ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
~キリトside~
「「――――――
須郷の施した麻痺を解除し、両手に剣を持って立ち上がった俺とレインは同時に≪シンクロ≫スキルの《共鳴》を発動させた。
そしてさらに。
「零落白夜!」
「絢爛舞踏!」
俺とレインの固有スキルを発動させる。
共鳴の効果もプラスされて、俺とレインのHPバーの上には幾つものバフが掛けられていた。
「いくよ、キリトくん!」
「ああ!最速でアイツを倒す!」
そう言うや否や、俺とレインは残像が残るかのような速度でボスをに接近する。
「はあああぁぁっ!」
「やあああぁぁっ!」
端から二手に分かれて回り込むように接近し、ボスの巨体を横一文字に切り裂く。ボスの着ている紅いローブには、前後に赤い斬られた痕とエフェクトが残る。
「―――――――!!」
「バ、バカな!この僕でも捉えられないだと!?あり得ないだろ!!」
ボスと驚いている様子と、自分一人だけ安全地帯にいる須郷は耳障りな声であり得ないと、声を荒げた。
「す、すごい・・・・・・」
「あれが・・・・・・」
「キリトとレインの・・・・・・」
「二人の本気ってことか・・・・・・」
「けど、いくらバフが掛けられてるからって言っても、あの反応速度と攻撃速度はシステムを越えているわ」
そして麻痺に足掻いてるアスナたちのそんな声も聞こえてきた。
「キリトとレインのあの瞳・・・・・・・あのときと同じ・・・・・・・」
そしてフィリアのそう言う呟き声が耳に入った。
今の俺には時間が停まっているかのような体感が感じ取れていた。ボスの攻撃は、さすがラスボスなだけあって速くて重い。固有スキルでHPが全快しているとはいえ、スカルリーパーみたいに一撃で殺されたりはしないだろうがHPがごぞっと削り取られるのは眼に見えているだろう。ギリギリなところでボスの攻撃の軌道を逸らしたり、大きく距離を取ってかわす。
「レイン、先にヤツの腕を破壊する!」
「了解だよ!」
このボスの攻撃は今のところ、両腕による薙ぎ払いや叩き付けなどの近接攻撃と、ボスの体から扇状に放たれるビームによる遠距離攻撃、そして全方位に放たれる衝撃波だ。
現状、倒れてるアスナたちの方に攻撃の余波やヘイトがいかないようにレインと交互にタゲを取りつつ立ち回っているが。
「―――っ!」
ギリギリでボスの両手を組んでの振り下ろしを避け、ボスの背後に回る。
「っのぉ!」
背後に回り込んだ俺は片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》8連撃を繰り出す。
「――――――!!」
「レイン!」
「うん!」
ソードスキルの技後硬直を無視して、俺はレインとスイッチする。
「やああっ!」
「――――――!!」
スイッチしたレインは、俺の《ハウリング・オクターブ》によって動きが止められたボスに、≪多刀流≫ソードスキル《ディバイン・エンプレス》15連撃を追撃で放った。
「まだまだぁ~!」
「!?」
レインは驚くことに、そこから≪多刀流≫ソードスキル《ローディエント・ルージュ》6連撃を繰り出した。
そう、それは俺があの時使ったソードスキルを次のソードスキルへと技後硬直を無視して繋げるスキル。
「
「え、あ、うん!」
《ローディエント・ルージュ》を放ち終えたレインはボスから大きく距離を取って、俺の横に並び立った。
「まあ、出来るようになったのはこの間だけどね」
「なんでさっきのボス戦で使わなかったんだ?」
「あ~・・・・・・私の剣技連携、できる確率が50%あるかどうかなんだ。だからあの時は使わなかったの」
「今は?」
「えっとね、今は出来る、ということしか思い浮かばないよ!」
