ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
~キリトside~
〈シンクロ〉の試練をクリアした数日後。俺とレインはエギルの店でアスナたちに話をしていた。
「みんな、俺とレインは明日、管理区の地下にあるエリアに行こうと思う」
「確か中央コンソールがある場所・・・・・・でしたったけ?」
俺の声に同じ席に座るランが言う。
「うん。その場所からPoHが計画したアップデートを止められるはずだよ。そうだよねユイちゃん」
「はい。それとフィリアさんのオレンジカーソルに関する問題もその中央コンソールで解除できるはずです。ただし、そのコンソールで本人を認証させる必要があるので、フィリアさんも一緒に行く必要になります」
「そんなわけで、明日さっそくフィリアと一緒に俺とレインはそこに行こうと思う」
「でもキリト。その管理区の地下って場所、危険はないの?」
「エリアボスをすべて倒さないと入れない場所だ・・・・・・。かなり危険な可能性がある」
ユウキの不安げな声に思案顔になりながら答える。
正直、俺自身もなにがあるのかわからない、未踏破領域だ。
「そもそもホロウ・エリアってアインクラッドに実装される前に試験運用するエリアなんですよね?」
「はい。ランさんの言うように、元々アインクラッドに実装されてる装備やソードスキルなどはすべて開発エリアで適正を調べてから実装されてます。その中の一つがホロウ・エリアです。ホロウ・エリアはアインクラッドに比べるとかなりレベルが違いますので、その最後のエリアとなるとかなりの危険が存在します」
「かなり危険って・・・・・・大丈夫なの二人とも」
「ユイちゃんの話を聞く限りかなり危険みたいね」
ユイの説明にリーファとリズも心配そうに言ってくる。
「だけど、アップデートを止めるためにはなんとしても管理区の地下にある中央コンソールにまで行くしかないんだ」
「それに、あのPoHがたどり着けたんだから、私とキリトくんもたどり着けるはずだよ」
「まあ、用心に越したことはないからしっかり準備していきなさいよ」
「ああ、それは大丈夫だよ」
「もちろんだよシノンちゃん。万全の調子で行くから!」
「ああ。ちゃんとすべて片付けてフィリアと一緒に帰ってくるよ」
俺はレインとともに心配そうに言ってくるみんなにそう言った。
「(言ったからには必ずフィリアをこっちに連れて帰ってこないとな)」
そう思いも乗せて。
~キリトside out~
~レインside~
「―――うん!これでメンテナンスはバッチリ!」
「終わったの?」
「うん」
私の声に、この工房の主であるリズっちがカップを2つ持って戻ってきた。
キリトくんとともに明日のことを伝えたあのあと、私はリズっちに協力してもらい、リズっちのお店の工房を使ってキリトくんと私の剣のメンテナンスをしていた。
「ありがとうリズっち。工房貸してくれて」
「いいわよ別に。レインには昔からお世話になってるしね」
「あはは。そうだったけ?」
「そうよ~。それこそ、私が鍛冶師として始めた頃からの付き合いじゃない。まっ、キリトとは結構あとになってから知り合ったけどね」
「そ、それは~・・・・・・」
「はいはい、分かってるわよ。あんたがキリト一筋だってことはね」
「ちょっ!リズっち!?」
「事実でしょ?」
「う、うぅぅ~・・・・・・」
リズっちの言葉に反論できない私は顔を真っ赤にしてリズっちから渡されたカップを手に持つ。
「まったく。あんたのことはアスナたちと同じくらい知ってるつもりなんだけど・・・・・・」
「なんだけど?」
「ここに来てからあたしが知らないことばかり見るわね」
「そうかな~?」
「そうよ。まったく、どこでもイチャイチャするわ、あたしたちへの嫌味かって言いたいわよ。こっちの気が持たないわ」
「あはは・・・・・・それは・・・ごめん?」
「なんで疑問系なのよ」
リズっちは呆れたように溜め息を吐いて持ってきてくれたカップのお茶を飲んだ。
「それはそうと、明日どっちの剣で行くつもり?」
「う~ん・・・・・・明日はこっちにしようかな」
リズっちの声に、私は目の前にある、たった今研摩しメンテナンスした二振りの・・・・・・いや、私とキリトくん二人の剣。四振りの剣を見る。
「どれどれ・・・・・・。―――うん、良くできてるわ」
「でしょ?」
「ええ」
本業鍛冶師のリズっちにも四振りの剣を診てもらいお墨付きをもらった。
