ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
~キリトside~
オディウム宮殿 剣の王宮
「―――この先にこのグランドクエストのボスがいるのか」
俺は目の前にそびえ立つ、ホロウエリアで見慣れたボス部屋へと続く扉を見て言った。
「長かったね」
「ようやくここまで来れたよ~」
「ここに来るまでの試練は大変でしたからね」
「特に三つ目試練のNMを倒すのには苦労したわね」
「思い出させないでよフィリア」
「転移して逃げるなんて卑怯・・・・・・」
「あはは、まあ、どのみち倒せたから良かったではないですか」
「それもそうだな」
目の前の石の扉を前にして、ここにたどり着くまでのことを思い返した。
ウインドウを開き、アイテムを整理して準備をする。
準備を終えた俺は、同じく準備を終えたレインたちに視線を向ける。
「レイン、フィリア、ユウキ、ラン。この先にいるのはおそらく今までののどのボスよりも強いだろう。だが・・・・・・俺たちは負けない」
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
俺の声にレインたちは強くうなずき返した。
「勝とう。勝って、グランドクエストの報酬をゲットしようぜ!」
「うん!」
「もちろん!」
「ええ!」
「そうだね!」
「それじゃ・・・・・・」
石の扉を開放し、ボスの待つ部屋が視線に入る。
「―――戦闘開始だ!」
同時にそれぞれの武装を抜刀して、開いた石の扉の奥、ボスの待つ部屋に侵入した。
'ホロウ・ミッション'
場所:剣の王宮
クエスト名:神を越えし剣技
討伐ボス:ヴァルナギア・ジ・エンプレス
「ァァァァァァァッ!!!」
ボス部屋に入ると、視界にホロウ・ミッションのウインドウが現れ、ウインドウが消えると、目の前にいるボス。頭上に【BOSS】Varunagia The Empressと表示されたボスが甲高い声をあげた。それと同時に、自身の周囲に浮かんでいる巨大な剣。宮殿の至るところに、そしてこのボス部屋の壁側に飾られている神々しい装飾の白金の剣と同種の剣をドレスのように振り回した。
「ヴァルナギア・ジ・エンプレス・・・・・・」
「―――剣の女帝・・・・・・」
「強そうだね」
「ええ。ですが、私たちは様々な経験をしています」
「そう簡単にやられるわけにはいかないよ!」
フィリアの声を皮切りに、俺とユウキが駆け出した。
「行くぞユウキ!」
「オッケーキリト!」
駆け出した後ろから、レインが。
「―――サウザンド・レイン!」
《サウザンド・レイン》を放った。
「ァァァァァァァッ!!!」
しかし、レインの《サウザンド・レイン》は当たる直前に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲に浮かぶ剣によって防がれた。
「!」
防がれたことに驚きながらも、俺とユウキは同時に仕掛ける。
「ハアッ!」
「ヤアッ!」
俺とユウキに向かって突き出されたヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣を左右に避けてかわし、同時に同じ場所を攻撃する。
「ァァァァァァァッ!!!」
「「なっ!?」」
だが、その攻撃は当たらなかった。いや、正確には、俺とユウキの剣と、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体との間にヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣が盾のように置かれ防がれたのだ。
まさかの防ぎように俺とユウキは驚いた。今までのいろんな、剣を、使うモンスターやボスと戦ってきたが、こういう風に防御するやつはいなかったのだ。
「キリトさん!ユウキ!」
ランの危険を告げる声が耳に入るのとほぼ同時に俺とユウキはバックステップでヴァルナギア・ジ・エンプレスから距離をとっていた。
そして、俺とユウキがいた場所には帯のようにならんだ剣が横薙ぎに切り払われていた。剣に赤いライトエフェクト煌めいていることからあれは剣技の一つなのだろう。さらにその赤いライトエフェクトはヴァルナギア・ジ・エンプレスにもうっすらと、衣のようにたなびいていた。
「危なかった・・・・・・」
「危なかったぁ~」
「まさか剣をあんな風に使うなんてな」
「うん。今までのモンスターとは違うね」
「どうする。やっぱり剣を破壊した方がいいか?」
「う~ん。見る限り破壊できると思うけど、確証がないからなぁ~」
下がって話しているところに、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣が俺とユウキに向かって飛んでくる。それを俺とユウキはステップで避け、会話を続ける。
