中には日記のようなレポートが綴られていて、スケッチが貼られている。
その絵は金色のロコンを中心に、色々な種類のポケモンが描かれている。
下には小さく『ともだち』とだけ書かれている。
ポケットモンスター、縮めてポケモン。
数多の謎を秘めた不思議な生物であり、人間の身近なパートナーでもある。
最上のパートナーと歩む事のできる我々は幸せなのだと努々忘れないで欲しい。
--1
泣く事しかできなかった。無気力に生きていたことを悔いた。
弱い自分が、空っぽの両手が、憎かった。
ただ、ひたすらに俺は無力だった。
ベトベトンやベトベター、ガーディ、ポニータ、コラッタ、ドガース、メタモン……。
俺の友達だ。
彼らは自身が執拗に狙われながらも幼い俺を庇い、瀕死に陥っていた。
しっかりと掴んでいたはずの宝物が砂の様にさらさらと消えていくように感じた。
ベトベトンが吠えていた。
仲間に投げつけられたモンスターボールを半死半生になりながら破壊する。
その背には俺とガーディの姿。
ガーディの太陽のように雄々しく、春の日差しのように温かく柔らかい毛は血に塗れていた。
ベトベトンのはすでに限界を超えているのだろう、それでも立ちふさがって、壁となってくれていた。
傷の痛みに耐えながら、何度も。
そして、苛烈な攻撃に晒され、瀕死となったべトベトンの姿。
俺の声は泣き声というよりも、もはや悲鳴になっていた。
それは広い屋敷に虚しく響くだけだった。
何もない俺が得た拠り所が、食い潰されていく。
喉が掠れ、嗚咽を漏らしながら見るだけだった。
ベトベトンがボールを破壊尽くしていたのだろう。
何人もの男が、友達を抱えて連れて行こうとしていた。
俺に止める手段は無く、何もできなかった。
ただ、必死に手足をばたつかせて足掻くだけだった。
ポニータが連れ去られるのを黙って見送っていればこんなことにならなかったのだろうか。
一匹の犠牲で、みんなが助かっていたかもしれない。
頑張ればどうにかなるのだと幻想を抱いていた。
俺なら大丈夫だと甘い考えが無かったとは言わない。
それでも俺は黙って見過ごすことができなかった。
はじめて得た友達を見捨てるなんて、俺にはできなかった。
嗚咽と恐怖で身体を震わせ、涙で顔を濡らしながら祈るだけだった。
祈りが届いたかはわからないがトレーナーが現れた。
白衣を纏った大きな背中と燃え盛るポケモンたち。
敵か味方か、判別の付かない乱入者の姿は、幼い俺には限界だった。
意識を手放した俺はそのあとのことをほとんど覚えていない。
気が付いたときも半分ほど錯乱状態だった。
ギャロップに頬を舐められた拍子に悲鳴をあげ、カツラと名乗ったトレーナーに笑われた。
何事かと周りを見渡すと白衣に包まれた俺を囲むように屋敷のポケモンが集まっていたことに気づき、やっとのことで落ち着きを取り戻した。
「強くなれ」
カツラさんがポケモンたちに囲まれた俺にそう言ったのを覚えている。
真っ直ぐな瞳に見つめられると自然に頷いていた。
その日からグレンジムでポケモンについて熱心に学び続けた。
ポケモンを理解するように努めた。
進化して言うことを聞かなくなったギャロップ、毒を抑えるのが苦手なドガース、過剰に溶解液を出すベトベター、好奇心旺盛でなんにでもかじりつくガーディ、変身して驚かせてくるメタモン……。
クセのあるポケモンたちと過ごし、育成の難しさに気付いた。
トレーナーの腕は、彼らを如何に理解するかにあるとも。
彼らと本当の信頼を築き上げる頃には、両腕には数えるのも億劫なほどの傷跡が出来ていた。
一つ一つが、積もった信頼の証だった。
--2
グレンタウン。
それが俺が目覚め、育った島の名だ。
カントー地方の南西に位置する、海に囲まれた小さな島。
