ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い 作:ソーナ
「はあ、全然釣れないな・・・・・・」
俺は今、家の近くの大きな湖で釣りをしていた。
ここは、第22層にある湖の中ではかなり広い。第61層『セルムブルク』は全面湖というか海みたいな感じなのだがここ、第22層の湖は周りを木々に囲まれておりその場にいても安らぐ感じがするのだ。
三日前、第1層にある黒鉄宮地下迷宮の奥にある安全地帯で別れを遂げた俺とレインの娘ユイは、《メンタルヘルス・カウンセリングプラス》MHCP、AIだった。
その為、この世界を維持しているカーディナルシステムに消されそうになったところをギリギリ、ユイのプログラムをシステムから切り離しオプジェクト化することに成功した。ユイの心は今、レインがネックレスとして肌身離さず身に付けている。
と、俺は釣竿を湖に垂らし魚が釣れるまで寝っ転がり三日前の事を思い出していた。
「・・・・・全然釣れない・・・・・・やってられるか・・・・・・」
30分程しても未だに魚1ぴきも釣れない。
俺は昔スキルホルダーにセットした両手剣スキルを削除し釣りスキルを新たに設定していた。釣りスキルはようやく熟練度が600を越えたので、そろそろまともな魚が釣れる筈なのだが・・・・・・・
俺がそう思っていると不意に頭上に影が差した。
頭上を見てみると釣竿を持った男がいた。
NPCか?、と思っていると。
「どうも。釣れますかな?」
頭上の男が話しかけてきた。
「え、え~と・・・・・」
俺はどう答えてよいか思案していると。
「NPCじゃありませんよ」
男は俺の思考を読んだかのように苦笑いをして言ってきた。
「す、すみません。まさかと思ったものですから・・・・・」
「いやいや、無理はありません。多分私はここでは突出して最高齢でしょうからな」
男は肉付きのいい体を揺らして、わ、は、は、と笑う。
「ここ失礼します」
男は俺に言って傍らに腰を下ろし、腰のポーチから餌箱を取り出すよ不器用な手つきでポップアップメニューを出し、竿に餌を付けた。
「私はニシダと言います。ここでは釣り師。現実では東都高速線という会社の保安部長をしとりました」
「俺はキリトと言います。最近上の層から引っ越して来ました・・・・・・・つかぬこと伺いますが、ニシダさんはやはり・・・・・・SAOの回線保守の・・・・・・」
「一応責任者ということになっとりました。上からは何もログインまではせんでいいと言われたんですがな、自分の仕事はこの目で見ないと収まらん性分でしてな」
「な、なるほど」
「いやー、いい川や湖を探してこんなところまで登って来てしまいましたわ」
「確かにこの層にはモンスターは出ませんから釣りにはもってこいですね」
ニシダさんは、俺の言葉にニヤリと笑った。
「どうです、上の方にはいいポイントがありますかな?」
俺はニシダさんの問いに少し考えてから。
「第61層は全面湖、というか海で、相当な大物が釣れるそうですよ」
と、言った。
「ほうほう!それは是非とも一度行ってみませんとな」
その時、ニシダさんの垂らした糸の先で、ウキが勢いよく沈み込んだ。
ニシダさんは、焦ることなく悠然と竿を操り、水面から青く輝く大きな魚体を一気に抜き出した。魚はしばしニシダさんの手許で跳ねた後、自動でアイテムウインドウに収納され、消滅した。
「お見事・・・・・・!」
「いやぁ、ここでの釣りはスキルの数値次第ですから」
ニシダさんは照れたように笑いながら言った。
「ただ、釣れるのはいいんだが料理の方はどうも・・・・・。煮付けや刺身で食べたいもんですが醤油無しではどうにも・・・・」
「あー・・・・・・・」
俺は少々迷ったが、この人になら別に構わないだろうと判断し話した。
「・・・・醤油にごく似ている物に心当たりがありますが・・・・」
「なんですと!」
ニシダさんは眼鏡の奥の眼を輝かせ、身を乗り出してきた。辺りの水はニシダさんの声に反響し波紋が出来ていた。
「お帰りキリト君。あれ、此方の方は?」
ニシダさんを、つれて帰宅した俺は家にいたレインに説明した。
「なるほど~」
レインは首をたてに降りニシダさんの方を向くと挨拶をした。
「はじめまして、キリト君の妻、レインです」
レインが挨拶をするとニシダさんはぽかんと口を開けフリーズしていた。
しばらくして数度瞬きをし、我に返った様子のニシダさんは、
「い、いや、これは失礼。私はニシダと申します。厚かましくお招きに預かりまして・・・・・」
頭を掻きながら、わははと笑った。
ニシダさんから受け取った魚を、レインは早速料理スキルを発揮し煮付けや刺身等を調理し、食卓に並べた。
「はぁ・・・・・、見事な物ですね」
「そんなことないですよ~」
「流石だな、レイン」
俺達はレインの作った食事に喋らずに食べた。
