ソードアート・オンライン 黒の剣士と紅の剣舞士 二人の双剣使い   作:ソーナ

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あと少しでSAO編完結。
次次回から新たな章が始まります。
アンケートの結果はその時報告致します。


SAO編 第43話〈VS骸骨の刈り手〉

昨日ヒースクリフから第75層ボス攻略戦に出て欲しいと言われた俺とレインは今日血盟騎士団本部にて詳細を聞く予定になっていた。

 

「ほ~ら、キリトくん。いつまでもくよくよしないでよ!」

 

レインがベットの端に腰かけてガックリと項垂れている俺に向かって言った。

 

「だってまだ2週間だけなんだぜ」

 

俺はレインに言い訳をするがレインは苦笑いを浮かべたままだった。

 

「ほら、行こう。ボス攻略が終わったらまたこの家で休もうよ」

 

「・・・・・そうだな」

 

俺は既に装備してある『ブラックナイトコート』と背中にある双剣を一瞥しレインとともに第55層、グランザムに転移した。

 

 

第55層グランザム 血盟騎士団本部

 

「偵察隊が全滅!?」

 

俺達がついてまず最初に聞かされたのはボス偵察隊が全滅したという事だった。

 

「昨日のことだ。第75層迷宮区のマッピングは時間はかかったが一人の犠牲者を出さずに出来たのだが、ボス戦はかなりの苦戦が強いられることを予想した・・・・・」

 

俺もその事は予想していた。

第25層、第50層のボスはそれまでのどのボスよりも強く手強かったのだ。

ゆえに今回のクォータ・ポイントも同様と予測したのだ。

 

「そこで、我々は5ギルド合同で二十人偵察部隊として送り込んだ。偵察は慎重に期して行われた。後衛の十人がボス部屋の扉の前で待機し、前衛の十人が部屋の中央にたどり着きボスが出現すると突如、扉が閉じたそうだ・・・・・・ここからは後衛隊十人からの報告だ。その扉は、5分以上開かなかったそうだ。直接打撃、鍵開けスキル等何をしても開かなかったらしい。ようやく扉が開いたとき・・・・・」

 

ヒースクリフは一瞬目を閉じ、言葉を続けた。

 

「部屋のなかには、何もなかったそうだ。十人の姿もボスも消えていた。更に、転移脱出した形跡すらもなかったそうだ・・・・・念のため、第1層の黒鉄宮の生命の碑を確認したが・・・・・」

 

ヒースクリフはそう言うとその先を言葉にせず、首を横に振って答えた。

 

「そんな・・・・・・十人も、どうして・・・・・・」

 

俺の隣でレインが、絞り出すかのように言った。

 

「結晶無効化空間・・・・・・・か」

 

「恐らくそうだろう。アスナ君達の報告では第74層ボス部屋も無効化空間だとのことだそうだから、恐らく今後全てのボス部屋が無効化空間と考えてもいいだろう」

 

「バカな・・・・・・」

 

結晶が使えないとなると、緊急脱出や回復、解毒まで出来ないと言うことだ。ポーションでHPや毒等は回復できるがHPの回復は微々たる物で、思わぬアクシデントが起こるかもしれないボス部屋では速急に回復出来ないのは大きなデメリットとなるだろう。

更に、死者を出さない、それはこのゲームを攻略する上での大前提だ。だが、無効化空間では緊急脱出出来ないためどのような事が起こるか分からず死亡する確率が飛躍的に高まる。

だが、ボスを倒さなければ次へ勧めない以前にこのゲームをクリアする事すらも有り得ない・・・・・・

 

「いよいよ本格的なデスゲームになったと言うわけだ・・・」

 

「ああ。だが、ここで立ち止まる訳にはいかない」  

 

ヒースクリフはキッパリとした声で続ける。  

 

「結晶による脱出が不可能な上に、今回はボスの出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば此方とて統制のとれる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。休暇中の君たちを召喚するのは本意ではなかったのだが、了解してくれたまえ」

 

俺は肩を竦めながら。

 

「わかっている。だが、もし危険な状況なのなったら、俺はパーティー全体よりレインを真っ先に守ります。これは俺にとって最優先事項です」

 

俺の確固たる言葉にヒースクリフは微かな笑みを浮かべた。

 

「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦に期待するよ。攻略開始は3時間後。予定人数は君たちをいれて32人だ。第75層コリニア、ゲートに午後1時集合だ。では解散」

 

