引き締める。話を促せばウィルがある物を取り出した。

 

 それは剣と呼ぶには刃渡りが小さい刃物だった。店売りの物と比べると刀身が肉厚でコウスケが好きそうな…実際好みの刃物だった。

 

「それは…俺が渡した山刀?」

 

「ええ、貴方が貸してくれたこの剣、今この時をもってあなたに返したいのです」

 

 差し出された山刀は以前確かにウィルへ貸したものだ。しかしそれは一流の冒険者となってから、と言うよりそもそもの話この山刀はウィルが冒険者となった記念に贈り物のつもりで渡したのだ。贈り物のつもりが返されるとなってはいささか悲しい。

 そんなコウスケの気持ちを察したのかウィルは静かに首を横に振った。

 

「コウスケさん。この剣を貸してくれたことはすごく感謝しています。私の勘違いでなければこれはあなたにとっては贈り物だったのかもしれません。でもこれは…この大切な贈り物にどうしても依存してしまうのです」

 

 山刀を鞘から僅かに取り出し刃紋を見るウィル。様々な思い出があるのかその目は静かだった。

 

「これがあるおかげで何度も危機から抜け出しました。先ほどのゴブリン退治も、護衛依頼の時も、盗賊に襲われたときも、…この王都で起こった戦いも、何もかもこの剣があったから私は生き延びることができました。…流石は錬成師南雲さんの物です。丈夫で錆びず刃こぼれもせず、手入れだって必要ないんです」

 

 パチンと刃を鞘に納め、机の上に静かに置くウィル。次に目を開けたときは迷いを吹っ切ったように爽やかだった。

 

「でもこれがある限り私はずっとあなたたちの好意に頼り切ってしまう。それだけは許せない。私がまたあなたたちに頼り切ってしまうのだけは私自身許せないんです。…ウルの町を救ってくれたあの時の様に」

 

 ウィル目に浮かぶのはウルの町の防衛戦だった。あの時自分も何かしようと動いてはいたものの、結局最後から最初までハジメ達に頼りきりだった。実力差があったから仕方がない、自分はただの一般人だ、言い訳はすぐに浮かんでくるものの結局は全てを任せっきりにしてしまった。

 

「だから私は今度こそ、貴方達に頼らず自分自身で成長し冒険をしてみたい。手探りでもいい、自分の力で。…駄目でしょうか」

 

「……そういう事なら、仕方ないか」

 

 折角の贈り物を返されるのは辛いものだが、ウィル自身が決めたのなら口を挟むのは野暮だ。コウスケはそう考え了承することにした。改めて受け取った山刀はコウスケが知っている以前よりも綺麗になっておりウィルがよほど大事に使っていたのが分かる。

 

「分かったよ。君がそう決めたんなら俺は何も言わない。君の人生は君だけの物なんだからな。…それじゃ今度こそウィル・クデタの今後を祝福して」

 

「コウスケさん、貴方の今後の旅の無事を祈って」

 

 酒場の一角。そこで異世界の奇妙な勇者と新人から抜け出した冒険者がカチンとお互いのグラスを鳴らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ。さぁこれが僕の錬成の結晶!僕の集大成!その目をしっかりと開けてみるがいい!出でよ!『フェルニル』!」

 

「「おおおおぉぉ~~!!」」

 

 王都郊外にてハジメはコウスケと清水に自分がコツコツと隠れて錬成していた乗り物、飛空艇を披露していた。これからの旅を考えた結果(あと浪漫)、ハジメのオタク知識をフル騒動してコツコツと準備をし、ついに作り上げたのだ。

 

 出てきた飛空艇にコウスケと清水は感激の声を出す。なにせ飛空艇なのだ。これで興奮しないものはオタクでもましてや男でもない。コウスケは感動でさっきからピョンピョン飛び跳ねており、清水は年相応の少年の様に顔を驚きで輝かせている。

 

「なぁなぁ南雲!見てきて良い!?探索してみたい!」

 

「どうぞどうぞ。自慢の一品だから心行くまでどうぞ」

 

「しゃあ!行くぞ清水!」

 

「よし来た!」

 

 叫び声をあげ飛空艇に駆け寄る二人にハジメは会心のドヤ顔になってしまう。高高と乗り込む二人を見送っているとリリアーナがそっと近づき話しかけてきた。ちなみにだがこの場には仲間たち以外にリリアーナとその護衛騎士並びに侍女が数名いる