話始めたのは食後のお茶を飲んでいるときだった。
「いやぁ、この世界にまさか醤油があるとは・・・・・」
「自家製なんですよ。良かったらどうぞ」
レインはそう言うと台所から自家製醤油を持ってきてニシダさんに渡した。
「これはこれは、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ美味しいお魚をいただきましたから。キリト君、お魚を釣った試しがないんですよ」
「そ、そんなことないし。というか難易度が高いんだよ、あそこは・・・・・・・」
俺がレインに言い訳をするとニシダさんはニコニコ笑いながら言った。
「いえいえ、難易度が高いのはキリトさんが釣っていたあの湖だけですよ。それ以外の湖は難易度が低いですから」
「な・・・・・・!?」
ニシダさんの言葉に俺は絶句した。隣を見るとレインがお腹を押さえてくっくっと笑っていた。
「なんでそんな設定になってるんだ・・・・・」
「実は、あの湖にはですね・・・・・」
ニシダさんは声をひそめるように言った。
「どうやら、主がおるんですわ」
「「ヌシ?」」
「はい。以前、この村でずいぶんと値をはる釣竿がありましてな不思議に思い、試しにと買ってみたんですが、これがさっぱりに釣れない。試しにあの難易度が高い湖でやってみたらヒットしまして」
「それじゃあ、ニシダさんはそのヌシを釣り上げたんですか?」
レインが聞くとニシダさんは首を横に振り、
「いえ、影は見えたのですが釣り上げるというところまでは・・・・・逆に竿ごと取られてしまいましたわ。ありゃ怪物、そこらにいるのとは違う意味でモンスターですな」
両腕をいっぱいに広げて言った。
俺は、まさかこの層にそんなモンスターがいると聞いて驚いた。
「見てみたいなぁ!」
俺の隣にいたレインが眼を輝かせ俺の顔を見ながらそう言った。
「そこで物は相談なんですが、キリトさんは筋力パラメーターの方に自信は・・・・・・」
「う、まあ、そこそこには・・・・・・」
「なら一緒にやりませんか!合わせるところまでは私がやります。そこから先をお願いしたい」
ニシダさんは釣り版のスイッチをやりませんか、と言っているのだ。
俺は、少々首をひねり考えたが、
「キリト君、やってみようよ!絶体面白いから」
ワクワク、した表情でレインに言われた。
だが、まあ俺もかなり好奇心が刺激させられたため、
「・・・・・分かりました。やりましょう」
俺が言うと、ニシダさんは満面の笑みを浮かべて、わ、は、は、と笑った。
ヌシ釣りの決行は後日知らせると、ニシダさんが言っていたため俺達はニシダさんからの知らせを待つことにした。
そして、ニシダさんからのヌシ釣りの決行の知らせを受け取ったのはそれから三日後の事だった。
その頃、ユウキとランは二人の自宅でメニューウインドウを表示させて顔をしかめていた。
~ユウキside~
僕と姉ちゃんは自宅のソファに座ってため息をついていた。
「姉ちゃん、これって・・・・・・」
「・・・・・ええ。恐らくアレに該当するスキルでしょうね」
僕のメニューウインドウは今、スキルを表示している。
僕達は今ある1つのスキルを見ていた。
それは。
「姉ちゃん、どうしようか」
「一応、これを確認してみましょうか」
「わかった。それじゃ、僕のほうから言うね」
「お願いね、ユウキ」
「僕のは、『紫閃剣』スキルだね。このスキルは盾が持てないみたい。だけど僕、元から盾装備しないから関係ないね。それで、『紫閃剣』専用スキルと片手剣スキルの両方が使用できて技後硬直の短縮と『紫閃剣』スキルの威力が1.5倍になるみたい」
「それじゃ、今度は私の番ね。私のは『変束剣』スキルね。これもユウキと同様、盾は装備できないみたいだけど私にも関係ないわね。『変束剣』専用のスキルと片手剣スキルの両方がユウキと同様使用できて技後硬直の短縮と、『変束剣』スキルの威力が1.2倍になるみたいわね」
僕と姉ちゃんは新たに表示されたスキルの説明を終えるとため息をはいた。
「姉ちゃん、これ、ユニークスキルだよね」
「ええ、キリトさん達と同じでしょうね」
「・・・・・・・誰かに話した方がいいかな?」
「そうですね・・・・・・・一応、アスナさんとキリトさん、レインさんには話しておきましょうか」
「あれ?ヒースクリフ団長は伝えなくていいの?」
「ん~・・・・・・少し話すのは止めておきましょう。これが本当にユニークスキルなのか分かりませんし確認してからでも遅くはないでしょう」
「わかった。でも、どうやって伝える?」
「う~ん。今度キリトさん達の家に行きましょう。アスナさんには後で直接伝えましょうか」
「オッケー」
僕と姉ちゃんは一応、キリト達に伝える事にしたが時間も遅いため明日伝えることにした。
~ユウキside out~
多少、オリジナルを入れてます。