ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い   作:ソーナ

160 / 171
LS編 第153話〈浮遊草原ボス、VSファフニール〉

 

〜キリトside〜

 

 

遺跡内部を順調に攻略し、俺達は遺跡の最奥部にたどり着いた。

目の前には、竜や草原のレリーフが彫られた石扉が鎮座していた。その石扉の奥から感じる空気に、俺達に緊張感が走る。

 

「・・・・・・この先に手強い敵がいるって、雰囲気で嫌でも分かるね」

 

「わたしも感じるわ。今までの敵とは違う・・・・・・」

 

雰囲気でいうなら、SAOのフロアボスと同じような感じだ。得体の知れない寒気や緊張が石扉越しでも伝わってくる。

 

「みんな、準備はいいか?」

 

背中の鞘から双剣───『ユナイティウォークス』と『フェイトリレイター』を抜刀して聞く。

 

「何時でもいいよキリトくん」

 

「よし。それじゃ・・・・・・いくぞ!」

 

俺は恐る恐るといった感じで扉に近づき、固く閉ざされている扉を開ける。

扉を開けた途端───。

 

「きゃあっ!」

 

「す、すごい風・・・・・・!吹き飛ばされちゃうよ!」

 

扉の奥から猛烈な風が、暴風のごとく吹き荒れ俺たちを襲ってきた。

 

「これは・・・・・・みなさん、別の場所に強制転移されます!」

 

「強制転移!?」

 

妖精姿のユイの言葉にわずかな驚きが入る。

 

「ボス戦は場所を移動してやるのか・・・・・・。ユイ、しっかり捕まってろ!」

 

「はい、パパ!」

 

肩にいるユイを胸ポケットに入れて、風を乗り切る。

やがて───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っ!?ここは・・・・・・!」

 

強制転移の暴風から解放され、目を見開くと俺達はさっきまでいた遺跡の内部ではなく、ヴォークリンデの空に浮かんでいた。

 

「一瞬で遺跡の外に転移させられた!?」

 

「ってことはもしかして・・・・・・!」

 

驚きながら話していると、突如何処からか凄まじい雄叫びが響いてきた。

 

「グオオオオオォッ!!」

 

『『『っ!』』』

 

「今の声は・・・・・・!」

 

「パパ、あそこです!」

 

『『『!』』』

 

ユイの指さした所には、一頭の黒い巨大な竜がいた。そして、その竜の頭上には『The Fafnir』と表記され。それには、ボスの証である『The』の固有名詞が付いていた。

 

「あれが、ここのボス・・・・・・!」

 

「デッカイわね・・・・・・!」

 

「ファフニール・・・・・・北欧神話や『ニーベルングの指輪』に登場する怪物・・・・・・ドラゴンね」

 

「予想はしていたけど、北欧神話系のボスだね」

 

現れたボス───ファフニールを、神話系統の書物を読むシノンとリーファが見てそう言う。

 

「ボスがなんだろうと関係ない。倒さないと先に進めないんだからな」

 

「そうだね・・・・・・!」

 

「それじゃ、戦闘開始だ!」

 

『『『おう!』』』

 

俺の声に、レイン達が返すのと同時に、ファフニールがよく響く雄叫びを上げて俺達に向かって突っ込んできた。

 

「散開っ!」

 

愚直に真正面から突っ込んで来たファフニールを俺達はすぐにその場から離れて回避する。

 

「グルオオオオォ!」

 

「はああああーー!」

 

「やああああーー!」

 

俺達が元いた場所で動きを止めたファフニールに、俺とユウキが背後から突進する。

 

「グギャアアアッ!」

 

不意打ちに近い、背後からの攻撃に反応できなかったファフニールは甲高い絶叫を上げる。

今ので、ファフニールの三段ある膨大なHPがほんの僅かだが削れた。が、さすが竜種系なのか、防御もHPも高い。恐らく、攻撃も高いだろう。

 

「ちっ、さすがにボスなだけあって硬いな・・・・・・」

 

「うん。生半可な攻撃は通らないかも・・・・・・」

 

一撃を入れ、すぐにその場から離脱した俺とユウキは今の一撃で感じたことを口にする。

 

「うおおおーっ!」

 

「ぜりゃああーっ!」

 

立て続けにエギルとクラインがそれぞれの武器でファフニールを攻撃する。しかし、二人の攻撃を食らっても尚、ファフニールの膨大なHPはあまり減っていなかった。

 

