ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い   作:ソーナ

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LS編 第150話〈ギルド・シャムロック〉

 

〜キリトside〜

 

新エリア、スヴァルトアールヴヘイムに降り立った翌日、俺達はエギルがこそこそして準備していた喫茶店兼武具店兼買取屋のエギル出張店舗に招かれた。

エギル曰く、本土にある店にわざわざ戻るのは面倒だということでここに店を出店したとの事だ。店内は様々な店が合わさった複合店で、ここにはリズの工房も備え付けられていた。どうやらリズもエギルのこれに一枚噛んでいたみたいだ。レインは知らなかったみたいだし。そして、俺達のもう一人の仲間、鼠のアルゴこと情報屋アルゴがここに来たのだ。彼女にも声をかけたのだが来れるとは思わず少し驚いていたりする。

とまあ、そんなこんなで驚きがありつつもスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデの攻略をして、ラインに戻りエギルの店の喫茶店で一息しているところにリーファが。

 

「みんな、OSSは知ってるよね?」

 

と、訊ねてきた

 

「ああ。《オリジナルソードスキル》の事だよな」

 

「うん。あたしが前にログインしてた頃は無かった遊び方なんだ」

 

オリジナルソードスキル、通称OSSはこのALOに新たに追加されたプログラムだ。SAOの基幹プログラムを引き継いだ、このALOはあの世界のスキルであるソードスキルを発動できる。中でもこのOSSはSAOにも無かった新たなスキルだ。

OSSはその名の通り、自分で作成した新たなソードスキルのことだ。

 

「OSSが実装された時はかなりのプレイヤーが作成しようとしたみたいだけどな」

 

「今は、作ろうとしてるプレイヤーすら余りいないんだよね」

 

「まあ、当然でしょうね」

 

「だね」

 

OSSは既存するソードスキル。《バーチカル》や《リニアー》、《ヴォーパル・ストライク》などと同一ではなく、一から作らなければならないのだ。それも、ソードスキルと同じ速度で。そのため、難易度が高いOSSは殆どのプレイヤーが作成を諦めているのだ。しかし、一部のプレイヤーはこのOSSの作成に成功している。

それはもちろん俺達もで───。

 

「OSSを一つ作るだけでも凄いのにキリト君達は十個以上作っちゃうんだから」

 

呆れた眼差しで俺とレイン、ラン、ユウキを見てくる。

俺達はなんとも言えない表情で引き攣り笑いを浮かべる。

そう、俺達、俺、レイン、ユウキ、ランはOSSの作成が出来ているのだ。ちなみにアスナ、リーザ、ラムも作成してある。

 

「いや、試しに二刀流ソードスキルをやってみたら出来ちゃった、的なやつなんだけど」

 

俺達のOSSは大半がSAOの世界でのユニークスキル、《二刀流》や《多刀流》のソードスキルだ。まあ、俺だけのOSSという物もあるが。

 

「むー」

 

「まぁまぁ。リーファちゃんも一つ出来てるんですよね」

 

ムクれるリーファをランが宥めながら聞く。

 

「うん。片手剣のOSSだけどね」

 

一応リーファ自身もOSSを一つ保持している。他に持っているのはフィリアとストレア、シノンぐらいだ。シリカとリズはほぼ断念しており、エギルとクラインは今も作成の努力をしている。

 

「それにこのOSSは人に渡せるんだよね」

 

「はい。別のアバター1人に限定して、育てたOSSを渡せますね」

 

「といっても、あくまでそれは作成者が作りだしたソードスキルを使えると言うだけで熟練度までは引き継げないんだよね」

 

「ああ。結局そのソードスキルを貰った側もゼロから育てていかなきゃダメなんだよな」

 

テーブルに置いてあるそれぞれの飲み物を飲みながら会話をする。

結局のところ、一からやらなければならないという事だ。

 

「あ。ユウキは確かアスナさんのOSS《スターリィ・ティアー》を貰ってましたよね」

 

「うん。ボクもアスナにOSS《マザーズ・ロザリオ》を渡してるよ」

 

アスナとユウキはいつの間にか、それぞれのOSSを交換していたのだ。その事を知った時のランの様子は呆れが大半だった。

 

「私のOSS《サウザンド・レイン》は多分私以外使えないと思うしなあ〜」

 

「私の《ラスティー・ネイル》もそうですね」

 

