実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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お祭りについて気になると思うので、ちょっとだけ抜粋しました。
参加者の皆様にはアルコールが入っているのか、現場は大変盛り上がっております。
愚者ばっかの盆踊りはほんわかした様子ですね。



なお、ほとんどオリ主は関わらないので、フレーバーだと思って貰って大丈夫です。


ぐしゃぼん3

 

 --1

 

 ファントムソサエティの目的は、来るべき滅びの時に「大いなる存在」である電霊マニトゥによって魂を救済させることだった。だが、マニトゥは生への渇望と人間の悪意を学んだ。組織と協力関係にあった門倉から学んだ。そこから全ては歪んでしまった。電子の海に溶けるように、マニトゥは消えた。死を教えることのできる片割れも、同じように電子の海へと消えた。

 

 

 

 高層ビルの一角。西日射す無人の廊下で、ファントムソサエティと呼ばれる組織に所属するダークサマナーであるフィネガンの口から、血液が流れ出た。それは茜色の日の光で照らされているにも関わらずどす黒く、同時にひどく鉄臭かった。仕事柄、慣れるほどに嗅いだが、奇妙な新鮮さを覚えた。

 潰れた内臓が悲鳴を挙げるかのように、大量の血液が腹に空いた傷口からも流出していた。それは黒い小さな水たまりを作り、フィネガンを濡らしていた。

 何故まだ生きているのか、何故まだ死んでいないのか。人知を超える力とは、終わりへの幕を長引かせる物らしい。

 味わいたくないような、痛みや苦しみ、倦怠感がフィネガンの身を包み続ける。

 もし常識という秤があり、それが善悪で傾くというのならば。そんな仮定をした場合、フィネガンは悪へと傾くことばかり行ってきていた。楽に死ねるとは思っていなかった。だから、自身の現状にも何とはなしに納得できていた。

 最期は呆気ない物だとフィネガン自身、笑ってしまうような陳腐な最期だが悪くない気分だった。

 フィネガンよりも年若く、経験の浅い少年のサマナーと協力して、庇って、そして今死に掛けている。奇運に見舞われたとでも言うのだろうか。

 あの少年との出会いには特筆すべきところはない。よくあるとは言い難いが、全く無いとも言えない。偶々、悪魔召喚機能が付いているハンディ・コンピュータであるGUMPを拾った少年と、奇妙な縁で運命が幾度も交差しただけだ。新しいサマナーが生まれる定番の一つとでも言えるかもしれない。仕事の邪魔になる時には少年とフィネガンは互いに争い、フィネガンが自身の所属する組織へ疑いを持った際に手を取り合った、それだけだ。

 

 フィネガンが煙草を蒸かそうと、内ポケットに手を入れ、舌打ちを一つ。血に塗れたそれを煙草と呼ぶには難しかった。仲魔がいれば何とか出来たかもしれないが、今は独りだ。もう傍には永く連れ添った仲魔はいない。好敵手の下で、フィネガンの仇を取ろうとしているのかもしれない。

 血とともに、体温が流れ出る。失わる熱による寒さよりも、眠気のほうが強くなりつつあった。

 

 

 

 

 

 フィネガンが霞ゆく思考で描くのは、組織の離反についてだ。

 平常通りに仕事を進めていた日々だったが、ある日フィネガンに奇妙な仕事が増えるようになった。自我を失った電霊の捕獲、コスプレ集団へのアプローチおよびその連中のCOMP奪取などだ。途中で、件の新たなサマナーである少年とも何度か衝突したことを覚えている。その奇妙な仕事の数々の理由は、「大いなる存在」であるマニトゥを失った組織が、侍とやらが持っていたバロウズと呼ばれる存在に目を付けたためだった。組織が、壊れかけのマニトゥの欠片と、掻っ攫ってコピーしたバロウズもどきの劣化品、その二つの複合悪魔で魂のゆりかごを作ろうとしたのだ。また、組織の真の成り立ちと本質もその時に知った。大いなる滅びとやらに立ち向かう、善良な組織が歪んでファントムソサエティとなったことを。

