ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
アンケートを送ってくださった方ありがとうございます。
俺とレインはボス《ザ・フェイタルサイス》を消し飛ばしたユイと共にアスナ達がいる安全地帯に入っていった。
安全地帯の中は四角い形をしており周りは白一色で統一されていた。目立つものは安全地帯の中央に鎮座してある台座だけだった。
今部屋のなかにいるのは俺とレイン、アスナ、ユウキ、ラン、ラム、リーザの七人だけ。ユイは安全地帯に入ると鎮座してある台座に腰掛け沈黙していた。
シンカーさんとユリエールさんは事情を説明し、先にここから脱出してもらった。
記憶が戻った、とひとこと言い台座に座ってから数分が経った。ユイの表情は何故か悲しそうだった。
「ユイちゃん・・・・・思い出したの・・・・・?・・・・・全部」
レインは意を決して尋ねた。
すると、ユイはこくりと頷いた。泣き笑いのような表情のまま、小さな唇をひらく。
「はい・・・・・。全部、説明します・・・・・キリトさん、レインさん・・・・・アスナさん、ユウキさん、ランさん、ラムさん、リーザさん」
ユイは俺達の顔を見て順に名前を言っていった。
俺とレインはユイの丁寧な言葉を聞いた途端、何かが終わってしまったのだという、確信が生まれた。
するとアスナがレインの隣に移動し肩に手を置いた。
「レインちゃん・・・・・」
「うん・・・・・大丈夫だよ。・・・・・ありがとう、アスナちゃん・・・・・」
続けてユイの言葉がゆっくりと流れ始めた。
「《ソードアート・オンライン》という名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています。システムの名は《カーディナル》、それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群によって世界の全てを調整する・・・・・・。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナルの指揮下のプログラム群に操作されています。ーーーしかし、ひとつだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。・・・・それは、プレイヤーの精神性に由来するトラブルです。それだけは同じ人間でないと解決出来ない・・・その為に、数十人規模のスタッフが用意されるはず、でした」
「それは・・・・GM・・・・」
俺はユイの言葉にぽつりと呟いた。
「ユイ、つまり君はゲームマスターなのか・・・・・?アーガスのスタッフ・・・・・・?」
俺の問いにユイはゆっくりと首を振って否定と答えた。
「・・・・・いえ、わたしはGMではありません・・・・・。・・・・・カーディナルの開発者達は、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようとあるプログラムを試作したのです。それがわたし・・・・・・《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》、MHCP試作一号、コードネーム《Yui》です」
レイン達はユイの言葉に驚愕の余り息を呑んだ。
それは俺もそうなのだろう、言われたことを即座に理解は出来ない。
「それじゃユイちゃんは・・・・・プログラム・・・・・?AIだって言うの・・・・・?」
「はい・・・・・わたしにはプレイヤーに違和感を与えないように、感情模倣機能が与えられています。全部・・・・偽者なんです。・・・・この涙も・・・・すべて・・・・。ごめんなさい、レインさん」
ユイは両目から涙をこぼしながらそう言った。
レインはユイの側に行き抱擁しようと手を伸ばしたが、ユイは受け取る資格が無いと、いうかのように首を横に振った。
「だが、ユイに記憶がなかったってことはどう言うことなんだ・・・・・・?AIにそんなことが起きるはずないと思うんだが・・・・・」
