転生したが世界と義姉がドS過ぎて辛い   作:さら@骸教

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エスデス将軍に恋人ができて辛い?

「…というわけでイェーガーズの補欠となったタツミだ」

 

「というわけでじゃないですよ!!私に残ってる書類仕事を無理矢理やらせた挙げ句に市民を拉致ってきたんてすか!?」

 

現在、私はセリューが回収したという帝具の使用候補を探す武闘大会で無理矢理市民を拉致ってきたことを誇らしく語るエスデス将軍に怒っていた。

 

「大丈夫だ。暮らしに不自由はさせないさ。それに部隊の補欠にするだけじゃない…感じたんだ。タツミは私の恋の相手にもなるとな」

 

あ、エスデス将軍の目が乙女チックになってる。これはマジで恋をしてるな。この人間型超級危険種に恋という感情は無縁だとは思っていたが一応、生殖活動という本能は生き残っていたらしい。

 

「じゃあ、なんで拘束してるんですか?」

 

「愛しくなったから無意識的にカチャリと」

 

呆れ気味で椅子に拘束されている少年、タツミを横目に聞くがエスデス将軍はキョトンとした表情でそう答えられて私は頭を抱えたのは言うまでもないことだろう。

 

「ペットじゃなく正式な恋人にしたいなら違いを出すために外されては?」

 

「ふむ、確かにそうだな。外すか」

 

流石イェーガーズの良心、ランだ。エスデス将軍を瞬時に諭すとは…とりあえず、これからエスデス将軍の扱いはランに任せよう。取り扱い説明書はないが私よりうまく取り扱ってくれそうだし。

 

「そう言えばこのメンバーのなかで結婚してる者は?」

 

それ聞くのか、勿論、私はこの人生で恋する余裕なかったし、元々男だし結婚なんてもっての他でウェイブくんは普通に彼女いなさそうだし、クロメは歳的に結婚はないし、Dr.スタイリッシュは絶対ないと思うし、セリューも仕事一筋感があるから恋人いなそうだし、ランさんはモテそうだしいそうだな。次にボルスさんは…と思っているとボルスさんだけがそこで手を上げた。

 

まぁ、不思議なことではない。ボルスさんは見た目こそ怖いが中身はとても良い人だ。結婚しててもおかしくないだろう。あと、ウェイブとセリューはあからさまに驚くのはやめて差し上げろ。

 

「ボルスさん、そうなんですか!?」

 

「うん、結婚六年目、もう良くできた人で私にはもったいないくらい」

 

セリューの質問にマスク腰でもわかる頬をぽっと赤くしたボルスさんは照れを隠さずに答える。なんか一瞬、Dr.スタイリッシュみたいに喋り方がオカマっぽくなったところに吹き出しそうになったが誰もそこに突っ込まないので必死に堪える。

 

でも、良かった。ボルスさんには帰る場所があって…ボルスさんは帝都の焼却部隊出身、見せしめの為に罪人や疫病が流行って無実な村の人も生きながらにして焼き殺した経験を持っていることだろう。かつて首斬りザンクという一日に何十もの斬首刑を遂行した首斬り役人がいて、終いには首斬りを癖になってしまうほど狂ってしまった。斬首刑は一瞬だが焼却刑は一瞬では終わらない。要するに刑を執行している間ずっと苦しそうな悲鳴が聞こえるというわけだ。ボルスさんは優しい。その優しさ故に心が壊れそうになってしまうことだってあったはずだ。恐らく一人では狂ってしまっていたのかもしれない。でも、その大切な人がいるからこそボルスさんはそんなことをさせられても平気なのだろうと思う。

 

「ボルスさんは良い奥さんを持ったんですね」

 

「うん、今度ミヅチちゃんにも紹介するね」

 

「はい、そのときはよろしくお願いしますね」

 

ボルスさんの奥さんどんな人だろう。ボルスさんみたいにマスクを被っていたりして仮面夫婦ならぬマスク夫婦……うん、今のはなかったことにしよう。私は何も思ってない。くそ滑ったとも思ってない。

