実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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ゲーム_RTA_ポケモン_ポケットモンスター_キミの物語_金の王冠チャート_記録狙い_結婚相手募集




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【RTA】ポケットモンスター_キミの物語_金の王冠チャート_記録狙い(没)

 

 

 

 

 

 さて、長かった『ポケットモンスター キミの物語』RTA金の王冠チャートもエンディングですね。

 トロフィー獲得とともにタイマーストップで終了となります。

 ぶっちゃけ連休の度にポケモンかペルソナの生放送やってるので、正直ダレてきてますよね。

 こっちは寝たいんだからはやく終われやダボが、という思いが私の100個ある脳みその内の3個分を占めていますし、リスナーもそうなのでは???

 残りの97個?

 残りはいつものあれだよあれ。

 生主高齢化で他の枠でも同じような悩みを持ってるであろう結婚です……。

 

 そ、それはそれとして、ここ2年ほど微妙な乱数を読むロケットスタートと、堅実な攻略チャートを絡めて繰り返しプレイしてきましたが、今回はとても運が良かったのか大幅な記録更新は確定でしょう。

 ツツジちゃんやミカンちゃんとのデートなど小さなロスはいくつかありましたが、大きなガバは無かったので、ほぼ完璧に完走することができました。

 リセット案件である未発見ルートや未確認要素が浮上したのにオリジナルチャートを組むなんて無謀な挑戦は当然のごとく発生しなかったので当たり前の権利ですね。

 まあ主人公の両親との仲や友達との友情など人間関係の大半を全部切り捨ててますが、これもRTAのため……。

 そもそも人間性を捧げてるから紙一重でセーフ。

 

 生放送なのでタイトルに記録時間を表記できないのが残念なくらい大幅な更新です。

 編集して動画をあげるのが楽しみ……いや、だるいなあ。

 まあそれはそれとして、たぶんこれが一番はやいと思います。

 え? 途中でもタイトルを変えられるって?

 まだ見做し記録なんで……。

 というか常連の方々はご存じの通り、過去に何度も放送や録画をぶっちぎったりしたトラウマがありますし、そもそも私の技術力と理解力がついていけてないから無理です。

 

 それじゃあ、私はちょっとトイレ休憩へ……ガバるからダメ?

 ですよねー。

 お腹弱いけどアイス好きなの許して。

 

 しょうがないので暇つぶしに、流れているエンディングのシーンについて話しましょうか。

 これ、実は出身地に向かう客船での出来事なんですよね。

 なのでスタート地点の場所によって色々と変化が起きるわけですね。

 カントースタートならあの有名なサントアンヌ号です。

 

 金の王冠チャートはその名の通り金の王冠を軸に作ってますので、アローラからスタートしてます。

 全国を踏破して全てのポケモンリーグを総なめにし、無敗の強さを誇るチャンピオンである主人公が最後には出身地に帰るとかエモい。エモくない?

 カロスはまた別のレギュレーションなんでチャンピオンになれてないのが残念な要素です。

 国外レギュってやつで、フランス人アニキ走者に人気のやつです。

 探検隊レギュはアメリカ人走者兄貴姉貴に大人気です、ケモナーって闇深いよなあ。

 ポケモン内の国外や孤島などもスタート地点に選べるんですけど、RTAでショトカのための引っ越しイベを起こすとランダムでテキトーな地方に飛ばされるので、子役とか読モみたいなオシャレ極振りの背景を求める場合以外には微妙です。

 悪くないんですけど、わざわざ選ぶ理由は……賑やかし?

 

 話は戻しますが、このRTAは金の王冠が軸となるのでスタート地点はガラルとかでもいいんですけど、さっき言ったランダム要素がうんこなので大人しく選べ!

 面倒なチュートリアルイベントのスキップや、使うポケモンなど色々と都合がいいので、わざわざポケモンリーグ未開の地であるアローラを選んだわけです。

 因習などが不愉快なので、スキップしないならスタート地点としてアローラは最低です、なろうで流行りの古巣見返しプレイをやるつもりがないなら他の場所から始めましょう。

 通常プレイでの私のおすすめはトキワで特殊なトレーナースキルを獲得したり、シロガネ出身で指示力に下駄を履かせる感じですかね。

 RTAでは走者はだいたいみんな無理やり乱数読んで能力持たせてますけど、ライコウチャート張りの乱数読みなんでおすすめしません。

 外にいるキャラの挙動で乱数読むの頭おかしくない?(ポケモン界隈最低限のスキル)

 

 まあそんなわけで、経験値のためにひよっこトレーナーたちにトラウマを植えたのも、ド田舎から逃げ出す引っ越しランダムスキップのためにメガやすでカプをぶっ殺そうとしたのも、喚き散らす島の連中によって島から追い出されたのも、昨日のことのように思えます。

 いや、プレイ時間的にはマジでそのくらいですけどね。

 あー、またゲームに費やしてしまった、結婚してぇ……。

 近所の婚活イベントに参加したら30超えたゴリラに似たお嬢様が居たんですけどね、「年収一千万は最低でも欲しいですわよウホウホ」とか言い出して。

 ウホウホは言ってなかったかもしれません。

 いや、お前はそれに見合ってないだろと。

 明らかにサバ読んでる癖にそれはないだろと。

 そこで私は冷静に考えたんですね、もしかして動物園でのエサ代を含んだ維持費を見込んだらそれくらいかかるのかなって。

 

 おっと話が逸れましたね、すみません。

 えっと、で、アローラの利点ですけど、金の王冠が輝くからです、ある意味効果的(イソジン構文)

 周知の事実かもしれませんけど、最初に貰える御三家ポケモンは全ステータスの努力値を最大にできるんですよね。

 初代パロか?

