ありふれた勇者の物語 【完結】   作:灰色の空

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ノリに乗ってるうちに投稿します




救出と宣言と会談

 

 

「父様無事ですか!?どこか怪我は!?」

 

「全く持って問題ない。だからそう騒ぐな」

 

 鎖で身動きが取れないであろうカムをシアは駆け寄り声をかけるが、当のカムは苦笑しているだけで逆に大声を出すシアを諫めていた。

 

「それにしては結構な傷だらけなんだけど?」

 

「はっはっは この傷ですか?多少は傷ついていた方が奴らが油断すると思ったのですが…上手く行きませんね」

 

 傷だらけの身体に対してカムは朗らかに笑う。取りあえず鎖で雁字搦めは苦しいだろうとハジメが鎖を解こうと近づくとカムは首を横に振った

 

「これぐらい自分で解けます。…ふんっ!」

 

 気合一発 それだけでカムの身体を縛っていた極太の鎖は弾け飛んでしまった。恐らく帝国の中で最も強固で囚人をつなぎとめるものであろう凶悪な魔法がかかった鎖をカムはいともたやすく粉砕してしまったのだ。

 

「わざと捕まるというのはやはりストレスが溜まりますな。所で少年先ほどはすまなかったな。ボスと隣にいるから大丈夫だとは思っていたんだがどうしても…な」

 

「あ、ああ問題ないよ」

 

「それでボス?どうしてこちらへ」

 

 少々唖然としたハジメに朗らかに話すカムは以前と変わらない穏やか笑顔で話す。何とも言えない微妙な気持ちでここに来た経緯を話せばカムはとても困った顔をした。

 

「む…私を助けに、ですか ふぅむ…となるとパルの仕業か。すいませんボスどうやらお手数をおかけいたしました」

 

「それは問題ないよ。それよりさっさとここから出よう。見つかったら面倒事しか起き無さそうだし」

 

「そうしましょう。…ここは同族たちの怨嗟の声が良く聞こえます。長居するのはよろしくはないでしょう」

 

 カムの同意を得たハジメは今度こそ空間をつなぐ鍵『ゲートキー』を取り出す。驚くカムを押し込みながらハジメ達は他のハウリア族たちと合流するのだった。

 

 

 

 

 カムを救出し、ゲートを通ってハウリアやティオ達が待機している岩石地帯に空間転移して来たハジメ達は、ハウリア達の熱狂的な歓迎に出迎えられた。

 

「パルゥ…ボスを送り込んだのは貴様かぁ…?」

 

「ふっふふ 自分に留守番を任せた腹いせって奴ですよぉ長ぁ 文句があるのなら自分を置いて行く判断したご自身をお怨みくだせぇ」

 

「そうだそうだ!思わせぶりなことを言って俺達を置いて行きやがって!」

「どうせ一人でかっこつけようとしていたんだろ長!こっちはちゃんと見抜いてるっての!」

「水臭いわよ長、私たちは家族、苦労は分かち合う物。そんな事も忘れてしまったの?」

 

「ほぉ ひよっこ達が大きな口をたたくようになるとは…教育が必要かな?」

 

「ふぉっふぉっふぉ 心配していたと素直に言えぬとは…まだまだ若いのぅ」

 

 合流した後そう言いながら仲よく取っ組み合いをするカムと残されたハウリア族。そのまま数時間殴り合いをし始め落ち着いてからカムは姿勢を正しハジメ達に向き合った。

 

「ボス、よろしいですか?」

 

 頷くハジメにカムはきっぱりと宣言をした。

 

「私がおめおめと捕まった理由、何をしていたのか、話すことはあれど先に宣言をしておきます。ボス、我らハウリアは帝国に戦争を仕掛けます」

 

 カムの鋭い眼差しでなされた宣言に、その場の時が止まる。 その静寂を破ったのはシアだった。

 

「何を、何を言っているんですか、父様? 私の聞き間違いでしょうか? 今、私の家族が帝国と戦争をすると言ったように聞こえたんですが……」

 

「シア、聞き間違いではない。我等ハウリア族は、帝国に戦争を仕掛ける。確かにそう言った」

 