そう言うと、ヒースクリフとともにアスナ達も一斉に立ち上がり、部屋を出ていった。

 

 

「3時間か~、どうしよかキリトくん」

 

鋼鉄の長机に腰掛けて、レインが聞いてきた。

俺は、レインの姿をじっ、と見つめる。

 

「レイン、聞いてくれ」

 

「なに、キリトくん?」

 

「レイン、今回のボ・・・・・「はい、ストップキリトくん」・・・・最後まで言わせてくれよ」

 

俺の言葉を遮りレインは俺に近づき。

 

「キリトくん。キリトくん、今わたしにボス攻略戦に出ないで、って言おうとしたでしょ」

 

「・・・・・ああ」

 

「どうして?」

 

「ヒースクリフにはああ言ったが正直、結晶が使えない場所でキミを守りながら戦うのは無理だと思う。それに、もしもキミの身に何かあると思うと・・・・・・恐いんだ」

 

俺がそう言うと、レインは近づき俺の目の前に立った。

 

「キリトくん。わたしは大丈夫だよ。キリトくんを残して死なないよ。わたしが死ぬときは、キリトくんが死んだとき。だって、キミがいない世界にわたしだけいたってなんの意味もないんだもん。わたしはね、キリトくん。キミがいると、この世界が輝いて見えるんだよ」

 

「・・・・・・ああ。そうだな」

 

「それに、わたしはキミと現実世界でちゃんと会って叶えたい事があるんだ」

 

「叶えたい事?」

 

「うん。でも、今はまだ秘密だよ。何時か話すね」

 

「わかった」

 

俺とレインはそのあと集合時間までずっと話していた。

これが最後になるかも知れないからだ。

だか、俺達は絶対に死なないという決意に道溢れていた。レインがいれば絶対に大丈夫。キリトくんがいれば絶対に負けない、と。

そして時間になり集合場所である第75層コリニアに俺達は転移した。

 

第75層主街区コリニア 転移門広場

 

「よぉ、やっぱりお前達も来たか」

 

第75層コリニアの転移門に降り立つとクラインが声を掛けてきた。隣には驚いたことにエギルが両手斧を装備していた。

 

「クライン、それにエギルも。お前らも参加するのか」

 

「なんだってことはないだろう!」

 

「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売投げ出して加勢に来たんじゃねえか。この無視無欲の精神を理解できないたぁ・・・」

 

「そうか、無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配から除外していいのな」

 

「いや、そ、それはだなぁ・・・・」

 

情けなく口ごもるその語尾に、クラインとレインは朗らかな笑い声が重なった。

その笑いは集まった周囲のプレイヤーたちにも伝わり、皆の緊張感がほぐれていくようだった。

午後1時丁度に、転移ゲートから新たなプレイヤーが数名出現した。真紅の長衣に巨大な十字盾を携えたヒースクリフと、血盟騎士団の精鋭だ。彼らの姿にプレイヤーたちの間に再び緊張が走った。

その中には、副団長のアスナ、補佐のユウキ、ラン、リーザにラムまでいた。

 

「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている」

 

ヒースクリフの力強い叫びに、プレイヤーたちは一斉に声を上げ、答えた。

すると、ヒースクリフは俺とレインの方に来ると。

 

「キリト君、レイン君、今日は頼りにしているよ。《二刀流》、《多刀流》、存分にふるってくれたまえ」

 

俺とレインは無言で頷くと、ヒースクリフは再び集団の方を振り返り、軽く片手を上げた。

 

「では、出発しよう。目標のボス部屋直前の場所までコリドーを開く」

 

そう言うとヒースクリフは回廊結晶を取りだし高く掲げ、

 

「コリドー・オープン」

 

と発生した。

結晶は砕け散り、空間に青く揺らめく光の渦が出現した。

俺達は順次に青い光の渦のなかに足を踏み入れた。

 

 

 

第75層迷宮区ボス部屋前

 

軽い目眩にも似た感覚のあと、目を開くとそこはもうすでにボス部屋前だった。

迷宮区は、僅かに透明感のある黒曜石のような素材で組み上げられていた。辺りは、鏡のように磨き上げられた黒曜石を直線的に敷き詰められている。

空気は冷たく湿り、うすい靄がゆっくりと床の上をたなびいている。

 

「・・・・・なんか・・・・やな感じがするね・・・・」

 

「ああ・・・・・」

 