 組織の上層部は夢でも見ているのか、フィネガンはそれを知った時笑うしかなかったことを覚えている。同時に、組織を離反することを決意したのもその時だ。悪を成す自身に美学があった、強い自尊心を持っていた。漠然とした夢に付き合う気など一切なかった

 夢見る阿呆にも、踊る阿呆にも、愛想が尽きていた。

 離反した後に、少年とともに行動したのは、美学にケチを付けた「大いなる滅び」とやらを潰そうとしたためだ。馬鹿どもの目的を壊し、そんな下らない夢など必要なかったと証明するためだった。

 

 

 

 

 

 フィネガンは自身に致命傷を与えた犯人を思い出す。マニトゥを求め続ける、組織によって作られた壊れた電霊。あれは滅びだったのか。いや、そんなはずはない。断固として否定する。あんなもの人災でしかない。

 やはり、大いなる滅びなど無かったではないか。フィネガンは血反吐を吐きながら、阿呆どもを笑い続けた。束ねた襤褸切れのような電霊が、世界中のネットワークを介する巨大な存在になるはずないと。ネットワークを脳に見立てた一個の生命になることないのだと。そして事切れた。

 

 

 

 熱かい悩む神の火が、東京を焼き尽くす様をフィネガンが見ることは無かった。

 

 

 

 

 

 --2

 

 逢魔時、それは人間が暗闇に順応する時。霧の中にそれは浮かんでいた。夜を切り取ったように暗く、そして人間を模したような巨大な影だった。顔の位置には、能面のような白い仮面があった。夜の女神であるニュクス、その依り代(アバター)だった。

 

「世を包む霧はまるで、仮面に隠された人の心だ。夜を包む切りの無い闇の帳だ」

 

 巨大な影が告げた。

 影の周囲の建物は壊れ、複数の人間が倒れていた。学生服を着た少年少女、小学生ほどの子供、スーツの青年、白い犬。ペルソナという異能力に目覚めた者たちだ。

 

「惜しい……本当に惜しいよ。運命を理解しながらその運命に立ち向かおうとする力。……その意思をもっと多くの人達と分かち合えたら、運命を変えることが出来たかもしれないね。でも、……もう遅いんだ」

 

 ニュクス・アバターの後ろで、幾重もの矛盾が孕んだ外なる神(アウターゴッド)が空へと伸びる。宵闇を導くように、混沌が這い寄るように、夜が進む。時が加速し始めたのだ。この場のみの、時間操作。

 外界は数多の力ある存在によって力場が安定しない混沌の場となっている。力ある邪神・ニャルラトホテプといえど、この東京では自由に力を行使できない。だから、この場に邪魔になりそうなペルソナ使いたちを誘導し、自らの異界に閉じ込めて、力を使っている。この場にいるニュクス・アバターとは利害が一致していたがために、行動を共にしているに過ぎない。

 

「誰も命の答えに辿り着けなかった。死に抗うことは出来ない。それでも還ることができる、眠ることができる」

 

 ニュクス・アバターが宣告する。

 

「知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった。そして旅人は苦難の旅路の果てに、答えを得たと希望を抱き、明日を夢見る。己が愚者であり、何も知らぬ者のままであることに気付かぬままに。絶対の終わりを、覆すなど出来ないことを、愚者は末期に知る」

 

 死の母星であるデスの訪れに、ニャルラトホテプが歓喜とともに月に吠えた。

 忌々しいその醜い音に、怒りとともに立ち上がった周防 達哉(すおう たつや)が見た空は、太陽が浮かぶ昼のような明るい空だった。

 遅れて、有里 湊(ありさと みなと)が見た空は、光の一切が入らない闇だった。

 ぴたりと、狂ったように笑っていたニャルラトホテプの動きが止まった。

 

「……太陽神と空亡め。忌々しい敗者どもが囀っている。滅びた雑魚など、大人しく消えていればいいものを」

 

 醜い声で、気色の悪い音で、口の中で吠えるかのような発声で、ニャルラトホテプが呟いた。

 夜と月、その二つが合わさって現れるデス。

 その訪れは、阻まれている。

 終末は、未だ先だ。

 だが、確実に終わりは来る。

 

 生と死は一つであるのだから。

 

 

 

 

 

