ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い   作:ソーナ

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HF編 第132話〈偽りの支配者(フェイカー)

 

~キリトside~

 

 

第97層のフィールドでアルベリヒの行っていたであろう事を止め、囚われていた人々を解放してから数日が経っていた。

あれからアルゴをはじめとし、血盟騎士団と聖竜連合の二大ギルドがあの場から逃げ去ったアルベリヒの行方を探していた。今のアルベリヒは殺人(レッド)ギルドと同じ扱いで、最重要人物になっている。そのため、見掛けたら即攻略組プレイヤー、牽いては俺たちに情報が行き渡るようになっていた。あの場で行われていた非人道的な実験についてはアスナたちにも伝えてある。それはもちろん、アルゴや聖竜連合団長のリンドやその幹部にもだ。話し合いの結果、捕らえたアルベリヒの部下は血盟騎士団と聖竜連合のメンバーが交互に見張りを担当し、攻略と同じようにアルベリヒの捜索を行うこととなった。

そんなこんなで、攻略は進んでいき第97層をその五日後にクリアし、ボスを犠牲者数0として攻略していった。

そして第98層。第98層のフィールドを見た俺たち攻略組は驚愕した。何故なら、第98層は主街区ハインシュト以外、全てがダンジョンだったからだ。幸いにもアインクラッドの構造は円錐のため、在ったダンジョンは左右の塔と、その奥にある迷宮区のみだった。しかし、そのダンジョンがまた困難を極めた。第98層と、アインクラッドの最上層だからか今までと比べ物にならないくらいのモンスターが現れたのだ。更に、迷宮区に入るためには左右の塔を攻略しないとならないため左右の塔にいるフィールドボス系のモンスターを倒さなければならなかった。そしてトラップも多数あり、幸いにも攻略で犠牲者は現れなかったが危ういと思ったところはあったそうだ。もっとも戦闘に関して俺とレイン、フィリアはホロウ・エリアで慣れていたため問題なく、トラップ系はフィリアに解除してもらった。

そうして左右の塔の攻略に四日掛かり、迷宮区の攻略にこれまた五日掛かった。迷宮区内部は今までの無機質な岩の素材ではなく、紅の上品なタイルや壁に張り巡らされ、今までとレベルが違っていた。そんな日々が過ぎ、第98層に到達してから十一日後、俺たちは、第98層のボス部屋にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第98層 ボス部屋

 

 

 

「決めちゃってキリトくん!!」

 

「ああ!」

 

レインとスイッチし、バフのブーストも得た威力で目の前のボスに双剣を振りかざす。

 

「ハアアアアアアアッ!!」

 

「グルオォォォォ!!」

 

俺の≪二刀流≫奥義、《ネビュライド・エンプレス》22連撃を食らい、第98層ボス、カイザードラゴンはその巨体をポリゴンの欠片へと変えボス部屋の虚空へと消えていった。そして、目の前には金色のフォントで【Congratulations!!】と表示された。

 

『『『『『うおおおおおおおおおっ!!』』』』』

 

ボス、カイザードラゴンが討伐され辺り一面から攻略組の歓喜の歓声が響き渡った。

 

「やったよキリトくん!」

 

「やったねキリト!」

 

両手に握ってる双剣、『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』を背中の鞘に仕舞うと、レインとフィリアから声をかけられた。

 

「お疲れレイン、フィリア」

 

「キリトくんも♪」

 

「お疲れ~」

 

「ついに98層のボスを倒せたな」

 

「うん」

 

「ホロウ・エリアのボスよりも強かったわね」

 

「まあ、もう後2層で、第100層だからな。ボスの力が桁違いなのは仕方ないだろう」

 

「そうかもね」

 

俺とレイン、フィリアが話している間も周りではアスナたち全員クリアしたことを喜んでいた。

 

「そんじゃ、あとは99層の転移門を有効化(アクティベート)したらこの層はクリアだな」

 

俺がレインとフィリアにそう言うと。

 

「いやいや、まだクリアではないよ」

 

何処からかそんな声が聞こえてきた。

 

「っ!?誰だ!」

 

その声に歓喜の声がシンと静まり、辺りは警戒体制を取った。

そこへ、第99層へと繋がる扉が開き、そこから一人の男プレイヤーが現れた。しかも、その格好に顔はよく知っている者だった。

 

「あなたは・・・・・・!」

 

「アルベリヒ!何故ここに!?」

 

そう、現れたのは今アインクラッド全域で指名手配されてるアルベリヒだった。

 

「やあ、キリト君ごきげんよう。そしてよくも僕の偉大なる研究の邪魔をしてくれたね」

 