レインが言った言葉に俺は肯定した。

周囲では、プレイヤーたちがそれぞれ固まってメニューウインドウを開き、装備やアイテムを確認している。

俺はレインを伴って一本の柱の陰によると、レインの手を握った。押さえつけていた不安が一気に噴き出してくる。

 

「・・・・・・・だいじょうぶだよ、キリトくん」

 

「・・・・・レイン」

 

「キリトくんは、わたしが守る。・・・・・だから、キリトくんもわたしを守ってね」

 

「・・・・・・ああ、もちろんだよ」

 

俺は握っている手を少し強く握りしめ、握っている手を放した。

ヒースクリフがボス部屋の扉の前に立ち鎧を鳴らしていった。

「みんな、準備はいいかな。今回は、ボスの攻撃パターンに関する情報がない。基本的に我々、血盟騎士団が前衛で攻撃を食い止めるので、その間出来る限りパターンを身切り、柔軟に反撃をしてほしい」

 

攻略組プレイヤーは、ヒースクリフの言葉に無言で頷いた。

 

「では、行こうか。ーーー解放の日のために!」

 

ヒースクリフは黒曜石の扉の中央に手を掛けた。

俺達全員に緊張が走った。

俺とレインは、隣に並び立つクラインとエギルに声を掛けた。

 

「死ぬなよ」

 

「死んだら駄目だよ、二人とも」

 

「へっ、当たり前だぜ」

 

「今日の戦利品で一儲けするまでくたばる気はないぜ」

 

クラインとエギル、二人の言葉の後大扉がゆっくりと開きだした。

プレイヤーたちは、各々の武器を一斉に抜刀し構えた。

俺は、背中から『エリュシデータ』、『ダークリパルサー』を、隣にいるレインは腰から『キャバルリーナイト』、『トワイライト・ラグナロク』を放剣した。

最後に、十字盾の裏側から長剣を音高く抜いたヒースクリフが、右手を高く掲げ、叫んだ。

 

「ーー戦闘、開始!」

 

ヒースクリフを先頭に全員、完全に開ききった扉の中へと走り出す。

内部は、かなり広くドーム状の部屋だった。

全員が部屋に走り込み、自然な陣形を作って立ち止まると直後、背後の扉が轟音を立てながら閉まった。

これで、もはや開けることは不可能だろう。俺達が全滅するか、ボスが死ぬかまでは。

数秒の間沈黙が続いた。ボスは出現しない。何処かにいるのか。俺は索敵スキルをしようかと思った。

 

「おいーー」

 

誰かが、耐えきれないという風に声を上げた。

その時、カサカサと何かが擦れる音がした。

 

「上だよ!!」

 

隣で、レインが鋭く叫んだ。俺達は、はっとして頭上を見上げた。

ドームの天頂部にそれはいた。正確には、貼りついていた。

巨大だ。とてつもなくでかく、長い。

俺は視線を集中させボスへと向けた。

イエローカーソルとともにモンスターの名前が表示された。

 

「スカルーーーー」

 

「ーーーーリーパー!」

 

クラインの言葉に俺は続いてボスの名前を呟いた。

《The Skullreaper》ーーーー骸骨の刈り手。そう、表示されていた。HPゲージは5段ととんでもない量だった。

スカルリーパは不意にドームの天頂部に貼りついていた脚を全て大きく広げーーーーーパーティーの真上に落下してきた。

 

「固まるな!距離を取れ!」

 

ヒースクリフの鋭い叫び声が、凍りついた空気を切り裂いた。

我に返ったように全員が動き出した。

俺達も落下予測地点から慌てて飛び除く。

だが、丁度真下にいた3人の動きが僅かに遅れた。 

 

「おい!ーーーーーこっちだ!はやく!」

 

俺は慌てて叫んだ。

3人は走り出そうとしたがその直後、地響きをたててスカルリーパが落下した。その瞬間、床全体が大きく震えた。

足をとられ、3人がたたらを踏む。そこに向かって、スカルリーパーの右腕、長大な骨の鎌が横薙ぎに降り下ろされた。 

3人は背後から同時に吹き飛ばされた。

中を吹き飛ぶ間にも、HPは猛烈な勢いで減少していく、徐々に黄色から赤へとーーーーそして、呆気なくHPがゼロになった。まだ空中にある3人の体が、立て続けに無数の結晶を撒き散らしながら破砕した。

3人の消滅音が重なって鳴り響く。

 

「一撃で・・・・死亡・・・・だと!?」

 

俺達は、激しく体を強張らせた。

 