レインとランのOSSのそれは多分当人しか使えないと思う。そう思いながら珈琲を飲んでいると。

 

 

「やっぱりセブンちゃん、すげぇよなぁ・・・・・・。こんなに良い歌を何曲も作り続けながら、MITを主席で卒業だろ」

 

「しかもあの可愛さったら尋常じゃないわよ。ああ〜ん、セブンに近づけないかしら?」

 

「おいおい、止めておけよ。お前には、セブンちゃんをお守りするギルド、シャムロックに入るのは無理だぜ。あいつら護衛隊みたいなもんだし、一人一人がとんでもない力を持ったプレイヤーらしいぜ」

 

「俺、シャムロックの入隊試験落ちたけど、ずっとセブンちゃんを応援し続けるんだ!」

 

「俺なんてこの間、七色博士の実物を見ちゃったもんね〜!」

 

「えっ!?どうやったの!?」

 

「この間来日した時にテレビでインタビュー受けてたろ?その情報を先にリークしてもらってさ、スタジオの前で出待ちしてたんだよ!セブンちゃん、手を振ってくれたぜ〜!ああ〜超かわいかった〜!」

 

「くっ・・・・・・羨ましい・・・・・・!」

 

 

そんな会話が耳に入ってきた。

声のしたところを見ると、他種族のパーティが話しているみたいだった。まあ、それはそれとして、俺の視線はそのパーティプレイヤーの髪に付けられてる羽飾りに注目した。

 

「ん?あの羽飾り、どこかで見たような・・・・・・」

 

「あ!あの時の人達が付けていたのと同じやつだよ」

 

「ああ」

 

リーファの言葉でどこで見たのか思い出した。最初のクエストを受けた時に、同じクエストを受けていたプレイヤーの頭部に付けられていたものだ。

 

「だが、あれは音楽妖精プーカの装飾のはずだ。なんで付けている奴らの種族はバラバラなんだ・・・・・・?」

 

プーカの装飾という事は、プーカには意味があるが、他種族は付けても対しても意味が無いはずだ。俺のそんな疑問に答えたのは。

 

「あれは、シャムロック信奉者・・・・・・歌姫セブンのファンである証だよ」

 

能面のような顔で彼ら、いや、羽飾りを見るレインだった。

 

「ファンである証ですか?」

 

「つまり歌姫セブンの歌が好きってことレイン?」

 

ランとユウキもよく分からないみたいでレインに問う。

 

「ううん。それは大前提で、最近、セブンという一プレイヤーだけじゃなくて・・・・・・七色・アルシャービン博士。七色博士に対しても心酔している証みたいなものみたい。たまにALO内で、リアルで自身が研究してる仮想現実理論の講義をやってて、大人気みたいだよ」

 

「・・・・・・その講義を聞きに来ているプレイヤーは、理論が気になるというより、セブンというプレイヤーを見に来てるのでは・・・・・・」

 

「あはは。たぶん、大半のプレイヤーはそうじゃないかな」

 

ランのドンピシャな疑問にさすがのレインも苦笑いで言う。

 

「なるほどな・・・・・・!なんでもできりゃ、そのプレイヤーにとっては神々しく見えてくるわけだ」

 

「うーん。ただのアイドルを追っ掛ける人みたいに見えるけど」

 

「ははは。あたしもユウキに同意です」

 

さっきのパーティの話を聞いて呆れた表情をしていうユウキに同意するリーファ。よく見たらランとレインも同じだった。かく言う俺も同意だが。

 

「・・・・・・・・・・キリトくん、もしかして七色博士に興味を持ってる?」

 

ジト目で問いてくるレイン。

 

「い、いや・・・・・・それ以上は何もないからな」

 

「ふふっ、わかってるよキリトくん。キリトくんがロリコンじゃないことは」

 

「レインさんっ?!!?」

 

「「えっ?」」

 

レインの言葉にユウキとランが驚いた顔で俺を見てきた。リーファは笑っていたけど。

 

「キリト。キリトってロリコンなの?」

 

「キリトさんってロリコンだったんですか・・・・・・?」

 

「いやいやいや!!違うから!レインも冗談でも言わないでくれ!」

 

「うふふっ。ゴメンねキリトくん。二人とも大丈夫だよ。キリトくんはロリコンじゃないから」

 

「だよね、良かった〜」

 

「はぁ〜。安心しました〜」

 

