新訳 収穫の十二月 [完結]   作:井上そんこう

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おまけ 作品解説

 

 原作はノベルゲーム。選択肢のない一本道ゲー。

 キャラが立っているし、コンセプトもいい。

 ただ、壊滅的に日本語が不自由で、支離滅裂。

 もったいない作品。

 

 そんなんで、どうにか作り直せないかなと、再構築したのがこの作品。

 とりあえず、おかしいところを直してみた。

 その上で、説明不足な点を補ってみた。

 さらに、自分っぽいとこを入れてみた。

 楽しんでもらえたでしょうか?

 

 具体的な変更点と理屈は

① 時代背景

 さすがに現代では通用しない。一族が町を支配しているとか、特殊な環境を出すには昭和の中頃まで戻さないとキツイ。館ものなら別だが・・・

 昭和も、あまり前過ぎると戦争ないしはその後遺症が絡んでくるので難しい。昭和50年前後が妥当。

 古い木造校舎などを出したいのは分かるが、現代だと廃校間際の過疎地の学校ぐらい。また、そうした場合、十和田家が町を支配し、国家家権力すら意に介さないという設定が弱くなる。過疎地じゃダメ。

 ちなみに、似たような雰囲気の「果てしなく青い、この空の下で…。」は、高度経済成長期、昭和40年(1965年)前後の話。

 また、1975年前後を舞台にすると、90年代後半に子供が主人公の話、現代で孫の話と3部作の構成も可能。

 

② 主人公がモテル理由

 たぶん、ここが一番重要。意味もなくモテルのは、厳禁。出来れば後天的な理由(主人公の努力している姿や村の習慣を無視できる存在に対するあこがれ)が好ましいが、今作は出会った瞬間から好きになるので、先天的な理由(幼馴染など)を採択。

 主人公の母親が、しろ様の一番新しい子供。つまり、主人公は、しろ様の孫。一方、十和田家は、しろ様の最初の子供の子孫とする。

 そうすれば、三人は、血で惹かれあうという形になる。

 また、母親のぶっとんだ性格も肯定される。さらに、十和田家が、この町の支配者になった理由にもなる。

 しろ様の子孫は女系で、主人公が初めての男の子という風にすれば、しろ様の固執する理由が補強される。

 瑞穂の好意は「憧れの東京」を主人公を通してみているで充分。

 

③ 多紙町に引っ越してきた理由

 原作では「父の商売に差し障る」という表現があるが、この小さな閉鎖的な田舎町に、自営業者が引っ越してくるのが無理な設定。

 ここは国家公務員の転勤という形にし、十和田家は、国家権力ですら、この閉鎖空間では意に介さないことを強調する。

 一方、原作では「子供たちは人間だ。みなこの町を離れていった」と、しろ様が語っているが、十和田家をこの町に残った『最初の子供』かつ『唯一の子供』の子孫、十和田雪。そして初めてこの町に帰ってきた『一番新しい子供』の子供、主人公という設定がこれで生きる。

 

④ 学年

 原作では、前半では高校3年と言っときながら、後半では来年は受験と言う。どっちやねん。

 しかし、高校三年生という設定ならば、大学受験の話が塵芥も出てこない。飲み屋の娘の早苗はまだしも、土地の有力者の跡取りである雪には、何かしらの説明が必要。

 また、メイン読者層は、大卒ないしは大卒を目指す層である。共感を得るためにも、進学希望としておくのが良策。

 そうすると、高校二年生で統一したい。

 

⑤ 金枝篇

 冒頭で金枝篇を出したにも関わらず、本文中にまったく反映されていない。要所要所で金枝篇になぞらえた話を織り込む必要がある。最終的に金枝篇と同じ結末を迎えるか、それを否定するかの選択。

 自分としては否定することを選択。

 それと、金枝篇の解釈が浅すぎる。文字通りの神殺しの話としてこの話に組み込まれているが、しろ様が語るように、本来は王殺しの話であり、権力の話を比喩的に語ったもの。

 この物語では、権力=支配。3人の力関係でそれを示すか、しろ様の目線で、王を気取っていたいたが、実は祭りが終われば殺される偽王(乞食)でしかなかったことに気づくかで、物語をまとめる。

 また、王を殺す祭りは、民俗学で言うところのハレ。せっかくの山間の閉鎖的な田舎町の設定なので、柳田民俗学を織り交ぜると高等テクニックをやってみた。今回は柳田の弟子の折口民俗学を採用。

 これにより、『稀人(来訪者)=神』という折口学と、『流浪の乞食(来訪者)=殺される偽神』という金枝篇を対比させ、金枝篇を否定しやすくさせることが可能。

 