「そ、そうか」
レインの自身に少しだけ退きながらそう答えた。
「・・・・・・ヤツのHPは残り二段か」
ボスとやり始めて時間は5分経過していた。
「キリトくん、もう速攻で片付けようよ」
「奇遇だなレイン。俺もそう思っていたところだ」
「それじゃあ」
「うん」
「――――――!!」
「「
振り下ろされたボスの両手を左右に避け同時にスキルを発動する。
地面に着地すると、HPゲージの上のバフに神々しい輝きを放つアインクラッドの紋章が表示される。
「いくぞ!」
「いくよ!」
着地すると同時に俺とレインはボスに向かって、地を蹴って駆け出す。
「――――――!!」
「はあああぁぁ!」
無造作に突き出されたボスの手を避けて、その巨大な腕の上を駆け上り、頭から一刀両断するように切り裂く。
「――――――!!」
「やあああぁぁ!」
そして、続けてレインが背後からソードスキルで追撃を掛ける。
「――――――!!」
ボスは両腕を振り回してレインを攻撃しようとするが、その場に既にレインはいなく、誰もいない虚空を振り払っただけだった。
そこからは圧倒的な俺とレインの剣戟にボスはただ振り回されているだけだった。
ほぼ会話なしの、俺とレインの息の合ったコンビネーションにボスは無茶苦茶に攻撃を仕掛けるが、そのどれも今の俺たちには掠りもせず、二段目のHPは神双解放を発動して5分で消し飛び、残り一本のゲージも3分で半分のイエローゾーンにまで減少していた。
「――――――!!」
満身創痍の巨体のボスはスタン効果のあるビームを放ってくるがそれを左右に避けて、同時にクロスに切り裂く。
「これで終わらせるぞ!」
「そうだね!」
ボスの背後に回った俺とレインは意識を集中させ、背中合わせに俺の右手の『エリュシデータ』とレインの左手の『キャバルリーナイト』をクロスするようにして重ね合わせた。そこへ俺とレインを包み込むように黒金と虹色の交じりあったオーラがベールのように円錐上に包みこんだ。それから約5秒ほど溜め込み。
「――――――!!!」
「「ッ!!」」
ボスが俺たちに攻撃してくるのと同時に俺たちも
「――――――!!?」
俺とレイン、二人で放つ最強の剣技が放たれた。
発動したソードスキルは俺の双剣には黒金の、レインの双剣には虹色のライトエフェクトを輝かせた。
システムの限界を越えた、最強にして最凶のソードスキル。一撃にて数擊行い、幾重にも切り刻む。
「「―――トワイライトエデン・・・・・・・」」
幾数の斬撃を会話すらせずに、レインと意気のあったコンビネーションで繰り出し、≪シンクロ≫スキルのバフと自分のステータスをシステムの限界を越えるまでに引き上げた秘奥義を放つ。ラスト2撃、俺の『エリュシデータ』による横凪ぎ払いとレインの『トワイライトラグナロク』の横凪ぎが交差するようにボスの巨体を捉え。
「「―――デュオクライシスッ!!!!」」
そのHPを1ドットも残さず奪い尽くした。
半分近くあったHPゲージが一気にゼロになり、≪シンクロ≫ソードスキル秘奥義《トワイライトエデン・デュオクライシス》100連撃の余波で風がボス部屋の中を吹き荒れるなか、目の前のボスはポリゴンが一瞬ぶれたかと思うと次の瞬間には爆散して辺りの虚空に溶け消え去った。
「これでボスは倒した」
「そうだね。あとは――――!」
ボスを倒し、剣を再度握り直し俺とレインは須郷を睨み付ける。
その須郷はというと。
「バ、バカな・・・・・・!?あり得ない!たったの15分足らずであのボスを二人で倒しただと!?」
眼を見開いてあり得ないと何度も言っていた。
そしてそれと同時に。
「ようやく麻痺が解除されたぜ」
「ええ」
クラインとランの声が聞こえ、周囲から続々と須郷のした麻痺で動けなくなっていた攻略組の面々が立ち上がった。