島の火山の多くが活きており、あと数年もすれば噴火するのではないかとの話題もある。
近くの街から遠く、20・21番水道に挟まれているために海を渡る手段を持たない俺は未だに島から出たことは無かった。
他には、小さなフレンドリィショップと優しいジョーイさんのいるポケモンセンター。
危険だと親に注意されるが無視して遊び場として入り浸っていたポケモン屋敷。
御世辞にも多いとは言えない民家。
火山以外は特にこれといった特徴も無く至って平凡な町だ。
見どころと言えば島のどこからでも見ることのできる活火山とポケモンジムの二つだろうか。
ポケモンジムはほぼどこの町にも存在することからグレン独自といえば火山しかない。
桟橋に腰かけ、何をするでも無く水平線を眺める。
雲がところどころに浮かんでいる青空と水ポケモンが優雅に泳いでいる姿、真っ青な海を前にぼんやり過ごすことのできる、俺のお気に入りの場所だった。
膝の上のロコンが、寝る姿勢を探すようにもぞもぞと動く。
くすぐったく感じながら、ゆっくりとロコンを撫でる。
頭から背、そして尾を一本ずつ丁寧に。
指を流れる艶のある毛並みを楽しむように、お日様のようなぬくもりを感じるように。
太陽の光を一身に受けたような見事な金色のロコン、秋の稲穂のように輝く尻尾が揺れている。
気に入った姿勢を見つけたのか、静かに撫でる俺の手を受け入れていたが、やがて穏やかな寝息を立て始めた。
時折、行き交う船から船長や釣り人が手を振ってくれる。
泳いでいる水ポケモンが空に向けて水を噴き、アーチを描く。
鳥ポケモンの群れが見事な編隊を作り、飛んで行く。
変化する空と海を眺め、ロコンを撫でながらゆっくりと過ごすのが大好きだった。
太陽が中天に昇っていることに気づき、カツラさんとの約束を思い出した。
グレンタウンの子供は皆そうだが、小さい頃から世話になっているし、炎ポケモンを操る姿は幼き頃に思い描いたヒーローそのものだ。
俺自身もカツラさんに憧れを持っている。
ロコンを胸に抱き締めて立ちあがるのと、蹄を鳴らして走り寄るギャロップを視界に捉えるのは同時だった。
カツラさんのギャロップだ。
目の前で立ち止まったギャロップの見事なたてがみを撫でる。
ほどよい暖かさを感じる。
目を細めているギャロップの毛並みをじっくりと楽しんでいると、抱いていたロコンが小さな一鳴き。
時間を掛けすぎたのか、抗議されてしまった。
ギャロップから手を離し、背に飛び乗る。
謝るようにロコンを撫でながらギャロップにお願いする。
嘶きが海へと響き渡り、風のような速さで駆け出す。
風に揺れるたてがみが燃え盛る。
目的地はグレンジムだ。
--3
俺が目覚めたのは三歳になった日だった。
考える、という段階を踏まずに本能による行動が多かった俺の物心がついた頃、とも言えた。
今でもそれ以前の事は憶えておらず、古い記憶でも三歳の頃を思い出すのがやっとだった。
その日は高熱を出して寝込み、夢に魘されたのを覚えている。
不思議な夢だった。
自分ではない自分が生きた道筋の夢だった。
夢を見終えると、知識が入り込んできた。
たぶん、夢でみた自分の知識。
直後に頭が割れるような痛みを感じた。
死んでしまうのではないかと思う程だった。
深い意識の混濁から蘇った時、俺は俺を認識したのだ。
ただ、そのとき見た夢は忘れることなく今も憶えている。
持ちえない経験、事象の記憶。
こことは違う、ゴミのように溢れる人々の生活。
それらの情報の断片が途切れ途切れに頭を掠めた
そして、突然刻まれた知識は、一度も見た事のないポケモンについても数多の情報を齎してくれた。
ポケモンの図鑑を広げても見つけることは出来なかったポケモンが大半だが、載っているポケモン全てを知っているのもまた事実だった。
小さな画面に”生きる”数値化されたポケモン。