 

「凄いですね…いつもあなたの錬成には驚かされてしまいます」

 

「ふふん。そんなに~褒めなくても~別に良いよ~」

 

 リリアーナの称賛の声に鼻が天狗になってしまうハジメ。実は先に見せた仲間の女性陣からはいささか生暖かい微妙な目で見られてしまっているのだ。外見にこだわりすぎてしまったからだろうか。それとも中身か。浪漫が分かってもらえなかったハジメは喜ばれたり驚かれるのは気分がとても良かった。

 

「でも乗せてもらってもいいんですか?」

 

「良いってば。樹海に行くついでなんだから。確か、王都侵攻の事で帝国と話し合わないといけないんだって?しなくてもいいとは思うんだけどなぁ」

 

「流石にそういう訳ではありません。ランデルが奮起していてもまだ十歳。国の舵取りが十全ではない以上、王国の事実上トップである私が出向く方が話が早いですから」

 

 決然と語るリリアーナにハジメはポリポリと頬を掻く。異世界の国事情と言うのはやはり色々と面倒があるらしい。溜息付きながらも横にいるまだ十四歳の少女にちょっとした助言を伝えることにする。

 

「本当にそれだけ?」

 

「それだけとは?」

 

「まだほかにあるんじゃないの、君自身が帝国に行かなければいけない理由が」

 

「っ!?…それは」

 

「まぁ僕がとやかくは言えないけどさ、ここにいるのは君の常識から斜め上にぶっ飛んでいる連中だから相談してみれば案外君の願い通りに事が運ぶかもしれないよ?例えばコウスケとか悩んで悩んで君を助けようとするだろうし」

 

「いいえ、これは私の問題ですから、コウスケさんや貴方達にこれ以上迷惑はかけれません」

 

「そっか」 

 

 案の定少しばかりカマをかけてみればリリアーナは目を泳がせる。気苦労が多いんだなとは思いつつ喋らないのなら、それはそれでしょうがないかと考えるハジメ。所で話題に出した親友は何をしているのかと携帯型交信石のスイッチをオンにした。

 

『おい見ろ清水! なんとトイレがあるぞ!』

『マジだトイレだ! しかもウォシュレット式!南雲は変態だな!』

『だろう?アイツの変態性は留まる事を知らねぇ!』

 

「何が変態だよ…」

 

 興奮で思考回路がおかしな方向に行ってるのか、何やら清水とコウスケの様子がおかしい。コウスケは元からだが清水はもっと落ち着いているキャラではなかったのか。もしかしたら清水のキャラ性をぶっ壊すほどに自分の錬成は完成されていたのか。

 ハジメがドヤ顔で阿呆なことを考えている横ではリリアーナとユエがシリアスな会話をしている

 

「…リリィ たとえ王女でも貴方は女の子。悩みは打ち明けた方が良い」

 

「…ユエさん」

 

「王女は民の事を考えなければいけない。でも自分の身を民のために捧げるのは良いとは思えない。私はそう考えている」

 

「…そうかもしれません。しかし王族として生まれた者の責任は重い。貴女ならその責任の重さは知っていますよね」

 

「ん。ちゃんと知ってる。知ってるからこそ言わせてもらう。『自由に生きるべき』だと」

 

 そう言えばユエは亡国の王女?女王?だったなとハジメが覚ろげながらもユエの出自を記憶の奥底から思い返していると突然、飛空艇がガタガタと揺れ始めた。

 

 何事!と目を向くハジメの手元から元凶どもの声が聞こえる

 

『操縦桿見っけ!行くぞ清水!あの地平線の果てに!』

『オイ揺れているぞコウスケ!ちゃんと飛べるのか!』

『俺に任せろ!…人間はな、いつまでも地球の重力に捕らわれちゃいけないんだよ!動け動けってんだよこのポンコツが!!』

 

「ポンコツじゃない!作り立てのほやほやだ!」

 

「南雲さん突っ込むのはそこじゃ無いと思います!?」

 

「…ん、相変わらずコウスケは手間がかかる」

 

 交信石から聞こえてくる声にずれたツッコミをするハジメにさらに突っ込むリリアーナ。そんなぐだぐだとした状況にシリアスだったのになーと思いながら溜息を吐くユエ。とりあえずユエは重力魔法を使い飛空艇を力ずくで押さえつける。上昇しようとする力と押さえつける力が拮抗しさらに飛空艇が揺れ始める

