A『もしもし、B先輩ですか?』
B「なんだよ、Aか。どうした電車でも遅れてるのか?」
A『えー、それが風邪っぽいっので今日は休ませてもらおうと思いまして……』
B「はぁ!?休む!?今日は困るんだよねぇ。大事な取引先との打ち合わせもあるし。ていうかさぁ、風邪くらいで休むなんて図々しいと思わない?」
A『それなら明日休みます』
B「今日じゃなきゃいいって意味じゃねぇよ。お前、本当は仮病だろ?」
A『言いがかりはやめてください。会社に立て籠りますよ!』
B「こいよ。早くこいよ。そして仕事しろ」
A『そんな態度とっていいんですか?後悔しますよ?仕事中に病状が悪化して、会社に泊まり込みになってもいいっていうんですね?』
B「すげぇ喋るじゃん。お前、やっぱり嘘ついてるだろ?」
A『先輩にはガッカリしました。やっぱりうちの会社ってブラックなんですね』
B「気持ちはわかるけどよぉ、社会人なんだから風邪くらい薬を飲むとか、マスクつけるなりすればどうにかなるでしょ?」
A『でも従業員をいたわるのも会社の責務じゃないんですか?』
B「そんなこと俺に言わないでくれよ。大きい声じゃ言えないけど、俺だって本当は休みたいよ。でも世の中そんな甘くないのよ」
A『でも今時、休みも気軽に取れない会社なんて長続きしないと思うんですよ』
B「それなら来月、有給つけてやるから今日だけは来てくんないか?」
A『でも有給は国民の権利です。先輩が勝手につけるものではありません』
B「でもでもうるせぇ!お前はガキかッ!」
A『あれぇ、電波悪いなぁ……でもでも?』
B「もしもし、みたいに言うな!バカにしてんのか!」
A『えっ?今日の昼、何が食べたいって?う~ん、ハンバーグが食べたい!』
B「うん?彼女でもいんのか?」
A『違いますよ。母がお見舞いに来てくれたんです』
B「おっ、そうか。本当に風邪ひいてたんだな」
A『母さん、少し静かにして。今、コールセンターに苦情入れてるんだから』
B「なんで俺がコールセンター役なんだ?」
A『まあ、僕に合わせて下さい。母が最近買ったエアコンが不具合で動かなくなって、僕が代わりに苦情を入れるって約束してたんですよ』
B「そんな約束、今果たさなくてもいいだろ……」
A『まあまあ、すぐ終わるんで』
B「勝手に終わらせんな!まだ話は終わってねぇだろ!」
A『それならどうすれば僕は休めるんですか?直談判すればいいんですか?』
B「そうだ。それがいい」
A『もう僕は騙されません。そうやって会社に監禁する気ですね?』
B「お前は会社をなんだと思ってるんだ?」
A『だって先輩、以前言ってたじゃないですか。うちの会社は決まりごとが多くて、拘束されっぱなしで疲れるって』
B「拘束されるって言ったって、監禁するなんて思考にはならないだろ」
A『違いますよ!僕は紐で縛られたり、猿ぐつわをつけられたりするのが好きなんですよ!』
B「お前は拘束プレイが好きなんだな……」
A『じゃなきゃ変態的な会社なんかで働きたいなんて考えないです』
B「変態に言われたくねぇよ」
A『先輩は僕と同じ側の人間だと思ってたのに……』
B「物理的に縛られるのはゴメンだ」
A『わかりました』
B「おおっ!やっとわかってくれたか!それなら早く出社してこい!」
A『今日から縛られる人間から縛る人間になります』
B「へっ?」
A『アハハ、ちゃんとネクタイ緩めといて下さいね。今絞めに行きますから――』
B「ちょっ、あっ、電話切られた……ネクタイを絞めにくる?どういう意味だ?」