俺はユイに疑問に思っていたことを聞いた。
すると、ユイは首を横に振り話した。
「・・・・・二年前・・・・・。このゲームの正式サービスが始まった日、カーディナルはわたしに予定に無いことを下したのです。それは、プレイヤーとの一切の干渉を禁止する、ということです。状況は最悪なものでした。・・・・・プレイヤー達は恐怖に囚われ、悲しみや絶望、自ら命を断つ者までいました。わたしはそれを一切の干渉をすることなくモニタリグをしていました。ですがその中でどんな状況になっても輝いているプレイヤーがいました。ですが、その中でも一際強い輝きを放っているプレイヤーがいたんです」
「それって・・・・・」
「はい、キリトさんとレインさんです。わたしは二人のモニタリグであそこまでこの世界で輝いているのは見たことがありませんでした。会いたい、あの二人に会ってみたい、わたしはそう思いました。ですが・・・・わたしはプレイヤーの負の感情を見つつけどんどんエラーを蓄積させていきました。もうすでに自意識は無かったのでしょう。・・・・ですが、わたしの中にあの二人に会いたい、というものがありました。そのためわたしはお二人がいる最寄りのシステムコンソールに実体化しました。何度も・・・・何度も・・・・・」
「それがあの・・・・第22層の森の中ってことか」
俺ははじめてユイにあった場所を思い出した。
「はい。わたし、ずっとキリトさんとレインさんにお会いしたかった。わたし、お二人のことを見ていてすごく・・・嬉しかった・・・・プログラムなのにおかしいですよねこんなの」
涙をいっぱいに溢れさせ、ユイは口をつぐんだ。
「・・・・・・ユイ、君はどうしたい?」
「・・・・わたし・・・・・わたしは・・・・・パパとママと・・・・・皆さんとずっと・・・・・ずっと一緒にいたいです!」
ユイは俺達の顔を見て、涙を流しながらそう言った。
「ユイちゃん、ずっと一緒にいよう」
そんなユイにレインは抱き締めながら言った。
だが。
「・・・・・・でも、それはムリなんです」
ユイは首を横に振りながら言った。
「どうして?」
ユイは視線を自分が座っていた台座に目を向けて。
「わたしが記憶を取り戻したのは"これ"に触れたからなんです」
「これ、は・・・・・?」
「わたしは安全地帯に入ったときこれ、に触れました。これは、システムコンソールなんです」ふ
俺達はユイの言葉に驚愕をうけた。
「「「システム・・・・・」」」
「「「「・・・・・コンソール」」」」
「はい。これは、GMがシステムに緊急アクセスするために配置されたものと思われます。先程のボスモンスターはこのコンソールをプレイヤーに近づけさせないためにカーディナルが配置したんだと思います。わたしはコンソールに触れ、カーディナルのエラー訂正能力により記憶と言語機能を修復しシステムにアクセスして《オプジェクトイレイザー》を召喚してボスを倒し、いえ、消し去りました。
それと同時に今まで、放置されていたわたしにカーディナルが注目してしまったということです。恐らく今、コアプログラムがわたしのプログラムを走査しています。すぐにシステムに異物と認定され消去されてしまうでしょう。・・・もう・・・余り時間は残されていません・・・・」
「そんな・・・・・・ユイちゃん・・・・・」
「どうにかならないの・・・・・」
「こんなの酷すぎるよ・・・・・」
「なんとかならないのかよ!この場所から離れれば・・・・・」
俺達の言葉に、ユイは微笑するだけだった。
「パパ、ママ、皆さんありがとう。これでお別れです。暗闇の中・・・・いつ果てるとも知らない長い苦しみの中で、パパとママと皆さんの存在だけがわたしを繋ぎ止めてくれた・・・・パパとママ、皆さんのそばにいると、みんなが笑顔になれた・・・・わたし、とっても嬉しかった。お願いです、これからも・・・・わたしの代わりに・・・・みんなを助け・・・・喜びを分けあってください・・・・」
ユイの黒髪やワンピースが、その先端から朝露のように儚い光の粒子を撒き散らし段々と透き通っていった。
