ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い   作:ソーナ

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LS編 第156話〈家族写真〉

 

〜キリトside〜

 

スヴァルトエリアの砂丘峡谷ヴェルグンデの攻略が順調に行っているある日。

 

『もしも〜し。キリトくーん、いるかな〜?』

 

『パパ、わたしです!』

 

『キリト〜、開けて〜!』

 

宿に一人でいる所、レイン達がやって来た。

 

「レインとユイ、ストレアか。今ドアを開けるからな」

 

ソファから立ち上がり、ドアを開ける。

 

「パパーっ!」

 

ドアを開けると、勢いよくユイが抱きついてきた。上手く受け止めきれず、肺の中の空気が一気に吐き出されたが。

 

「うおっ。ユイ、いきなり抱きついてきてどうしたんだ?」

 

「ふふ。突然押しかけてゴメンねキリトくん」

 

「ああーっ!ユイずるい〜!」

 

俺の腰に抱きつくユイを見ながらレインとストレアが入ってくる。

ストレアのは少し違う気もするけど。

 

「あはは。いや、かまわないよ」

 

抱きついたままのユイの頭を撫でながらそう答えると。

 

「あのっ、実はパパにお願いがあるんです」

 

「ん?なんだユイ。なんでも言ってみろ」

 

ユイがお願いするのは珍しいと、少し驚きながらも俺はレインとの愛娘であるユイのお願いについて訊ねる。

 

「パパとママとわたし、ストレアの四人で写真を撮りたいんです!」

 

「四人で写真・・・・・・ああ、そうか、家族写真か!」

 

ユイの写真という言葉を理解した俺はああ、と声を出す。

 

「うん。私とキリトくん、ユイちゃん、ストレアちゃん。私たち四人だけの家族写真。確か、まだ一枚も撮ってなかったよね?」

 

「そう言えばそうだったな」

 

ユイとストレアがこの世界。 ALO(アルヴヘイム・オンライン)に来て、早数ヶ月。俺のナーヴギアのローカルメモリーに保存されていたユイとストレアのデータを、それぞれコンバートという形でこの世界に顕現させた。二人と再び会えた時、アスナたちはもちろんのこと、俺たち四人だけの時のレインの歓喜の様子と言ったらそれまた凄いものだった。

あの時。SAO(ソードアート・オンライン)の終焉を、茅場晶彦とともに見届けた際、茅場から直接ユイとストレアの事を頼まれたのだ。生まれは違い、ヒトじゃなかろうとも俺とレインにとって、ユイとストレアは俺達の大切な娘。家族だ。親として、またこうして二人と会えたことが何より嬉しかった。それはレインだけではなく俺もだ。

本来なら、その時撮れれば良かったのだが、生憎その時写真を撮る記録結晶らが無かったため撮れず、今に至る。

 

「ところで、どこで撮るんだ?」

 

「折角だから、景色のいい場所がいいかも」

 

「あたしもレインのにさんせーい!せっかく家族写真撮るなら、やっぱり綺麗で景色がいい場所がいいもん!」

 

「綺麗で景色のいい場所か・・・・・・」

 

レインとストレアの提案に頭を巡らせる。

 

「となると、街中じゃなくてフィールドの方がたくさんありそうだな」

 

綺麗で、景色のいい場所となると、どうしても街中よりフィールドの方が多くなってしまうのだ。SAOでも、全面花畑通称フラワーゾーンで有名な第47層フローリア。他に47層に似てる第93層チグアニや、第4層ローピアなど圏内で綺麗な場所はあるが、やはりどうしても景色のいい場所となると圏外が多くなってしまう。

それはもちろん、このALOの中でもで。リーファとラムが種族のシルフの首都スイルベーンや、ランとアスナが種族のウンディーネの領地エリアの湖畔地帯など綺麗で景色のいい場所はあるにはあるが、やはりそれは限定的で大半はフィールドに存在する。

 

「ユイは候補とかあるか?」

 

発案者であるユイにも聞いてみると。

 

「いえ、特には・・・・・・。四人で決めようかな〜って思っていたので」

 

と。少し控えめな答えが帰ってきた。

 

「そっか。それじゃ、まずは撮影場所を探しに行くか」

 

「わぁい!四人で空のお散歩ですね!」

 