「ばっ、ばっ、馬鹿な事を言わないで下さいっ! 何を考えているのですかっ! 確かに、父様達は強くなりましたけど、たった百人とちょっとなんですよ? それで帝国と戦争? 血迷いましたか! 同族を奪われた恨みで、まともな判断も出来なくなったんですね!?」

 

「シア、そうではない。我等は正気だ。話を……」

 

「聞くウサミミを持ちません! 復讐でないなら、調子に乗ってるんですね? だったら、今すぐ武器を手に取って下さい! 帝国の前に私が相手になります。その伸びきった鼻っ柱を叩き折ってくれます!」

 

「シア…お前は我らを見てまだ分からないのか?お前の目は、うさ耳は一体どうしてしまったのだ」

 

「どうかしてしまったのは父様たちですぅ!」

 

 一触即発、シアは怒りの余り今にもドリュッケンをカムへと振り下ろそうとしていた。ドリュッケンを向けられたカムは武器を向けられたことではなく シア自身を見て悲しそうに顔を歪ませた。

 

 シアはそのカムを見て動揺するものの家族を助けるためだと力を腕に入れたところ不意打ち気味に背中に衝撃を受けた。たたらを踏みながら後ろを確認するシア。

 

「シア、まずはお父さんの話を聞いてあげて それから判断しても遅くはない」

 

「ユエさん!?」

 

 背中に飛びかかってきたもの、それはユエだった。ユエは器用に手をシアの頭の上に乗せ優しく丁寧に撫でる。

 

「家族を心配して止めようとする気持ちは立派 でもちゃんと話し合ってから。無理だと思ったら私も一緒に止めるから だから落ち着いてシア」

 

「…ユエさん」

 

 いつもは口数の少ないユエがシアを止めようとしている。その姿を見たシアはふっと力が抜けてしまった。親友が止めようとしているのだ。怒りで血が上った頭が冷静さを取り戻していく。

 

「…そうですね。すいません。ちょっと頭に血が上りました。もう大丈夫です。父様もごめんなさい」

 

「いや、謝る必要などない。こっちこそ、もう少し言葉に配慮すべきだったな。しかしシアお前は…」

 

「どうしました?」

 

「…何でもない」

 

 何かを言いかけたカムだったが頭を振ると先ほどの話をつづけた。

 

 カムたちはさらわれた亜人族を全てを助けようと行動していた。しかし帝国内のどこにいるか情報が全くないため陽動として数名が捕らわれている間にほかの潜入しているメンバーがあらかた内部情報を集めようとしていた。情報が集まり次第暗殺していき帝国主要人物たちをあらかた排除しようとしていた事、等々

 

「本当なら正面突破もできるんですが…そうしてしまうと同族たちを盾にされかねない。全員を救うためにはちまちまとしなければいけない。口惜しいですな」

 

 とはカムの弁だった。

  

 ハウリア族の話を聞いたハジメは積極的にではないにしろ手を貸すことを宣言。

 

「よろしいのですか?これは私たちの問題。ボスには…」

 

「手を貸すってもあくまで作戦とかその他の諸々だよ。あくまハウリア族の新しい門出のためのお手伝い。それこの作戦が上手くいったら」

 

「上手くいったら?」

 

「もう僕の事はボスと言わなくていい。君たちは誰かの下につく事無く自由になるんだ」

 

 その言葉にハウリア族全員が驚愕しハジメを凝視する。視線を向けられたハジメは困ったように笑う。

 

「我らは不必要だと…?」

 

「違うよ。このまま君たちにボスって言われ続けていたら僕はどこまでも増長するかもしれない。それはすごく嫌なんだ。それに君たちはもう僕が手を出さなくても生きていける。自由になれる力を経たんだ。だから軍人ごっこはこれでおしまい。帝国にいる亜人族を助けたら君たちは僕のもとから卒業ってことで…駄目かな」

 

 困ったように笑うハジメに涙を流すもの、感激するもの、寂しそうにするもの。様々だったが反対する声は一つもなかった。

 

「そうですか、寂しいものですがあなたの言葉なら我らは口をはさめません。…良い顔をされましたねボス。どこか心境の変化でもありましたか」

 

「ちょっと、ね」

 