 --3

 

 緑と赤の二つの光が、闇色の空で衝突を繰り返している。その衝突の際に生じる破壊の余波が、地上を揺らしていた。彼らの揺り篭であったはずのカルマ教会と呼ばれる浮遊城は既に落ち、砕けている。大規模な質量の城が落下した影響で、地上が瓦礫の山と化していた。

 

「ノウマン、ヨークシンの任務の時、アンタは俺達を生け贄にした。そうだな! あんたが俺の仲間を殺したんだ! 」

 

 ディンゴが、仇敵に叫んだ。ディンゴはデビルシフターであり、悪魔とよばれる神魔へ移り変わることのできるその身は、人から大きく離れた姿になっていた。トト神へと変貌を遂げた姿は、青とメタリックブラウンの色が混ざった生物鎧に身を包んでいるようだった。鋭角が特徴的で、ロボット兵器を思い起こさせる。生体マグネタイトが、全身に奔るラインを鮮やかな緑に発光させている。

 身に宿していた緑の輝きが一線の光となって、目の前に飛んでいた赤い光を飲み込んだ。

 

「……だからどうした? 虫螻が無様に死んでいく姿を、この目で見たかったぞ、ディンゴ。これからは物の数ではないと言っておこう。すでにアーマーンは目覚めの準備に入っている。計画は、この世界は、終わりを迎えようとしている」

 

 緑の光が薄れ、赤い光が姿を現した。赤い光、アヌビス神へと変貌したノウマンが答えた。犬に酷似した茶と黒の装飾を纏っている機械的な鎧は、ディンゴの神魔としての姿と非常に似通っていた。溜め込んだマガツヒを取り込むたびに、赤い光が漏れ出している。

 アヌビスから幾つもの赤い光が放たれた。中空に幾何学模様を描きながら、さながら猟犬のように、ディンゴへと光が奔る。

 

「アヌビスゥゥゥゥっ!」

 

「レオ待て!」

 

 戦闘機を模した機械が青い光を撒き散らしながら、その二つの光に割って入った。溜め込んだ不活性マグネタイトを活性化させた際に生じる淡い青の光が綺羅星の様だった。

 ディンゴの静止を振り切って、レオと呼ばれた機械がノウマンへと肉薄する。

 

「その身を人造造魔に堕として延命までして追いかけてくるとは……。だが、アヌビスの権能の前には無意味だ」

 

「儀式を止めろ、ノウマン!」

 

 アヌビスへと迫ったレオが、その機械の身体が空中で分解した。ばらばらと崩れ落ちる。機械の鎧に紛れ、残っていた生身の脳といくつかの内臓が仕舞い込まれていた巨大な試験官のようなキャノピーが、同じように落下していった。

 アヌビスは古くから崇拝されている神である。死んでいる筈の(バー)を冥府に送ることなど、容易であった。造魔としての魂から、人間としてのレオだった魂が冥府へと送られた。その結果、乖離を起こしての空中分解だった。

 

「レオ!? レオオォォォォ!」

 

「nのフィールドを超えた時、この世界に来た時、この美しい世界を見て感動を覚えたものだ。同時に、私の中で何かが叫んでいた。私達の世界はあんなにも荒廃していたのに、なぜここはこんなにも綺麗なのだと。私は答えが知りたくて、この世界の集合無意識に問いかけた。……その答えは無反応。そう、何も無かった。神は居らず、人類の無意識は無色に染まり、ただ流されるのを待っていた。私達の世界と同じく、なんの答えもない。だからこその人類の意志、滅びを、何も要らない世界を創り出す」

 

 緑の赤、二つの激しい光が再び衝突を繰り返した。撒き散らされた光は、空を汚し、地上を砕く。

 

 

 

「聞け、ディンゴ! 召喚はすでに最終段階に入り、アーマーンは私を選んだ! 人類の無意識が終末を望んでいるのだ!」

 

 

 

 

 

 --4

 

「何か用かな、メタトロン」

 

 白い小動物が、空から舞い降りた少女を、意志を感じさせない真っ赤な瞳で見つめながら言った。

 少年のような無垢な声だった。

 地に降りたメタトロンと呼ばれた少女は、無機物のような緑の澄んだ瞳で、同じように小動物を見つめていた。

 風で、緑のツインテールがふわりと柔らかく揺れた。

 