赤い帽子の似合う、主人公の姿。
全てを、憶えている。
知識熱に浮かされたように、島の研究所に忍び込んだこともあった。
幼さが見せる活発さと高回転する思考からの衝動だった。
研究室の一室で見つけた化石を一心不乱に眺めた。
途中、現れた研究員との論議を交わしたこともあった。
研究所に顔を出しながらポケモン屋敷にも通っていた。
何故か記憶にあるポケモン屋敷はデフォルメ化されており、実際はあまりにも複雑だったために迷子になってしまった。
このとき、ベトベトンに助けてもらった。
初めて間近で見たポケモンは見知らぬ記憶にある姿よりも美しく、雄大で、幼いながらも歓喜したものだ。
夢のようなひと時だった。
夢見心地で、いつも通りポケモン屋敷で過ごしていた。
その日は二階で、以前住んでいた老人、名前の欄にフジと書かれていた人物の日記を読んでいた。
表紙と一枚目の紙に違和感を感じ、剥がすと三階の隠し部屋へと続く梯子の在処が示されていた。
興味本意で梯子を昇り、隠し部屋へ向かうと、部屋を示す場所は一面が壁だった。
壁の中が空洞になっているか確認するために耳を当てて小突いてみた。
突然、壁が回転して部屋の中へと転がり込んでしまった。
電源が生きているようで、中に入ってから数秒して弱い光で照らされた。
埃の積もった薄暗い部屋だった。
室内は、実験で使うような、そんな表現ができる設備に溢れていた。
物々しい部屋を見回す。
見たことも無い、人の等身ほどはあるだろうガラス張りの楕円形のポッドがいくつも並んでいた。
そのうちの殆んどが割れていたり、中から液体が漏れ出たりしていた。
空のポッドばかりだ。
ポッドには小さく『Mew』と掠れた文字で書かれており、文字の後ろには数字が振られていた。
ミュウと読むのだろう、知識にもその幻のポケモンの姿があった。
どうやらこの部屋ではMew10までいたらしい。
1、2のポッドだけが無くなっていた。
他は無惨にも砕けていたりとまともではなかった。
部屋の奥から光が漏れているのに気がつき、進むとポッドを満たしている液体の中で輝きながら浮いているポケモンを見つけた。
表記はMew1だった。
しかし、中に漂っているポケモンの姿は、知識のミュウとは程遠い。
疑問に抱きながら、尾が一つの金色に輝くロコンを解放した。
隠し部屋やポッドには心当たりは無かったがポケモンタワーのフジ老人という情報が脳裏を過った。
同時にロケット団という言葉も得たが、詳しくはわからなかった。
機会があれば調べてみたいとも思ったが。
それから数年経ち、研究員がグレン島から離れたことを理由に俺は研究所に近寄らなくなったが、ポケモン屋敷に通い続けたため、同世代の友人もいなかったことが両親を困らせていた。
それでも沢山のポケモンに囲まれていた俺は全く気にしていなかった。
学校に通いながら他人とは流されるままに接してはいたが、特別仲のよい友人はいなかった。
結局、十歳のときの事件を経てカツラさんに誘われるまで、両親以外の人間とは殆んど交流しなかったように思える。
カツラさんのお陰でトレーナーとしてのイロハを学べた。
他のジムメイトとポケモンの論議を繰り広げ、屋敷から付いてきたポケモンで模擬戦をしたりと経験を積む機会に困ることはなかった。
謎々マシーンとやらもこの論議を元に改造され、難題が出されるらしいがどうでもいいことだろうか。
そんな毎日を過ごしていたが、グレンタウンでやりたいことはやりつくしてしまった。
残ったのは、頭に浮かぶデフォルメされた世界の地図をこれから自分の足で確認したいという欲求のみだ。
このカントー地方を見尽くしたら、他の地方も見たいとも。
将来、不完全な記憶に漂う地図を思い描きながら、鮮明に思い浮かぶ未だ見ぬポケモンたちを探すのも良いかもしれない。