⑥ 文章量の配分

 この作品は、しろ様と雪のダブルヒロイン。

 ならば、しろ様と雪の登場シーンは、それぞれ均等な分量でなければならない。原作の登場シーンでは圧倒的に分量が偏っており、しろ様が最初っからメインヒロインのよう。

 そのくせ本編では雪の描写が多く、雪がメインヒロイン扱い。

 これでは、読みづらい上に混乱する。

 当初は同じ比重で書き、主人公のどっちつかずな心情を表し、徐々にヒロインに傾いていく。分量は心情に比例する。

 

⑦ 名前

 名前には力がある。意味がある。それなりの名前をつけてあげるべき。

 また、雪が舞い散る描写が多いのに、『雪』という名前では、読んでるときに景色なのか人名なのか判断が難しくなる上に、韻を踏むような表現は文学的過ぎる。ギャルゲーやライトノベルには向かない。

 今回は「美雪」と名前を変え、しろ様の昔話に「深雪」「幸」という少女(ご先祖様)を配置して、名前に意味を持たせる。ちなみに「深雪」は実在の人物なので、物語りに厚みが出る。

 また、ヒロインの2人とも2音の「しろ」「ゆき」。差別化で「みゆき」と3音にするのが上策。

 主人公の名前も、紺野『柾木』は使いたくなかった。ハーレムアニメの始祖である天地無用の主人公の名前が『柾木』天地。トップクラスの使っちゃいけない名前。使うんだったら、何かネタを絡ませること。今回はエピローグに『柾木』の子供として『竜木』を出し、天地無用ファンもニヤリとさせる。

 狼の名前の「シロウ」も避けたほうがよかった。同ジャンルの最高峰Fateの主人公の名前。これに関しては改善する方法が思いつかなかった。

 作品内で名前(意味だけでなく音も)を差別化するのも大事だし、似たジャンルの主要な作品とは、バッティングは避けること。

 

 

⑦ 一人称の徹底

 原作だと、主人公が場面から離れた後のガールズトークで一人称と三人称が混在。どちらかを選択しなければならない。

 今回は一人称を徹底させる。

 つまり、視点は、主人公ただ一人に固定され、主人公の知りえない情報は、読者もまた知りえない。もしくは、ザッピング方式によって、複数の固定された視線が、別々の状況を読者に提示する。

 また、技術的なところとして、主人公は遠山瑞穂をセリフでは「遠山」と呼ぶが、本文では「瑞穂」と呼ぶ。正しくは「遠山」と書かねばならない。一人称の文章では、致命的なミス。

 しかし、「遠山」だと味気ないので、両方とも「瑞穂ちゃん」で通すのがライトノベル的。

 

⑧ 嘘を現実で固める

 聖地巡礼がもてはやされるように、昨今の作品は、モデルとなる地域や建物など、実在するものを取り込むことが多い。

 これは、作品にリアルティを持たせる効果がある。

 今回は大紙神社を三ツ鳥とし、三輪山の大神神社や秩父の三峰神社などと関連付け、『狼』信仰を補完する。

 また、地名以外は出来るだけ実在する名前を出す(北陸自動車道や運輸省など)

 

⑨ 対比の欠如

 しろ様と雪のダブルヒロインである。しかも、スタートラインが一緒である。ならば、それぞれ魅力の違う少女二人を常に、競争させねばならない。

 「⑥文章量の配分」でも触れたが、出会いの場面では、二人の価値は対等。それが物語の進行につれて、最終的に結ばれる雪に比重が移る。

 その比重の移し方が対比。同じような事件をそれぞれが体験するが、あらわれる結末がそれぞれ違う。雪のほうが主人公にとって、より好意的な反応とし、それが積み重なって比重が移る。

 また、あらわれる結末の違いは「キャラクターの差別化」に大きく依存する。

 差別化することで、対比が生まれる。

 特に、ギャルゲーやライトノベルは、ジェットコースターのようなもの。

 「プラス10」のキャラクターと「マイナス10」のキャラクターがいれば、20の落差を得られる。

 個人の内面の変化を表すときには、視線一つ、指先の動き一つの変化を丹念に描くことも有効だが、それは対象年齢高めの作品での技法。

 非エロ、10代中頃をマーケットにするならば、感情の落差ですら20でいい。

 逆に、非エロでも20歳以降をマーケットとするならば、丹念に描くことでキャラクターや感情の揺らぎを描けるが、その場合、もう少しエロか知的好奇心が必要。

 おそらく知的好奇心の部分を金枝篇が担うつもりだったのだろうが、「⑤金枝篇」で言ったように機能していない。

 個人的には、もう少しエロを入れたほうが手っ取り早かったなと反省。

 

 

 以上、9つの点を意識して改良しました。

 読後に気になることや、改善点があれば書き込んでください。

 もちろん、純粋な感想も大歓迎ですよ。

 

 では、また、次回作でお会いいたしましょう。

 ご愛読ありがとうございました。

 

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