 それに目をつけて、金の王冠で才能に下駄を履かせることで軸を無理やり作っています。

 ソルガレオとルナアーラの出現や降り注ぐZパワー、ウルトラホールの開通など未開の神秘的な土地柄から、トキワとまではいきませんけど特殊なトレーナースキルを得る確率が高まるのもポイントですね。

 毎回頑張ってスキル引くのつれーわ。

 でもプレイヤースキルにも限界があるので、看破系や先読み系の異能スキルがないと正直きつい……。

 

 後はまあ、カプ抹殺スキップが便利っていうのもあるんですけどね。

 他の地方に行きたくても、少年期は基本的に初期地方から出られないんですよ。

 それを無理やりぶち壊せるからかなりのアド。

 「お前を殺す……」くらいの成功率で抹殺ってなんだよって気持ちになりますけど、語呂だよ語呂。

 抹殺スキップまではポケモン厳選できるので、ラプラス孵化やイーブイ厳選をついでに行えるのもあります。

 

 なおパーティの構成で色々と助言を受けてますが、変えません。

 ラプラスは零度でごり押せますし、波乗りなどが便利です。

 イーブイは……色ニンフィアが好きなだけです。

 ゴツメディグダ、特殊メガスピ、ノーマルジュエルすてみヌケニン……なんなのその闇深な構成は???

 スタート時間調整と会話や挙動支配による乱数を利用した準伝厳選は知識と作業量が完全に人智を超えてますので私に勧めないように。

 そもそもこのゲームでライコウチャートは無意味なのでは???

 

 ということで安定した偽装旅パを捨ててまで安定しない準伝パ採用は無いです。

 そもそも乱数調整しながら目当ての準伝がいるリーグをクリアして厳選とか闇深すぎるから私はやりません。

 なんか熱烈に勧めてくる人がいたり宣伝する人もいますけど、それは私にも、宣伝先にも迷惑がかかるのでやめてください。

 というか、そんなに私に勧めるんならさ、やってみせてくださいって話ですよ(半ギレ)

 どうせ一見して去ってくだろうから相手してもしょうがないけど。

 

 長々としょうもない話をしていたらエンディングも佳境ですね。

 主人公が、船の上でアローラ地方の主人公に帽子とモンスターボールを託す感動的な演出です。

 外国スタートならではの次世代に繋ぐ演出が見られます。

 スタート地点によっては次世代の少年少女がレスキュー隊員になったり、義賊になったりする作り込みには好感が持てます。

 探検隊の島ならポケモンと結婚したり、一般家庭ならげんきでチュウのピカチュウと遊んだりしますし、写真撮りながらミュウにボール投げまくりますし、古い探検隊だと同じ返事しかしない仲間たちの様子から見られます……流石に最後のはバッドエンドなのでは?

 

 どうなるのか妄想したりしますけど、RTAなので、考えるのは無意味ですね。

 来月のニンテンドーダイレクトで新情報が来るらしいのですが、レギュの拡張が来ないことを祈りましょうか。

 それはそれとして、燃料来てくれないと過疎も見えてくるんだよー頼むよー。

 

 あ、無駄話してたらエンディングも終わりました。

 【生涯無敗】のトロフィーを獲得できたのでタイマーストップです。

 これ取るとポケモンバトルで負けなくなります。

 というか負けられないのです。

 敗北を知りたい状態になる。

 レートはまた別、敗北者の祭典であるあれはデータバトルだし。

 

 それじゃあ広告、コメント、応援ありがとうございました。

 動画を編集しつつ見直して、チャートを弄れそうなところは修正して来週のプレイに反映していこうと思います。

 今のところはガバりやすいデートを削りたいんですけど、孤独によるストレス値がちょっとなあって感じなんですよね。

 いや、私が結婚できないのとデートイベントをちょっとロスしたのに関係はないので。

 

 え? レートでの敗北?

 あ、あれは遊戯とは言え無敗だったトレーナーが敗北したことで、自分も勝てると勘違いした経験値たちを集める作戦だったのでセーフ……いや、エンカウント率が高まりすぎてロスしたのでやっぱりガバです、すみません。

 来週はそこらを検討しつつ試走して見直しますかね。

 じゃあご視聴ありがとうございました。

 また来週同じ時間にお会いしましょう。

 ……はあ、結婚したい。

 

 

 

 ……質問?

 ……あ、忘れてました。

 質問コーナーは……よ、夜にでも!

 夜に枠を取るのでそこにしましょう! 

