「ああ、帰りたいー」
現在、私は上司である帝国最強の異名を持つエスデスという名前からしてドSの将軍が北の遠征を行っている間貯めた書類整理等を不眠不休でやっているのだが全然、終わらない。
あの人どんだけの書類貯めてるんだよ。馬鹿なの?死ぬの?いや、あの人が死ぬ未来が見えない。
全く転生させて貰ったのはいいんだけど性格変わっちゃうのとまさかこんな世紀末な世界に転生しちゃうのと上司である義姉が地上最強のドSだったのが予想外だった。
「そうだ、エスデス将軍がいないしまたサボっちゃおう」
「サボってどうするつもりだ?」
「甘いもの食べに行きます。疲れたときの甘いものはめっちゃ美味しいんですよねー」
「本当にサボるのか?」
「当たり前ですよー。あのドSクレイジーブラックなエスデス将軍がいないんですよ。だったら行くしかないでしょ」
「ほう、いい度胸だ」
「へ?」
変に思い振り替えるとそこには白い軍服を着た水色の髪をした女性………え?え、え、エスデス将軍が目の前にいた。
とりあえず、冷や汗をかきながらも何事もなかったように元の姿勢に戻って書類仕事に戻った。
「おい、ミズチ」
「はい?エスデス将軍どうかなさいましたか?」
「お前さっきサボるとかなんとか言ってなかったか?」
「マッサカーソンナコトイウワケナイジャナイデスカー。アハハハハハ」
「そうか、それじゃあ追加の書類持ってきたぞフフフ」
無理やり作り笑いを浮かべる私にエスデス将軍はドSっけ混じりの楽しげに笑い声をあげながら新たなる大量の書類を私の机の上に置いてくる。
鬼、悪魔、外道と心のなかで叫びながらふと疑問に思ったことを不満そうな口調で尋ねる。
「いつの間に帰ってきたんですか?通達来てなかったんですけど」
「それはお前に伝えない方が帰ってきたときの反応見たときに面白いからに決まっているだろう」
「うわー性格悪」
「何か言ったか?」
「いえ、何でもないです。ところでいつもの三獣士の皆さんはどうしたんですか?帰ってきたのなら書類仕事を手伝って貰おうと思ったのに……」
三獣士、その実力は下手な将軍を上回ると言われているエスデス将軍直属の三人の部下のことである。一応、立場上私の方が上らしいのでいたらこの書類仕事の半分以上を北の遠征のご褒美にしてあげようと考えたのにいないと押し付……手伝って貰えないじゃん。
「アイツらなら別任務だ。少し大臣に相談されてな」
「へぇ、そうなんですか。北の遠征から帰ったあとなのに大変ですねぇ」
国を腐らせている原因であるオネスト大臣からの相談って所詮、邪魔者の始末とかそこら辺だろうな。
この国は良い行いをするより悪い行いをした方が報われやすいそんな国だからこの国の中枢を担っている大臣に取り繕った方がいいのは確実、実際に能力がない人でも取り繕って良い身分になった者もいるのも確かだしね。
まぁ、エスデス将軍はそんなこと関係なく、ただの利害関係の一致の観点から大臣と関わっているんだけど。
「それと帝都に私直属の帝具持ちの治安維持部隊を作ることになった。お前にそこの副隊長を任せようと思う」
「わかりました。それだけですか?」
まったくこの人は仕事ばかり持ってきてと適当に返事しながら作業を進めていく。
「それと私は北の遠征で疲れたし、久々に二人でなにか甘いものでも食べに行かないか?」
「やったーエスデスお姉ちゃん大好き」
私は先程とうってかわりエスデス将軍に笑顔を向ける。
ドSな義姉だがこういうところがあるから嫌いになれないと…いうかむしろ大好きだ。
実際にエスデス将軍は訓練中はドS過ぎて並大抵の者は死にかけるが休憩中などはしっかり休ませるし、きちんと働いたものにはきちんとした褒美を与える。
飴と鞭のようにそこら辺きちんとメリハリをつけるということが部下から慕われ、尚且つ強い軍隊を作れた理由なのだ。
ん?私は一応、エスデス将軍の右腕ってことで訓練には兵の直接参加しないし、大体が特典を貰ってるからそこんところは大丈夫だったと言いたいんだけどエスデス将軍が私専用の訓練を作ったりして軽く死にかけました。
目隠しでガチ武装した兵たちと実践的な組手させられたときは生きた心地しなかったよ。
しかも、途中で手加減しているとは言えエスデス将軍乱入してきたしね。
本人曰く全然余裕そうだから入った。後悔はしていしていないと宣っていた。
解せん。
「書類仕事が終わったら連れてってやるから頑張れ」
「その前に帰ってきたのなら手伝ってくださいよ。元々、これ私の仕事ではないんですよ。これなら私も北の遠征に連れてって貰った方が良かったですよ」
あまり人の命を奪うことはしたくないがこんなところで書類仕事をやるよりはましだと思ってしまう辺り私の思考もこの世界に染まりつつあるのかもしれないと思うが別に自責心があるわけではない。
ここは弱肉強食の世界、戦場で弱い心を見せた瞬間に死ぬ。この世界では慈悲もなく、情けもかけずにロボットのように目の前の敵の息の音を止めることが生き残ることができる。
「お前がいたら戦場の醍醐味を楽しむ前に敵を殲滅して終わってしまうだろう」
エスデス将軍のように戦場に楽しみを求める絶対的強者がたまにいるわけだが私はそれをよく思っていない。
楽しむということは良く言えば心に余裕があるということだが悪く言えば慢心してるということだ。
戦場では何が起きるか分からない。此方が圧倒的な力によって100%勝てると思っていても想定外のなにかが起こることによって覆ることだってある。
人の命はゲームみたいに何回やっても生き返れるわけではなく、一度きりの命だ。それを慢心によって失ってしまえば元も子もないだろう。
「私はエスデス将軍と違って戦場で楽しむ余裕なんてありませんからね。そんな貴族の狩の気分で戦場に赴いているといつ命を狩られてもおかしくありませんよ……」
私は普通の人間には捉えきれない瞬の速度でエスデス将軍の背後に移動して寸止めの手刀を入れて『こんな風にね……』と言いたかったが寸前のところで後ろにバク転をして回避する。
私はさっきまでいた場所に棘のように鋭い氷を出現させた不敵な笑みを浮かべているエスデス将軍を恨めしげに睨み付ける。
「ちょっとたまにはかっこつけさせてよ!しかも、その氷完全に殺す気だったよね。当たったら死んでたよね!!」
「フッ、当たり前だ。私の妹ならこのくらい避けきれないとな。それにしてもさっきの奇襲は良かったぞ。流石は戦場の『氷狼』と呼ばれてるだけはあるな。並みの兵なら接近を気づく間もなく死んでいただろう。それにしてもこうしていると久々にお前と手合わせしたくなった。よし訓練場に行くぞ」
「え?アノ~マダショルイシゴトがノコッテマスヨー」
「そのなの後でも良かろう。さっさと行くぞ」
エスデス将軍は私の首根っこを掴んで、運んでいくがこう気分が乗っているエスデス将軍を止められないことは義妹である私が何より知っている。そして、このあと味わうことになる訓練という名の地獄を思いながら調子を乗るのは控えようと思うのであった。
PS・訓練は厳しかったけど終った後にアイスを買ってくれたエスデスお姉ちゃんに惚れた。