 チラリとコウスケを見て含み笑いをするハジメにカムも意図を察して微笑む。ハジメの宣言は驚くものだったが恩人であるハジメが清々しい顔をしているのだ。最初に出会った時と比べて随分と優しい笑顔を浮かべるようになったと

 

(ボス…いいえハジメ殿。心が晴れるようなその笑顔こそがあなたの素顔なのでしょうな)

 

 ちょっぴり寂しくはなるものの心は晴れ晴れと。今一度カムは顔を引き締めて家族であるハウリアに向き直る

 

「聞いたか皆。我らはこれより帝国にて同族たちを助ける!そしてボスのもとから卒業をする!各時気を引き締めよ!ボスに…ハジメ殿たちに無様な所を見せるな!良いな皆!」

 

 

「「「「「「応っ!!!!」」」」」

 

 

 

 帝都から離れた岩石地帯に、闘志と感激と涙の混じった雄叫びが響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうしていきなりカムさんたちのボスをやめるって言ったんだ?」

 

「さっきカム…さんに話したことが6割で」

 

「6割?」

 

「残りの4割は清水のあの視線に耐えられなかった」

 

「…ラオウの様なムキムキマッチョのうさ耳にボスって…大豪院邪鬼の様な威圧感のある人からボスって…中二病極まりすぎだろ。ショウジキナイワー」

 

 

 

 

 

 

 

「で、貴方方はいったいどうしてこの帝都へやってきたのですか?」

 

 時刻は変わって次の日の昼、ハジメ達はごく普通に入国しリリアーナに会いに来ていた。リリアーナは帝国側との協議で忙しいのか言葉に少なからずの棘が入っていた。最もそれはハジメ達に対して親しみがあるからかもしれない

 

「まぁまぁリリアーナ姫。こっちはこっちで色々あってね。夜になったら色々片付くから…僕たちの事はあんまり気にしないで」

 

「気にしないでって…やっぱりこの帝国で騒動を起こすんですね… まぁ構いません。それよりもその用事は私にも秘密ですか」

 

 はぁととても大きなため息をついたリリアーナ。次に顔をあげたときはは暗に必要なら協力や口裏合わせもすると瞳で語っている。人の良い娘だと苦笑しながらコウスケは問題ないと告げた。

 

「問題ないよ。こっちの事は気にしないで流れに身を任せておけば大丈夫」

 

「その流れに何も知らずにいると大変な気がするのですが…分かりましたコウスケさん貴方を信じましょう」

 

 呆れと苦笑を入り混じった微笑むリリアーナはその後に帝国皇帝ガハルドに聖教教会の末路や狂った神の話が伝えられた事をハジメ達に説明した。

 

 リリアーナから、ある程度、帝国側との協議内容について聞いたところで部屋の扉がノックされた。どうやら時間切れらしい。案内役に従って、ハジメ達はガハルドが待つ応接室に向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 帝国皇帝ガハルド その男は灰色に近い銀の髪と、狼を思わせるような目、福越しでもわかる極限まで引き絞られた肉体を持つ野性的な男、実力主義の帝国のトップにふさわしい男だった。

 

(……弱いな)

 

 だがコウスケが感じたガルハドの実力はあまりにも貧弱だった。そっと触れたら消し飛んでしまうのではないか、ほんの少し殺意を込めてみたら失神してしまうのではないかと危惧してしまうぐらいにか弱く感じてしまった。

 

『過大評価していたのかもしれませんよマスター』

 

 とはリリアーナの横で座っているノインの言葉だ。そこまで力の差が激しいのか、そもそも自分はどこまで強くなっているのかイマイチ基準が分からないコウスケ。

 

『私が思う限り、この世界であなたの《敵》はいません』

 

『…さっきから人の心を読まないでくれる?』

 

『なら心の声を垂れ流しにしないでくださいマスター はっきりと聞こえます』

 

 念話でノインと会話をしながらも応接間の席に座るコウスケ。先ほどからガハルドはハジメに対してプレッシャーを投げかけているので

自分は蚊帳の外だなーと思っていたのだ。  

 

『ノイン』

 

『YESマイマスター リリアーナ様への威圧は私が防ぎますので』

 

 ガハルドの威圧はハジメ達にとっては全く持って意味のない行為だが、リリアーナにとってはキツイものがある。ノインに守ってやってほしいと一言声を掛ければノインはリリアーナを守るように席を近づけさせる。威圧から解放されたリリアーナはノインに向かって多少複雑そうな顔をするものの小さく頭を下げた。

