ソードアート・オンライン ~Un observateur~   作:千ノ華

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どうも千ノ華です
かなり長くなってしまいました、許してください、何でもしまむら!


物語は動き出すとでも?

鐘が鳴り響いている。

1万人のプレイヤー達を、暗闇の中の俺を、嘲笑うかのように。

 

 

 

どうやら俺は『ソードアート・オンライン』に転生してしまったらしい。しかもAIの女の子として。

ちなみに名前は『カルミア』という。

 

普通なら、なんの予兆も無しにデスゲームに連れてこられたことに動揺やら恐怖やらを抱いたり、あるいは『SAO』に来れたことを喜んだりするところなのだが・・・

 

「人が喋ろうとしてるのに邪魔すんなゴラァ!」

俺は怒っていた。

 

「人が覚悟決めようって時になんで割り込んでくるかなぁ!?」

 

言葉を遮られた程度でガチギレしていました。しかも人じゃなくて鐘に。・・・心狭すぎない?ていうかアホの子かな?

 

そんな子供のようなことをしていると、周りに大量のモニターが現れた。いつの間にか、鐘の音も止まっている。

 

気を取り直して、モニターを見ていく。

モニターは全てある場所を写していた。

 

「はじまりの街、転移門前か」

 

SAOの舞台、アインクラッド 第一層 はじまりの街。これから始まるデスゲームのスタート地点。

転移門前には1万人のプレイヤーが集まっている。正確には『集められた』のだが。

 

「そういえば、原作ではもう何人か亡くなってるんだよな・・・」

 

そう、原作では既に約200名ほどが帰らぬ人になってしまっている。

『ナーヴギア』というハードによって。

SAOは『ナーヴギア』というハードを使ってプレイする。

 

ナーヴギアとは頭を全部覆うヘッドギアで、ハード内に埋め込まれた信号素子とやらで直接脳に接続、仮想の五感情報を与えて仮想空間を生成する機械とかなんとか。

 

簡単にいえば自分の意思で動くことが出来る夢を見せる機械って感じ・・・だと思う。

 

そして、その技術を応用して脳を焼き切る威力を持つ、強力な電磁波・・・高出力マイクロウェーブを生成できる。

つまり、人を殺せるということ。

 

というのが、ナーヴギアの大体の設定だったはずだ。

 

「意外と覚えてるもんだなあ・・・」

 

記憶力には自信がなかったため、自分でも驚く。

「あとはそのマイクロウェーブの発生条件だよな」

 

それを口にしようとした時、モニターからどよめき声が上がった。

 

・・・またしても妨害されたが、怒らないよ?俺は心が広いんだ。

 

それにこういうのは本人に言ってもらうのが一番良いというもの。大人しく画面に集中することにした。

 

 

 

 

 

 

―アインクラッド 第一層 はじまりの街 転移門前―

 

突然の出来事に俺は困惑していた。

フィールドでクラインという男にソードスキルのレクチャーをしていたのだが、メニューからログアウトボタンが消えていたり、鐘が鳴ったと思ったら、ここ、転移門前に転送されていたからだ。

 

「キリト!」

 

俺を呼ぶ声の方を向くと、さっきまでレクチャーをしていた青年の姿をした男、クラインが不安そうな顔でこっちに駆け寄ってきた。

 

「クライン、無事だったか」

「おめぇもな、キリト。しかし何が起こってるんだ?」

 

ここに集められたということは運営からログアウトできない不具合について連絡があるということなのだろうが・・・

 

「サービス開始初日だしこんなこともあるだろうよ、今頃運営は大慌てだろうな」

 

クラインはそういうがよく良く考えれば、ログアウトできないなんて今後の運営に関わる事態だ。

 

(復旧作業が始まっていればいいが・・・)

 

そう思いながら、運営からの連絡を待つ。

 

突然、空が《WARNING》《System Announcement》と書かれた赤いパネルで覆われていく。

 

そして、パネルの隙間から赤い液体が溢れてくる。

まるで血のようなそれは、どろりとゆっくりと下に落ちていく。

だが、その液体は地に落ちることはなく、徐々に人の姿を象っていく。

 

そして、液体はローブを纏った人に・・・いや、人というよりはゴーストと言った方が正しいだろうか。

顔も胴体も暗闇に包まれ、足はない。

 

ただローブと手袋が浮いているような光景が出来上がっていた。

 

そしてローブのゴーストはこう言った。

 

『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』

 

「私の世界・・・?」

 

こいつは、一体何を言っているのだろうか。

その答えを見出す前に、ゴーストが喋る。

 

『私の名前は茅場晶彦、今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

(茅場晶彦・・・!?