「みんな!」
「―――そろそろ観念するんだな須郷!」
みんなが立ち上がりそれぞれの武器を手に取るなか、俺は須郷にそう言った。
「くっ!観念しろだと?ふざけるなっ!」
「この多勢に無勢の中、貴様に勝ち目があるとは思えないぞ」
「いい加減、大人しく投降したら」
須郷の声に俺とレインは殺気をかなり出して返す。
「さっきはどうしてお前たちの麻痺が解除されたのか知らないが、今度はそうはいかない!」
「また性懲りもなく卑怯な手を!」
「そうはさせないよ!」
ウインドウを開いた須郷に向けて、レインはなんの躊躇もなくサウザンド・レインを放った。
「ちっ!邪魔をするな、この女!」
しかし、レインのサウザンド・レインは須郷に当たる直前に、不可視の障壁で阻まれ、あと少しのところで当たらなかった。
「!?今のは・・・・・・・!」
レインのサウザンド・レインが阻まれた障壁は、何度も見たものだった。
「――――
そう、破壊不能オブジェクトの障壁だった。
「ちっ!スーパーアカウントで自身に不死存在をしたのかよ・・・・・・!」
「どれだけ卑怯な事をすれば気がするの!」
俺とレインが忌々しげに睨み付けると。
「どうとでも言え!一度ここにいる僕以外の連中の状態をリセット・・・・・・。それから再度、状態を麻痺に設定・・・・・・これでどうだっ!?」
ウインドウを操作した須郷がそう言う。
すると、立ち上がったばかりのアスナたちはその場に膝を着いた。
「ま、また・・・・・・っ!」
「こっ・・・・・・のぉ・・・・・・!」
「これしきで・・・・・・・っ!」
ユウキたちは麻痺に抗うように、顔を歪めて気合いを入れていた。
ユウキたちが倒れ伏すなか、俺とレインは麻痺を、システムを拒絶して麻痺と意思で対抗していた。
「なんだよ・・・・・・!なんなんだよお前らは!」
須郷の絶叫が俺たちの耳に入った。
「なんで麻痺に設定してるのに倒れないんだよ!なんなんだその瞳は!僕はこの世界の神だぞ!ガキ風情がっ・・・・・・この僕に・・・・・・っ!逆らうなぁっ!!」
そう声を荒げて言うと再びウインドウを表示させ。
「システムコマンド!ペインアブソーバをレベル0に!!そして、すべての状態異常を二人に指定!!」
「ぐっ・・・・・・!」
「きゃっ・・・・・・・!」
さすがに須郷の設定した状態異常に、今度は対抗できなかった。須郷が設定した状態異常は麻痺の他、毒、出血、スタンなどこのアインクラッドにおけるデバフ全てだった。抵抗はしてはいるが、身体がいうことを聞かないのだ。須郷の設定した状態異常のせいか、身体がいきなりとてつもなく重くなり、まるで背中に鉛鉄をたくさん背負っているような感じで、ボス部屋の床に片膝を着いた。
「あはははははははは!!今度は効いたようだね!」
「す・・・・・・ごう・・・・・・っ!貴様・・・・・・っ!!」
「さて、まず最初にキリト君から殺そうかな?いや、それともキリト君の目の前で、大切な人がこの世から消える姿を見せてから殺そうかな。どれがいいかいキリト君」
「そうは・・・・・・させない・・・・・・っ!!」
「あー、うっさいな。君は僕の質問に答えればいいんだよ、っ!!」
「ぐあっ!」
「キリトくん!」
須郷に顔を蹴られ、膝立ちから倒れ伏した俺に、とんでもない痛みが襲い掛かってきた。
「どうだい?今はペインアブソーバを0にしてるからねえ、痛いだろう?ものすごく痛いだろう?・・・・・・なんとか言えっ!!」
「ぐはっ!」
あまりの痛さに喋ることがままならない俺に、須郷はさらに俺に向かって蹴ったりしてきた。
「あっはははははは!!これが神の・・・・・・!僕の力なんだよ!君たちはそうやって地べたに這いつくばっているのがお似合いさ」
「キリト・・・・・・くん・・・・・・・!」