俺とレインはユイの消滅が始まっていることを悟った。
「いや!いやだよ‼ユイちゃん、行かないでよ!お願い‼」
「行くな、ユイ!」
溢れでる光に包まれながら、ユイはにこりと笑い消える寸前レインに。
"ママ、わらって・・・・・"
そう言うとユイの身体がひときわ眩く光が飛び散った。
光が収まり消えたときにはもうそこには何もなくからっぽになっていた。
「うわああああ!!」
抑えようもなく声を上げながら、レインは膝を突いた。
アスナ達も目に涙を浮かべ泣いていた。
「カーディナル!!そういつもいつも・・・・・思い通りになると思うなよ‼」
俺は部屋の天井を見据えて叫んだ。
俺は瞬時にコンソールに飛び付き、ユイが触れ表示されたままのホロキーボードを素早く叩く。
ここから先はこの世界の《黒の剣士》キリトではなく現実の、桐ヶ谷和人の出番だ。現実で培ったスキルを駆使して俺はコンソールわ操作した。
「「「「「「キリト(さん)(君)一体何を・・・・・」」」」」」
レイン達は驚き、瞠目しながら言った。
「今なら・・・・・今ならまだ、GMアカウントでシステムに割り込めるかもしれない・・・・!」
俺はキーを乱打し続けながら呟き高速でスクロールする文字列を見ながら更に幾つかのコマンドを立て続けに入力した。すると、不意にコンソール全体が青白くフラッシュし、直後、破裂音と共に俺は後ろに弾き飛ばされた。
「っ!」
「き、キリト君大丈夫!」
レインは吹き飛ばされた俺の上体を抱き起こしながら言った。
俺はレインに笑みを浮かべると、手に持っている大きな涙の形をしたクリスタルを見せた。
「キリト君、これは・・・・・?」
レインが俺に聞いてきた。
レインの背後のアスナ達も俺の事を心配そうにしながらクリスタルを見た。
「・・・・・ユイが起動した管理者権限が切れる前に、ユイのプログラム本体をシステムから切り離し、オプジェクト化したんだ。・・・・これは、ユイの心だよ、その中にある・・・・」
「この中に、ユイちゃんが・・・・・」
レインは泣きながら嬉しそうに俺から受け取ったクリスタルを抱いた。
「レインちゃん・・・・良かったね」
「ユイちゃんの心そこにあるんだね」
「レインさん、よかったですね」
「レインさん・・・・よかったです」
アスナ達は嬉し涙を流しながらレインに言った。
「みんな・・・・ありがとう・・・・」
ラムは俺の所に来て。
「キリト、よかったですね」
「ああ。コンソールが閉じるまでに出来てよかったよ」
レイン達の姿を見ながらそう言った。
あのあと、俺達は転移結晶を使って教会に戻ると先に脱出したシンカーさんとユリエールさんがサーシャさんと子供達と一緒に俺達の帰りを待っていた。
戻った俺達はシンカーさんとユリエールさんにお礼を言われ『軍』を解散し新しくギルドを発足させると言われた。
今まで『軍』に蓄積されたコルやアイテム類は平等に分配するそうだ。
ユイについて聞かれると。
「ユイは・・・・・お家に帰りました」
そう言った。
あそこであったことは俺達7人の秘密とした。
ユイの心は、レインがネックレスとして身に付けている。
シンカーさん達と別れた後、アスナ達は一回ギルド本部に戻り残りの休暇を楽しむそうだ。
俺とレインは、第22層の森の家に戻って来た。
家の中に入りお茶の準備をしレインと寛いでいるとたった1日だけとはいえ一緒に住んでいたユイの事を思い出していた。
不意にレインが。
「キリト君。ユイちゃんってこのゲームがクリアされたらどうなるの?」
「一応、俺のナーヴギアのローカルメモリに保存されるようになっている。だけど向こうで、ユイを展開させるのは大変だろうけどなんとかやってみるつもりだ」
「そうなんだ」
「ああ、ユイはずっと俺達の側にいる」
「そうだね。ありがとう、キリト君」
レインは俺に抱きついて言った。
すると、俺達の耳に。
"パパ、ママ、頑張って"
と、聞こえた気がした。
多少原作と被ってしまいすみません。
次回は、釣り。
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