不完全な記憶にある全てを完全なモノにしたいのだ。
この狭い島の外に在る、広い世界を不安定な自分に刻むように。
今は、外に行きたい気持ちでいっぱいだった。
--4
グレンジムの前に着くと、俺に縁のある人が集まっていた。
見知ったジムメイトや近所の人に挨拶しながら中心へと向かう。
カツラさんが俺に気付き、足早に近づいてきた。
カツラさんとの約束は簡単で、とても難しいモノだった。
単純に言えば、旅をするだけだ。
前から俺のしたかったことだからそれ自体は簡単だった。
難しいのは旅の中で『将来』を見つけることだ。
激励の言葉とともにカツラさんが差出したのは、真紅のトレーナーカード。
明日旅立つ俺に用意してくれたトレーナーの証だ。
一人前と認められた気がして口の端が吊り上り、小さな笑みが浮かぶ。
俺の様子に笑いながらカツラさんが頭を撫でてくれた。
俺自身はカツラさんに憧れを持っている。
だから、グレンジムのジムメイトやジムリーダーになりたいのかと言えばそうではなかった。
憧れもその勇姿も、もちろん目指す目標ではあるが成りたいモノではない。
心の何処かで島の外に『将来』を見出だしていたのかもしれない。
カツラさんからモンスターボールをいくつかと、かなりの金額が入った封筒を渡された。
断ろうとすると、今までやってた給料だと言われて返すに返せなくなった。
そして、外はグレンのように暖かく無いからな、と呟きながら俺に黒いマフラーをくれた。
顔の半分を隠せるほどの大きなマフラーは暖かく、軟らかかった。
帰り際に、知り合いから餞別をたくさん貰った。
人見知りの俺に、よくこんなにも多くの知り合いが出来たものだと内心で驚く。
お礼を言ってまわり、解散となった。
グレンでの生活が終わるのだと思うと寂しくなった。
--5
家に帰り、両親に旅に出る旨を伝える。
すでに話し合っていたことだ。
何時ものように、静かな食卓だった。
整理して生活感の薄れた自室で旅に持って行く荷物を確認する。
見聞を広める旅、日程も期間も決まっていない。
旅に必要な物はすでに用意してあったので、傷薬は大目にしておこうといくらか増やすが、すぐに作業は終わった。
一息ついていると、膝の上にロコンが飛び乗った。
思えばロコンとの付き合いも長いものだ。
初めて出会ったときは尾が一つだったが、今では六つに別れ、見事な毛並みを誇っている。
膝の上で寝転ぶロコンの毛繕いをはじめる。
毎日欠かさず毛繕いを行ってきた。
ポケモン屋敷の友達で練習したこともあった。
今では中々の腕だと自負している。
世界を見て回った後は、ポケモンブリーダーになるのも良いかもしれない。
ふと、壁に目を向ける。
人気番組であるポケメディアの抽選で当たった赤をベースにしたキャップ。
ポケモンリーグが制作した、世界に二つと無い貴重な品だ。
倍率を考えることすら馬鹿らしいほどの抽選人数だったらしい。
結局、一度もかぶった事が無かったなと思いながら手にとった。
軽く、手触りはとてもよい。
耐熱、耐水、耐電……など考えうる最高の丈夫さが使わない俺のせいで酷く勿体無い。
飾りにしておくには可哀想に思い、リュックに入れた。
結局リュックの肥やしになるのだろうかと苦笑いを浮かべた。
持って行かないという選択肢は思い浮かばなかった。
最後にスケッチブックと色鉛筆を大事に仕舞った。
--6
いつもなら寝ている朝早くに目覚めた。
お気に入りの白いニット帽をかぶり、階段を下りる。
顔を洗い、歯を磨き、朝食を食べ、ロコンの毛づくろい。
そしていつも通り、いってきますと告げて玄関へと向かう。
いつも通り、母のいってらっしゃいという返事を背に家を出た。
眠たげなロコンを頭に乗せてポケモン屋敷で友達との別れへと向かう。