 

 そうこうしている間にガハルドのハジメに対する詰問は続いていく

 

「リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前が、大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると……魔人族の軍を一蹴し、二ヶ月かかる道程を僅か二日足らずで走破する、そんなアーティファクトを。真か?」

 

「ああ」

 

「そして、そのアーティファクトを王国や帝国に供与する意思がないというのも?」

 

「ああ」

 

「ふん、一個人が、それだけの力を独占か……そんなことが許されると思っているのか?」

 

「誰の許しがいるんだ? 許さなかったとして、何が出来るんだ?」

 

『そもそもこの皇帝 どうして南雲様をどうにかできると考えているのでしょうか?分かりますかマスター』

『…自分と国の力でどうにかできるとか』

『リリアーナ姫から魔人族の軍を一瞬で葬ったと話を聞いたばかりですよ?自分の国もそうなるとは思わないのでしょうか…まさか痴呆?』

『やめなさいノイン。俺もそう思っているけど声に出してはいけません!』

 

 ガハルドの覇気の横ではコウスケとノインが念話でくだらない会話をしている。そんな中ますますガハルドの威圧感は増していきガハルドの背後にいる護衛達も殺気を出し始め、部屋の周囲に隠れている者たちの気配も薄まっていく

 

『いくら気配を薄めたところで存在がバレバレですけどねー、この護衛達も頭が湧いているんじゃないですか?実力差が分からないのですか?獣でも敵わないと知ったら逃げるんですよ?本当に何ででしょうねマスター』

 

『だーかーらー何故俺に聞くの!?どうせあれだろ強い奴がどうたらこうたらって奴じゃないの?』

 

『…それは一般的な見方ですよね。なら読者だった時あなたはどう思いましたかマスター』

 

 ハッとしてノインを見ればすまし顔でコウスケを見る。完全にこの場にいるすべての存在を無視している。

 

『欠けているんですよ。相手の実力を測るという観察眼がこの世界の人間…いいえ南雲様と出会う人間たちは推し量れないのです、考えることができないのです。だから敵わない筈の南雲様に敵意を向ける。皆一応に。なぜかは分かりますか』

『…つまりこう言いたいのか?今目の前にいる人間たちは只の舞台装置だって』

『ふふふ、さてどうでしょうか』

『お前なんでこんな事を』

 

「ふん、まぁいい南雲ハジメお前が愛想のねぇガキってことはよくわかった。でだ、そこの俺の話を全く持って聞いてねぇ勇者」

 

「………俺?」

 

「お前以外にどこに勇者がいるってんだ」

 

 ノイントの会話に集中しすぎたせいかガハルドから話を向けられたことに気が付くのが遅れたコウスケ。ノインはもう視線をこちらに向けてはいなかった。先ほどの質問の意図を聞こうと思ったが後でいいかとガハルドに向き合うコウスケ。

 

「リリアーナ姫からお前の話は聞いてはいる。なんでも神の思惑を召喚されたその日のうちに気づき南雲ハジメのサポートに回り暗躍している傑物だってな」

 

「…なんだそりゃ」

 

 おおよそ間違ってはいないその話の出どころであるリリアーナを見れば視線を泳がされてしまった。一体リリアーナの中で自分はどんな評価なのか若干気になるコウスケ。

 

「で、何でも防御魔法の使い手でウルの町に一人で結界を張っただとか攻められて消耗している王国の人間たちを蒼の光で全員回復させたとかどうとか」

 

「う、うーん?合ってはいるけどあんまり意味はなかったような…」

 

 ウルの町の結界は作ったは良いものの結果的に全く持って意味はなかったし王都での魔法はあくまで香織が主体だった。

 自分では特に大げさなことをやった覚えがないと思うコウスケ。そんな頬を掻いて困った様子のコウスケをガハルドはじろじろと無遠慮に見回すと鼻で笑った。

 

「とまぁ中々強力そうな奴だと思い見て見れば、だ …ふん、何とも一般人に武器を持たせたってだけの面白みのねぇつまらん奴だ」   

 

(…まぁ事実かな)

 

