新訳 収穫の十二月 [完結]   作:井上そんこう

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第一章 育苗の季節
1 雫


「あーん、するといい」

 入院事件の2ヵ月後、僕と美雪は世間で言うところの『バカップル』だった。少なくとも傍から見ればね。

 実際は、甘く味付けされた卵焼きが口元に迫りくるのに怯えている僕がいる。

 美雪の名誉のために言っておくが、美雪の料理の腕前は、けっして悪くはない。上品な味付けは、育ちの良さを十分に教えてくれる一品だ。

 ただどうしてか、漆塗りの箸。その黒光りする光沢から、銃口の金属めいた迫力を感じずにはいられないのだ。

 どうしたもんかな。善後策を探して周囲を見渡した。

 木造校舎に、木造の机と椅子。黙々と教室を暖めるダルマストーブの上には、金タライ。中のお湯はすでに熱湯。何本か牛乳瓶が突っ込まれているのもいつものことだ。

 善後策なんて、ありゃしない。

「どうした柾木? 君好みの味付けにした自負があるのだが」

「まずは摂取方法について取り決めたほうがいいと思うんだ。ぼくは」

「なるほど」

 狐色した卵焼きの焦げ目が少しだけ遠のき、視界がわずかに開けた。それでも、何かを思案する十和田美雪の真顔は、僕を見据えて動かない。

 全校生徒唯一の和服姿。初めて会った日の和服より、やや落ち着いた茜色で、本日の柄は牡丹の花。深紅の袖から伸びる腕は、白く艶かしい。

 多紙地方の産業を牛耳る大地主の一人娘からすれば、校則などないに等しい。それほどまでに十和田家の威光は絶大だ。

 そんな御令嬢の美雪が、なぜだか僕を好きになった。平々凡々とした僕をだ。

 興味を引くとしたら、僕が花の都『東京』からやって来たということぐらいだ。だが、美雪は、僕から醸し出される東京の匂いに憧れたわけではない。『運命だ』と言い切っている。

 僕も美雪を嫌いじゃない。純粋にきれいだしね。ただ、まぁ、なんというか、『バカップル』をやるのは恥ずかしいんですよ。個人的に。

 なにせ、教室中の視線が僕らに集まっている。あっちからもこっちからも、視線の十字砲火だ。

 軟弱者と罵られそうな僕のピュアでキャッチなハートでは、すぐ側の窓を蹴破って十二月の寒空へと飛び降りたくなっていく。

「そう。僕は立派な高校生であって、介助なしで一人で食べれるわけで・・・」

「そうか。雛鳥のようにだな」

 美雪は、僕を含む周囲の理解を置き去りにし、何度も頷いて真顔で確認してきた。

「口移しが良かったのだな」

「いただきます」

 ばくっ

 美雪が自分の口に入れようとしていた卵焼きに、身を乗り出して飛びついた。かわせみが魚を取るのと同じ早さだが、残念ながらそんなに優雅じゃない。

「君好みの味になっているかい?」

「・・・はい」

 美味しかった。

 美雪が、相顔を崩した。

 今までの美雪は、こんな顔をすることはなかったらしい。氷の女、クールビューティー、ハンサムガール。呼び方は何でもいいけど、感情を表立って見せることはなかったようだ。