「あれの何処が研究だ!」

 

アルベリヒの研究という言葉に俺は声を荒げて言う。

隣にいるレインとフィリアをはじめとして、アスナたちも殺気を高めていた。何故なら、あの場で行われていた研究やらに激しく激怒しているからだ。そんな、俺たちを気にせずアルベリヒは言葉を紡いだ。

 

「やれやれ、これだから低脳は困る。君が荒らしに荒らしてくれたこの僕の研究結果がどれだけ偉大で、素晴らしい物か分からないのかい?」

 

「勝手に人を拐った挙げ句に非人道的な実験を繰り返す・・・・・・それのどこに偉大さがあるんだ」

 

「あなたには偉大という言葉より、卑小という言葉がお似合いだよ」

 

俺とレインの言葉に周りから激しく同意の声が上がる。

 

「まさか僕の世界的快挙がこんか低脳共に邪魔されるなんて・・・・・・。まったく、腹立たしい限りだ。この僕の研究がどれだけ偉大で素晴らしいものか、君たちにも分かりやすく説明してあげよう」

 

そう言うとアルベリヒは如何に自分の研究が偉大か喋り出した。

 

「人は楽しいと思ったり、悲しいと思ったり、色々な感情があるだろう?例えば戦争・・・・・・戦争は怖いよね・・・・・・。どんなに訓練した兵士も死を前にすると、恐怖で思考が鈍ったり動けなくなったりしてしまう。では、恐怖で塗り潰された兵士の感情を喜びで満たしてやると、どうなると思う?飛び交う銃弾の中に身をおくことを、何よりの喜びと感じ、進んで危険な任務を果たそうとするようになる。軍にとって、これほど使える兵士はないだろう」

 

「つまり・・・・・・お前の言っている研究というのは、人間の感情を操作するということか?」

 

「そ、そんな!?そんなの!」

 

「なんてこと・・・・・・・!」

 

アルベリヒの言葉に俺たちは絶句した。

もしアルベリヒの研究が完成したら、アルベリヒの言ったとおりの感情を持つ兵士。いや、人間がごまんと溢れ返るだろう。

 

「どうかな?僕の研究の偉大さに気がついたかい?実際そういった実用に向けて、接触してきてる国が複数あるんだ。しかし、向こうでは人体実験などそうそう行えるはずがなくてね。研究が思うようにいかずヤキモキしているときに、ちょうどいい環境を見つけたんだよ」

 

「それが・・・・・・このSAOの世界か・・・・・・」

 

SAO(ここ)で?なんで・・・・・・・あ、そういうこと・・・・・・」

 

俺の言葉にレインも気が付いたようだ。それから少し遅れてアスナたちもどういう意味か理解したようだ。

アルベリヒの言葉にこの世界だとわかった理由は。

 

「確かに、ここで起きていることは外の人間・・・・・・。警察や国の人間には知り得ない。知ったところで、この世界で起きた不幸はすべて茅場明彦の責任になる」

 

そう。如何に悪逆非道な人体実験だろうが、すべての責任は茅場に取らされる。つまり、コイツがここで何をしようが現実ではすべて丸ごと茅場のせいとなる。例え向こう側で茅場でないと言ったところで確実足る証拠がないため逮捕はおろか、事情聴取すらも行わないだろう。

 

「そのうえ全員が、脳を操作するための電子パルスを発生させるナーヴギアを被っているんだ。つまりこの世界は、僕の研究にとって最高の実験場なんだよ。だが、実のところ、この世界に来てしまったのは事故でね」

 

「事故・・・・・・?」

 

アルベリヒの事故という単語に眉を潜める。

 

「(どういうことだ?事故でここに来たというのは)」

 

俺がそう思っていると。

 

「このゲームと他のシステムをネットワークで接続させるテストを行っていたら急に知らない場所に転移させられてね・・・・・・。そこがニュースで騒がれてるSAOの中と知ったときには、さすがに焦ったよ。事故でもなければ、こんな訳のわからないデスゲームに、誰が好き好んで入ってくるものか」

 

「ネットワークの接続やら、感情操作の実験やら明らかに普通のプレイヤーじゃないな・・・・・・。これらのことから考えられるのはただ一つ、以前言ったようにお前のアカウントはスーパーアカウントと呼ばれるものだな。そして、そのスーパーアカウントが使えるということはSAO世界を外部から観ていた人間・・・・・・お前は一体何者なんだ!何故スーパーアカウントが使える!?」

 

俺の問いかけにアルベリヒはニタニタとしながら言い出した。

 

「僕かい?僕はこのSAOの統括者だよ」

 