「そう言えばレインって、自分のかキリトの剣しか作成しないわよね」
「え?あ、うん。そうだよ」
「なんで自分かキリトの剣しか作らないの?」
「え~と・・・・・・何て言ったら良いかな・・・・・・。私って攻略組でしょ?」
「ええ。そうね」
「だからかな」
「?どういう意味?」
「ほら、私やキリトくんたちの本業は攻略組でリズっちは鍛冶師。スキル熟練度が高くても何回も剣を作った鍛冶師には敵わないから」
「・・・・・・なるほどね。確かに、剣を作るときはスキル熟練度も重要だけど長年の勘や動作も重要ね」
「でしょ?それに私が鍛冶スキル持ってるのって自分で剣のメンテナンスや作成をしたかったからなんだよね」
「―――本音は?」
「キリトくんの剣を作ってあげたい・・・・・って、あ・・・・・・!」
リズっちに乗せられてつい本音を話してしまった私は顔を真っ赤に、耳までも赤くした。
「(ニヤニヤ)」
そんななかリズっちはニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「~~!!///」
「いや~、ほんとレインって乙女よね~」
「リ、リ、リズっちのバカ~!」
リズっちに知られいてもたってもいられなくなり、リズっちをポカポカと叩く。まあ、叩く直前に圏内の障壁で防がれるんだけどね。
「痛い痛い、痛いわよレイン。ゴメンってば~」
「うぅぅ~~!」
痛くないはずなのだけど、そこはお約束。
「まあ、いいじゃない。女に秘密は付き物よ」
「かっこよく言ったつもりなんだと思うけど全然かっこよくないからねリズっち」
「ちょっ!それ酷くない~!?」
「フ、フフフ」
「ハハハハハ」
私とリズっちはつい笑ってしまった。
昔からリズっちとやっていた動作だ。リズっちといると笑いが絶えない。
「さてと・・・・・・」
私とキリトくんの剣、合計八振りの剣をストレージに収納し磨ぎ台から立ち上がる。
「さきに宿の方に戻ってるね」
「ええ。あたしもすぐ行くわ」
リズっちとそう言って分かれ、私はリズベット武具店2号店を後にした。
「ふぅ~。・・・・・・・寒いなぁ~。もうすぐ春だけど、まだ冬みたいの寒さだね」
はぁ~、と掌に息を吹き掛けてそう呟いた。
「現実だと今は2月後半だよね・・・・・・。3月末までにはここから出られるのかな・・・・・・」
今のアインクラッドの階層攻略を思い浮かばせそう言う。
現在のアインクラッドの最前線は第94層。
「ボス部屋まではあと少しってアスナちゃんたちが言ってたっけ?」
思い返しながら転移門広場を突っ切って行く。
そのまま転移門広場を過ぎ去ろうとしたそのとき。
「え?メール?」
ウインドウが開き、メッセージが届いたのを知らせた。
「差出人は―――フィリアちゃん?」
メッセージの差出人はフィリアちゃんからだった。
「えっと―――二人だけで話せない?」
メッセージにはそう一文だけ書かれていた。
私はすぐにメッセージウインドウを開き、フィリアちゃんにメッセージを返信する。
「え~と・・・・・・わかったよ。すぐ向かうね・・・っと」
メッセージをフィリアちゃんに返信し、キリトくんにフィリアちゃんに呼ばれたと言うことをメールし、そのまま転移門に立ち。
「転移!―――ホロウ・エリア管理区!」
ホロウ・エリア管理区へと転移した。
ホロウ・エリア 管理区
「こんばんはレイン」
管理区に転移すると、コンソールの近くにフィリアちゃんが立っていた。
「こんばんはフィリアちゃん」
「急に呼び出してごめん。・・・・・・レインと少し話がしたくて」
「私は別に構わないよ」
「ありがとう・・・・・・そこでいい?」
「うん」
フィリアちゃんと一緒に、コンソールの後ろを背凭れにして座り込む。
「それで、話って?」
軽く飲み物や茶菓子をストレージから出してフィリアちゃんに訊ねる。
「あのね、今さらだけど一緒に攻略してくれてありがとう」
「今さらだけど・・・・・・急にどうしたの?」
「明日、ここの地下エリアに行くでしょ。わたし一人だったら絶対にここまで来れなかったし、この管理区に入ることすらも出来なかった。だから・・・・・・ありがとう」
「そんな、別にお礼なんていいよ。私がフィリアちゃんに協力したいってだけなんだから・・・・・・たぶん、キリトくんも同じだと思うけど」
フィリアちゃんの言葉に私はそう言い返す。