「くっそー!硬ぇ!」

 

「ボヤいてる暇なんかねぇぞクライン!」

 

「わぁってるよ!」

 

「なら、これはどう!」

 

クラインとエギルの攻撃の後に、ストレアが遠心力を利用して思い切り、両手剣『フォールクヴァング』を振り払う。

 

「グギャアアア!」

 

ストレアの両手剣はファフニールの羽の付け根部分に当たり、ファフニールは悲鳴を上げた。悲鳴を上げたファフニールはそのまま、ストレアへ鋭い鉤爪で切り裂き攻撃をする。

 

「なんの!」

 

ストレアは、ファフニールの攻撃をクルっと回って上手く回避し、攻撃範囲(レンジ)内から離れる。

 

「うーん、やっぱりまだ慣れないなあ〜」

 

「飛行戦闘ですか?」

 

「うん」

 

「まあ、私達元々陸戦しかやってなかったからね」

 

ストレアの言葉に、ランとアスナが返す。

まあ、確かに、元SAOプレイヤーである俺達にとってこのALOの醍醐味である、空を飛ぶということは慣れるのに多少の時間を要した。それは空中戦闘も同じく、地上戦とは違い空を飛んで戦うため、SAOで地上戦しかやってなかった俺達には苦難を強いた。

もっとも、それも時間と経験の末に何とかなったが。

 

「まずは、敵の視界を奪うのが定石よね」

 

そう言うシノンの声と同時に、シノンの弓。『アッキヌフォート』から放たれた鋭い一矢がファフニールの目元に向かって放たれた。

 

「グギャアアアッ!」

 

しかし、放たれた矢はファフニールの起した風───暴風ともいえる風の障壁に阻まれ、勢いを失った矢は下に向かって落ちていった。

 

「ちっ・・・」

 

舌打ちを打つシノンは次矢を構える。

そこに。

 

「なら、私のこれはどうかな!」

 

「っ!レイン!」

 

声のした上空では、ファフニールの上を取ったレインが両手の剣を広げていた。

レインのやろうとしていることを瞬時に理解した俺達はファフニールから十分に距離を取る。距離を取ると───

 

「穿いて!───サウザンド・レイン!」

 

レインの周囲に現れた剣が、蒼白のライトエフェクトを輝かせてファフニールの巨体に雨のように降り注いだ。

 

「グギャアアアアアッ!!」

 

雨のように降り注いだ蒼白の剣は、ファフニールの巨体に次々と突き刺さりファフニールのHPを削っていく。

ファフニールも避けようとするが、さすがにその巨体では避けられるはずも無く、至る所に蒼白の剣が刺さる。やがて、数十は超す剣の雨が降り止むとファフニールは大きな声で雄叫びを上げた。それと同時に、ファフニールの背後に赤銅色の巨大な魔法陣が描かれ、展開された。

 

「あれは火属性の魔法!?」

 

リーファが驚く中、ファフニールの背後の魔法陣の前に数十は軽く超える火球が現れた。

 

「アスナさん!」

 

「ええ!」

 

すぐさまアスナとランが炎熱耐性のバフを掛けてくれる。

 

「パパ!火球攻撃来ます!2・・・1・・・0!」

 

ユイのカウントダウンが0と言うのと同時に、ファフニールの背後の魔法陣から幾つものの火球が放たれた。俺達はその火球を巧みに避けて行く。

 

「ぜりゃあ!」

 

火球攻撃を避けて、俺は動きを止めているファフニールに突っ込んで斬撃を食らわす。

 

「グルオオオオォ!」

 

「遅い!」

 

ファフニールが鉤爪で俺に攻撃してこようとするが、そこにラムとリーザがファフニールに攻撃し、ファフニールの攻撃をキャンセルさせる。

 

「ギシャアアアアッ!」

 

「させねぇよ!」

 

「うおおおおぉーっ!」

 

「やああああぁーっ!」

 

「せいやあああぁー!」

 

ブレスを放とうとするファフニールに、頭上からエギルの斧とリズの片手棍がファフニールの頭部にヒットする。ボスモンスターとはいえ、頭蓋骨が陥没してないだろうかと思わざるを得ないほどの一撃だった。エギルとリズに続いて、シリカが愛竜のピナとともにファフニールを攻撃する。

 

「リーファ!」

 