「しかし、だ」

 美雪は、ゆっくりと僕の口元から漆塗りの箸を引き離した。

「作法を無視するのはいただけない。君への愛は無限に等しいが、礼を尽くすべきだとも思うのだ」

 美雪は、机に所狭しと埋め尽くしたお重に箸を伸ばし、煮物を自分の口に運ぶ。

 ただそれだけの所作なのに、どことなく風情がある。

「だいいち、食べ物を粗末にすると罰が当たるのだぞ」

 僕が口をつけた箸だが、美雪は躊躇わない。

 さすがに注意をしようとしたら、横から野次が入った。

「同じ箸なのに、少しも恥ずかしがらないとわ。きっと二人っきりの時は、あれやそれやをしてるに違いないね。そうに決まった。決まりでいいや」

「しっかし、旦那の方が頬を赤めてるのはどうなのかにゃー。というか、オスの赤面なんてキモい。眼がつぶれる。ぎにゃー」

 好き放題言ってくれる。

 美雪だって赤面しているのに、野次られるのはいつも僕だけだ。後楽園球場の阪神ファン並みに手厳しい。

 そもそも僕は、旦那じゃない。この微妙な関係は、周囲には理解できない。正しく理解しているのは、僕と美雪だけだ。

「美雪さん。お箸をもう一膳、用意してくれるとうれしいんですが・・・」

「却下する」

 僕の提案を即答で否決した。

「君と私とであれば、箸は一膳あれば十分だろう。地球に優しいうえ、私と君は愛を確かめ合うことが出来るではないか」

「僕の心臓と羞恥心には優しくありません」

「ふむ」

 美雪は、一瞬考えるそぶりを見せた。

「あーん」

 が、聞き流すことに決めたようだ。

 美雪は手を添えて、ほぐした焼き鮭の切り身を僕の口元に差し出す。

「だからですね」

「あーん」

 逃げられない。

 これだから現実はままならない。

「嫌なのか?」

 美雪の顔が悲しそうに歪んだ。今にも泣き出しそうである。教室の空気がざわめいた。

『十和田家の女は弱みを見せない』。それはこの地方の人々にとって常識であり、歴史的に証明される事実であった。

 その十和田の女である美雪が、泣きそうな顔を見せる。それだけで、ありえないものを見てしまったと、恐怖を感じるらしい。

 同時に、十和田の女にそんな顔をさせる僕に、変な畏怖を抱くようになる。

 それは、とても居心地が悪い。

『自分が勝ち得た物でもなければ、生まれ持った物でもない。そんな物で評価されるのは嫌だな』

『君の考え方は好ましい。だが、間違いでもある。君は私を屈服させたのだ。それで十分ではないか? 胸を張るがよい』

 美雪の答えは、答えになっていない。それは、あくまでも美雪の都合だ。

 それに、屈服したのは僕のほうだ。

 だが、あのとき僕を支配した美雪の赤い瞳は、あれ以来鳴りを潜めている。

 

 