 ごはん食べてちょっと寝ます!

 寝ます!

 お疲れさまでした!!!

 

 

 

 

 

 

 --1

 

 今日、俺は第二の故郷へと戻る。

 追い出される形で後にしたアローラに含む物が無いわけではない。

 しかし、俺も大人になった。

 過去のいざこざは水に流して全てを許そうじゃないか。

 あと島めぐりを途中で辞めて、テキトーに大会を荒らして、カプをぶっ殺そうとしたのはマジすまねぇって思ってる(棒読み)

 実際、島めぐりは最後の島で自主的に無期限休みに入っただけだし、大会だって優勝を重ねただけ、カプに至っては結局殺す以前に出会えなかった。

 

 つまり、俺の行いとアローラ全体で差し引きゼロだ。

 むしろ俺が被害を被ったレベルなのではないかと実しやかに囁かれているに違いない。

 互いに悪かったと矛を納め、なんやかんや握手してハッピーエンドが訪れる。

 

 船が港に着くと、出迎えに来てくれた少年が手を振っていた。

 

 

 

 あぁ^~ハウはかわいいなぁ!!!

 

 

 

 

 

 --2

 

 チャンピオンとして呼ばれたからには仕事しまぁす!

 ということで、アローラにポケモンリーグを設置したいという要望に応えるために俺が派遣されたわけですねぇ。

 しかしちょうどよかったのも事実。

 アローラ出身という理由もあるが、優勝しても固定チャンピオンにならないでフラついてた末に暇つぶしで参加したレートバトルで下位クラスにぼろ糞に負けて炎上させた罰もあるわけで。

 なぜかレートバトルで負けた後はポケモンバトルを挑んでくる雑魚が増えた(半ギレ)

 レートで負けたからって俺のポケモンが弱くなったわけじゃないでしょ(正論)

 そもそも理想値のポケモンデータを使って厳格な確率で定められた技の威力や命中率でバトルするとか、もうこれポケモンバトルじゃなくない????(言い訳)

 

 そもそも手持ちのポケモンのコンディションを整えてバトルで最高の戦績を納めるのがトレーナーだと思うし6匹のポケモンを万全に戦える状態にするだけでも才能の塊だしとりあえずデータだけ組んで確率を前になんかわちゃわちゃしてレートでイキってる連中はプロゲーマーでトレーナーとは違うから俺が負けても問題ないから俺の無敗記録に傷は付いてない(早口)

 

 

 

 って伝えたら同意してくれたハウはかわいいなぁ!!!

 

 

 

 

 

 --3

 

 最近連れ歩いているニンフィアと戯れるハウを眺める。

 自慢だが俺のニンフィアは色違いだ。

 やっぱりポケモンは特別で才能がある個体に限る。

 強いポケモン弱いポケモン、そんなの人の勝手、ほんとに強いポケモンは無数に孵化した末に生まれた天才だけである。

 やはり名言は違うな……。

 

 孵化しまくって余ったイーブイは全国に出荷したからコネが凄い。

 血統がいいからといって犬猫を外国に出荷するのは難しいが、パソコン周りを利用して転送すれば一瞬だし。

 というか珍しいし可愛いから欲しがる人も数多い。

 大好きクラブとかいうイーブイを渡しておけばいい感じに支持してくれる団体、俺はそんな緩い感じが大好きです。

 昔はいざこざで失敗したが、その経験をバネに成長できてよかったよかった。

 

 ハウはトレーナーとして俺がどのくらい強いのか興味があるらしく、これまでの話を聞きたがる。

 ニンフィアを頭に乗せたハウを肩車し、外を歩きながらポケモンとの旅はいいぞ、ほんとに楽しくて仕方ないのだと話す。

 背に乗って空を飛び、草原を駆け、海を渡る。

 洞窟を探検し、深海を進み、巣を探る。

 天気が変わるだけで、時間が進むだけで世界が変わったように一変する。

 群生するポケモン、共生するためのアイデアを積み上げる人々、その二つが紡いだ歴史……。

 話は尽きない。

 俺は普通に旅した思い出だけを伝える。

 

 島めぐりを失敗してるって伝えるのってダサいとか、そんなことは決してないです。そもそも従兄が昔は無敗で島の大会を荒らして、生態系を破壊し、神様を狩ろうとして追い出され、今ではチャンピオンとか情報量が多すぎる。調べたらわかるかもしれないけど島では俺のことは禁句って感じだから問題ないね。だから旅が大好きな大人でイケメンな従兄のお兄さんを演じなければならない(早口)

 

 

 

「たくさん見てきたけど、夜空はアローラが特に綺麗だよ」

 

「でしょー? 凄いよねー」

 

「しかし残念ながら一番じゃないんだなぁ、これが」

 

「えー? おれは一番だと思うよー?」

 

「ふっふっふ、ハウくんはまだまだですなぁ。好きな女の子と見ると百倍綺麗になる、これ豆知識ね。なんと月も綺麗になる」

 

「おー、にいちゃんおとなー」

 

「ふっ、モテモテの大人でかっこいいだろう」

 