「このままじゃじり貧だな・・・・・・」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスの三段あるHPゲージを凝視して、ほんの僅かだけ削られてるゲージを見る。
「ユウキ、援護を頼む!」
「わかった!」
隙を見て、ヴァルナギア・ジ・エンプレスに向かって駆け出す。
「ラン、ボスに
「わかりました!―――往きます!ラスティー・ネイル!」
ランの鞭のように伸びた剣がヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体を攻撃する。そしてその攻撃は蛇のように撓り、周囲に浮かぶ剣にもダメージを与えた。
「ハアアァ!」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージの横に拘束のデバフアイコンが表示され、動きが止まったところに一瞬で距離を積め、片手剣ソードスキル《ファントム・レイブ》6連撃を放つ。
「ボクも往くよ!ヤアアッ!」
そしてユウキも≪紫閃剣≫ソードスキル《インフィニット・ゼロ》10連撃を繰り出す。
「ァァァァァァァッ!!!」
俺とユウキのソードスキルでヴァルナギア・ジ・エンプレスの三段あるHPゲージは三段目が3割ほど削り取られていた。
どうやら防御力はそんなに高くないようだ。
「―――っ!キリト!ユウキ!離れて!」
フィリアの声が響くと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージに表示されていた拘束のデバフアイコンがスゥと消えた。そして、消えるのと同時に、頭上から剣を振り下ろしてきた。
「ぐっ!」
「うわっ!」
左右に散開して避けようとしたが、離れた瞬間に剣が床に突き刺さりそこから衝撃波が襲ってきた。
俺とユウキは衝撃波で吹き飛ばされながらも身体をひねってバランスを取りながら床に着地する。
「キリトくん!」
床に着地すると、レインが心配したふうに声を掛けて近寄ってきた。
「大丈夫だ!」
衝撃波だけでもわずかにHPが減っていた。幸いにも減ったのはほんの僅かなため、
「キリトくん、
「いや、共鳴を使うなら最後の方がいい。いくら何度も使えると入っても、30分のインターバルはキツイ」
「そうだね・・・・・・。なら、私とキリトくんがヘイトを取って、ユウキちゃんたちがその隙に攻撃をするってことかな」
「だな。―――いけるか?」
「もちろん♪」
「よし、いくぞ!」
そう言うと、俺はヴァルナギア・ジ・エンプレスと相対してタゲを取っているランのところへと駆け出した。そしてギリギリのところで、ランに振り下ろされた剣を
「キリトさん!」
「ハアアァ!」
受け止めた剣を思いっきり跳ね返して、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体に≪二刀流≫ソードスキル《クロス・ナイト》2連撃を放つ。
「ラン、俺とレインがあいつのタゲを取るから攻撃を頼む」
「わかりました!」
そう言うや否や、ランは横から来た剣を受け止めて跳ね返した。
跳ね返された剣は自動で、俺とランから少し距離を取っているヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲に戻った。
「ハアアァ!」
「イャアアッ!」
レインと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体の横腹を双剣で切り裂く。
「ァァァァァァァッ!!!」
「遅い!」
奇声を上げたヴァルナギア・ジ・エンプレスは、俺とレインに上から剣を振り下ろしてきたが、すでにその場にいなく俺はヴァルナギア・ジ・エンプレスの背後に、レインは正面にいた。
そしてそれぞれ同時に片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》4連撃と《バーチカル・スクエア》4連撃を一寸の狂いもなく放つ。
「―――まだだ!レイン!」
「うん!いくよキリトくん!」
「「―――ワールドエンド・オーバーレイ!」」
装備している指輪、『ウィンクルムリング』の特殊効果で、俺とレインの技後硬直時間は大幅に減少している。《バーチカル・スクエア》や《ホリゾンタル・スクエア》などの中位クラスならば時間は0.1秒だ。正直、ゲームバランス崩壊の代物だと思うがそれは置いとく。
アイコンタクトで意思疏通をし、≪シンクロ≫ソードスキル《ワールドエンド・オーバーレイ》14連撃重攻撃を繰り出した。交互に剣戟を放ち、ラスト2撃の振り下ろしを同時に、ブーストも重ねて放つ。
「ハアアァ!」
「ヤアアッ!」
「ァァァァァァァッ!!」
甲高い声を上げながら、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは《ワールドエンド・オーバーレイ》のラスト2撃を周囲に舞う2本の剣で受け止める。