 なんともきつい言葉だとは思ったがコウスケからしてみれば事実その通りだ。戦いとは無縁のごく普通の一般人。それが何の因果か、この世界で何故か天之河光輝をやっている。コウスケにとってみればまさしくガハルドの言葉通りだった。それに先ほどガハルドを侮蔑していたのもある。

 ブーメランが返ってきたかなぁと軽く考えていたが

 

 しかし仲間達はそうではなさそうで

 

『『あ”』』

『……』

『ユエさん ヤリましょう。私がタマ行きます』

『ん、棒の方は任せて』

『千切ってすり潰したものを食わせてやらなければいけないのぅ』

『皇帝の怪我なら任せて!どんな傷でも私が治して見せるから!』

「…………っ」

 

『ちょっと!?なんでそんなに物騒なの君達!?』

 

 表面には出さないが一瞬で念話を全員につなげ物騒なことを計画し始める仲間たちと皇帝を睨む一名。少々ドン引きしながらも皇帝にそれとなく会話を続ける。

 

「ははは、まぁこの世界に召喚されるまでは本当にただの一般人でしたから、貴方から見ればつまらない男なのは仕方ないですよ」

 

「…しかも俺より強ぇ筈なのに低姿勢と来た。こんなもんが勇者か。こんなくだらない人間が世界を救うってのか。っは、興がそがれた。これで仕舞だ。まぁ、最低限、聞きたいことは聞けた……というより分かったからよしとしよう。ああ、そうだ。今夜、リリアーナ姫の歓迎パーティーを開く。是非、出席してくれ。姫と息子の婚約パーティーも兼ねているからな。じゃあな勇者にさせられちまった哀れな一般人君」

 

『オレが闇魔法で奴の精神をぶっ壊して魂魄魔法で治す。止めるなよ』

『止める訳ないだろ。拷問器具はすぐに作れるから肉体の方は任せて』

『…………』

『これが怒髪天を衝くって奴ですかぁ…父様ごめんなさい。シアは仲間の侮辱が許せません』

『シアそれは私も同じ。…まずはウザったい周りの連中を消し炭に』

『作戦は早まったとカムに伝えれば問題ないじゃろう。…これほどまでにはらわたが煮えくり返るのは久しぶりじゃのぅ』

『治して壊して治して壊して壊して治して、ざっと20週繰り返せばいいかな?…うーん優しすぎるかな?』

「…コウスケさんがどんな人か知りもしないで…っ」

 

『だから君たち怖すぎるってば!』

 

 表面上はすまし顔のはずなのに、頭の中では恐ろしい計画を立て始める仲間たち。考えているだけで行動に移さないのはまだ理性が保っているからか。今この場にガハルド皇帝が居ないことにホッとしたコウスケは話題の方向転換をすることにした。このまま放っておけば何をしでかしかわからない。特に女性陣。

 

「えーっと、リリアーナ婚約するって本当?」

 

「…え?あ、はい、確かに本当です。たとえ、狂った神の遊戯でも、魔人族が攻めてくれば戦わざるを得ません。我が国の王が亡くなり、その後継が未だ十歳と若く、国の舵取りが十全でない以上、同盟国との関係強化は必要なことです」

 

「…望まない相手でも結婚しなければいけない。政略結婚って奴か」

 

「ええ、どんなに嫌な相手でも結婚しなければいけない。それが王族の娘として王女として生まれた者の責務と言うものです」

 

 困った笑みで仕方ないと笑うリリアーナだったが、いくら王女とは言え憧れるものはある。一人の女の子としてロマンチックな恋に憧れがあるのは当然だった。異世界の女の子たちや友人である香織からガールズトークをすれば尚更。

 

 だが憧れは憧れ王族として果たさなければいけない責務はちゃんと理解している。理解しているからこそどうしても夢想してしまうのだ。

 

 そんな困ったような悲しんでいるような複雑そうな笑みを浮かべるリリアーナをコウスケは黙って見守るしかできなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

『仕方ありません。事が終わったら取りあえずあの皇帝のイチモツは引きちぎりましょう』

 

『『『『『『賛成!』』』』』』

 

『だから怖いって!!』

 

 

 

 

 

 

 




帝国編は残り二話ぐらいですかね
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