「でもにいちゃんと仲がいい女の子っていたっけー?」

 

「……寒くなってきたから帰ろう」

 

「えー?」

 

「か、代わりにとっておきの場所を教えてあげようじゃないか。流星の滝といってね……」

 

 

 

 

 

 --4

 

 俺を呼び出した博士は、色々やりたいことがあるってことで手伝うことになった。

 最初は書類や視察だけの予定だったが、俺が予想以上に暇があって、全く急いでいないこと知ったせいで人手として駆り出された。

 しかし残念ながら俺はポケモンバトル以外雑魚だ、期待には応えられないと思う。

 そんなどうでもいい話よりも、カントーから引っ越してきた子とハウが友達になって、博士からポケモンを貰って島めぐりすることにしたとか。

 頑張れよ、と他人事みたいに見送ろうとしたら俺も付いていくらしい。

 馬鹿野郎おまえ俺は島めぐり失敗してるって言ってるだろうがそもそも他の地方ではチャンピオンしまくりの最強トレーナーでブリーダーパワーも一流で常にポケモンをケアし続けるくらい忙しいから今更こんな僻地の謎文化体験する意味もないしそもそもハウが余裕で成功させたらショックで死んじゃうから見たくないんだよおらぁん(早口)

 

 俺が島めぐりに同行するのは、アローラがリーグを設立するのに妥当かどうかを判断するためだ。

 リーグを設立するがジムは設置せず、これまでの文化で培った試練を流用するらしい。

 ダメだったら?

 普通に街や試練に使ってる場所にジムを作ればいいじゃん。

 場所はほら、自然豊かなんだから土地も資材も無限みたいなもんだし。

 あ、自分たちでやるのが怖いんだな。

 ははーん。

 カプに壊させればいいじゃん!(文化破壊)

 島巡りが妥当じゃなかったら無意味な文化なんだし、いらないっしょ。

 

 

 

 アシマリと戯れるハウに話を聞くと、ポケモンバトルで負けたらしい。

 マジでぇ?

 同世代と比べたらハウは強いんだが、それを上回るとは抜群のセンス。

 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 相手は一緒にポケモンを貰ったヨウくんという名前のカントーから来た子だ。

 表情が微笑み固定の変わった少年だ。

 

 初めての敗北にきっと悔しい思いを隠しているのだろう。

 あぁ^~ハウはかわいいなぁ!!!

 かっこいい俺が慰めるしかあるまい!

 

 俺も(レート)負けたことあるぜ、しかもポケモンリーグで言えば格下の相手に。

 その人は俺とのバトルを踏み台にプロリーグに参戦したけど、下部リーグで苦戦したままパッとしない戦績を残していつの間に消えていた。

 いつか発見されるのだろうか……。

 まあ、ゲーム(レート)と違って親として育成しないといけないし、最低でも6匹を管理するからなあ。

 そもそも俺は島めぐり失敗してるんだぜ(吐血)

 この話はやめよう、誰も救われない……。

 

 

 

「ハウ! 海でラプラスに乗るぞおらぁ!」

 

「にいちゃんライドの許可もらってるのー?」

 

「あるにはあるが、無くてもいい。なぜならライド用のラプラスには乗らないからだ。野生のラプラスの背に乗せてもらう。偶然乗れたらセーフ、みたいな。ふふふ、知的」

 

「いいねー! 早く行こうよー!」

 

「そう焦らなくても、俺くらいになると口笛を吹けば野生のラプラスが来てくれる。いや、熱烈なファンのごとく群がってくる」

 

「おー。でも言いすぎじゃないのー?」

 

「言い過ぎじゃないんだなぁ、これが。アローラのラプラスの親と言っても過言ではない。人気者はつらいよなぁ!」

 

「でもにいちゃんあんまり友達いない……」

 

「その話はやめーや。悪い口はこれか? おらおら」

 

「ひゃー、ひっひゃらないれー」

 

 

 

 

 

 --5

 

 島巡りする少年たちと、博士の助手である少女と一緒に歩いてく。

 ちょうどいいので貰ったマップ片手に1番道路から視察も行う。

 昔から伝わる伝統的な順路と博士があらかじめ試練に必要な場所や立ち寄る施設から、出会うポケモンの強さや旅の面倒くささをバランスよく順路を整えたようだ。

 アローラ地方はいくつかの島で構成されていて、俺やハウが住むメレメレ島はカプがめっちゃ好戦的なので強いポケモンは他の島に逃げたっぽい。

 

 カプというのは島を守る神とされるポケモンである。

 電気タイプが関係あるのか雷とか他の島に比べてよく落ちるし、そういうのが苦手なポケモンも逃げたのかもしれない。

 そういうわけで、1番という名に恥じない子供の散歩コースレベル。

 

 ちょうど都合よく建っていたトレーナーズスクールで基礎の勉強をすることに。

 「流石だぞ! タイプ相性をばっちり理解しているんだな!」と相性について説明したり、「ポケモンさんが傷つく勝負はちょっと苦手ですが」と回復アイテムの使い方を教え、「これはおじさんの金の玉だからね!」とポケモンに使える様々な道具を見せ、「人のポケモンを取ったら泥棒!」と手持ちのポケモンは最大6匹で構成し、「カイリュー! はかいこうせん!」と締めに実技でバトルすることとなった。