「――腹減ってんだろうよ」

 ぶっきらぼうに、割り箸で肩を叩かれた。

「交互に食ってたら、昼休みが終わっちまうでね」

 方言混じりに言うと、遠山耕平はニヤリと笑ってみせた。ニヒルを気取って見せるが、その笑みは、どこまで行っても三枚目である。

「ほい。食い終わったから、俺の割り箸を使え」

「変な病気持ってないだろうな?」

「アホ! 反対側を使えば・・・、いや、待て。お前となら間接チューもありか?」

「どうして耕平が顔を赤らめる?」

 頼むから、もじもじするのも止めてくれ。

「わーわー」

 間延びした声が追随する。声の主、耕平の向かいの席に座る森野早苗が、ちょっとどころでなく目を輝かせる。

「柾木くんたちはいつの間にか、男同士の大人の階段を上がってしまっていたんだねー」

 早苗は、細い糸目をさらに細くして夢見心地。あっちの世界に旅立つ寸前。

「どちらが『やおい穴』標準搭載なのか、詳しく教えて欲しいなー」

「そんな未来の言葉は知りません」

「そうだぞ森野。時代はまだ薔薇族全盛だ」

「うー、誰に対するご説明。早苗わかんなーい」

 頭痛が止まらない。

 僕は、耕平から使用済みの割り箸をひったくると、反対側のきれいな方を使って食事を再開する。

「どうでもいいが、耕平さ。割り箸は、もう少し真っ直ぐに割ろうぜ。箸の先っぽが台形の底辺と超鋭角ってのは、使いづらくてかなわん」

「嫌なら返せ」

 反論する代わりに、僕は重箱のいなり寿司に箸を伸ばす。

「むっ。遠山は、私と柾木の愛の営みを邪魔立てするか」

「好きに食わせてやれよ。って言うかさ」

 耕平は、美雪の抗議をあっさりとうっちゃった。やるな耕平。

「一緒に飯食ってるのに、俺たちがビタイチも視界に入ってないってのは、どうなのよ」

「んー、確かにひどいよねー」

 そうだった。

 僕、美雪、耕平、早苗の四人は、机をくっつけて一緒に食事を取っているのだった。

 なぜにこの四人かといえば、美雪に物怖じしないのが、この面子だけだからである。

 つまり、僕らのバカップルぶりをからかったり、いじったり出来るのは、当事者を除けば、耕平と早苗だけである。

 さっき、さんざん「××してるに違いない」とか「キモイ」とか、神宮球場はホーム球場と言い張る阪神ファンみたいに、好き放題に野次を飛ばしていたのも、この二人である。

 他の生徒は、十和田家を恐れて僕らをからかうなんて出来ない。なんだかなー、十和田家。

「雪っちたちってば、すぐにラブい空気に入っちゃうんだから、もー。こっちが妊娠しちゃいそうだよー」

「だな」

「確かに。効率的ではないな」

 美雪は、残念そうな顔を見せるが、それ以上不満を口にせず、食事に取り掛かる。

 短い昼休み、食事だけで終わるのはもったいない。さくさくと、僕と美雪は、お重の中身を平らげていく。

「ところで」

 十五分後、空になったお重をあざやかな桃色の風呂敷で包み終えると、美雪が口を開いた。

 きっちりと食事を終えてから話題を切り替えるということは、美雪にとって重要な話のようだ。

「私は子供が好きだ」

「うん。雪っちは、子供にあげる飴玉をいつも持ち歩いてるね」

「うむ。さくらドロップは必需品だ」

 そう言うと美雪は、着物の左裾を軽く振った。

 カランコロン

 見えないが、さくまドロップの缶が自らの存在を主張した。

「そして、君とお付き合いを始めてから、二ヶ月が経つわけだ」

「そうだね」

 僕は相槌を打ちながら、黒板の上にある時計を見上げた。時計の針は、昼休みが残り少ないことを教えてくれた。

「何が言いたいんだがや。アニバーサリィにしては、半端すぎるでね?」

「だね」

 耕平の疑問に、早苗も同意を示す。

「うむ。記念日ではない。十分な時間を共有したと言いたいのだ」

「その心は?」

 何やら嫌な予感を抱きつつ、僕は美雪に聞いた。

 美雪が、僕に真摯なまなざしを向けた。

「私は君とのややこが欲しいのだ」

 

 

「ぶっ!」

 聞き耳を立てていたクラスメイトの何人かが、牛乳を噴き出した。

 ガタッ! ガタンッ!

 そして、ほとんどのクラスメイトが、机に突っ伏すか、椅子から転げ落ちた。

 静寂なのは、僕らの島だけである。

「や・や・こ?」

 僕は、一文字づつ確かめるように口にした。

「そうだ。もういい頃合だろう」

 美雪は、驚く周囲を一瞥することすらなく、さも当然という顔で言葉を続ける。

「ややこかぁー」

「そうきたねー」

 耕平と早苗が、さもありなんと感想を述べた。

二人は美雪を理解している。僕よりもはるかにね。

「ついては、君に聞きたいことが」

 

 

 バァンッ!