 

『エンストばっかしてんぞ!コウスケそれでも運転免許持ってんのか!?』

『馬鹿野郎誰かって最初はエンストは必ず起こすものなんだよ!くっそ動け!うごぉけぇえええええええええ!!!!』

 

「さぁあああせるかぁああああああああ!!!!!」

 

 コウスケの声に叫び声を返したハジメは猛然と飛空艇へとダッシュしていった。あとに残されたのは目の前で起きた珍騒動につかれたリリアーナとふぅっと溜息をついたユエ。飛空艇の中から聞こえる破壊音はこの際無視しておく

 

「…今なら格安の勇者…いる?」

 

「…えーっとクーリングオフが出来るのなら…」

 

 何となしに向き合いどちらともなく溜息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「声が聞こえたのだ」

 

 荒野にて男はぼそりと呟いた。小さくしかしはっきりと男は声に出した

 

「幻聴かもしれん。妄想と言えるのかもしれん。しかし私ははっきりと聞こえたのだ。このうさ耳で」

 

 頭の上からひょっこりとうさ耳を出す男。その名はカム・ハウリア。以前ハジメ達と出会い交流し鍛え上げ、ハジメたちの仲間であるシア・ハウリアの父親でありハウリア族の長だった。カムは目の前に積み上げられている大量の魔物たちの死骸の前で独白する

 

「『やっと解放された。これでもう俺は自由だ』と。もしかしたら別の言葉を言っていたかもしれん。あるいは何も言っていなかったかもしれん。だがあの声は…コウスケ殿の声だった」

 

 カムは声が聞こえたその時に備わった力を出しながら記憶を掘り返す。

 

 どこか不思議な少年だった。一族をさっそうと救い、帝国兵を一人残らず殺しつくし、明るく一族と交流しながらも人を殺すという事に悩みを抱えた少年の事を思い出す。

 

「あの声が聞こえたときから私は…いいや我らは力に目覚めた。何故だろうか」

 

 カムの言葉と共に体中から蒼い燐光があふれ出してくる。その蒼き光はハウリア族が知る由もない深い海の様な穏やかな蒼だった。

 

「状況を考えるのならば…コウスケさんが俺らに力を与えた…ってところでしょうかね」

 

 その言葉を出したのは何処からか現れた幼い少年だった。

 

「コウスケ殿の贈り物…ならこの力をどう使うべきか」

 

「カムよ。儂らに聞かんでもお主はもう決めておるのじゃろう?この力の使い道を」

 

 カムの言葉に答えたのは先ほどまで姿を見せなかった吹けば飛ぶような枯れ木の様な老人だった。

 

「そうだ。私はこの力をコウスケ殿のためではなく自分たちのために使おうと考えている。…フッ力を授かりながら恩人のためではなく自分たちのために使う。何とも恥知らずだな。皆もそう思うだろう」

 

 自嘲するカム。だがその言葉を嘲笑う者はいない。カムの周囲に音もなく集まったハウリア族たちに全員がカムと同じ気持ちだったのだ。

 

「皆、私はこれから馬鹿な事をしでかそうと思う。危険なことだ。皆は付いてこなくていい私が」

 

「そんな水臭い事を言わないでくださいよ長。思わず脳天に風穴を開けたくなります」

 

「バルの言う通りじゃ、あんまりアホな事を言うとつい首を切り落したくなるのぅ」

 

 物騒な少年と老人の物言いに思わず苦笑するカム。見渡せば一族全員が同じだと目で語っている。『一蓮托生』だと 

 

「そうか、皆私と同じ恥知らずか。では一緒に暴れて皆一緒にボスとコウスケ殿に怒られるとしよう」

 

 カムは背を向けまっすぐ歩いていく。その背に続くはカムと同じ淡く光る蒼き燐光を纏うハウリア族。 

 本来亜人は魔力を持つことはない、なら今自分たちが纏っているこの光は何だ。内から湧き出るこの闘志は、溢れんばかりの気力は。

 

 本来考えなければいけないこの異常事態をハウリア族は考えない。ただ自分たちが知る少年の贈り物だと信じているからだ。

 獲物を携えあふれ出る燐光…『闘気』を身にまといながらカムはしっかりと宣言した

 

 

「行こう帝国へ。我らが同族たちを一人残らず救いに行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




帝国が終わってから第5章が終わるのでしたー

取りあえずユエとティオの強化フラグ完了っと
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