「はい!」

 

さらにシノンの矢とリーファの風魔法がファフニールを襲う。

リーファの風魔法で速度が上昇したシノンの矢は、吸い込まれるようにファフニールの羽を穿つ。

 

「グガアアアァァーーッ!」

 

絶叫をあげるファフニールに、

 

「やアアァァーーっ!」

 

「はああああーーっ!」

 

ユウキとアスナのソードスキル、《マザーズ・ロザリオ》と《スターリィー・ティアー》がファフニールの胴体を貫く。

さすが二人のOSS───元《紫閃剣》と《神速》の最上位ソードスキル。防ぐ事すらままならなく、ファフニールのHPは大きく減少する。この時点で、ファフニールのHPは全体の半分───二段目の半分近くにまで減っていた。恐らく、レインのOSS《サウザンド・レイン》もだが、さっきの二人のOSSの当たりどころが弱点だろう。二人のOSSはファフニールの腹部に命中していた。たぶん、ファフニールの腹部までは硬くないのだろう。

 

「っ!みなさん、ボスの攻撃パターンが変わります!注意して下さい!」

 

『『『了解!』』』

 

ユイの言葉に俺達は気を緩めずにいく。

幾ら、この世界はSAOではなくALO───死んでも生き返れる世界とはいえ(死んでもそれ相応のペナルティがあるが)、俺達にとって、この世界VRMMO、ALOは俺達が生きている第二の世界だ。現実世界(リアル)仮想世界(バーチャル)。例え、ゲームの世界だろうと、俺達は今ここに、生きている。あの世界と比べ、この世界は死に戻り(リブァイブリターン)が出来る。あのデスゲームの世界を経験した俺にしてみれば、「死んでもいいゲームだなんて、ぬる過ぎるぜ」と言っても過言ではない。恐らくそれはレインやアスナ、ここにいるあの世界───SAOを経験した者にしか判り得ない事だろう。

この世界はデスゲームではない・・・・・・・。この世界では実際に死ぬ事なんてない普通のゲーム。だが、俺達にとってこのゲームは、ただのゲームではない。一分、一秒とその時間が俺達がいま此処にいる証にして、証拠。生きている、という確かなデータ(結晶)なのだ。

それは、何物にも代えられない。俺達の大切なモノ。

故に、俺達はこの世界を全力で楽しみ、この一瞬を生きて過ごしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後

 

 

 

「グルオオオオォ!!」

 

「ブレス攻撃来ます!3・・・2・・・1・・・0!」

 

ユイのカウントダウンが0になると同時に放たれた、ファフニールの風のブレスを大きく避けて範囲から逃れる。

 

「そこっ!」

 

ブレスを放ち終えたファフニールに、シノンが矢を放つ。

放たれた矢は、一直線に風を突き切るように飛翔しファフニールの左目に突き刺さった。

 

「グルァァァァァっ!!」

 

一際高い絶叫を迸らせてファフニールは身悶えする。

さすがにえげつないとしか言いようがない。しかも、さっきの矢はソードスキルなので、さらに激痛がファフニールには走ってるだろう。だが、ここで攻撃を止める俺たちではない。

 

「いまよ!」

 

アスナのその声とほぼ同タイミングで、俺達はファフニールにフルアタックを仕掛けた。

 

「はああああーーっ!!」

 

「せいやぁぁぁーーっ!!」

 

次々に上位ソードスキルがファフニールの体に叩き込まれ、みるみる内にファフニールの残り一段を下回るHPが削られていく。

 

「ガアアアアアアアアアッ!!!」

 

『『『っ!』』』

 

無作為に攻撃したファフニールに目を見開く。 ファフニールは自身に風の障壁を張り、俺達を近づけないする。さらに、ファフニールはその風の障壁で俺達を吹き飛ばした。

 

「ぐっ!」

 

「大丈夫ですかパパ!」

 

「ああ。さすが、このスヴァルトエリアのボスだな・・・・・・。アインクラッドの階層ボスと同じくらいだ」

 

胸ポケットから顔を出して心配するユイにそう返すと。

 

「感心してる場合じゃないと思うよ、キリトくん?」

 

俺と同じ、双剣を携えたレインが呆れたように言ってきた。

 

「はは。すまんすまん」

 

「まったく。キリトったら」

 

呆れながらも、声に笑いが含まれているレインの声を聴きながら、

 

「───ファフニールの残りHPはあと三.五割ほど・・・・・・か」

 

「うん。どうしようか?」

 

「ふっ。決まってるだろレイン」

 

「ふふ。だね」

 

「ああ」

 

言葉を一旦区切り、同時に言う。

 

「「───今出せる全力を持ってボスを倒す!」」

 

レインが入れば、出来ないことは無い。

あの世界でずっと隣にいた、最高の相棒(パートナー)にして最愛な人。俺一人では出来ないことも、レインと一緒なら。俺たちに、出来ないことは無い!