「「―――くだ・・・・・・け、ろぉぉ!!」」
気合いの入った声で、競り合う剣を押し込む。
「ァァァァァァァッ!!!」
この攻防で、ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージは三段目の3割ほどにまで落ちていた。まあ、俺らが攻撃してる間にもユウキとラン、フィリアが攻撃していたからだが。
「ァァァァァァァッ!!!」
奇声を発するヴァルナギア・ジ・エンプレスは荒れ狂うかのように剣を振り回してくる。
俺たちはその場を離れ、剣の届かない場所でHPをポーションで回復する。
「ァァァァァァァッ!!」
甲高い奇声を発しながら繰り出される、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの攻撃をステップで避ける。しかし幾ら立っても当たらない攻撃に嫌気が指したのか、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは剣を舞わせ、障壁のように近付いたらダメージが通るようにした。
「くっ・・・・・・!これじゃ近づけない・・・・・・!」
「接近してソードスキルを放ってもこっちにもダメージが来ると思うよ」
「・・・・・・レイン、サウザンド・レインであれをどうにか出来るか?」
「う、う~ん・・・・・・できなくもないとは思うけど・・・・・・」
「よし、レインがサウザンド・レインを撃ったら俺がその隙に強攻撃をする。少しの間でも怯ませればランたちが攻撃出来るはずだ」
「うん。気をつけてねキリトくん」
「ああ!」
レインと分かれ、腰に差したピックを二本取り、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの顔に向かって投擲ソードスキル《シングルシュート》を発動する。
「ァァァァァァァッ!!!」
舞う剣の隙間を縫って飛んだ二本のピックは見事・・・・・・とは言わないが、少し軌道はずれたがヴァルナギア・ジ・エンプレスの顔部分に当たりヘイトをこっちに意識させることに成功した。
ヴァルナギア・ジ・エンプレスの意識がこっちに向いた瞬間。
「―――サウザンド・レイン!」
背後に移動していたレインが《サウザンド・レイン》を放った。
「ァァァァァァッ!!?」
不意を付かれたヴァルナギア・ジ・エンプレスは驚きの声のようなものを上げてレインの方に視線を向けるがすでに遅く、レインの放った《サウザンド・レイン》の剣雨はヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞う剣に当たり、剣の舞う速度を減速させ、幾つかの剣を連鎖崩壊のようにして動きを止めた。
その隙に。
「ラン!ユウキ!フィリア!」
ランたちに呼び掛ける声とともに俺は動きを止めたヴァルナギア・ジ・エンプレスに接近してソードスキルを叩き込む。
「デリャァァァア!!」
連鎖崩壊で剣が絡み合ってるところに≪二刀流≫ソードスキル《ナイトメア・レイン》16連撃を繰り出す。
「ァァァァァァァッ!!!」
周囲からはランたちのソードスキルによるライトエフェクトの散らばりが煌めいて見える。俺たちの多重ソードスキルにヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージはどんどん減っていき、三段あるHPゲージは残り二段へと減った。
「ァァァァァァァッ!!!!」
二段目に入った瞬間、ヴァルナギア・ジ・エンプレスから甲高い奇声と衝撃波で吹き飛ばされた俺たちはとっさにバランスを取りながら床に着地する。
ヴァルナギア・ジ・エンプレスを見ると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスから淡い紫色のオーラが立ち上っていた。それは今までのボスと同じ現象だ。そう認識したその時。
「!」
「キリト!」
俺の頭上からヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞っている剣と同じ大剣が降ってきた。
ギリギリのところで避けて大剣が俺のいた場所を突き刺す。
「大丈夫だ!」
警告してくれたフィリアにそう言い大剣へと視線を戻す。降ってきた大剣はそのまま地面に突き刺さったままだった。そして、その大剣にはHPゲージがあった。
「(なぜ剣にHPゲージが・・・・・・)」
大剣は地面に刺さったまま、紫色のオーラのようなものを発していた。
「(あのオーラみたいなやつまるでなにかを計っているような・・・・・・・)」