ナーヴギアを・・・ソードアート・オンラインを開発した!?)

 

 

プレイヤー達が騒めく中、茅場晶彦を名乗るゴーストはこう言った。

 

ログアウトボタンが消滅しているのは、不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様であり、プレイヤーが自らログアウトすることは出来ないと。

 

ログアウトの条件はアインクラッド第100層を攻略し、ゲームをクリアすること。

 

ゲーム内での死亡、または外部からナーヴギアを外そうとする試みがあった場合、ナーヴギア内部の高出力マイクロウェーブによって、プレイヤーの脳が破壊され、現実世界でも死ぬことになる・・・と。

 

「ありえねぇ・・・そんなことできるわけがねぇ!」

 

隣でクラインが叫ぶ。

俺もそう思った。でも本当なのではないかと思う自分もいた。

 

混乱する中、茅場は語る。

 

『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族、友人などがナーヴギアを外そうとした試みた例があり、その結果、213名ものプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している。』

 

「なっ」

「213名もだと・・・!?信じねぇぞ俺は・・・っ!」

 

俺は言葉が出ず、クラインは認めまいと首を振る。

茅場の周りにモニターが現れる。それはナーヴギアによる死亡と報道するあらゆるニュースの映像だった。

 

『ご覧の通り、多数の死者が出たことを含め、あらゆるメディアが報道している。よって、既にナーヴギアが強制的に解除されることはないと言っていいだろう。諸君らは安心してゲームに励んでほしい』

 

この言葉と、映像によって俺の中の疑惑は確信に塗りつぶされた。

相手はあの茅場晶彦だ、ナーヴギアを開発し、人の脳を、思考を、そしてきっと魂すらも、この仮想世界に持ってくることに成功した男だ。そして俺はそんな彼に魅力されていた。

 

だから俺は信じた、信じざるを得なかった。

 

彼が本気で言っていると。

 

このゲームで死ねば

 

本当に現実世界でも死んでしまうと。

 

 

茅場は言葉を続ける。

 

『それでは最後に、諸君らのアイテムストレージにプレゼントを用意してある。確認してみるといい』

 

プレイヤー達は怯えながらその言葉に従い、次々とストレージを開いていく。

そして、俺とクラインもアイテムを取り出した。

 

「手鏡・・・?」

 

それは手鏡だった。長方形の鏡に俺の・・・『キリト』のアバターの顔が映っている。

手鏡が一体何の役に立つというのだろうか。

 

「うおおおお!?」

「クライン!?」

 

隣でクラインの悲鳴が聞こえ、振り向くと既に白い光に包まれたあとだった。

直後、俺も光に包まれ、視界は白く染まった。

 

 

「大丈夫か、キリト」

「あ、あぁ・・・」

 

クラインの声が心配する声が聞こえ、俺はゆっくりと目を開ける。そこに青年の姿はなく、野武士面の男が俺を見ていた。

 

「・・・お前、誰?」

「おめぇこそ誰だよ」

 

俺が質問すると、相手も同じ質問を返してきた。

その言葉に思わず手鏡を確認する。

 

(現実世界の顔になっている・・・!?)