 

「ラン!アスナ!ヤツの動きを止めてくれ!」

 

「「了解!」」

 

俺の声に、元攻略組の司令塔であるアスナとランが指示を飛ばす。

 

「エギルさんとストレアちゃん、ボスのヘイトをお願いします!」

 

「まかせろ!」

 

「オッケー!まかせて!」

 

「ラムさん、リーザさんは私と一緒に!」

 

「はい!」

 

「ええ!」

 

「シノのんはそのまま遠距離からの支援を!」

 

「了解よ!」

 

「リーファちゃんとユウキは畳み掛けて!」

 

「うん!」

 

「わかった!」

 

「フィリアちゃんとシリカちゃん、リズはボスの羽根を!」

 

「まかせて!」

 

「は、はい!行くよピナ!」

 

「キュル〜!」

 

「まっかせなさい!」

 

二人の指示により、より的確にみんなが動く。ファフニールの爪がエギルとストレアを襲うが、二人はそれを斧と両手剣で受け止めるか、逸らし、ファフニールを惹き付ける。ファフニールのブレスなどはシノンが矢でキャンセルさせ、リーファとユウキが素早く動き、ファフニールのHPを削る。フィリア、シリカ、ピナ、リズはファフニールの羽根を斬りつけ、機動力を落とす。

そして。

 

「ラムさん!リーザさん!」

 

「はい!いくよリーザ!」

 

「ええ!」

 

動きが止まった所に、ラムの刀とリーザの槍が迫る。

 

「はああああああっ!」

 

「やああああああっ!」

 

二人の武器にはそれぞれライトエフェクトが輝いてる。二人のOSS───元《抜刀術》と《無限槍》のソードスキル。《真蒼》と《ミスティカル・レインズ》がファフニールを襲う。

 

「グルオオオオォォォッ!」

 

「させませんよ!」

 

攻撃を食らいながら、ラムとリーザに攻撃しようとするファフニールに、ランが二人を支援する。

 

「せやあああああーっ!!」

 

ランの振るう剣───いや、鞭のようにしなる剣はファフニールを攻撃する。

あれが、ランのOSS───元《変束剣》最上位ソードスキル《ラスティー・ネイル》だ。ランは、自身の剣《リルエスパーダ》を振るい、ラムとリーザに当たらないように攻撃する。ランの技量もだろうが、ラムとリーザの二人もランの剣が次どこに来るのか、分かっているかのように避ける。

 

「今です!キリトさん!レインさん!」

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

ランたちとスイッチし、俺とレインは剣を構える。

ラン達のお陰でファフニールの動きは止まっており、今は格好の的になっている。だが、ファフニールの残りHPは一割とまだある。俺とレインのソードスキルでも倒せるかどうかは分からないだろう。確率は二分の一。少しでも、確率を上げるなら、どうするべきか?それは、簡単だ。二つを一つにしてしまえばいい。

 

「いくぞレイン!」

 

「うん!キリトくん!」

 

「「はああああああーーっ!」」

 

動きを取り戻したファフニールは俺とレインの攻撃を逃れようとするが、遅い。

一瞬で距離を詰め、ファフニールの懐に潜り込み、ソードスキルを放つ。そのソードスキルは、俺とレインの確かな絆を表したモノだ。

 

「うおおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

「やあああああぁぁぁぁっ!」

 

一撃一撃と重い攻撃が、ファフニールの肉を抉る。

 

「ギシャアアアアッ!!」

 

瞬く間にファフニールの残りHPは削り取られ、やがて。

 

「「───ワールドエンド・オーバーレイ!」」

 

俺とレインのソードスキルの終撃と同時に、三段あった膨大な量のHPは0になり、スヴァルトエリア浮遊草原エリアのボス、ファフニールはその巨体をポリゴンへと変え、虚空の彼方へと消えていった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。