「ふふっ、ユイちゃんすごく楽しそう」

 

「あたしも楽しいよー!」

 

「早速出発です!」

 

こうして俺たち家族は家族写真を撮るための場所を探しに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮遊草原ヴォークリンデ

 

 

家族写真を撮る場所を探し始めて数時間が経ち、俺たちはスヴァルトアールヴヘイムの浮遊草原ヴォークリンデにやって来ていた

 

「うーん、なかなかピンとくる場所がないなぁ」

 

「ホントだよ〜」

 

「中々いい場所が見つかりませんね」

 

「そうだね」

 

最初俺たちはスヴァルトエリアからALO本土に行き、様々なエリアを回った。サラマンダーの領地である砂漠地帯やスプリガンの領地である遺跡地帯などそういうのは予め除外し、シルフやウンディーネ、ケットシーの領地や央都アルンといった景色の良さげな場所を廻った。のだが、中々見つからず、フィールドに出てもそれは同様でウンディーネの首都近くの三日月湾の島の海浜で撮る、ってのもどうかと思い色々探してるのだが・・・・・・。

 

「あれ?この辺りのフィールド、なんか閑散してない?」

 

「ほんとだー。何にもない」

 

レインとストレアの言葉通り、この辺りは何も無く、ただ閑散としていた。

 

「別の場所を探すか・・・・・・」

 

そう言って辺りを見回すと。

 

「あっ!」

 

「どうしたのキリトくん?」

 

「あれ見てみろよ」

 

閑散とした場所の。人気のない場所に、一人のNPCのお爺さんがポツンと立っているのが目に入った。さらにそのNPCの頭上には金色の?マークが浮かんでいた。

 

「クエストが発生してますね」

 

「なんでこんな人気のない所にNPCが立ってるんだろう?・・・・・・ちょっと様子見てくる!」

 

俺はそう言うと、走ってNPCの所に向かって行った。

 

〜キリトside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レインside〜

 

 

「えっ!ちょっ、ちょっとキリトくん!?・・・・・・あ〜ぁ、行っちゃった」

 

一人で走ってNPCの所に行くキリトくんに声を掛けるけど、キリトくんは聞く耳を持たずに行ってしまい、私の口から呆れた溜め息が出た。

 

「パパはこういうめずらしいクエストに目がないですからね」

 

「うんうん。これでキリトが行かなかったらキリトのニセモノ!?って思うよ」

 

「うぅぅ。否定したくても否定出来ないよ・・・・・・」

 

愛娘であるユイちゃんとストレアちゃんの言葉に否定出来ない私。まあ、確かに私もキリトくんと同じで、めずらしいクエストには目がないけど。

キリトくんとずっと一緒にいて、私もキリトくんと同じようになってきているのかも・・・・・・。

それはそれとして───。

 

「もおっ!キリトくんってば・・・・・・!ゴメンねユイちゃん」

 

今ユイちゃんとストレアちゃんがいるのにクエスト受けに行くかなぁ!?

ユイちゃんに謝りながら同時にキリトくんに恨み言を声に出さずに言う。

 

「いえ!みんなで冒険するのも楽しいです!わたしはパパとママとまたこの世界で一緒に居られるだけで、とっても嬉しいんです。あ、もちろんストレアもですよ」

 

「わかってるよ〜ユイ〜」

 

ユイちゃんの言葉に笑顔のまま、ユイちゃんに抱きつくストレアちゃん。

 

「うん・・・・・・私も同じだよユイちゃん」

 

「写真はいつだって撮れます。だから今はパパのところに行ってあげましょうっ!」

 

「あっ!もうキリトあのNPCの所に着いてるよ!」

 

「ふふふっ。そうだね。それじゃあ勝手に先に行っちゃったキリトくんのところに行こうか」

 

「はい!」

 

「はーい!」

 

私たちは先に行っちゃったキリトくんを追いかけるため、羽を広げてキリトくんの所に飛んで行った。

 

〜レインside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜キリトside〜

 

閑散とした場所にポツンと立っていたNPCに近づくと。

 

「キ〜リ〜トく〜ん?私たちを置いていかないでくれないかなぁー?」

 

上から羽を広げて顔は笑顔だが、目はまったく笑ってないレインがユイとストレアとともにやって来た。

 

「ご、ごめん、つい・・・・・・」

 