 

「気に入って貰ったところ悪いんですが俺は宮仕えするする気は全然ないというか…」

 

「ふふっ、言いなりにならないところも染めがいがあるな」

 

「人の話聞いてくださいよっ!!」

 

タツミがそう困惑した表情で言うがエスデス将軍は微笑みを浮かべるだけで思わず彼もツッコミを入れる。

 

「とりあえず、同情します」

 

「いや、同情するなら助けてくださいよっ!!」

 

うん、私もいつもエスデス将軍にいつもツッコミ入れる係りだからね。それにしてもこのタツミという少年、なかなかやり手のツッコミですね。あ、待てよ、ここでタツミがイェーガーズに入ればエスデス将軍はタツミに夢中で機嫌がよくなる。そして、そのまま結婚して子作りに入って暫くエスデス将軍が育児に集中するから暫く職場に来なくなる。

 

「よし、貴女もイェーガーズの一員です。頑張りましょー!!」

 

「なんかさっきと態度が違くないですか!?」

 

「あはは、恐らく気のせいですよ」

 

私は()()()()()飛びきりの笑顔で会話をしていると帝国の調査員によってイェーガーズの会議室の扉が開かれた。

 

「エスデス様、ご命令にあったギョガン湖の周辺の調査が終わりました…」

 

「…このタイミング、ちょうどいいな。お前たち初の大きな仕事だぞ」

 

お、皆の目線が変わったな。ちょっと頼りなかったウェイブですら頼りがいのある目線に変わっている。さて、これで皆の本当の実力が見えるわけか。少し楽しみではあるな。あのときは余興でしかなかったから皆も本当の実力を出せなかっただろうし。

 

「ギョガン湖に山賊の砦が出来たのは知っているな」

 

「勿論です。帝都近郊における悪人たちの駆け込み寺…苦々しく思っていました。」

 

「うむ、ナイトレイドなど居場所が掴めない相手は後回しにしてまずは目に見える賊から潰していく」

 

こう見るとやっぱりエスデス将軍は優秀なんだよな。ただ、ドSだけが欠点であるだけでまぁ、そこも通してお付き合い頑張れと私は心の中で思っているとボルスさんが手をあげて質問する。

 

「敵が降伏してきたらどうします?」

 

「降服は弱者の行為……そして、弱者は淘汰されるのが世の常だ」

 

「まぁ、有益な情報を持っていなそうですし、どうせ捕まえても死刑になると思われるような奴等ばっかなので殺してしまっても構いませんよ」

 

「あはっ…あははっ、悪を有無を言わさず皆殺しに出来るなんて……私……この部隊に入って良かったです」

 

それを聞いてセリューは笑い声をあげながら満面の笑みを浮かべる。正直私には何を言っているか分からないがとりあえず、異常であることは分かる。彼女は元々、帝都警備隊であった父親を悪人に殺されたことによって悪を憎み正義に狂っている。

 

悪とはなんだろうか?正義の反対が悪なのだろうか?いや、正義の反対は私は別の正義だと思っている。悪人は必ずしも自分の行動を悪と感じて行動しているだろうか。人は悪どい行為でも自分を正当化、つまり、その行為を正義と見なすことによって悪事を働いているんだと思う。だから、本来悪と言うものは存在しない。自分の正義とは異なる正義を悪と読んでいるだけだ。憎しみに果てはない。いずれ、彼女の正義は彼女に仇なす正義を食らいつくしてしまうだろう。

 

セリューにはそんな危うさを感じる。他人なら放っておくがもうセリューはイェーガーズの仲間だ。後々、それを直していく必要性があるだろう。私のためにも彼女自身の為にもね。

 

「それでは出撃!行くぞタツミ」

 

「え……俺も?」

 

「補欠として皆の動きを見ておくのはいいことだぞ」

 

