迷宮に色んな力を持って挑むのは間違ってない...と思う   作:水凪刹那

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第12話

絶叫を響かせ切り落とされたモンスターの首は建物の一角に突っ込んだ。

チラッと後ろを見れば、襲われていた少女...エルフのレフィーヤさん...は腹部を損傷していた。

 

「アルトリア君!?」

 

「なんでここに?」

 

ティオナさんが俺に気が付きティオネさんが何故ここにいるのかと聞いてくる

 

「闘技場でモンスターに襲われましてね。逃げ出したモンスターを追ってたらアイズに会いましてっとその前に」

 

【王の財宝】内からビンを取り出しそれをアイズに手渡すと

ティオナ達の前に出る

 

「アイズ、レフィーヤにこれを」

 

「ありがとう...アルトリアは?」

 

「まだあいつは死んでない...いや、あいつらはまだ全滅してない」

 

アイズに高級回復薬(ハイ・ポーション)を渡して切り落したモンスターに近く

足元から響く小さな地面の揺れに警戒心を上昇させる

その揺れは大きな鳴動に変わりつつ辺りの石畳が隆起した

 

「ほら、第2波が来るぞ!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

「まだ来るの!?」

 

後方から聞こえる叫びを皮切りに緑黄色の体が地面から出現する

先程よりも大きい個体が何体かいるがモンスター、その数6体、そのうち三体がアイズたちの方に、残りの三体がアルトリアを囲むように閉じた蕾を開花させ見下ろしてくる

 

「アイズ、ティオナ、ティオネ!そっちの三体任せた!」

 

「ちょ、1人で相手する気!?」

 

「無茶よ!1人で倒そうとなんてしないで!」

 

ティオナ達にの呼び掛けもモンスターが3人に攻撃を仕掛け始めたことにより聞こえなくなる

そして、アルトリア側のモンスターも臨戦態勢に入る

こちら側を狙うのは少し大きい個体だった

 

「.....来いよ...」

 

生暖かい息を頬に感じ、目を鋭くする

冷や汗を流しながら格上のモンスターを相手にする

瞬きするほどの一瞬でモンスターの包囲を抜け出しながらそのうちの1体に武器を振るうが

 

「(さっきまでの奴より硬い!?)斧じゃ斬れねぇ...」

 

斧モードの剣斧ではかすり傷程度しか与えることが出来ず優勢に持ち出すことの出来なかった。

 

「(残りの魔力は...持つか?いや、考えてる時間はない!)」

 

魔力残量を考えてる時間すら勿体無いと光剣モードに移行

すると、それまでかすり傷程度しか与えられなかったのにしっかりとした切断面が見える程度には傷を与えられた

傷を与えられた反撃とばかりにムチのようにしなる体がアルトリアを打ちすえる。

体重の乗った重い攻撃にギリギリガード吸収は間に合うも吹き飛ばされる。

建物に自分が突っ込む寸前に人影が視界に移り込む

一般人の獣人の少女が建物の影に隠れるように座り込んでいた

 

「(まずいまずいまずい!?)」

 

建物にめり込みながら痛む体にムチを打ちモンスターに突っ込む

だが大型の武器である剣斧ではモンスターに囲まれた狭い空間での取り回しは後手に回ってしまう

基本ガードで立ち回りつつ剣で斬るが踏み込みが甘いのか有効打にはならない

魔力放出を全力で発動させているため魔力がどんどん減っていくのが手に取るようにわかる

 

 

そうこうしていると近場から巨大な魔力の高まりを感じる

見ればレフィーヤが膨大な魔力を練り上げ魔法を発動させようとしていた

怪我をしながらも戦おうとするその意志に誇りを見てこんな所で停滞してるわけには行かない

魔力切れ?吹き飛ばされた時の傷?そんなもん

 

「怪我人が...女がッ!!意地見せてんだッ!!...ここでやらなきゃ何時やんだぁぁぁぁッ!!」

 

レフィーヤの練り上げる魔力には劣るがそれでもLv1の中では多すぎる程の魔力を練り1度周りのモンスターを弾く

一瞬だけでも動きを停められれば属性解放を叩き込もうとする

 

(オレ)の力の使い方が分かってないようだな》

 

突如頭に流れ込んできた声と情報に足を止めてしまう

それは今まで倉庫としてしか使ってこなかった魔法の()()()使()()()()()()を教えてくれるものだった。

 

《この程度の輩にやられるようでは、この先の試練。乗り越えられんぞ?まずはこやつ等で宝具...いや、魔法の肩慣らしをしろ》

 

立ち止まっていた俺を見て、それを好機と見たモンスター共は一斉に噛み付こうとその体を押し寄せるが...

 

「...誰に楯突いてんだ...雑種ッ!!

 

赤く染まる瞳と空中に生成された黄金の波紋

そこから次々と打ち出される武具により地面に縫い付けられるモンスター

雰囲気の変わり突如とした湧き上がるLv3クラスの魔力を発するアルトリア。

レフィーヤに向かっていたモンスターとその足止めをしていた

アイズ達も呆然としてしまう

 

先程までレフィーヤに向かっていたモンスターはその矛先をアルトリアに変える。

それに気がついたアイズがアルトリアの元に行こうとすれば

再びモンスターに波紋から発射された武器が刺さり動きを止める

と、そこでレフィーヤの魔法が完成した

 

「【吹雪け三度の厳冬───我が名はアールヴ】!」

 

拘束し動けないモンスターを一瞥してアルトリアも練り上げた魔力を赤雷と風に変える

吹き荒れる暴風に足場の石畳がめくれ上がり荒れ狂う雷によって粉砕される。

 

レフィーヤの魔法円が拡大して斜線上に三体を入れる

 

【ウィン・フィンブルヴェトル】!!