「魂の牢獄からグリゴリの天使を逃がしたことが聞きたいのかな。特に意味なんて無いよ。アザゼル、シェムハザ、あれらは変なまた組織を作って、電霊にご執心で楽しそうな物だよ。それとも東京から誰も出られなくしたことや認識をずらしてそれを理解できないようにしたことかな。特に意味は無いんだけどね、侍で遊ぼうかなって。あとちょうど魔王の触媒になりそうな人間を見つけたから遊ぼうと思っただけさ。とはいえ、そこら中で魔王格の悪魔が呼ばれてるから、二番煎じになりそうだし辞めたといたよ。今の僕は特に何も悪さをしていない可愛いマスコットのルシべえさ」

 

 がしゃん、と物々しい音ともに、少女の腕が変形した。白魚のように繊細な右手から、眩いほどの緑に発光した大口径の銃が現れた。

 

「ああ、そう。随分と無口だと思ったけど、君は人の話を聞かないからね」

 

 少女の腕から破壊の光が生まれ、小動物を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 放流されいた光が納まった。残っているのは、建物や小動物だった物の影だけ。

 

「サマナーを得て調子に乗ったのかな。霊殻の維持すら満足にできない機械風情が」

 

 少女の後ろに、先ほどの同様の小動物が佇んでいた。

 

「地獄から甦ったサマナー、パルチザンの介入により未来渡航も可能。確かに珍しいかもしれないけれど。程度は知るべきだ。そうだろう? 『メギドラダイン』」

 

 光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。

 光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。

 光が満ちる。光が満ちる。光が満ちる。

 光が……。

 

 

 

 

 

 --5

 

 東のミカドから来た侍、フリンは仲間とともに東京を走り回っていた。

 東京で活動している悪の組織に、悪魔が宿りやすい霊媒体質の少女が囚われていると、白い小動物に助けを求められたのが、今現在走り回っている理由の発端だった。

 少女の奪取自体は簡単だった、白い小動物から情報を得られていたので、輸送中に奇襲をかけるだけで済んだ。

 問題はその後だ。

 ヨナタンとワルターが、その少女の扱いについて口論している隙に、別の組織に攫われてしまったのだ。

 戦う力があるから一緒に戦わせるか、過保護に守るかだなんて言い争うべきでは無かった。

 小動物によると、攫ったのは無色の派閥とやらで、生贄にされるらしい。

 そういうことで、すぐにでも取り返さなければ、と仲間たちと東京を走り周っているのだ。

 

 

 

 どれだけ走っただろうか。

 肩を揺らし、息を整える。

 気づけば森の中にいた。

 フリンは故郷を思い出した。

 悪魔が溢れ、夢破れたイサカルは……。

 

 首を振って過去を忘れようとしていると、木々の枝葉に精霊の木霊がいることに気付いた。

 自然が豊かな場所には、木霊が沢山いるらしい。

 東京の無機的な雰囲気に荒んでいた心が癒されるようだ。

 だが、おかしい。

 木霊が多過ぎる。

 其処ら中に木霊が居て、カタカタと頭を揺らしている。

 

 >とてつもなく恐ろしい悪魔の気配がする……。

 

 背筋が凍ったかのように冷えた。

 物凄い圧力だ。

 急いで逃げるぞと仲間に指示を出そうとして、それは森の奥から現れた。

 人間のような猿のような赤ら面、鹿の角、発達した胴体、無数の動物が集まったかのような鹿(シシ)だった。歩く度に足元で植物が成長し、死んでいく。生と死の輪廻を足蹴に、迫ってくる。

 バロウズがアナライズの結果を知らせた。

 

 

 

     \カカカカッ/

 Lv.不明 神霊・シシ神

 

 シシがみ が いったい でた !