そう思っていると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスが剣をこっちに振り下ろしてきた。それをステップで横に避けると、俺のいた場所を、一直線に緑の斬撃波が貫いた。それと同時に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは後方に下がった。恐らく攻撃と同時に後ろに下がる技なのだろう。そう思考しながら突き刺さったままの大剣を見やる。
「(あれまるでタイムカウントのような・・・・・・っ!まさか・・・・・・!)」
ある程度予測した俺は突き刺さったままの大剣に急いで近寄った。
「(まずい!急いで破壊しないと・・・・・・!)」
大剣を破壊しようとしたその瞬間、大剣の紫の輝きが高くなり甲高い音が聞こえ、剣が爆散するのと同時にとてつもない衝撃波が襲ってきた。
「うっ!」
「きゃっ!」
俺と、ヴァルナギア・ジ・エンプレスに攻撃していたランがその衝撃波を受け、俺は壁際に、ランは柱の方に吹き飛ばされた。
そして俺とラン二人とも出血のデバフアイコンが付いていた。
「キリトくん!ランちゃん!」
「レイン、上!」
「きゃあっ!」
「レイン!」
さらに俺とランに気をとられたレインが爆散したのと同じ大剣が地面に突き刺さった衝撃波で吹き飛ばされた。
とっさに俺がレインに声をかけたから直撃はせず防御と受け身は取ったが大きく吹き飛ばされた。
「くっ!(早く回復しないと!)」
ポーチから止血結晶を取り出し、掲げ上げ出血デバフを消す。そしてハイポーションを取り出して一気に呷る。
「よし!」
ハイポーションで回復してるとはいえ結晶で回復してないため回復速度は微々たるものだ。だが、HPは安全マージンの8割ほどにまで回復してる。
「フィリア下がれ!」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスを相手してHPが減っているフィリアにそう言って、フィリアとスイッチする。
「了解キリト!スイッチ!」
「スイッチ!―――ハアアァ!」
フィリアとスイッチして≪二刀流≫ソードスキル《デブス・インパクト》5連撃重攻撃を放つ。
「ァァァァァァッ!」
《デブス・インパクト》の追加効果でヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージに防御低下のデバフが付与された。
ヴァルナギア・ジ・エンプレスは下がって退避しようとするが。
「予想通りです!ユウキ!」
「オッケー姉ちゃん!」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスの退避しようとする場所にはランとユウキが構えて待ち構えていた。
「ヤアアッ!」
「ハアアァ!」
ランとユウキはさすが双子の姉妹で俺とレインのような
「ァァァァァァァッ!!!」
二人のソードスキルはヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体に吸い込まれていき、瞬く間にHPゲージを削った。
「ァァァァァァァッ!!!」
奇声を発しながらヴァルナギア・ジ・エンプレスは舞う剣を束ねてユウキとランを薙ぎ払おうとするが、その剣はユウキとランがいない場所を薙ぎ払った。どうやらランの《ナイトレス・クラウド》の追加効果で混乱のデバフに掛かっているみたいだ。
無作為に攻撃するヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣を避けるのは容易かった。
「レイン!」
「うん!」
回復してヴァルナギア・ジ・エンプレスに駆け走っているレインに声をかけて同じ淡い蒼色の色のライトエフェクトを輝かせる。
「「―――アブソリュート・デュオ!」」
≪シンクロ≫ソードスキル《アブソリュート・デュオ》24連撃。
舞うように、踊っているようにソードスキルを繰り出し、淡い蒼色のライトエフェクトを散らばかせる。
「――――――ッ!!」
《アブソリュート・デュオ》を放ち終えると、ヴァルナギア・ジ・エンプレスは先程とは比べ物にならないくらいの甲高い奇声を上げた。思わず耳を塞ぐほどの声量だった。
「なんつー声だ」
「耳がキーン、ってするよ」
「残り半分・・・・・・」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPゲージを見て、残りHPを確認する。
「とにかく、あの大剣が現れたら即効破壊だな」
あの爆発の威力を思い返し即座にそう判断する。
「だね。それにあの剣・・・・・・」
レインの視線はヴァルナギア・ジ・エンプレスの周囲を舞う剣を見ていた。
「いつの間にか剣がもとに戻ってる」
最初、10本あったヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣は俺とレインが破壊して8本に減っていたのだが、今はもとの10本に戻っていた。