目がまったく笑ってないレインに、表情が引き攣りながら即座に謝る。

レインたちを放って来てしまったのだから、これは完全に俺に非がある。

というか俺、レインの尻に敷かれてないか?そう思ってると。

 

「もうー。・・・・・・それで?」

 

「そ、それで?」

 

「クエスト。・・・・・・このクエスト、やるんでしょキリトくん?」

 

「え、いいのか?」

 

レインの言葉に驚いてる俺にユイが。

 

「はい、みんなで挑戦しましょう!」

 

と言って、続けてストレアが。

 

「あたしももちろんやるよー!」

 

腕を上げて言う。

それを見てレインが。

 

「ユイちゃんの方が、キリトくんよりずっと大人だね」

 

片目を瞑って意味有りげに言ってきた。

 

「うグッ・・・・・・。そ、それじゃあお言葉に甘えて」

 

「NPCが困っているみたいですね。パパ、話しかけてみてください」

 

「わかった」

 

ユイの言葉に従い、俺はNPCのお爺さんに話しかけた。

 

「あの・・・・・・どうしたんですか?」

 

「ああ、若者よ・・・・・・。話を聞いてくれるか?」

 

「はい」

 

「以前はな・・・・・・。ここら一帯は美しい自然に囲まれた村だったのじゃ。しかし今ではこのありさま。水が干上がって大地は痩せ、村人もいなくなってしまった。それもこれも、みんなあの怪物らのせいじゃ・・・・・・。あの怪物たちが現れてから川の水がせき止められてしまった。若者よ、どうか怪物たちを倒して村を救ってはくれないか?」

 

お爺さんがそう言い終えると、頭上の?マークが!のマークに変わった。

 

「なるほど・・・・・・討伐系クエストみたいだな。わかりました、任せてください」

 

「おお・・・・・・!ありがとう!」

 

「その怪物たちはどこにいるんですかお爺さん?」

 

レインの質問にお爺さんは。

 

「ああ、もともと川の上流だったところに居座っておる。気をつけるんじゃぞ・・・・・・」

 

と言った。

言い終えたお爺さんは、それ以降何も喋らなかった。

 

「・・・・・・会話が終了したみたいだな。次は川の上流に向かえばいいのか」

 

「川の上流ってどこかなー?」

 

「地面の傾斜的にあっちの方ですね」

 

「よし、行ってみよう!」

 

俺たちは羽を広げて、川の上流であろう場所に向かって飛んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛んでからしばらくすると。

 

「あそこにいるのが例の怪物たちか・・・・・・」

 

俺たちは、目標地点らしき場所で討伐モンスターらを見ていた。

周囲を徘徊しているモンスター・・・・・・スライム型モンスターの数は少なくても二十はいた。そして、中でも一際大きなスライム型が四体ほどいた。

 

「川をせき止められるだけあって、結構大きいね」

 

「あんなおっきなスライム型モンスター見たのはじめてかも」

 

「あのモンスターは身体が大きいので敏捷性は高くないようですね。一撃一撃をちゃんと見極めてステップで避ければ大丈夫だと思います」

 

「ありがとうユイちゃん」

 

「えへへ、パパとママ、ストレアの事を全力でサポートします!」

 

「ユイがいると心強いな。さて、行くか!」

 

「そうだね!」

 

「はい!!」

 

「おーう!」

 

俺、レイン、ストレアはそれぞれ武器を抜刀して、討伐モンスターへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘をはじめて約二十分後

 

 

「これで、ラストォ!」

 

「せいやあぁー!」

 

「やああぁぁーっ!」

 

俺とレインの双剣とストレアの大剣がそれぞれスライム型モンスターを切り裂き、残っていたモンスターのHPをゼロにした。

 

「ふぅ〜」

 

「やっと終わったぁ〜!」

 

「やりました!!」

 

「討伐完了〜っ!!」

 

「ああ、これでクエストクリアだな!」

 

剣を仕舞い喜びながらそう言う。

一体一体の強さは大して強く無かったが、途中でモンスターが増えたりしたため、かなりと言うほどでは無いが疲れた。大型なスライム型はNM級では無かったため、苦することなく討伐が出来た。

減ったHPを、ポーションを飲んで回復していると。

 