「なんで二人は俺がロリコンだと思ってんだよ・・・・・・」

 

ホッと胸を撫で下ろす二人に俺は半目で見て言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

 

 

「なんだあれ?」

 

「なんだかすごい人だかりだね・・・・・・」

 

順調にスヴァルトアールヴヘイムを攻略している最中、空都ラインの噴水広場でかなりのプレイヤーが集まっているのを目にした俺達は不思議に思いその人だかりに近づいた。

すると。

 

『『『おおおっーー!!!』』』

 

一際大きな歓声が上がった。

 

「わっ!どうしたんだろう?」

 

「なにかあったのでしょうか?」

 

彼らの視線の先を見ると、そこには数名のプレイヤーに囲まれながら、周囲のプレイヤーに笑顔で手を振っている音楽妖精プーカの少女がいた。

 

「あいつらは・・・・・・!」

 

「ああ、あれが・・・・・・例の子ですか」

 

「・・・・・・歌姫セブン・・・・・・」

 

その少女は、今巷で有名の歌姫セブンその人だった。どうやらここにいるプレイヤーは彼女を見に来たらしい。

 

「みんな〜!元気〜〜!?セブンはとっても元気だよ〜!!」

 

『『『おおおおっ!!!』』』

 

「うわっ・・・・・・!」

 

セブンの声にさらにボルテージが上がった周囲のプレイヤーの気迫に、さすがの俺も驚いた。

 

「セブンちゃんもついに新エリアに来たんだねー!!」

 

「今日もかわいいーー!!!」

 

「新曲聴いたよ〜〜!!!最高だったーー!!!」

 

「俺、レア素材ゲットしたんだー!!だからシャムロックに入れて〜〜!!」

 

「バーカ!お前の実力じゃシャムロックに入れてもらえねーよ!」

 

辺りからはそんな声が聞こえてくる。

 

「す・・・・・・すごい人気だな」

 

「はい・・・・・・。彼女の信奉者がこんなに多かったなんて思いませんでした」

 

「私も・・・・・・これ、結構な人数よ」

 

俺、ラン、アスナは彼女への人気に唖然ともいえる驚きを出していた。正直、ここまでとは思わなかったのだ。

 

「まさにアイドルって感じね」

 

「そうだね。かわいいし、歌も歌えて、それでいてリアル世界の超天才・・・・・・色んな要素が複合的に話題性を呼んで、これだけのファンを作ってるんだろうね。音楽妖精プーカっていうのもなんかしっくり来ちゃうよね」

 

「そうだね。あの種族を選ぶ人って、かなり少ないって聞いてるし」

 

リーザ、ストレア、フィリアも次々に言う。

フィリアの言う通り、ALOにある九つの妖精の中で音楽妖精であるプーカはあまり選ばれない。理由は単純に人気がないのと、スキルが戦闘ではなくサポートに特化・・・・・・しているとは言えないが、能力的に他八種族に比べて低いのだ。そういうわけで、音楽妖精プーカのプレイヤーは滅多に居ないのである。ちなみに、シルフ、サラマンダー、ウンディーネは人数が多く人気である。

 

「それはそれとして・・・・・・キリト」

 

「ああ」

 

ラムの言葉に、俺は視線をセブンの隣にいるウンディーネの男に向けた。

 

「あの隣にいる男・・・・・・あいつ・・・・・・。かなり手練だな。凄い気迫を感じるぜ・・・・・・」

 

「ええ。佇まいからも他のプレイヤーより上だとわかりますね」

 

元攻略組である俺達はそのプレイヤーからとんでもない気迫を感じていた。もしSAOにいたら俺達と同じ攻略組に所属していたかもしれない。できることなら───

 

「・・・・・・一度手合わせ願いたいな・・・・・・」

 

と思う。

 

「・・・・・・・・・・」

 

当のそのプレイヤーは無言で、セブンの傍から離れずに腕を組んでいた。

 

「なるほど。あれが・・・・・・セブンちゃんか」

 

「なんだクライン、お前も見ていたのか。どうした?お前の好みは確か大人の女性だっただろ?」

 

「ま。まぁな。セブンちゃんはちょっとかわいいな〜って思うけどよ」

 

「クラインさん、お願いですから犯罪者にはならないでくださいね」

 

「ならねぇよ!」

 

本気で心配するラムにツッコむクライン。ほんと、知り合いから犯罪者ってのは勘弁してほしい。

 