 

現実世界の『桐ヶ谷和人』の顔になっていた。

周囲を見回すと、皆同じような反応をしていた。ということは・・・

 

『お前がクライン(おめぇがキリトか)!?』

 

二人同時に声を出し、被ってしまった。

 

「な、なんで・・・」

 

なんで現実世界の姿になっているのか、とクラインは言いたいのだろう。そして俺はその答えに心当たりがあった。

 

「スキャン・・・ナーヴギアは高密度の信号素子で顔をすっぽり覆っている・・・だから顔の形を把握出来るんだ。でも身長や体格は・・・」

「ナーヴギアを初めて装着した時に、あー、なんだっけ、キャリブレーション?ってので身体のあちこちを触ったじゃねぇか」

「そうか、その時のデータで・・・」

「でもよぉ、どうしてそんな・・・」

クラインが言おうとしたことを制して、ローブのゴースト、茅場晶彦を指差す。

 

「どうせ・・・すぐに答えてくれる」

 

 

『諸君は今、何故と思っているだろう。何故ソードアート・オンライン及びナーヴギアの開発者、茅場晶彦はこんなことをしたのかと・・・』

 

茅場は続ける。

 

『私の目的は既に達せられている。この世界を作り出し、鑑賞するため為にのみ、私はソードアート・オンラインを作った・・・』

 

その口調はまるで新しいおもちゃを前にはしゃいでいる無邪気な子供の様だった。

 

『そして今、全ては達成せしめられた』

 

「・・・っ!!!」

 

俺は彼に魅力されていた、だがそれでも彼の心情が理解出来なかった。

 

(このようなことをしておいて、何故、彼は楽しそうに語ることが出来るんだ)

 

そう思わずにいられなかった。

 

『以上で、ソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。』

 

 

 

―諸君らの健闘を祈る―

 

 

 

そう告げると、ローブのゴーストは耳障りなノイズと共に溶け始め、赤い液体となってパネルの隙間に吸い込まれていった。

液体が完全に吸い込まれ、パネルが消え去り、空は元通りになった。

 

 

 

だが、誰も動こうとしなかった、誰も声をあげなかった。

ただNPC達が奏でる音楽だけが、聞こえてくる。

 

誰もが嘘だと思おうとしている。逃れられない現実から、目を背けようとしている。

 

 

 

―パリンッ

 

 

 

誰かの手から手鏡が落ち、割れる音が響く。

 

「イヤァァァァァァァァァァァア!!!!」

 

それが引き金になったかのように、一人の女の子が、耐えきれずに悲鳴をあげ、たちまちあちこちがパニックなる。

 

 

そこからはまさに地獄と呼ぶに相応しい光景だった。

 

 

茅場晶彦に怒る者、ここから出せと叫ぶ者、泣き出す者、絶望のあまりにその場に座り込む者、どうすればいいか分からず立ち尽くす者、その場から離れる為に他人を押し飛ばす者。

 

怒り、悲しみ、憎しみ、絶望。

 

広場は一瞬にして負の感情に包まれた。まるで伝染病のように。

 

「クライン!こっちに来い!」

 

俺は周りの空気に飲まれ、困惑しているクラインを掴み人気のない細道に連れ込んだ。

 

 

 

 

― アインクラッド ??? ―

 

茅場晶彦のチュートリアルを聞き終えて、俺は軽く伸びをする。

 

「うん、原作通りだなぁ」

 

『SAO』本来の仕様であるログアウト不可、ゲーム内での死亡=現実世界での死亡

本で読んだ『ソードアート・オンライン』まんまのシナリオだ。

 

モニターには広場でパニックに陥っているプレイヤー達が映っている。今頃キリトはクラインをパーティに誘っている頃だろうか。

 

 

「さて、どうするか」

 

このデスゲーム開幕から1ヶ月後に、第一層がクリアされていないにもかかわらず、2000人ものプレイヤーが死ぬことなる。

 

死因としては、自殺、エネミーに殺される。この2つだろう。

 

1つ目の 自殺 を行う理由の大半は『死ねば現実世界に戻れるかもしれない』これがほとんどだ。

 

2つ目の エネミーに殺される は、ビギナーが『SAO』をクリアして現実世界に帰ると躍起になって対策もなしにフィールドに出る。

 

結果、リアルな見た目のモンスターと現実世界でも死ぬかもしれないという二つの恐怖で足がすくみ、帰らぬ人になってしまうということ。

 

この2つが俺の記憶で思い出せる情報だ。

 

そして、俺はできる限りこの死者数を減らしたいと考えている。

 