「わたしね、あの時キリトとレインから伝えられるまで自分は人間じゃなくて、この世界のフィリアというホロウなんだって思ってたの」
「フィリアちゃん・・・・・・」
「わたしとこの二人の世界は違う。決して交えることは無いんだって・・・・・・。そんな、暗い気持ちでいっぱいだった」
「そうだったんだ・・・・・・」
「だけど今は、わたしもキリトとレインと同じ人間なんだって、そう思えるようになったんだ。でもね、そしたら今度は別の気持ちが沸いてきたんだ」
「別の気持ち・・・・・・?」
「うん。わたしとキリトとレイン。同じ人間なのに、どうしてキリトやレイン。ユウキやラン、アスナにラム、リーザたちはどうしてそんなに強いんだろうって・・・・・・・。どうしてわたしはこんなにも弱いんだろうって気持ち」
「そんなこと・・・・・・!フィリアちゃんは弱くなんてないよ!むしろ、私たち攻略組と同じくらい強いよ!」
フィリアちゃんの言葉に私はとっさにそう返す。
実際、フィリアちゃんの強さは攻略組の中でもトップクラスに入るほどの実力だ。フィリアちゃんに言い返しながらそう思っていると、フィリアちゃんは苦笑を浮かべて。
「う~ん・・・・・・レインの言ってる強さは戦闘面での強さ、でしょ」
「え?うん」
「えっとね、わたしが想ってる強さは戦闘面とかじゃなくて・・・・・・心の強さ。意思や精神・・・・・・とかかな」
「ええ!?私そんなに心の強さなんて強くないよ?」
フィリアちゃんの言う"強さ"に私はとっさに反論する。
「そうなの?」
「うん。キリトくんがいないと何も出来ないよ。今の私がここに居られるのは全部キリトくんのお陰なんだ」
「わたしは・・・・・・そんなことないと思う」
「え・・・・・・」
「だってレインは、ホロウ・エリアに迷い混んできても、わたしのように怖くて怯えたりしないでキリトと一緒にワクワクしていたでしょ?」
「そ、それはキリトくんが傍に居てくれたから・・・・・・」
「オレンジカーソルのエラーの事だってわたしが諦めかけていたのに二人は諦めないで、解決する方法を探し続けてくれたでしょ?」
「えっと・・・・・・それはフィリアちゃんを助けたかったからで・・・・・・」
「それに・・・・・・二人のこと裏切ったのにキリトとレインはわたしのことを許してくれた。PoHから殺されかけてたところを助けてくれた」
「ううぅ~~・・・・・・・」
私の反論を次々と論破していくフィリアちゃんに、私は気恥ずかしくなって顔を少し赤くした。
「で、でも、結局のところフィリアちゃんをPoHから助けてくれたのはキリトくんだよ。私はなにもしてない・・・・・・ただ、フィリアちゃんを守っていただけだし・・・・・・私はキリトくんほど強くは・・・・・・」
「そんなことない!」
「フィリアちゃん?」
「レインもキリトに劣らないほど強いよ!だって、あの時のレインの言葉、私の心に残ってるもの!」
「あの時の?」
「・・・・・・わたしが二人を裏切る前」
「裏切る前・・・・・・あ」
「思い出した?」
「うん・・・・・・」
フィリアちゃんの言葉に、私はPoHから押されて穴に落ちる前のフィリアちゃんとの会話を思い出した。
「心が強くなかったらあんな風に真っ向から言わないと思う。まあ、さすがに叩かれたのは驚いたけど」
「うっ・・・・・・ごめんなさい。叩いたところ大丈夫・・・・・・?」
「大丈夫。それに、あの痛みは二人を裏切ったわたしのバツだから」
「そんなこと・・・・・・だってフィリアちゃんはPoHに騙されて」
私がそう言うと、フィリアちゃんは首を横に振って。
「それでも、キリトとレインを騙して、危ない目に遇わせたのは事実。ほんとなら今わたしがここにいることなんて許されない・・・・・・だから、あの痛みはその代償」
「フィリアちゃん・・・・・・」
「まあ、そういうことだからわたしはレインもキリトと同じくらい"強い"と思うんだ」
さっきまでの暗い話から一転して、フィリアちゃんは元の話題に戻した。
「キリトくんが"強い"のはわかるけど、私が"強い"、なんて自分じゃ理解できないよ」
「けど、レインは実際に"強い"」
「う~ん、私的にはフィリアちゃんも "強い"と思うよ?」
「え、わたしが?」
「うん」
間の抜けた、以外だと言うようかのような表情を浮かべるフィリアちゃんに、私は私がフィリアが強いと思う根拠を述べた。
「だって"強かった"からフィリアちゃんは今ここにいるんでしょ?この右も左も何も分からないホロウ・エリアに放り込まれて、たった一人で生き延びてきた。生半可な意思じゃここまで来れなかったと、私はそう思うな」