「なに?」

 

「SAOの統括者って・・・・・・この世界の管理者は茅場さんでしょ!?」

 

このSAOを管理しているのはプログラムであるカーディナルシステムだが、それを実際に調整しているのはこの世界で唯一つの支配者にして観測者、ゲームマスターであるヒースクリフこと、茅場明彦だ。

 

「んっふふふふ。茅場なんて、この事件が発生したときから失踪中だよ。そして、SAOを開発したアーガスはすでに解散・・・・・・。現在は、我々レクト社のフルダイブ技術研究部門がこの世界の維持を請け負ってる」

 

「レクト・・・・・・!?」

 

アルベリヒの口からレクトという単語が出た途端、アスナの表情に驚きが出た。

俺の記憶では、レクトとは大手企業の会社だったはずだ。そう思い出していると。

 

「そう、君のお父さんが経営している会社だよ・・・・・・明日奈」

 

「(明日奈?ニュアンスが少し違うが明日奈ってまさか・・・・・!)」

 

そう思っているとアスナの口から。

 

「ひょっとして・・・・・・あなたは・・・・・・須郷伸之!!?」

 

アルベリヒに向かってそう言った。

 

「ようやく気がついたかい?」

 

「アスナ、知っている奴なのか!?」

 

まさかのアスナの知人だということに驚きが隠しきれず、俺はアスナに問う。

 

「ええ・・・・・・。何回か会ったことがあるの・・・・・・。フルダイブ技術の権威ある研究者の一人で、茅場明彦に次ぐ実力を持っているとか言われてるわ・・・・・・」

 

「まったく・・・・・・茅場明彦に次ぐ・・・・・・か・・・・・・。確かに今まで幾度も茅場と僕は技術研究において、比べられることがあった。そのたびにヤツは、僕の一歩先を行っていた。だけど、それはもう終わりだ。茅場は失踪して、現在は生きているかどうかもわからない。築き上げた名誉も、この事件ですべて失った。今や、フルダイブ技術研究者で僕の右に出る者は、いないんだよ。さらに、僕は茅場の作ったこの世界を支配し、名実とともにヤツの上に立つんだ!」

 

「この世界を支配するって、いったい、どういうこと!?」

 

アスナの言葉に俺の頭の中ですべてのピースが繋がった。

 

「・・・・・・コイツが開発側の人間であること、そして今まで起きていた不可解な出来事それらのことから考えられるのは・・・・・・。やはりコイツのアカウントがスーパーアカウントと呼ばれるアカウントだからだろう。恐らく普通のプレイヤーが持つことができない権限を持っているはずだ・・・・・・」

 

「ふふふふふ・・・・・・さすが、その通りだよ、キリト君。これはスーパーアカウントと呼ばれるものでね、開発者のみが使用できるアカウントなんだよ。事故でこの世界に引きずり込まれたものの、スーパーアカウントがそのまま継承されたのは幸運だった」

 

「もしかして犯罪防止コードが発生しなかったのも、人を強制的に転移させるアイテムを持っていたっていうのもすべて・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・コイツの、恐らく別の世界のスーパーアカウントがあったからこそ出来たものだ・・・・・・。上級装備も、妙に数値の高いステータスにも納得がいった。そして、コイツの名前を誰も知らなかったことがな」

 

すべてが繋がったことに、俺は目付きを鋭くしてアルベリヒを、見る。

 

「これだけのステータスがあれば、このゲームを終わらすことも余裕だろ?この世界にいるプレイヤーたちで一通り実験を済ませたら、僕自身がこのゲームを終わらせる。そうすれば、自らデスゲームに飛び込み、人々を救った英雄として、さらに僕は注目されることだろう」

 

アルベリヒの言葉に俺は、は?という台詞が思い浮かんだ。

 

「アルベリヒ、お前は本当に自分がこのデスゲームを終わらせることができると・・・・・・本当に思っているのか?」

 

「当たり前じゃないか。このスーパーアカウントの前に、敵うはずがないのさ」

 

「・・・・・・ゲーム初心者がいきなりこんな最上階のボスを一人で倒す・・・・・・?言っとくぞ、あんたには絶対無理だ」

 

「なに?」

 

「この世界は装備やステータス、そして数値だけじゃない。積み重なった経験がものをいうんだ。俺に勝てないようでボスを倒そうなんて、一生無理だ」

 

「クソガキが・・・・・・・っ!!」

 

「あんたが俺たち攻略組に近づいたのも英雄になる、その為か・・・・・・」

 

「そうとも。その中に明日奈がいるのを知ったときは驚いたけどね」

 

