ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
~キリトside~
歌姫セブンの人気について、改めて実感した俺達は、セブン率いるギルドシャムロックに注意しつつスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデの攻略を進ませていた。
その途中、スメラギが率いていると思われるシャムロックの攻略パーティと会合した。特に話はしなかったが、攻略パーティの一人、サラマンダーのプレイヤーに攻略のヒントをもらい俺達は攻略に必要なアイテムを得に教えて貰った洞窟遺跡に来ていた。
のだが―――
「この扉開かないよ~」
洞窟遺跡の扉の前で扉が開かず俺達は立ち往生していたのだった。
「どこかで鍵を手に入れないといけないな」
そう言いなにか情報がないか悩んでいると・・・・・・
「よお!キリト達もこの遺跡にたどり着いてたか。だが、その調子だとまだ手に入れてないみたいだな」
クラインがやって来てそう言った。
クラインのその言葉にハッ!と感じ、
「クライン、もしかして!」
と、聞いた。するとクラインは。
「おうよ!ほら、たぶんここの鍵だぜ」
ストレージから一本の鍵アイテムをオブジェクト化して、目の前の扉の鍵の差込口に入れた。
クラインの鍵は扉の鍵穴にスっ、と入り、
「やった!開いたよ!」
扉が上に上がり開いた。
「よくここの鍵を持ってたなクライン」
「実はNPCから情報を集めててな。お前達に伝えようとしたんだが、ちょうどオレがここの鍵を持っていたからな。助かっただろ」
「ああ。ありがとうなクライン」
「へへ。どうってことよ。それじゃ、オレはここで失礼するぜ!」
「ん?一緒に行かないのか?」
「すまん、今受けてるサブクエストが終わったら合流させてくれ。あとで街で会おうぜ!」
「おう、また後でなクライン」
立ち去っていくクラインを見送って、俺達はクラインが開けてくれた扉の先へと進んだ。
扉の先に進むと、開けた十字路に出た。が、
「扉の前を像が塞いでいるね。このままじゃ開けられないよ」
右の通路以外、扉が閉まっていたのだ。
特に、正面の扉は二体の石像によって阻まれていた。
「正面のは・・・・・・この像をなんとかしてどかす必要があるな」
「ですね。こういうのは大抵のダンジョンですと・・・・・・」
「どこかに石像を移動させるための仕掛けがあるのかもしれないね」
俺の言葉に続いてランとリーファリーファが言う。
「このいかにもって感じからして、この遺跡は重要な役目をもってそうね」
「そうね・・・・・・」
「さっきの人もこのダンジョンであの装置を動かすアイテムが手に入るって言ってたしね」
「だな。とにかく気をつけていこう」
約三十分後
「この先にボスがいるのか・・・・・・」
俺達は特に問題もなく順調にダンジョンを攻略して行った。道中モンスターがPOPするトラップやギミックがあったが難なく攻略した。
「みんな、準備はいい?」
レインがアスナ達に問う。アスナ達はレインの問いに無言でうなずき返事を返す。
「―――よし。それじゃ行くぞ」
俺達はそれぞれの剣を抜刀し、ボス部屋へと入っていった。
ボス部屋に入って十分後―――
「やったー!アイテムゲットしたよー!」
俺達は特に苦戦することもなく、目的のアイテムを入手した。
奥の部屋にあった宝箱には古い書物と、錆びた鍵が入っていた。
「古い書物と鍵ねぇ・・・・・・。一体何に使うのかしら?」
「でもこの鍵、錆がひどすぎてこのままじゃ使えないんじゃないかな?」
「そうね・・・・・・。でも、錆をとるような素材はみたことないし。レインは知ってる?」
「うーん・・・・・・確かそんな鍛治用の道具があるって聞いたこともあるような・・・・・・」
リズの言葉に、思い出すようにして言うレイン。
リズとレインの種族は鍛治妖精であるレプラコーンだ。そのため、二人はよく鍛治関連の情報を集めている。
「何か特殊なアイテムが必要かもしれないね」
「せっかく手に入れたの鍵なのにすぐには使えないんだよね」
「こっちの書物のほうは、さっきの装置を動かすヒントが隠されてるのかもしれないね」
「ああ、早速見てみよう」
フィリアに同意するように、俺達は錆びた鍵と一緒に入っていた古い書物を開いた。
書物には何らかの文字と図が描かれていた。
「・・・・・・この文字、何かの暗号ですかね?読めないです・・・・・・」
「これって古代文字じゃないかな。さすがに書いてある内容まではわからないけど・・・・・・」
「こっちの図は平らな板の上に人が浮いてるわ」
「もしかしこれ、さっきの装置なのでは・・・・・・」
「確かにそうかもしれません。あの装置に描かれていた幾何学文様が、この図にも書かれてます」
「この図に書かれてる人・・・・・・もしかして浮いてるんじゃない?」