私は素直に、自分が想い感じたことをフィリアちゃんに伝えた。
事実、私とキリトくんがやって来るまでの1ヶ月間を一人で生き延びて来られたのは強い信念と意思があったからだと私は思う。
「―――さてと。私はそろそろ帰って明日に備えるね」
「あ、うん」
ウインドウに表示された時計はここに来てからすでに小一時間経っていた。
「レイン」
「ん?」
「―――ありがとう」
「どういたしまして・・・かな?」
少しだけ朗らかに笑って転移門の上に立つ。
「それじゃ、また明日ね」
「うん。また明日。待ってるから、ぜったい。ぜ~ったい待ってるから!キリトとレインが来るの待ってる!」
「うん!フィリアちゃん、ダスヴィダーニャ」
「ダスヴィダーニャ、レイン」
挨拶を交わして、私は管理区から転移してアークソフィアへと帰っていった。
翌日
「はあっ!」
「やあっ!」
朝早く起きた私は、同じタイミングで起きたらしいキリトくんと何時もの丘の広場で体を馴らしていた。
「ぜりゃあ!」
「せえぇい!」
剣同士がぶつかり合う金属音が鳴り響き、剣風が巻き起こる。
もはや体を馴らすというよりかはデュエルに近い形になっていた。
それから5分後。
「ふぅ~」
「ん~」
剣をしまい私とキリトくんは伸びをして体を伸ばした。
「さて、そろそろ戻って行くか」
「うん」
その場を後にし、私とキリトくんはエギルさんの店に戻り、朝食を食べ、アスナちゃんたちに見送られ、ユイちゃんのエールをもらって転移門からホロウ・エリア管理区へと転移した。
~レインside out~
~キリトside~
「準備はいいか、フィリア、レイン」
ホロウ・エリア管理区に転移した俺とレインはすでに来ていたフィリアと合流し、管理区内にある地下エリアへの転送ポートを前にした。
「大丈夫、問題ないよキリトくん」
「ええ。わたしも行けるわ」
「よし、行くぞ!」
「うん!」
「ええ!」
転送ポートに入った俺たちは、そのまま管理区の地下へと転移された。
管理区 地下エリア
「ここが管理区の地下・・・・・・」
管理区から転移し、目を開けるとそこは管理区から一転して周囲は細い光の格子に覆われ、部屋のような場所にいた。
「上が見えないね・・・・・・」
「下も・・・・・・自分の影もないし反射してない・・・・・・」
「ほんとだ~。どういう素材でできてるんだろ」
「そこ!?」
レインの場違いな疑問にフィリアはツッコミを入れた。
レインの言葉に少し苦笑を浮かべて視線を前へと向ける。そこには各地にあった、次エリアへと続く門の前にあった紋章が存在した。ただ、違うとすれば中央の紋章事態が金色ではなく赤色だと言うことだ。
「あれは・・・・・・」
紋章の前に行き、それに反応した右手の紋章を翳す。
『システム権限を感知しました。オールグリーン解除します』
紋章に右手の紋章を翳すとどこからかそんな声が聞こえ、それと同時に封印の紋章がすぅ、っと消えていった。
「この先がラストダンジョン・・・・・・」
「あいつがどうやってこんな場所を攻略できたかは分からない・・・・・・」
「PoHも高位のテストプレイヤーだったみたいだからな。それも、犯罪者としての」
「そうだね・・・・・・テストプレイヤーとして高位のスキルを持っていてもおかしくないよ」
「そうだな。現にあいつはエリアボスと同じスキルを所持していたからな・・・・・・十分に考えられる」
「でも、あいつが行けたならわたしたちだって・・・・・・」
「ああ。中央管理コンソールまで、絶対に辿り着けるさ」
「そうだよね・・・・・・うん!」
「絶対に阻止しようね!!キリトくん!フィリアちゃん!」
「ああ!」
「うん!」
声を掛け合い、意気を高揚させ俺たちは通路の奥へと進んだ。
一本道をそのまま進んでいくと、開けた広間に着いた。そして、その奥には各地に置かれていた転移碑が鎮座していた。
「この先が・・・・・・」
「うん。きっとこの奥に中央管理コンソールがあるんだね」
「そうだな」
「早くフィリアちゃんのエラーを直して、アインクラッドへのアップデートも阻止してみんなでユイちゃんやアスナちゃんたちみんなが待ってるアインクラッドに戻ろう」
「ええ!」
「ああ!よし、行くぞ!」
転移碑を起動させて、俺たちは中央管理コンソールを目指して管理区地下のラストダンジョンに入っていった。