「悪いが・・・・・・お前が英雄になることはない。一生、未来永劫な。向こうに戻ったら、俺たちは警察にお前の悪事をすべてを話す」

 

これだけの人数がいるんだ、ここにいる全員が向こう側でこの事を話せばアルベリヒ・・・・・・いや、須郷伸之は捕まる。

そう思っていると、須郷は。

 

「それは無理な話だよ。何故なら、君たちはここで死んでしまうのだからね」

 

余裕綽々風に言った。

 

「・・・・・・ステータスが高いだけで俺たち攻略組に勝てると思っているのか?」

 

「それに私とキリトくん、アスナちゃんたちはユニークスキルも持ってるんだよ。・・・・・たった一人で私たち攻略組全員、総勢49人を相手できると思ってるの?」

 

ここにいる攻略組全員は、今までの困難を乗り越えてきた猛者だ。

例えスーパーアカウントを使っている須郷といえども、この人数を一人で相手にするのは不可能だ。

俺は背中から双剣を抜き放ってそう脳裏に浮かばせながら須郷を見る。俺に続けてレインたちもそれぞれの武器を抜剣する。

 

「・・・・・・君もつくづくバカだね。出来ると思っているからこうして君たちの前に現れたんじゃないか。さあ、攻略組のみなさんにプレゼントだ!受け取ってくれたまえ!」

 

呆れたように須郷はいい、ウインドウを開き何かの操作をすると。

 

「きゃあっ!」

 

「うっ!ぐっ!?こ・・・・・・これは!?」

 

突然俺たちの体にとんでもない負荷がかかった。

あまりの負荷に俺たちは耐えられずボス部屋の床に倒れた。

 

「な、なに・・・・・・・これ・・・・・・!」

 

「な、なんだ・・・・・・!か、身体が・・・・・・しびれて・・・・・・」

 

「ぐっ・・・・・・動けない・・・・・・・」

 

「ぐうっ!?なにを・・・・・・しやがった・・・・・・」

 

俺たちに何かをした張本人である須郷はそんな光景に愉快だとでもいうように高らかに笑って話す。

 

「アハハハハハハハハッ!!やあ、気に入ってくれたかな?スーパーアカウントを使ってここにいる全員に麻痺属性を発生させたんだ。君たちは一定時間、まともに体を動かすことは出来ないよ。どうだい、これがこの世界の支配者の力だよ!」

 

「き、貴様!」

 

「あ、あなたね!」

 

「キリトくん・・・・・・レインちゃん・・・・・・・」

 

キッと睨み付けるような眼差しで須郷を見る俺とレインにアスナが弱々しく喋る。

 

「ああ、そうそう・・・・・・明日奈。君は殺したりしないから安心してくれ。まあ、実験が終わるまでは何処かに閉じ込めておくことになるけどね。現実の世界では、君が眠り続けている間に、僕と君とが結婚するように話が進んでいる」

 

「な、なにを言っているの!?」

 

「結婚が成立すれば、君のお父さんの会社であるレクト社は僕のものになる。もちろん、そんなことになったら君は拒絶するだろう。でも、僕の研究が完成して君の感情を操ることが出来れば、君は拒絶するどころか喜んで僕を受け入れてくれるだろう」

 

「・・・・・・っ!?」

 

「ひっひっ!!心も身体も僕の物というわけだよ」

 

「き・・・・・・さま・・・・・・っ!!」

 

「ゆる・・・・・・・さない・・・・・・・っ!!アスナちゃんに・・・・・・・あなたは・・・・・・・!!」

 

あまりにも下衆な話に俺とレインは怒りを表し、必死に須郷がかけた麻痺に足掻く。

 

「・・・・・・気に入らないな、レイン君のその眼」

 

そういうと須郷はレインの傍にまでやって来た。

 

「君は殺さずに生かしておくとしよう。僕の研究が完成して君に施せば、君は僕に忠実な女になるだろう。ああ、それとも明日奈と同じ様にしようか?」

 

「き・・・・・・さま・・・・・・っ!レインに・・・・・・手を出すな・・・・・・!」

 

「ああ、そういえばキリト君とレイン君は結婚していたかな?なら、キリト君の目の前で僕に従属を誓わせるレイン君を見せるってのもいいなあ」

 

「・・・・・・っ!?い、いや・・・・・・っ!触らないで・・・・・・っ!!」

 

レインは目を瞑って、恐怖を奮わせて言う。

倒れるレインに近づいた須郷は愉快そうにいいながら、レインの髪を触った。

 

「須郷・・・・・・っ!キサマァ・・・・・・っ!!!」

 