「つまり、あの装置は人の浮かせる為のものってことか?だとすると、こっちにあるのはそれを動かす動力になるアイテム・・・・・・?」
開いているページには装置の図の他にもう一つ、オーブのような物が書かれてあった。そして、そのオーブにも装置と同じ幾何学文様が描かれてあった。
「うーん・・・・・・これじゃあ、具体的に何をすればいいのかわかんないよー!」
「もう少し情報収集した方がいいんじゃないかなー?」
「そうだね、街に戻って情報を集めよう!」
街で情報収集をすることにした俺達は、宝箱から入手した『古い書物』と『古びた鍵』をアイテムストレージに収納してダンジョンをあとにし、空都ラインへと戻って行った。
空都ライン
街に戻った俺達は宿屋の近くにクラインがいるのを発見した。
「おっ、クライン」
「・・・・・・・・・・」
なにか集中しているのか、クラインの耳には俺の声が届いていないみたいだった。
「クライン?どうしたんだ?」
不思議に思い再び声を掛けると、
「おわわっ!!な、なんだ。キリトかよ・・・・・・驚かすんじゃねーよ」
今度は聞こえたのか、クラインはビックリした表情で俺を見た。
「お前こそボーっとしてどうしたんだ?また失恋でもしたのか?」
クラインがボーっとしている時の大半は失恋をした時だと知っている俺はまたそうかと思い訪ねた。が、
「ち、ちげーよ!ちょっとあの子の情報見てただけだよ」
どうやら違ったみたいだ。
「あの子?」
「ああ、あのセブンって子だよ。歌がすごく流行ってるだろ?」
どうやらクラインは歌姫セブンについての情報を見ていたらしい。
「ああ、俺もちょっと気になってるんだ。あんな小さいのに歌上手いよな」
「だよなぁ!それでいてリアルでは博士でもあるんだぜ。現実世界の天才博士、かつVR世界の大人気歌姫か。ホントたいしたもんだぜ!」
「あの子はリアルではネットワーク社会の研究をしてるんだ」
「ん?」
「それで、セブンとしての歌詞には共存とか平和を謳っている。つまりこの二つは別軸の活動って訳じゃないんだよ」
セブンが歌う歌詞には『共存』や『平和』という言葉がよく入っている。そして彼女は、現実世界での研究でネットワーク社会について研究している。このALOでは種族間抗争があるのが話題となっている。だが、もしこのALOで、彼女の提唱する共存と共存と争いのない平和なVRMMO世界だとして、それは本来のALOと言えるのだろうか?確かに、俺たちのように種族間に囚われることなくプレイしているプレイヤーは沢山いる。だが、その中でも種族といった、ひとつの輪の中にいるプレイヤーもいる。まんに、セブン―――七色博士の提唱が実現して、本当に平和になるのだろうか?恐らく、彼女の提唱に反対するプレイヤーが多数現れるだろう。特に、サラマンダーの将軍であるユージーン将軍は言うはずだ。今まで敵対していた種族といきなり仲良く、争いをしないように、と言われて「はい、わかりました」で理解するわけがない。もし、そうなったらこの世界ALOはどんどんプレイヤーがいなくなり、いずれ死に絶えたVRMMOとなるだろう。
そう思っていると。
「なるほどな。しかしキリト・・・・・・お前相当調べてるんだな」
クラインが以外だな、という風に言ってきた。
「べ、別にそんなことないって」
「そうだキリト、そろそろパーティ組んで攻略しようぜ!」
「あ、ああ、いいけど・・・・・・。どこか行きたいところでもあるのか?」
「実はな、この前とあるダンジョンの鍵を手に入れたんだよ。ちょうどいいからそこ行かねぇか?」
「わかった、準備してくるからちょっと待っててくれ」
「おうよ!オレはここにいるから早く来いよ!」
クラインと分かれて数分後、準備の出来た俺達はクラインと共に転移門にいた。
「おうキリト!準備できたみたいだな」
「ああ。クラインが言ってたダンジョンはどこにあるんだ?」
「草原の島の転移門から北の方だ。さっそく攻略に行こうぜ!」
クラインとともに浮遊草原ヴォークリンデにある転移門から北の方にあるダンジョンに来ていた。
―――のはいいんだが・・・・・・。
「クラインのやつ、異様にやる気が凄いな」
「うん」
クラインのモンスターへの対応がいつも以上に凄いのだ。
現に―――
「うおおおっー!」
今も二体のモンスターを瞬時に殲滅していた。
それからさらに攻略して行き、ダンジョンのギミックを動かし、俺達はとある一角にいた。
目の前にはすごい勢いで風が吹き出している装置があった。
「すごい勢いで空気が噴出しているね」
「さっき動かしたスイッチはこれを動かすものだったのね」
「あの装置の小さい番だねこれ」
「ですね」
「これを使えばあそこの通路まで進めそうだな」
普通では行けない場所も、この風を使えば行けるみたいだ。
しかし―――