「くっ・・・・・・このまま言いあぐねていても仕方ないやるぞ!」
「了解だよ!」
互いにうなずきあい、同時に床を蹴って駆け出した。
そこから先は五分五分の戦闘だった。ヴァルナギア・ジ・エンプレスの繰り出してくる剣技を、受け止めたり、いなしたり、ステップでかわしたりとヘイトを交互にとりながら気を引き締めて、意識を集中させてやった。あの爆発する大剣に関しては、連続で降ってきたり、複数床に突き刺さったりとして困難だったが、大剣じたいの耐久力がそこまで高くないことに抗してなんとか爆発する前に破壊することができた。少しばかりあわやと思ったところもあったがどうにか対処できた。さらに困難だったのが、10本の剣を砲のように束ね舞わしながら攻撃してきたことだ。予想外にその攻撃の射程距離範囲が長く、さらに出血のデバフを与えてきてヤバかったがレインとどうにか対処できた。それからしばらくして。
「ァァァァァァァッ!!!」
「レイン、スイッチ!」
「うん!」
ヴァルナギア・ジ・エンプレスの振り下ろしてきた剣を左の剣で弾き、右の剣で片手剣ソードスキル《ソニックリープ》単発重攻撃を放つ。
「――――ァァァァァァァッ!!!」
《ソニックリープ》の反動でヴァルナギア・ジ・エンプレスは後ろの方に下がり、三段あったHPゲージは残り一段の半分へと減っていた。さらにその周囲を舞う剣も所々罅が入っていたりして満身創痍のようだった。
「いくぞレイン」
「うん」
「「
すぐさま共鳴を発動し、共鳴のバフ効果で得たスピードでヴァルナギア・ジ・エンプレスに迫る。
「――――――ッ!!」
振り下ろしてきた剣を左右に避け、突き出された剣をかわして、その剣の刃部分をレインがかけ上がる。
「ヤアアァァァァアッ!」
鍔部分を踏み台にしてジャンプしヴァルナギア・ジ・エンプレスの上を取る。
「いくよ!―――サウザンド・レイン!」
上から降ってくる青いライトエフェクトを輝かせた無数の剣が雨のように降り注いできた。俺はレインの《サウザンド・レイン》を巧みにかわしてヴァルナギア・ジ・エンプレスの懐に潜り込み。
「ハアアァァァァアッ!」
≪二刀流≫ソードスキル《ジ・イクリプス》27連撃を打ち出す。
コロナを彷彿させる27連撃は抉るようにヴァルナギア・ジ・エンプレスを切り裂いていきHPを奪う。
「ァァァァァァァッ!!!」
《ジ・イクリプス》を放ち終えた俺は0.5秒の技後硬直時間を終え後ろに宙返りで下がり、上から降りてくるレインと並び立つ。
「これで終わらせるぞ!」
「うん!」
「わかった!」
「ええ!」
「はい!」
「私からいきます!喰らいなさい!―――ラスティー・ネイル!」
ランが鞭のように伸びしならせたまるで蛇腹剣みたいな剣でヴァルナギア・ジ・エンプレスを切り裂き。
「いくよユウキ!」
「うんフィリア!」
「ヤアアァァァァアッ!―――マザーズ・ロザリオ!」
「ハアアァァァァアッ!―――ダークネス・カーニバル!」
ユウキの光速の刺突11連撃とフィリアの舞うように切り裂く9連撃のソードスキルが嵐のようにランの《ラスティー・ネイル》で拘束されて動けないヴァルナギア・ジ・エンプレスを襲う。
「――――――ァァァァァァァッ!!!」
甲高い音発するが、その声には先程まで聞こえていた奇声は無かった。
「レイン!」
「うんキリトくん!」
「ァァァァァァァッ!!!」
迫る俺とレインに最後の足掻きのように放つ剣をすべて
「「―――ホロウ・―――フラグメント!」」
≪シンクロ≫最上位ソードスキル《ホロウ・フラグメント》44連撃を放つ。バフの効果でさらにスピードが上がり、身を守るようにして盾にする剣も耐久値がどんどん減っていき、一本一本破砕音が響く。
「ァァァァァァァッ!!!」
残り二本となったヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣はヴァルナギア・ジ・エンプレスが交差して受け止めるように身構えた。
「「ハアアァァァァァァァァアッ!!!」」
4本の剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。
やがてその亀甲に、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの剣からピシリと音が聞こえたことで決着が着いた。
ピシリとなった剣は真ん中から広がるように罅が入り、俺とレインが押し込むとキンッ!と金属の音がなり粉々に砕け散った。そのまま、俺とレインの剣はヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体を切り薙ぎし、ヴァルナギア・ジ・エンプレスの巨体にクロスを描いた。
やがてヴァルナギア・ジ・エンプレスのHPは0になり、一瞬ブレたかと思いきや、ポリゴンの欠片へと爆散して虚空へと散り消え去った。