「ひっひっ!!アハハハハハハハハッ!!」

 

高らかに、甲高い声で笑う須郷に俺は怒気を飛ばしながら声を荒げた。

そんな面白そうに一通り笑うと、須郷は立ち上がりウインドウを再び開いた。

 

「さて、長話はここまでだ。それでは、君たちの最後の相手はコイツにやらせるとしようかな」

 

ウインドウを幾つか操作しウインドウを閉じると、モンスターが出現するポップ音が目の前から聞こえた。

見ると、そこには赤いローブを着た、魔導師のような姿をしたボスが出現していた。そして、それはとても見覚えがあった。俺たち全員が。

 

「そ・・・・・・そいつは!?」

 

「あ・・・・・・あの時・・・・・・。デスゲームが・・・・・・はじまったときに・・・・・・私たち全員の前に・・・・・・現れた・・・・・・!」

 

現れたボスは、あの時。このデスゲームがはじまったときに茅場が使っていたアバターだったのだ。

 

「ん?コイツを知っているのか?どうもこのゲームのラストのボスとして用意されていたものらしいんだが・・・・・・・。まあ、君たちにとってはこれが本当にラストバトルなわけだし、ちょうどいいじゃないか」

 

須郷がそういうと、赤いローブを着たボスの眼と思われる部分の空洞に二つの光が灯り、須郷には近寄らず倒れ伏す俺たちに向かってきた。

 

「さあ、なにもすることができない中で、にじり寄る死の恐怖に怯えながらゆっくりとおやすみ・・・・・・アハハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからなす統べなくボスの攻撃を受け続けて俺たち全員のHPはすでにイエローにまで入っていた。幸いにもまだ誰も死んでいないが、それもこのままでは時間の問題だろう。

 

「ぐっ・・・・・・っっ・・・・・・・!!」

 

「キリト・・・・・くん・・・・・・!」

 

ボスの攻撃を受け、痛みに耐えていると。

 

「どうだい。死が迫る恐怖は?全身が恐怖で震え上がっているのかな?それとも絶望で埋め尽くされているのかな?ああ、どうせなら今のキリト君の感情データも記録しておくべきだった」

 

「くっ・・・・・・!」

 

「わかっただろう?これが、この世界の支配者の力というものだ。君たちは長い年月をかけて、必死にレベルを上げたんだろうけど、スーパーアカウントの前では無力だったね。どんなにリアルに作り込まれていても、所詮この世界は、ただのデータの集まりだ。どれだけ時間をかけようが、犠牲をかけようが管理者・・・・・・つまり神にはどんなにあがいても敵うはずがないんだよ、アハハハハハハ!」

 

「き、貴様・・・・・・!」

 

須郷の言葉に俺は怒りをさらに高まらせた。

 

「(このアインクラッドに生きる人たち・・・・・・。そして死んでいったサチやケイタ、ディアベル、色んな人たち・・・・・・。俺や彼らの過ごした時間が・・・・・・。そこで確かに生きていたすべてがただのデータだと・・・・・・!ふざけるな・・・・・・!)」

 

「二年以上もの間、無駄な努力をしたようだねごくろうさま」

 

須郷のそんな言葉に俺は四肢に力を込め、須郷の施した麻痺に、いや、システムに抗う。

 

「ふ・・・ざ・・・け・・・・・・な・・・・・・!」

 

「ゆる・・・・・・せない・・・・・・!」

 

俺とレインは声に出して少しずつ声を上げていき。

 

「ん?」

 

「ふざけるな!」

 

「絶対にゆるさない!」

 

瞳に、体全体に意思を込めシステムに抗い。

 

「な!?」

 

「う・・・・・・お・・・・・・・」

 

「あ・・・・・・ああ・・・・・・」

 

「なに?」

 

「う・・・・・・ぐおおお・・・・・・・!」

 

「あ・・・・・・ああぁぁ・・・・・・!」

 

「おおおおおおおおお!!」

 

「あああああああああ!!」

 

双剣を手に携えて、立ち上がり背中合わせに何時もの構えを取る。

 

「ば、馬鹿な!麻痺を解除しただと!?それになんだその瞳は!?」

 

動揺する須郷を他所に、俺とレインは目の前のボスを視線にとらえる。

 

「よし、動ける」

 

「私も動けるよ」

 

「まずはアルベリヒの前にコイツを片付けるぞ!」

 

「うん!いくよ、キリトくん!」

 

「ああ!」

 

意識を集中させ、俺とレインは同時に言い放つ。

 

「「―――――共鳴(レゾナンス)!!」」

 

 

 

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