「そいつぁ、聞き捨てになりません!」

 激しく教室のドアが開かれると、小柄な少女が飛び込んできた。緩やかなくせっ毛が激しく揺れ、少女の闊達さを強調する。

「さっきから聞いていれば、ややこだのややこだのややこだのおめこだの! 神聖な学び舎で、そのような言葉を使うなど許しません!」

『ちょっと待った!』っと、時代を先取るポーズで、少女はまくし立てた。

 『ぬふぅ』と鼻息荒く、その少女、遠山瑞穂は、教室に大またで足を踏み入れる。

「おい、瑞穂」

「お兄ちゃんは黙っていて!」

「はい」

 耕平は、一言でおとなしくなった。

 兄妹の力関係の縮図が、見事にそこにある。

「瑞穂ちゃん」

「なんですか、柾木さん」

「さっきのセリフをもう一度言ってみな」

「へ?」

 瑞穂ちゃんは、はてなマークが頭に浮かんだのも一瞬。律儀に左手を腰に当て、右手で美雪を指差すと、さっきのセリフを繰り返した。

「さっきから聞いていれば、ややこだのややこだのややこだのおめこだの! 神聖な学び舎で、そのような言葉を使うなど許しません!」

「ややこの所だけ、もう一回」

「ん? ややこだのややこだのややこだのおめ・・・」

 プシューッ

 沸騰したときのヤカンみたいに、いい音を立てて、瑞穂ちゃんの顔が瞬時に赤くなった。

「気がついたみたいだね」

「おめ、おめ、おめ・・・」

 壊れたテープレコーダのように、瑞穂ちゃんは真っ赤な顔で「おめ」を繰り返す。

 からかい過ぎたかな? まぁ、いいや。

「それと―――」

 僕は教室の入り口を指差した。

「―――寒いから閉めてきて」

「ふぇ?」

 廊下から大量の寒気が流れ込み、クラスメイトが寒さで震えながら、瑞穂ちゃんの背中を睨んでいた。

「・・・はい」

 しょんぼりと肩を落とし、瑞穂ちゃんは入り口の戸を閉めに戻った。

 こういうところが、一年生で生徒会長を務める行動力と親しみやすさなのかもしれない。

 同時に、頼りなさも・・・

「びぇくち!」

 瑞穂ちゃんが、くしゃみをした。

 おいおい、鼻水垂れてるよ。

 

 

「納得できません」

 瑞穂ちゃんは、背もたれを抱きしめる姿勢で逆向きに椅子に腰をかけると、シーソーのように前後に揺らした。

 不機嫌なときに見せる癖だ。

 ぎっこんばっこんと、バランスを取るたびに木製の四角い椅子が軋む。

「瑞穂ちゃん、50kgの重さだぞ。椅子がかわいそうだ」

「失礼です、柾木さん。50kgもありません!」

「じゃあ、50kg弱」

「40kg強です!」

 譲れないプライドを宣言した瑞穂ちゃんは、椅子を揺らすのを止めた。

 これで、僕たちの定例メンバー全員が集まった形だ。

 二年生の教室に下級生がいることは珍しいが、耕平の妹である瑞穂ちゃんは例外だった。それに、一学年に二クラスしかない学校である。学年の垣根は低く、学年を超えて親しくしていることも多い。

「で、瑞穂ちゃんは、何に対して納得がいかないと?」

「そんなの決まってます!」

 瑞穂ちゃんは、わざわざ椅子の上に立ち上がると、見下ろすように美雪を指差した。

 ビシッ!

 擬音が聞こえそうな決めポーズ。でも、正面で座っている僕からは、短めのスカートから伸びるおみ足のほうが気にかかる。

 白いタイツに包まれた瑞穂ちゃんの足は、かもしかのように健康的だ。

「ややこですよ、ややこ!」

「うん」

「どうして柾木さんは、そんなに落ち着いてるんですか? 意味わかってます!」

「ややこ。漢字で書けば稚児。意味はあかご。略してややと言うことも」

「デストロイッ!」

「おおみずほよ。きれてしまうとはなさけない」

 早苗のスローモーな言葉は、瑞穂ちゃんに届く気配はなかった。

「知ってんじゃないですか! 知ってんじゃ! あぁもう! これじゃぁ、あたし一人が大騒ぎしてたも同然じゃないよぉ! 当事者が何、冷静になってんですかぁ!」

 すとんっ

 頭を抱えながら瑞穂ちゃんは、立っていた椅子の上で両足を開くと、そのまま自由落下に任せて座りなおした。落ちるときに、スカートが少し膨らんでめくれると、白いタイツの根元部分が見えた。