 

 

 

 フリンは思わず唾を飲み込んだ。

 思いがけない絶望が襲い掛かってきた。

 あまりの圧力に吐いているイザボーを背に隠した。

 

 

 

 

 

 渡し守のカロンが呆れたようにこちらを……。

 

 

 

 

 

 

 --6

 

 ターミナル。それはスティーブンという男が開発した、凄まじい超技術を秘めた機械だ。遠く離れた場所への転送、通信、悪魔合体など様々な機能が無駄に豪華に付け加えられている。個人であろうと、組織であろうと、それを欲するのは当然ではないだろうか。スティーブン自身については、神出鬼没で車椅子に乗っている、悪魔召喚プログラムをばら撒いたキチガイ程度の情報しか残されてないため、その価値に拍車が掛かっている。

 そんな問題を抱えた爆弾のようなターミナルが日本中にばら撒かれていた。その全てを回収し切って東京に集めたのは、今代の葛葉ライドウだった。ターミナルは全て、ヤタガラスが管理するビルに隠されている。

 ライドウは、不眠不休で働き詰めだった自分を褒めたいくらいだった。北は北海道、南は沖縄、日本中を飛びまわって、群がる人魔を問わずに滅多切り、やっとの思いで東京に帰還すれば、学校で魔界への扉を開いた阿呆が現れた。全てを個人で対処するには酷く困難なそれらを完遂したのだから、なるほど彼女もやはりライドウなのだろう。

 ライドウは護国など願っていない。ただ、家族に会うことだけが目的だった。だから働き続けているのだ。ヤタガラスと葛葉が弟を見つける、代わりに自身は国を守る。目の前に吊るされた餌だと分かっていても、食いつかないはずがない。愚直にも彼女は信じて走り続けていた、今日までは。

 

 

 

 

 

 

「ライドウよ、新しい指令のようだ」

 

 黒い猫がそう言った。人語で、そう言った。業斗童子と呼ばれる、渋い声の猫だ。ライドウのお目付役と指南役を担っている猫だった。ヤタガラスの使者が運んできた手紙を読んでいる。

 悪魔に魂を乗っ取られかけていたライドウを助け、その才能に目を付けて葛葉の里に彼女を送り込んだ本人だった。

 ライドウは業斗童子にも、里にも恩を感じていた。だが、この平穏な日々を、激務で維持しているので、全て返しきっているとも考えていた。

 

「……ヤタガラスや里のお歴々はこの場に至って、まだうぬを認めていないらしい」

 

 その言葉に、ぴくりとライドウの背が震えた。身を粉にして働いて、認めていないとは。だが、いい。我慢もしよう。家族の、弟のためだ。自分が我慢すれば、情報を得られるのならなんだって我慢できる。

 悪魔によって、自身は弟を一人残して飛び出した。そして、実家に戻れば、吹き飛んだ扉、悪魔によって壊された家具、床や壁に付着した弟の血痕、隠密性の高いダークサマナーの組織による封鎖。

 何もできなかった。後悔しかなかった。探しても何も得られなかった。

 独りでは、何もできないと理解した。

 

「未だ続く帝都の混沌、先代までのライドウなら全てを既に抑えているだろう。また、女の身ではライドウに相応しくないとも。もはや曇っているとしか思えぬ……」

 

 どんな言葉だって甘んじて受けよう。自身が一番才能があったからライドウになったのだ。たったの一年、されど血を吐くほどの修練を重ね、熱で倒れようとも夢で知を磨いた。時間の流れが遅い異界で歳を取ることも恐れずに戦い続けた。すべては帰るためだ。今更文句を言うのなら、才能が足りなかった里の後進を恨むべきだろう。

 

「その上で、ライドウ解任の旨……いや、信じられん」

 

 その言葉に、ぎしりと心が軋んだ。

 

 

 

 

 

「撤回を、いや、まずは真偽の伺いを……」

 

 ヤタガラスの使者はただ、静かに「決定事項のため、折り返しは不要とのことです。また、北海道で調査されていた先代が復帰なされます」とだけ呟いた。

 

「止せ、ライドウ! 手を刀から離せ!」

 

 業斗童子が叫んだ。彼が叫んだのは何時ぶりだろうか。ライドウに就任して慣れてきてからは怒られることは減ったが、未熟な時分ではよく小言を言われた物だったが、声を張るとは珍しい。

 

「ゴウト、約束は? 弟については?」

 