 

 ハウやヨウくんが先生に採点してもらったあとにスクール生とバトルし始める。

 それを話の種にして先生とおしゃべりして俺はデレデレして過ごした

 美人の先生とか最高かよ……。

 でも相性有利で攻めるのは鬼すぎる好き……。

 結婚しよ……^q^

 

 初歩的なことが学べたあたりでトレーナーズスクールの面々にお礼を言って後にし、街に乗り込む。

 施設を見て回り、ポケモンセンターで行える諸々を教える。

 ポケモンは磁気情報に有機体の身体が貼り付いている、みたいな感じで構成されているので、なんかいい感じに回復できるし、いくらかは数値化も可能って感じだ。

 パソコン使って転送できる。

 さっき博士に貰った学習装置も一匹が経験した戦闘を僅かに流す、みたいな物だし。

 睡眠学習みたいなもんよ、知らんけど。

 

 ポケセンの外に出るとイリマと出会ったので挨拶してみんなでマラサダを食べにいく。

 ちょっとした世間話の後、このあと2人が試練を受けることを告げる。

 イリマはキャプテンという役職で、なんかすごい凝り性な性格でノーマルタイプのポケモンを使うのが得意。

 俺が島にいた頃は、観光客と交換したツチニンを進化させたヌケニンで一方的にボコったこともある。

 あとヌシールというシールをアローラ全体に貼ったから、集めたら商品をくれるらしい。

 道路に貼ったのかと思いきや、施設の中や探検できる洞窟にも貼ってあるとか。

 え、なんだかこいつが怖くなってきた……。

 

 準備のあるイリマと一度分かれて試練まで流れで進む。

 途中でスカル団とかいうしょうもない連中が居たが、こんな知識も伴ってない雑魚は経験値だ。

 洞窟でなんちゃらかんちゃんらって試練なので2人を見送る。

 ジムと比べると準備がちょっと手間っぽいなぁ。

 まあジムも居ないといけないから面倒だけど。

 それはそれとしてもらえるノーマルZはいいぞ。

 何がいいってイーブイに持たせてバトンやるのが最高。

 

 

 

 でかいポケモンと戦って勝って試練を達成したらしい。

 よくやったなぁ!と二人を撫でる。

 ハウは喜ぶから可愛いが、ヨウくんはずっと微笑んでるだけだからわからん。

 というか試練でまだぬしポケモンとバトルしてるんだなぁ。

 そのうち飽きるから大砲で飛ばされるジムとか、ワープするジムとか、凍結ジムとか、街が停電するジムみたいな色物が欲しい。

 ほしくない?

 

 

 

 

 

 --6

 

 試練ではぬしポケモンという大きな個体と戦ってどうとかこうとか。

 10年前くらいに新しいのが生まれたので試練を任せているらしい。

 話を聞くと、結構巧みな動きを見せてくるようだ。

 俺の時は数の暴力が多かったなぁ。

 野生の虫ポケモンが群がる恐怖、俺は大嫌いです。

 

 2番、3番道路、花園を通っていく。

 景色もいいし、難易度もちょっとぬるいが悪くない。

 花園から3番道路に戻ったあたりで、せっかくなので、とハウとヨウくんがバトルしたがまたハウが負けた。

 んー?

 これはあれだな、勝てない流れだ。

 一緒に旅したトレーナーたちの間でも時々あるんだよね。

 同時期の相手に勝てないまま過ごしたことで挫折の可能性もあるから怖い。

 

 この後は大試練に挑むというので戻る。

 3番道路からテキトーに行くと1番道路に戻れる。

 1番道路に差し掛かったあたりでヨウくんが家に帰るらしく、一旦分かれる。

 口数が少なくなったハウと手を繋ぎながら帰る。

 少しだけ、いつもよりも繋いだ力は強かった。

 

 

 

 さて、これから少年たちが受けるらしい大試練だが、なんかすごい試練を大試練と呼ぶのだ。

 しまキングとかいうキャプテンよりも強いんだか統率力があるんだかないんだかした人と戦って勝つんだかなんだかするのだ。

 ぶっちゃけあんまりおぼえてないなぁ。

 

 そういうことなので準備が必要らしい。

 ハウや引っ越してきたヨウくんが挑戦するということで、ちょっとした小さなお祭りみたいな感じになるようだ。

 さて、リーグ設立についてだが、問題ないように思える。

 まだ触り部分の感想になるが、他の地方から来たトレーナーや観光客にばっちりなのではないだろうか。

 柵に腰かけてレポートを書き終えたので、大試練までの暇つぶしといこう。

 