「・・・・・・あれ?何も起こらないよ?」

 

レインが首をかしげて言った。

 

「おかしいな・・・・・・。他にも怪物がいてそいつらも討伐しなきゃいけないとか?」

 

俺も続けてそう言うと。

 

「いえ、その必要はないみたいですよ?」

 

「そろそろかな?」

 

ユイとストレアが俺とレインに言った。すると。

 

「うおっ!?なっ、なんだ!?いきなり地面が揺れ始めたぞ!」

 

「えっ!?もしかして地震!?」

 

突如地面が揺れ始めた。

驚く俺とレインに比べ、ユイとストレアは落ち着いていた。

 

「来るよ〜!」

 

「来ます!3・2・1!」

 

ストレアとユイがそれぞれ言い終えると。

 

「きゃあっ!!」

 

「わああっ!」

 

「わあ・・・・・・!」

 

「すっごーいっ!」

 

地面からいきなり水が吹き上がってきた。

 

「い、いきなり地面から水が吹き上げたぞ!」

 

「びっくりしたぁ・・・・・・。何かが爆発したのかと思ったよ」

 

「これで川は元に戻ってクエストクリアですね!」

 

「まさか最後にこんな仕掛けがあるとは思わなかったな」

 

「ほんとだよー。まさかこんな風に水が吹き上がるなんて、思ってもいなかったよー」

 

最後の最後にこんな仕掛けがあるとは思わなかった俺とレインは驚嘆の声を漏らす。

まさか水が地面の下から吹き上がってこようと、誰が思い付くだろうか。

そう思っていると。

 

「パパっ、ママっ!あれ見てください!」

 

ユイが水が吹き上がっている頭上を指さした。

そこには。

 

「あっ、虹だ!」

 

「おお、すごい!吹き上げた水のおかげで出来たんだな」

 

仮想世界ではじめて見る、綺麗な虹が出ていた。

 

「わぁ・・・・・・。わたし、初めて虹を見ました!すっごくきれいですね!」

 

「あたしもー。虹って、あんなに綺麗なんだね!」

 

虹をはじめて見るユイとストレアは目をキラキラと光らせて、虹を見る。

 

「 VR世界とは思えないくらいだよ。・・・・・・あ、そうだ!」

 

「どうしたの?」

 

「ここで家族写真撮らないか?」

 

「ここで?」

 

「ああ。もうこんなきれいな虹は見れないかもしれないしさ。俺たち家族の記念にちょうどいいだろ」

 

この場所で写真を撮ることを提案すると。

 

「はい、賛成です!」

 

「あたしもさんせーい!」

 

すぐさま、ユイとストレアが賛成してくれた。

 

「もうっ、さっきまでクエストの事しか考えてなかったのに・・・・・・。調子がいいんだから、キリトくんは・・・・・・」

 

やや呆れながら言うレインに苦笑しながら、ストレージから記録結晶を取り出す。

 

「そ、そうと決まれば虹が消える前に撮るぞ。ユイとストレアはそこに。レインはそこに立って」

 

「うん。ユイちゃんとストレアちゃんは私とキリトくんの間だね」

 

「はーい!」

 

「うん!」

 

俺とレインの間にユイ。そしてその後ろにストレアが立ち、撮る準備が出来た。

 

「それじゃあ行くぞ、はいチーズ!」

 

パシャリ!と音が記録結晶から響く。

 

「ちゃんと撮れたかな?」

 

「ああ、ばっちりだよ」

 

記録結晶を回収して、撮れた写真を見で言う。

 

「わぁ・・・・・・!パパ、ママ、ありがとうございます!!」

 

「やったねユイ!!みんなで写真が撮れたよ!」

 

「ユイとストレアが喜んでくれてよかったよ」

 

「ユイちゃん、ストレアちゃん。これからも、私たち家族四人でいっぱい写真を撮ろうね」

 

「はい!!」

 

「もちろんだよ!!」

 

この時のユイとストレアの笑顔を俺とレインは忘れることは無いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

後日、俺はレインにこの時撮った写真を現実世界でプリントアウトし、それぞれの部屋に飾った。

仮想世界の中だとはいえ、ユイとストレアは俺とレインの本当の娘だから。そう想い感じつつ、俺は部屋に飾った家族四人の写真を眺めた。

 

 

 

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