「こんなの・・・・・無茶苦茶だよ」

 

隣でレインがかすれた声で呟いた。

このSAOの中では基本的に数値的なレベルさえ高ければそれだけで死ぬ確率は低くなる。特に今日のパーティーは高レベルプレイヤーだけが集まっているため、たとえボスの攻撃といえど数発の連続技なら持ちこたえられるはずだった。それがたったの一撃でーーー。 

一瞬にして3人の命を刈り取ったスカルリーパーは上体を高く持ち上げてとどろく雄叫びを上げると、猛烈な勢いで新たなプレイヤーに目掛けて突進した。

 

「わあああーーー!!」

 

スカルリーパーにターゲットされたプレイヤーは恐怖の悲鳴を上げる。再び骨鎌が高く振り上げられる。

と、その真下に飛び込んだ影があった。

ヒースクリフだった。ヒースクリフは、巨大な十字盾を掲げ鎌を迎撃する。凄まじい衝撃音が鳴り響く。

だが、鎌は2本あった。左側の腕でヒースクリフを攻撃しつつ、右の鎌を振り上げプレイヤーに降り下ろした。

プレイヤーは、ポリゴンとなり爆散した。

これで犠牲者数は4人になってしまった。

スカルリーパはさらにプレイヤーの集団へと鎌を突き刺そうとした。ヒースクリフは、左の鎌を防いでいるため右の鎌を防ぐことは出来ない。

 

「くそっ・・・・・・!」

 

俺は我知らず突き刺されようとしていたプレイヤーの集団の前に飛び込み、轟音を立てて振ってくる骨鎌を左右の剣を交差させ、鎌を受ける。

 

「・・・・!重すぎるーーーー!!」

 

受け止めた鎌はとんでもなく重く徐々に俺に近づいてくる。

その時、新たな剣が白銀の輝きを纏い、下から鎌に命中した。

新たな剣が命中し勢いが緩んだその隙に、全身の力を振り絞って骨鎌を押し返す。

新たな剣を命中させたのはレインだった。

俺の真横に立ったレインは、俺の方を一瞬みて、言った。

 

「わたしとキリトくん、二人同時に受ければいけるよ!わたしとキリトくんの二人なら出来るよ!」

 

「ああ、そうだな。頼むぞ、レイン!」 

 

俺は頷いた。

再び、今度は横薙ぎに繰り出された骨鎌に向かって、俺とレインは同時に右斜め斬り下ろしを放った。

完璧にシンクロした二人の剣が、光の帯を引いて命中する。

今度は、スカルリーパの鎌が弾かれた。

 

「鎌は俺たちが食い止める!!みんなは側面から攻撃してくれ!アスナ、ユウキ、ラン!みんなに指示を頼む!」

 

「「「了解!」」」

 

俺は声を振り絞って叫びんだ。

その声に、ようやく全員呪縛が解けたようだった。それぞれ、武器を構え雄叫びを上げてスカルリーパーの方に向かって突撃する。数発の攻撃がスカルリーパーの体にあたり、ようやく初めてHPゲージが僅かに減少した。

だが、直後、複数の悲鳴が上がった。

鎌を迎撃する合間を縫って視線を向けると、スカルリーパーの尾の先についた長い槍状の骨に数人が薙ぎ払われ、倒れるのが見えた。

 

「くっ・・・・・」

 

俺は、スカルリーパーのHPゲージを見て呆然とした。

多様な攻撃を与えられながらも未だにHPゲージは5段の内5%しか削られてなかった。

 

「キリトくん!」

 

「ああ・・・・・!」

 

俺とレインはスカルリーパーの鎌を捌きながら攻撃をした。だがこれ以上、同じように単身左の鎌を捌いているヒースクリフも余裕はない。

 

「キリトくんっ・・・・・!」

 

"だめだ!これ以上向こうに気を取られると殺られる!"

 

"わかった・・・・・また、来るよ!"

 

"左斬り上げで受ける!"

 

俺とレインは、不思議な感覚に陥っていた。

視線を返すだけでレインがどうしようとするのか分かる気がするのだ。

 

「はあぁぁぁぁあ・・・・・・!」

 

「やあぁぁぁぁあ・・・・・・!」

 

俺達は、息もつかせぬペースで迫り来る攻撃を、瞬時に同じ技で反応し受け止める。

時折繰り出される敵の強攻撃を受ける余波で、わずかずつHPが減少していくが、俺達はそれすらもすでに意識していなかった。




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