 

三条の吹雪によりモンスターを完全に凍結

それどころか魔法の余波により付近の街並みも氷に閉ざされた

 

「ナイス、レフィーヤ!」

「散々手を焼かせてくれたわね、このクソ花っ」

 

佇立する三体の氷の像に二人は滑らかに示し合わせたような動きで一糸乱れぬ回し蹴りを叩き込む

 

「おーい、アイズたーん」

それとほぼ同時に現れた子供を保護した神ロキから剣を渡された

アイズが残りの一体を斬り裂く

三体すべてが無数の氷の破片となり散っていく。

 

 

風と赤雷を纏った光剣モードの剣斧を構え【天の鎖】でモンスターを一纏めにする。

本来なら神性を持たぬものにはそこまで効果のないものだけど今はそこまできにせず行ける

 

【属性吸収...大解放】!!

 

1箇所にまとめた所へ剣を突き刺し属性吸収突き

突き刺されたところから発生した雷でモンスターの体が焼け嫌な匂いが沸き立つがそれをスルーし十字に二回斬りつけトドメとばかりに剣斧を叩きつけ魔力解放により剣先から荒れ狂う雷を放出させモンスターを大爆発させる

轟音と振動を響かせる攻撃は近場にいた者達の視線を集める

そして、その中心にいた緑黄色のモンスターは完全に消し飛び、それどころかその場に大穴が空いた

 

「ふぅ...こりゃダンジョン以外じゃ使えないな...っと」

 

黄金の波紋から取り出した宝具で穴を修復し後ろを向けば

仲間たちと検討を讃えあうアイズたちの姿と

それを見守る神ロキの姿が

空中に舞う氷の破片が5人の美少女を照らしていた

 

 

 

 

「いやー、助かったでアルたん」

 

俺のことに気がついた神ロキが笑顔で絡んでくる

それを回復薬(ポーション)を飲みながら対応する

 

「いえ、俺に出来ることをしただけですから...てか、アルたん?」

 

「せやで?アルトリアやからアルたんや。嫌か?」

 

あだ名について突っ込むとすこしさみしそうな顔をされたので

「そんなことは無い」

っと否定する

 

アイズ達は既に残りのモンスターを追って行ってしまい

(レフィーヤとかはまだ話したそうにしてたけどギルド職員に介護されてます)

ギルド職員による現場検証が開始されていた

俺と神ロキは途中まで一緒帰っていたが念の為俺も怪我がないか見ることとなった

ちなみにその時俺が倒した方のモンスターの魔石をロキに渡しておいた

 

 

 

 

 

現在夕暮れ時の『豊穣の女主人』にいた俺とヘスティア様いた

倒れたヘスティア様を迎えに行けば途中でシルさんにあって

彼女の勧めでここに運び込んだ

 

モンスターを逃がした犯人は未だに見つかっていない

だが、あの時聞いた声は女性のものだった

だが...

 

「(モンスターを逃がして何が目的...)」

 

結局、手段や目的は何一つとして判明していなかった

 

「それにしても助かりましたよシルさん」

 

「いえ、それにアルトリアさんが巻き込まれたのも私のせいで...」

 

「いやいや、どちらにしろ祭は見に行こうとしてたから巻き込まれたと思いますよ。それよりシルさんが怪我なくて良かった」

 

「アルトリアさん...」

 

ほんのりと頬を染めモジモジとするシルに

キョトンとするアルトリア。やがて、シルは頬を緩め柔らかく笑った

「それに...モンスターに向かっていくアルトリアさん...かっこよかったです」

 

そっと近づき耳元でそっと囁かれる言葉に目を見張る

 

「お店の方や手伝えと言われてしまったので失礼しますね」

 

「は、ハイ.....からかわれたのかな.....」

 

お互い頬を染め笑い合いやがてシルさんはミアさんに呼ばれて仕事に戻って行った

 

 

 

ヘスティア様の眠っている部屋に戻れば

月明かりに照らされて安らかに眠る姿が見える

神様から貰った武器は剣斧は財宝内にしまいナイフは腰に帯刀している

鞘ごとナイフを取り出せばそこに刻まれた【神聖文字】が見える

【ヘファイストス・ファミリア】のロゴマークを見て

神様が何をしていたのかは大体の予想が出来る

恐らくあそこで気絶したように寝てしまったの無理をしていたからなのだろう

普段はズボラで怠け者の神様なのに変なところで頑張る神様だ

 

「ヘスティア様の方こそあんまり無理しちゃダメですよ...でも、ありがとうございます...ヘスティア様」

 

横になって眠るヘスティアの手を取り感謝の言葉を告げる

 

月明かりが優しく二人を照らす中

「(これでボクとアルトリア君は両思いだ!!)」

 

ヘスティアは盛大な勘違いをした、この勘違いが解ける日は来るのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やれやれ...ようやく(オレ)の力がどんなものがわかったか』

 

『慢心の力は使い勝手が良すぎますッ!それに引き換え私のは...』

 

『そういったところで君たち二人の力は早々使われないと思うがね』

 

『お忘れですか?私のは既に使われました。それどころか1度も真価を発揮してないアナタはどうなのですか鋼鉄?』

 

『うぐぐ...言ってくれるじゃないか黒剣王』

 

『ええいッ!!(オレ)を無視するでない!』

 

『『やかましい(やかましいぞ)!金ピカ!』』

 

 

 

 

 

「ふふふっ...かっこよかったわよアルトリア」

 

摩天楼(バベル)の頂上

そこで今日1日のアルトリアの行動を見ていたフレイヤは

頬を染め街並みを見下ろしていた

 

「また遊びましょう──アルトリア」

 

 

怪しく笑う女神はそう言って闇に消えていった


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