「それにしても凄い取り巻きの数ね。この人達みんなあの子のギルド・・・・・・えーと、シャムロックの一員なの?」

 

シノンの言う通り、辺りは結構な人がいた。シノンの疑問に答えたのは。

 

「きっと違うと思うなー。ほとんどがただの見物客か熱心なファンか・・・・・・。シャムロックはあの子の周りにいるほんの一握りの人達だけだね」

 

「へぇ・・・・・・フィリア、詳しいじゃない」

 

「まぁね〜。情報収集はトレジャーハンターにとって欠かせないから。・・・・・・って、あれ?キリトは驚かないの?」

 

「ああ、実は俺もシャムロックについて調べてたんだよ」

 

「へぇ」

 

フィリアに聞かれた俺は普通に返す。シャムロックについては調べていたためあまり驚かない。隣にいるレインも知っていたみたいであまり驚いてる様子はない。が、レインの様子がおかしいのが気になった。レインの視線は真っ直ぐ、セブンへと向けられていた。

 

「レイン?」

 

「え?あ、なに、キリトくん?」

 

「いや、熱心にセブンを見ていたからどうしたのかなって」

 

「ううん!なんでもないよ。・・・・・・なんでも」

 

ここ最近レインの様子がおかしい事に心配になりながら、シャムロックを見る。

 

「なるほどね・・・・・・。まあ。つまりシャムロックは選りすぐりの精鋭部隊って事ね」

 

「そうみたいー。それにねー、あのセブンって子、すんごく弱いの。ステータスだってアタシ達の誰よりも貧弱だしー」

 

「そうなの・・・・・・?でもシャムロックってギルドはALOの中じゃ、かなり高ランクなんでしょう?」

 

「うん、そう。シャムロックに所属するプレイヤー達は相当な手練ばかりだよ・・・・・・つまり・・・・・・」

 

「あの子は自分で戦わずに、周囲に戦わせてギルドとしての戦績を上げているという事だ」

 

「自分で戦わずにそういう風に攻略していくスタイルもあるのね・・・・・・」

 

「でも、そのやり方私はあまり好きじゃありませんね」

 

「ボクもかな。なんか面白くない」

 

「私もそうかも。リーザちゃんとラム君はどう?」

 

「私も同じですよ」

 

「俺もですね。団長もそんな感じでしたけど、ボス戦とか大切な戦闘には必ず出てましたから」

 

ギルド血盟騎士団だったアスナたちはシャムロックの有り様に批判的だった。まあ、それは俺も同意する。確かにそれはひとつのスタイルなのだろうが、正直、面白くない。

 

「クエストランキング上位百人の中にシャムロックのメンバーがなんと三十人もいるんだよー!そしてその中でも最強なのが・・・・・・」

 

ストレアがそう言った時、俺は視線の隅に見覚えのある人物がいるのに気付いた。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あ、あんた・・・・・・。サラマンダーの将軍の・・・・・・」

 

それはALOで最強だと言われていたらしいサラマンダーの将軍。ユージーンだった。ユージーンの視線は忌々しいとでも言うような感じで、その視線は真っ直ぐセブンの隣に立つ男に向けられていた。

 

「クッ・・・・・・!」

 

「えっ?」

 

「ふん・・・・・・」

 

「な・・・・・・なんだったんだ?今の・・・・・・」

 

踵を返して立ち去るユージーンを見ながら俺はそう口走る。

彼の性格からしてセブンには興味が無いだろう。そう思っていると。

 

「今ユージーンが睨みつけていたイケメン、スメラギがシャムロック最強と言われてるの!」

 

フィリアが言ってくれた。

 

「あの刀を持ったウンディーネの男だな」

 

「ユージーンは先日のデュエルであのスメラギに敗れたらしいよ」

 

「あのユージーン将軍を!?そんな・・・・・・」

 

リーファの驚きから、ユージーンが敗れたことに実感がわかないのだろう。

 

「あっ、そういえばそのスメラギって人はね。あのセブンちゃんが最も信頼を置いてる人物らしいよ」

 

「ユージーン将軍にスメラギか・・・・・・。でも俺もいつか戦ってみたいな。正々堂々と・・・・・・」

 

そう思いつつ呟く。

その時俺は気づかなかった、レインがセブンを見て呟いたことに。

 

 

「・・・・・・気に入らないな・・・・・・七色のやり方・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

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