「むふーっ!」

 いや、睨まれてもねー。だって、わざと見せたんじゃないか。セックスアピールしといて、それはないよ。

 瑞穂ちゃんは、僕のことが好きだと思う。確認したわけじゃないけど、たぶんそうだ。

 でも、その『好き』は、僕を通して憧れの『東京』を見ているだけで、美雪の『好き』とは根本から違う。

 そして、頭の良い瑞穂ちゃんは、そのことを自覚している。その上、美雪のことも好きだから応援したい。だから、瑞穂ちゃんの僕に対する行動や発言は、いつもちぐはぐだ。

 面倒くさいねー、まったく。

「まぁ、冷静なお前もおかしいわな」

 耕平が、助け舟を出す。あぁ、麗しの兄妹愛。

「冷静なわけじゃない。意味だって分かってるさ。ただ、突拍子過ぎて、現実に対応できない」

 僕は正直に答えた。

「なんだ。抗議の声がなかったので、てっきり、君は同意したものだと思ったぞ」

「男女が付き合っていれば、いずれ出てくる問題だからね」

「その通りだ」

「で、いつ?」

「今、ここでも構わないぞ」

 おぉぉ

 教室中から感嘆の声が上がる。

「この時間、保健の荒井先生は職員室だ。そして、保健室の鍵は預かっている」

「ずいぶんと計画的ですね」

「なんなら、君の好きな体操服とブルマに着替えてもいい。今日は体育の授業はないが、持参してきた」

 それはとても魅力的な提案だ。思わず心が流されそうになる。

「手始めに、十人ぐらいが望ましいと思うが」

「手始めって人数じゃない!」

 秋口から放送が始まった野球アニメ『一発貫太くん』ですら8人兄弟だ。サッカーでもやる気かね?

「んー。柾木くんは、ちょっと突っつくと、すぐにボロが出て楽しいよね。それと、突っ込むところもズレてるし」

 早苗は、魔法瓶から食後のお茶を注ぐと、「はぅー」と、一息ついた。この季節、温かいお茶は必需品だ。

 美雪も、早苗と同じように魔法瓶を取り出すと、2つのコップにお茶を注ぎ、一つを僕に手渡してくれた。

「そこで、聞かせて欲しいことがある」

「何を?」

 僕は、一口だけカップに口をつけた状態で、身構えた。

「ややこは、どうやって造るのだ?」

 

 

 世界が固まった。凍った。止まった。

 いや、表現は何でもいいが、とにもかくにも教室は静寂に包まれた。

 ボッボッボッという、ダルマストーブの音だけが、妙に現実的だ。

「保健の新井先生に相談しても、保健室を貸してやると言うだけで、その先を教えてはくれないのだ。親に相談するのもはばかれる」

 美雪の独白は続く。

「もちろん、医学的なことは知っている。小学生の時に習ったからな。だが、それまでのプロセスが分からないのだ。荒井先生からは、体操服とブルマが有効だとアドバイスを貰ったが、先ほどの君の反応を見る限り、そうでもないようだ」

 いや、とても魅力的な提案ですよ・・・

 だが、だが、だがしかし・・・

「はぁ―――――っ・・・」

 僕は下を向くと、永い嘆息を漏らした。そのまま今度は上を向き、大きく息を吸って叫ぶ。

「お父さんお母さん! 僕は今すぐ、東京に帰りたい!」

 ガハァハァハァッ

 耕平たちは、腹を抱えて笑い死にした。爆笑が教室に渦巻く中で、瑞穂ちゃんだけは、本鈴が鳴り担任がやって来るまでずっと、キレたままだった。

「ムキーッ!」

 

 

 

 

 

 

 

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