 「どうせ近くにいるんだろ。ボスを呼んで来いよ」と、スカル団とかいうチンピラの雑魚に告げると走って呼びに行ってくれた。

 情けない、弱すぎる。

 そりゃ島巡りも失敗するわ。

 俺も失敗したけど、だからって失敗者同士の実力がイコールなわけではない。

 勘違いしている者が多すぎる。

 トレーナーとして関係のない部分で負けたり、失敗したからって俺のポケモンが弱くなるわけがない。

 そもそもポケモンが強いから俺も強かったら、こんな軟弱な人間ではない。

 俺がどうあろうとも、ポケモンが弱くないのと一緒だ。

 

 

 

 

 お前はわかってるよな、グズマ。

 

 

 

 

 

 --7

 

 喧嘩を売って手も足も出ず、逃げて戻った部下を放置してグズマはそこに向かっていた。

 いつもなら行う仕置きも忘れて。

 逸る気持ちが抑えきれなかった。

 あの強すぎる男が負けたというニュースを聞いて、そして帰ってくるという噂を得て、今日まで待っていた。

 期待と失望の入り混じった今のグズマの手は、モンスターボールを握るには力が入りすぎていた。

 何処にも行けずに足踏みし続けた自分と、外へ出て栄光を駆け抜ける男。

 

 一目で誰もが理解するほどにポケモンバトルに天賦の才があったと同時に、それでも強さを求める姿は狂気的だった。

 誰も寄せ付けない圧倒的な強さ。

 その姿が焼き付いて離れない。

 畏怖を抱きながらも、いつか勝利を夢見てグズマは挑み続け、敗北を重ねた。

 勝つために努力した。

 島キャプテンに頭を下げて弟子入りした。

 苦手意識を抱きつつあったイリマとすら協力した。

 その日々は、唐突に終わりを告げた。

 

 ポケモンバトルが誰よりも強かった少年は、守り神だと讃えられるカプにすら逆らった。

 迎合しないその姿勢と強さに、口には出さなかったが憧れのような物すら抱いていた。

 だが少年はいなくなった。

 カプの怒りに逆らった罰だとでも言うように、アローラの気候とは真逆の冷たい対応に晒され、あるいは島の古臭い習慣が起こした陰湿さを嫌ってある日を境に島を出ていった。

 出ていくことについて、誰にも言わなかった。

 もちろんグズマにも。

 結局、少年は島に負けたのだと。

 ポケモンバトルがどれほど強かろうが、何も変えることなどできはしないのだと。

 憧れが失望に変わるのは、それほど時間がかからなかった。

 

 近づくほどに、グズマが思い出すのは苦い記憶ばかりだ。

 

 未だ忘れることのできない自室の棚には、グズマが勝ち取った多くのトロフィーや楯が飾られていた。

 忘れられない忌々しい記憶は銀や銅ばかりでくすんでいるようだった。

 ライバルだと思っていた自尊心は、簡単に砕け散って引き留めることのできなかった無力感に様変わりした。

 目標を失ったグズマの敗北と、無駄に得た強さは、島全体へと向けられるようになった。

 積み重ねたポケモンバトルの日々は、見えない澱のように固まった敗北の数々は、今では歪な破壊衝動に変わっていた。

 美しい記憶は覚えていない、切磋琢磨した一途さは今や昔、輝かしい金の結果は何処にも無い。

 いくらポケモンを育てようとも、過ぎ去った日々の幻想にすら劣等感を刺激され続ける。

 どうして自分を外の世界に誘わなかったのか、時々考えることもあるが、失望がそれを塗り潰して、やがて忘れた。

 

 金は一番の証だ、当然(・・)グズマ(敗者)は持っていない。

 

 

 

 

 そこは海が見渡せる場所だった。

 柵の向こうには緩やかな崖が広がっている。

 グズマたちがまだ互いに切磋琢磨していた頃、ここでよくポケモンバトルをした。

 真似事だったかもしれないが、それでも時間を忘れるほどに熱中できた。

 思い出は、今や過去の残骸と化していた。

 

「……出せよ、サラナ。てめえのポケモンを」

 

 鋭い視線のまま、グズマが言った。

 綯い交ぜになった感情が、いつの間にか鎮まっていた。

 僅かな恐怖のせいだった。

 幼少から続く、敗北による恐怖。

 

「久しぶりだっていうのに挨拶も無しか、グズマ。何も変わらないんだな」

 

 柵に腰かけたサラナが無表情に言った。

 アローラに似つかわしくない白い肌が、強い日差しに焼けて赤くなっている。

 彼の肌が白いのは、誰とも血の繋がりがないからだ。

 島に適していない容姿は、サラナが後ろ指を指されて過ごした証だった。

 拾われた彼の、この島での立ち位置だった。

 

「バトルくらいは変わっていてくれよ。あれほど勤勉(・・)だったからな。……期待してたんだ」

 

 軽く放りこまれたボールから、ラプラスが現れた。

 

 週刊誌によればサラナは隠し事の多いトレーナーだと表現した。

 だが、棚一面に銀と銅が積み重なるほど戦い続けたグズマはそうだと思ったことは無い。

 隠し事が多いのではない。

 その時、理解できないだけだ。

 行動は一貫している、ひたすらに勝つことに向かっているからだ。

 今対面している凄まじい圧力を放っているラプラスだって、その一つだ。

 