ポケモン屋敷、俺が生まれる前に頭部の寂しさが目立つ初老の男性が自らの研究のために住んでいたらしい。
今は古く所々が朽ちており、中にはベトベターやコラッタ、ポニータのようなポケモンたちの姿を見ることができる。
彫像や机などの置物が二つ並んでいることもあり、どちらか一方はメタモンが擬態していることもあった。
近寄ってくるポケモンたちを撫でながら地下を目指す。
ベトベターやコラッタ、ポニータ、メタモンといったポケモンは俺が遊びに来ている十数年の月日の間に増え、なついたポケモンたちだ。
ラッタやギャロップといった進化したポケモンは、俺が屋敷に来る前からいたポケモンで、グレンジムでトレーナーとして励んだ日々で進化した。
地下へ向かう道すがらポケモンをたちを撫でながら、10kg近いロコンを頭に乗せながら自分も力が付いたな、などと考えながら歩く。
地下の広い廊下には、ベトベトンがいた。
このベトベトンは初めて出会ったときからベトベトンだった。
ポケモン屋敷のポケモンたちを統率しているリーダーに位置するポケモンだ。
そんな偉いベトベトンだがとても心優しい。
怪しい研究員や怪しい泥棒ルックの男、火吹きの練習をしている駆け出しのマジシャンたちをも優しく見守るベトベトン。
俺も幼少の頃、毎日遊んで貰った記憶があった。
ベトベトンは、俺が初めてポケモンという世界の未知との邂逅だった。
ベトベトンに前から語っていた話だが、今日から島を出て外を見てまわることを伝える。
言葉を介すことは無いが--言葉を伝える事が可能なポケモンがいるらしい、喋るでは無く伝える、が気になるが--ポケモンは非常に賢く、俺の言葉を容易に理解してくれる。
ベトベトンは一度大きく頷くと、俺の頭を優しく撫でた。
俺はベトベトンを撫で返し、抱きしめる。
臭いのない、冷やりとした体だった。
帰ろうとすると引き留められた。
振り返るとベトベトンが半透明の石をくれた。
中心では炎が灯っており、薄暗い屋敷内では美しく輝いていた。
ベトベトンにお礼を言ってポケットにしまいロコンを頭から下ろし、別れを告げる。
旅立つと当分は戻ってこれないだろうから。
別れは寂しく、餞別は嬉しく、相反する思いで少し混乱しながらポケモン屋敷を後にした。
薄暗い屋敷の中でも輝くロコンのか細い鳴き声が耳に残った。
--7
桟橋へと向かう。
カツラさんはジムを開く前にそこでポケモンと語り合うのを日課にしており、今日も同じだった。
マサラタウンまで乗せてくれると提案してくれていたので、有り難く受け入れた。
リザードンの背に乗り、空を飛んで行くという。
ニット帽を目深く被ってマフラーを巻き直すと、顔がほどんど隠れてしまっていた。
リザードンの背に乗ると力強く羽ばたき、浮かび上がった。
カツラさんに手を振るために振り返ると金色が飛び込んできた。
ロコンが乗り移ってきたのだ。
既に海に向かって飛んでいるためにロコンを降ろすことは出来なかったし、降りる気も無さそうだ。
ロコンに俺のポケモンになってくれるか聞く。
返事はなかったが、六つの見事な尻尾が俺の腕を優しく撫でた。
俺の旅に相棒が増えた瞬間だった。
遠くで炎の柱が舞い上がった。
ポケモンの鳴き声が周囲に響いた。
カツラさんのポケモンたちが炎を上げている。
リザードンが返事とばかりに火を噴き、さらに空へと飛んで行く。
空から見下ろしたポケモン屋敷にはベトベターやベトベトン、ドガース、マタドガス、ガーディ、ギャロップ、ポニータ、コラッタ、ラッタ、メタモン、ブーバー……友達が俺を見送ってくれるようだ。
俺の腕に抱き着く太陽が、大きく鳴いた。
最後に島から鳴き声が一度だけ聞こえた。
空は昨日と変わらず、雲一つ無い太陽の眩しい青空だった。
昔書いたポケモンを発掘、ヤマブキシティまであったので歓びの更新。