生存者が増えれば、戦力の減少は防げる、それに多少はベータテスターへの憎悪が減るだろう。

 

なぜ、ベータテスターに憎悪が向けられるのかというと、テスター達は自身の強化を優先して、ビギナーもとい、一般プレイヤーのサポートをしなかったことに原因がある。

 

とはいえ、ただ自身の強化をしていただけではなく、情報の提供もしていたみたいだが。

 

それでも結果多くのプレイヤーがなくなり、一般プレイヤーからは恨まれる対象になっている。

 

別に自分はテスターではないから関係ないのだが、一般プレイヤーとテスターがあまりにもギクシャクしていると、見ているこっちが不快になる。

 

なので、俺のわがままのようなものだ。

 

しかし全ての人を助けることは恐らく不可能だろう、どんなに説得しても、自分の意思を曲げない人は出てくるだろうし、第一自分の目の届く範囲ででしか助けられない。

 

よってこの目的を果たすには可能な限り協力を呼びかけ、手分けして助ける必要がある。

 

その手段について考えたいところだが、あまり時間が無い。最悪ぶっつけ本番になるだろうが仕方ない。

これが一つ目の目標だ。

 

そして、もう一つ。

 

「やっぱりあれだけは防ぎたいよな、ディアベルの死」

アインクラッド 第一層 迷宮区 攻略時

ボス『イルファング・ザ・コボルドロード』のベータ時代とは違う動きにより、LA(ラストアタック)を仕掛けようとしたディアベルは亡きものになってしまう。

 

その結果、ひとつのギルドになっていたかもしれないレイドは後に二つのギルトに割れ、キリトはビーターの汚名を着させられることになる。

 

仮に原作通りに進んでしまったとしても、それ以降の話に介入することは可能だろう。

だが、それでは後味が悪すぎる。・・・ディアベルが生きているとどうなるのかを見てみたいというのもあるが。

なので、第二の目標は

ディアベルを助ける

キリトのビーター称号ゲットの回避

 

である。ディアベルに関しては戦闘中常に目を向けていれば大丈夫だろう。

 

面倒なのはキリトの方だ。キバオウという男のベータ嫌いはもちろん、わざとテスターと一般プレイヤーの間に亀裂を産もうとしているプレイヤーがいた気がする。

 

交渉するのは骨が折れるだろう、でも最悪、自分がビーターの汚名を被ればいいだろう。(念の為に顔を隠せる物が売っていれば買っておこう。)

 

さて、問題なのは第一層攻略まで1ヶ月しかないということ。

本来ならすぐにでもレベリングをして、ボスに対抗できるレベルにしたり、装備を整えて置かなければならない。

そうしないとまずボス戦にでれない、ディアベル&キリト救出作戦ができなくなるのだ。

 

だが、第一目標の プレイヤー死亡阻止 も行わなければならない。

クリア条件としては十分な人数の協力者を確保することだが、それも三日三晩ではできないだろう。

 

最低でも1週間、長くて2週間を目処に考えておかなくてはならない。

そうなると、俺のレベリング期間は良くて3週間、悪くて2週間のみとなる。

 

自分で考えておきながら、かなり無謀な事だ。本来ならどちらかを諦めるべきだ。

でもやる前から諦めるのは良くない、やると決めたらやるんです。

 

もう元の世界の俺みたいにすぐ諦めるのはゴメンだ。せっかく生まれ変わったんだ、どうせなら中身も変えていこう!

 

まぁ、キャラ付けはまた余裕が出来た時にするとしよう。

「さてと、それじゃあ・・・」

 

目標は決まった

 

いざゆかん!SAOの世界へ!

 

俺の・・・カルミアの冒険を始めるのだ!

 

 

 

 

 

筈だったのだが・・・俺は肝心なことを忘れていた。

 

「・・・どうやったらここからでれるん?」

 

 

 

―2022年 11月6日 日曜日 午後 5時18分 ―

現在の生存プレイヤー数 9787名




今回ぶっちゃけキリト編の方が長かった気がします。
カルミアちゃんは次回から大活躍します。

・・・キリト編いるかな?教えてくださいお兄様お姉様!(露骨)
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