 初めてサラナを見たとき、複数のラプラスを逃がしていた。

 その日から徐々にラプラスを島で見かけるようになった。

 グズマが見かける度に、ラプラスは海へと放流されていた。

 理由を聞いたとき、天才が欲しいからと言っていた。

 そしてある日を境にラプラスを逃がす姿は見かけなくなり、あまりにも強いラプラスを育てるようになった。

 サラナは強いラプラスを求めただけだった。

 その結果、アローラではラプラスが増えすぎた。

 

 

 

「アリアドス! どくのいと!」

 

 場を整えるためにグズマが自身のポケモンであるアリアドスに指示を出す。

 狙い通りいけば、このフィールドはさながら蜘蛛の巣のようになる。

 アリアドスが口と尻の両方から糸を放っている、長年の練習の結果だった。

 

「へぇ、凄いね。ラプラス、あまごい」

 

 ラプラスが天に向かって吠えると、雨が降り出した。

 雨の激しさが、グズマに練度の高さを知らせた。

 ぐずぐずと、巣になるはずだった糸が溶けていく。

 毒を含んだ地面は、地を這うポケモンを汚染するだろうが、鈍重なラプラスにはあまり期待できそうにない。

 

「どくどくだ、アリアドス!」

 

「なみのり」

 

 毒液を飛ばすが、激流とも呼べる勢いの水で迎え撃たれた。

 ラプラスに届かないまま、水に流されてしまう。

 毒の処理を優先したのかアリアドスには影響を出さず、周囲を水で濡らした。

 

 思わずグズマは舌打ちした。

 固定砲台を攻めるための様子見の一撃だ、外しても問題はない。

 問題は陸上なのに、操っている水量が多すぎ。

 周囲を濡らし、泥によって足場を悪くされていた。

 練度の高さは分かっていたが、それでも想像は軽く超えている。

 比較対象がいないほどに。

 

「体勢が崩れていないのに遅い技が当たるわけないよな、グズマ」

 

 ぬかるんだ地面では、陸上の地形に強い多脚と言えどもその強みを活かし切れない。

 踏ん張りに不安が残る、アリアドスが使える大技は当てにくくなった。

 毒による攻撃は、体内で濃縮するために発生が遅い物が多い。

 

 同時に、相手も使いにくい技が出てくる。

 ラプラスに成功率の低い【うたう】や【ほろびのうた】などを使われる可能性は低い。

 雨音が激しく、歌の音色を妨げる。

 また、アリアドスの中には【不眠】を持つ者もいる。

 

「こうそくいどう」

 

 ポケモンの素早さのみならず、指示によっても先手を打てる可能性は高い。

 ビーム系やつぶてへの対策は自然とわかっている。

 ほとんど思考せず、グズマが選んだのは補助技によるアリアドスの強化だった。

 相手は動かず、アリアドスがその情報を書き換えて加速する。

 

 強さはあらゆる要因から導き出される。

 そしてポケモンが速ければ速いほど、シンプルな強さに繋がる。

 当然、攻撃の優先度や手数、回避にも影響を与える。

 ゆえにグズマは直感で速さを選んだ。

 

 現状で最も警戒すべき技は、氷タイプの大技、特に【ふぶき】だ。

 ビーム技と違い、面で制圧するそれは、冷却速度の関係で直撃までは遅いが、威力は絶大だった。

 雨で濡れている今、掠るだけでも関節などが凍りついて速さを奪われる可能性が高かった。

 攻撃と回避の両立。

 

「そうだよな。序盤の立ち上がりなら丁寧に組み立てるよ、お前は」

 

 十分に加速したアリアドスを見ながらサラナが言った。

 言葉に合わせたのか、ラプラスが啼いた。

 水は姿を変え、熱を奪う。

 視界が僅かに白くなる。

 地面には霜柱が乱立していた。

 雨は、みぞれと化していた。

 急激に熱を奪われたアリアドスが震えていた。

 表面は凍り付いたのか、動きはひどく鈍い。

 

「ふぶき、じゃねぇのか……?」

 

 警戒していたそれとは思えないほどに弱すぎた。

 発生が早く、よけにくいビームではなかった。

 威力は弱いが、範囲の広い風でもなかった。

 

「フリーズドライさ。凍らせるんじゃなくて、ちょっとした水を氷にするだけ。寒そうだな、グズマ。続けるのが難しいならここで終わりにしようか?」

 

「……はっ、冗談だろ」

 

 グズマの表面にも僅かばかり霜が降りていた。

 想定外の出来事は思考を鈍らせる。

 体が震えているのは寒さだけではないはずだ。

 

「それもそうか。……じゃあ続けるけど、態勢が崩れていなくても、動きが遅ければ大技も当たる。当然だよな」

 

 結果は、ラプラスから放たれた【ぜったいれいど】による蹂躙だった。

 機敏さの失われたアリアドスにできることはなかった。

 整えるはずだったフィールドは荒らされ、凍結した。

 

 

 

 疲れひとつ感じさせないラプラスを戻したサラナは、ニンフィアを繰り出した。

 通常種とは違う、青いニンフィアだった。

 首に巻かれた銀色の王冠の首輪を、誇らしげにしているのは錯覚ではないだろう。

 