「キリト・・・・・・・!」
「キリト・・・・・・さん・・・・・・・!」
「やれやれ。どいつもこいつも・・・・・・」
俺に向かってレインたちは倒れ伏しながらも声をかけてくるが、それが気に入らないのか、須郷は溜め息を吐くと。
「なにを・・・・・・!」
俺の大切な双剣。『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』の柄を握り締めた。
「さて、質問だよキリト君。今ペインアブソーバが0の君に、この剣を突き刺したらどうなると思う?」
「・・・・・・・っ!?」
須郷の台詞の意味がわかった俺は顔を強張らせる。
その俺の表情に満足したのか須郷は。
「ヒッヒッヒッ!答えは、自分の身で感じるといい!!」
「や、やめ・・・・・・やめて・・・・・・・やめてぇぇ!!」
レインの悲鳴とともに須郷は俺の双剣の切っ先を俺に向け、双剣を俺の身体に思いっきり突き刺した。
「ガアアアッ!!」
焼けるような痛みに、声にならない悲鳴を上げた俺は、あまりの痛みに気を失いそうになった。
「キリトくん!!」
「キリト!」
「キリトさん!」
「あはははははははは!!かの≪黒の剣士≫もこれでおしまいさ!あとは、この武器で止めを刺すだけさ」
朧気に見える少し離れた所にいる須郷の右手には、見たことない、禍々しい黒紫の短剣が握られていた。
「冥土の土産に教えて上げるよ。この武器はね、スーパーアカウントのみが使える数ある武器のなかでも中々面白いものでね。なんと、刺した相手のHPを必ず0にする。しかも、一瞬ではなくて、ジワジワとだ」
「!?」
「どうだい?今目の前に死があるという光景は?ああ、こんなことならキリト君の感情データは録っておくんだったなあ。僕にだけ教えてくれないかい?目の前に死があるという恐怖の感情をさあ!ヒッヒッヒッ!」
「・・・・・・・!!」
迫り来る須郷の短剣に、動けない俺は成す術がなかった。どれだけ意思を込めても身体がいうことを聞かないのだ。恐らく、あまりの痛さに、反応が伝わってないのだ。
そう思いながら、俺は最後の足掻きとして身体全体に意思を込める。HPは少しずつ減っていっているが、まだ少しだけある。HPがあるなら俺はまだ動けるはずだ。そう固い意思を込めて。
「さあ・・・・・・これでお別れだキリト君。精々安らかに、あの世に逝くと良いさ!」
「ぐっ・・・・・・!」
動け!、と意思を込めるがビクともしない俺に、須郷の持つ、死の短剣が少しずつ迫る。
「キリト!」
「キリトさん!」
「キリトくん!」
ユウキたちの声が耳に入る。
スローモーションのように目先の短剣の切っ先が迫るのを見る。すると、突然目の前に影が出来た。
「キリトくんは、私が・・・・・・絶対に守る!!」
「レイ・・・・・・ン・・・・・・・っ!!」
俺と同じく須郷の設定した状態異常で動けずにいたはずのレインが俺の目の前に両手を広げて盾のように俺と須郷の間に入ったのだ。
「・・・・・・・!!」
俺の目の前に立ちふさがるレインへと切っ先が1メートル弱を切ったその瞬間。
「ダメェ!!」
そんな声が聞こえてきた。
「え・・・・・・っ?!」
その声の持ち主は立ちふさがるレインの身代わりになるように、須郷の短剣の目の前に立ち、須郷の短剣をその身に受けた。
あまりの一瞬の出来事に、反応できずにいるが、やがて思考が回復し、レインの目の前を見るとそこには一人の紫色の髪と服を着た女性が立っていた。そして、その女性のお腹には須郷の短剣が突き刺さっていた。その女性は、俺たちのよく知っている人物だった。
その人物は――――――。
「キリト・・・・・・レイン・・・・・・大、丈夫?」
「ストレア!」
「ストレアちゃん!」
俺たちの仲間の一人、ストレアだった。