「これって・・・・・・女の子にとってあまりうれしくない移動方法だね・・・・・・」
「うん・・・・・・」
アスナとリーファの言葉に女子勢が同時にうなずいた。
理由が分かる俺やラムは苦笑を浮かべ、何も言えなかった。
「ところでクライン・・・・・・。お前本当に歌姫セブンのことが好きになちゃたのか?」
装置から吹き上げる風を使って上の通路に着いた俺はクラインにセブンについて聞いた。
「えっ・・・・・・。ええとまあぁ・・・・・・。歌を聞いてるうちにちょっといいなぁって思い始めちゃって・・・・・・」
「ファンになったのか?」
まさかと思い聞く。
「ち、違げぇよ!ファンみたいなミーハーなもんじゃないんだよ、オレは!」
「じゃあどういうものなの?」
全員を代表してレインがクラインに問う。
「もっと崇高な気持ちで彼女のことを尊敬・・・・・・崇拝してるっていうか・・・・・・」
クラインの言葉を聞いた俺達は。
「完全にハマっちゃってるね・・・・・・」
「完全にハマってるな・・・・・・」
「ハマってますね・・・・・・」
「ハマってるね・・・・・・」
と異口同音の言葉を次々に発したのだった。
それから数十分後。
「うおおっ!噂通りあったぜ・・・・・・《トントゥの花》!」
ボスを倒し、奥の部屋に置かれていた宝箱の中身を見たクラインが歓声を上げた。
「へぇ・・・・・・こんなのがALOにあったんだ。面白いところを突いてくるじゃない」
「シノンさんは知ってるんですか?」
どうやらシノンは宝箱の中に入っていた花について知っている見たいだが・・・・・・
「ええ、トントゥは北欧の森の妖精なの」
「元々ALO自体がケルト・・・・・・北欧神話をモチーフにしてるわけだよな」
「そうね。でもその中でもこのスヴァルトエリアはテーマ性を色濃く表現している気がするわ。モンスターデザインとか設定とか」
「ああ・・・・・・どうりでモンスターに妙な法則性がある気がしてたんだよなぁ」
このエリア―――スヴァルトエリアのモンスターはどれも北欧神話やケルト神話などの数多の神話をモチーフにしたモンスターが生息している。もともとALOは北欧神話がモデルのためたいして気にしなかたっが。
「そうね。これからは北欧神話の神々をモチーフとした、ボスとか出てくるかも。アース神族とか、霜の巨人とか・・・・・・。色々と想像が膨らむわね。ふふっ、ちょっと楽しみかも」
「そうだな!そう考えると、なんかワクワクするな。それにしてもシノン・・・・・・。お前そういう伝承とかに詳しいのか?」
「えっ・・・・・・ええと。読書とか好きなだけ・・・・・・それだけよ!」
「そ、そうか・・・・・・」
「と、とにかく、トントゥは北欧では幸せを運ぶ妖精と言われているのよ言われているのよ」
「へぇ・・・・・・なんか素敵ですね!クラインさんはこの花が目当てだったんですか?」
「そういえばそうだな。そうなのかクライン?」
「おうよ!この花は幻の花って言われてる超レアアイテムなんだよ!ふっふっふっ・・・・・・これをセブンちゃんにプレゼントするぜ!」
『『『は?』』』
クラインの言葉に俺達は唖然とした。
「まさか・・・・・」
「そのため ・・・・・・?」
「おうよ!」
いい笑顔で言うクライン。そのクラインに、
「目的はそれかよ!」
俺は思いっきりツッコんだ。
その俺に続けてレイン達も。
「ええー」
「ないわー」
「うん、それはないね」
「あーあ、最後の最後でシラケたわね〜。ファンなのね〜」
呆れ百%の表情でクラインを見て言った。
「ファンじゃねえって!そう、オレは・・・・・・オレ達は《クラスタ》なんだ!」
「クラスタ・・・・・・?もしかしてネット用語の?」
「確かネット用語のクラスタって、「房」って意味だよね」
「セブンを花として集まる沢山の房・・・・・・か。愛でる対象と心の繋がりがあるって言いたいのか?なるほどな・・・・・・」
「キリトくん?」
レインの冷たい声に慌てて反論する。
「いや、あはは・・・・・・俺はあくまでクラインの気持ちを代弁してみただけで・・・・・・」
「そうだ!セブンちゃんを普通のアイドルとかと一緒にしてもらっちゃ困るんだ!!うおおおっー!!セブンちゃんー!!これからも愛し続けるぜ!!」
俺の言葉に続けるように言うクラインに、俺達は。
「ああ、ダメね・・・・・・。完全にはまっちゃってる・・・・・・」
「もう手遅れだな・・・・・・」
「直せるでしょうか・・・・・・」
「たぶんもう遅いかも姉ちゃん・・・・・・」
「どっと疲れたわね。さっさと街に帰ろうよ」
「ああ、撤収だな」
「だな。よし、帰るぞー」
『『『はーい』』』
「お、おい!みんな待ってくれよ〜!!」
さっさと街に帰る俺たちを慌てて追いかけてくるクラインを無視して俺達は街に帰って行った。
正直、今回のクラインの行動は残念としか言えなかった。