 対してグズマはカイロスをフィールドに出した。

 相性で選べるほど、グズマはポケモンを育てられていない。

 バトルに出せるポケモンの育成は、努力で補うにはひどく難しい。

 互いに無言で、だが隔絶した違いがあった。

 

「ハイパーボイス」

 

 ニンフィアが独特な溜めの動作を見せる。

 サラナが昔、音の情報を加工していると同時に火力を出すためだと言っていたのを思い出した。

 音技は視認できないが、顔が向いている方向に攻撃が放たれるため、カイロスなら十分に避けられる。

 そのはずだったが、平時と比べてカイロスの動きが僅かにおかしかった。

 短い時間ではあったが、その違和感が隙に繋がった。

 グズマの知る中で最も強い技、それよりも範囲が広く強いことを察したのは、ニンフィアから放たれた直後だった。

 見えない破壊の塊が、氷を砕きながら奔る。

 

「っ! でんこうせっか!」

 

 咄嗟に指示を出せたのは、先ほどラプラスの攻撃を見たからか、過去にサラナとの対戦経験があったからか。

 どちらにしろ、対処するには何もかもが足りなかった。

 カイロスが音から逃れるために技を放つが、すぐに音に弄ばれ、枯れ木のように吹き飛んだ。

 追撃とばかりに氷の破片が突き刺さる。

 

「カイロスは寒さに弱いよ。だから技がちょっと遅くて避け切れなかった。見てから回避するなら、メガカイロスくらいの速さが無いとね」

 

 ひん死一歩手前まで追い詰めたカイロスを前にして、ニンフィアに慢心する素振りは無い。

 そのあとの流れは、まるで先ほどの焼き増しのようだった。

 相手をそのフィールドから動かせないまま、カイロスは倒れた。

 グズマの握りしめた手から血が流れた。

 舞い散るダイヤモンドダストの奥で、サラナは無表情だった。

 

 

 

 相手の思うままに進むポケモンバトル。

 フィールドに出したグソクムシャの背を見る。

 言葉が出てこなかった。

 こんな時、なんと声をかけるのか。

 今さらグズマには何も思いつかない。

 

 昔はただ感情のままにがむしゃらに叫ぶだけでよかった、ポケモンを信じれば良かった。

 いつか倒せると信じていたから。

 今は違う。

 望む先が見えない、絶対に。

 無駄に積んだ経験だけが、それを予感させていた。

 

 ここ何年かの悪癖。

 感情の発露を、壊すことで発散させてしまったクセが出てしまいそうだった。

 昔とは違うそれをしてしまったとき、グズマはトレーナーではなくなるだろう。

 二度と戦いを挑む強さを持てないだろう。

 

「グソクムシャ……」

 

 グズマが振り絞って出てきたのは、ポケモンを呼ぶことだけだった。

 負けるのが怖かった。

 昔と変わらないのが、怖かった。

 

 空中に舞い散っていた小さな氷の結晶が煌めいていた。

 彼の象徴であるポケモンが姿を現すと、解けた氷は薄い霧となった。

 その首には金色の王冠が輝いていた。

 最強の名を欲しいがままにしている、黒いリザードン。

 金は一番の証だ、当然(・・)サラナ(勝者)は持っている。

 

「昔から言ってるよな。速さは強さ。ニトロチャージ」

 

 炎に包まれたリザードンが加速する。

 その熱量は、凍結していたフィールドを溶かす。

 地面が泥へと変化する。

 フィールドに出た時だけ最高速で放つことのできる【であいがしら】を使うには、足元が緩すぎた。

 使えたとしても意味は無かったに違いない。

 霧による白いベールに包まれた見通しの悪いフィールドを、高速で縦横無尽に動くリザードンを、グソクムシャは捉えられないだろう。

 

「メガシンカするまでもないよね。……なにやってたんだよ、グズマ」

 

 失望の声音に乗せられたその言葉は、グズマが言うはずのものだった。

 こんなはずではないと言おうとして、だが当然だと受け入れてしまう。

 恐怖で、失望で、頭を抱える。

 サラナに失望したはずだった。

 だが、戦ってみてどうだ。

 常に歩み続けている。

 戻ってきたのだって、正しい役割と理由がある。

 自分はどうだ。

 どこにも行けず、何もできず、何も変わらない、昔のままのグズマで勝てるわけがなかった。

 だって、昔から一度も勝ったことがなかったから。

 わかりきっていたことだった、目を逸らしたことだった。

 

――おれだったら、おれ(・・)は誘わない。相談しない。期待しない。……だって弱いから――

 

 

 

 グズマの目の前が、真っ白になった。

 

 

 

 

 




試しに流行に乗っただけの没です。




オリ主
ウルトラホールからやってきた。
敗北を知れるのかと蜘蛛の糸のごとく期待をしていたが、無理だった。
グズマが近すぎて危なくないだろうかと思っていたら、案の定凍って内心引いてる。
練度差による距離感の弊害が招いた模様。

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