「ええ、動きを見ていくことによって新たなことの気づきになるかもしれませんしね。見てて損はないと思いますよ」

 

「まぁ、見た動きを完全にコピーをするお前にとっては絶対損なんてないがな」

 

「まぁ、そうですね」

 

そう私は一度見た動きならコピーできてしまうチート能力を持っている。だが、このチート能力を持ってしてもエスデス将軍はその動きに簡単に対応してしまうため模擬戦で闘い勝つ確率は五分五分である。お前が言うなと思われそうだが言わせて欲しい。そんなのチートや。チーターや。兎に角、頑張るかぁ死なないように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は現在、エスデスと何故か手を繋ぎながらイェーガーズの戦いぶりを見ていた。

 

ここに連れてこられた時は俺がナイトレイドに所属していることがバレたかと思ったがただのイェーガーズの勧誘で補欠としてエスデス以外のイェーガーズのメンバーの戦いぶりをじっくりと観察していた。

 

イェーガーズの面々は誰もが物凄い実力者だと言うことが分かるがその中でも水色の長い髪をポニーテールにしたTシャツ、ハーフパンツとラフな格好に軍服の上着を腰に巻いたエスデスの妹である女性、ミヅチの実力は圧倒的だった。

 

刀を使用しながらも敵の死体を盾にしたり、相手の武器を奪って投擲次々に敵を倒していくその戦いぶりはまるで草食動物を狩る狼のように正確無比で弱肉強食を体現していた。

 

「すげぇ……」

 

「ミヅチの奴、かなり手加減してるな」

 

「え?」

 

エスデスの声にあれで全力じゃないのかと俺は疑問の声を出してエスデス将軍の方を見ると妹のことを誇らしく思っているのかかなり自慢気そうな表情で説明してくれる。

 

「イェーガーズのメンバーの実力を見たいからいつもの戦闘スタイルではなく、帝具を使わずに細かな戦闘に動きを見させる戦闘スタイルになっている。タツミ、ミヅチの動きをよく見とけよ」

 

「…ちなみに本気を出したらどうなるんですか?」

 

「ああ、アイツが本気を出せば単純な殲滅になる。模擬戦争訓練をやったときによく聞くのだが大半の者がミヅチが攻めてきたのを理解するより先に前に死を理解するらしい。気配と殺気を消して何処から途もなく殺しにかかってくる。どちらかと言うと暗殺者のそれに近いがそれより問題なのがミヅチの私をも凌ぐ身体能力と野生だな」

 

「野生?」

 

「ああ、ミヅチは視覚、嗅覚と聴覚、危機察知能力などが人並みを優に越えている。ミヅチが持っている見た動きを完全にコピーする能力もそれが相まってだろう。まぁ、要するにミヅチは人間の域を超えた人型超級危険種って言っても変わりない。何せ私と互角の実力を持っているんだからな」

 

ナイトレイドのボスであって元将軍であるナジェンダからエスデスよりも厄介な相手になる可能性もあると聞いていたがエスデスから聞く限りかなりの実力者だと言うことがわかる。だが、話してみた感じボスが言った通りエスデスよりはかなりまともそうな人だ。ってかなんだか俺と同じように苦労人の臭いがしたし。

 

「タツミ、お前は私が育てる。タツミの潜在能力を見るに…タツミ次第だが上手くいけばミヅチや私と同じレベルになるかもしれんな」

 

「なんだか……いやに優しいんですね」

 

「実は私もこんな気持ちになるのははじめてなんだ。これが人を好きになると言うことか…悪くない」

 

もしかしたら、これは俺が説得して上手くいけば味方になってくれるかもしれない。今までの行いを考えると許せないが味方になってくれるのならかなり心強いし、味方への被害もかなり減るし、さらにミヅチさんだって仲間になってくれる確率だってある。でも、そんなに上手く行くわけないか……でも、試してみたいことには始まらない。

 

それなら今夜説得してやるとタツミは拳に力を入れて決意するのであった。

 

 

 

 

 

 

 


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