 弟は何処かで生きている、はず。そんな曖昧な情報でも我慢して働けた。

 どこにいるか、どんな風なのか。求めた情報は小出しで、やっとの思いで大きな事件を解決したら、これか。

 何のための我慢だ。何の為に働いた。刀から手が離れない。

 

「落ち着け、ライドウ!」

 

「落ち着いている。私はライドウではないのだから葛葉を離れさせてもらう」

 

 葛葉を辞めたら、もっと情報の集まる裏の仕事に就こう。家を封鎖していた組織にアプローチをかけるのもいい。

 変に柵があるから面倒だったのだ。社会の構成も、個人には無いも同じだ。

 

「落ち着けと言っている! まだ決まったわけでは……」

 

「決定。だから私は好きにさせてもらっても構わない筈でしょ」

 

「……だとしても、それは許されん」

 

「なんで」

 

「……」

 

 業斗童子が口を閉ざした。手紙には、きっと良くないことが書かれているのだろう。

 

「読んで」

 

「里で子を成して育てよ、と」

 

「嫌だね」

 

 怒っている。すごくかどうかは彼女自身では判断できないが、怒っている。

 約束は果たされず、ただ求められる。そんなもの、受け入れられるはずもない。

 

「落ち着くのだ、ライドウ。……うぬも戦いを望んではいなかったはずだ。ならば……」

 

「里から出られない。そうでしょう」

 

「……ライドウよ、知りすぎた。聡いうぬならわかるであろう」

 

 護国を任されるほどに、全てに詳しくなった。そして、守らないで居るには詳しすぎた。

 今さら市井に紛れることもできない。

 だから、子を産み、育てよと。里のために、拾った恩を返せと。

 嫌だね、その言葉を彼女は何度も脳内で反芻する。

 奪われるのはもう沢山だった。

 残った自身の時間ですら捧げなければならないというのなら……

 

「要らない」

 

「止めろ、ライドウ」

 

「ライドウなんて要らない」

 

「止めろ、ライドウ。止めろ。それ以上、言うでない」

 

「クズノハなんて、要らない」

 

「止めろ! ハクノ! 口を閉じろ!」

 

「そうだ。閉じ込めようとする里なんて、壊してしまえば……」

 

 刀を握っていた細い腕が、宙を舞っていた。

 学帽を被り、外套を着た端正な容貌の男が、刀を片手に立っていた。先代のライドウだ。知っている。

 遅れて噴き出した血が、ゆっくりと雨のように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 ライドウに選ばれたハクノは強かった。そして、ほとんどの場合が力押しだった。自分よりも格上の相手との戦い方なんて知らない。

 だから、無様に逃げるだけだ。逃げればいい。簡単だ。

 

「負けないよ……。私は帰るんだ……」

 

 右腕を失ったハクノが、重量を欠いたがためにふらつきながらも、凄まじい速度でビルの廊下を走る。

 ライドウなんて要らない。里なんて行かない。ただ、帰りたいんだ。

 ターミナルが隠してあるビルだ。ターミナルにさえ辿り着ければ、逃げ切れる可能性だって低くない。

 着ていた外套の袖を破り、失血死を恐れて傷口付近を強く結ぶ。

 腕があったかのような錯覚や、失ったはずの手が痛む幻痛に、涙を我慢する。家族がいなくなった弟を思い出せば、こんなもの痛くも痒くもない。ただ、腕がなくなって力強く抱きしめることができないと思うと、それが堪らなく悲しかった。

 

「家族の、あの子の傍に……。帰れるんだから……きっと、へいき……」

 

 体力の限界だった。倒れてもなお、這いずって進んだ。

 滴った血が、尾を引くように。縺れそうになる腕を必死に動かして。

 

 あと少しだ。

 

 

 

 

 ターミナルが置かれた部屋に、やっとの思いで辿り着いた。

 私は、帰れるんだ。

 痛みすらも今は忘れて、ターミナルを操作して……。

 

 音もなく、滑り落ちるようにハクノは倒れた。

 何が起きたのかとハクノが必死に起き上がろうとして、気付いた。

 足が、無い。

 片腕に続いて、足まで失っている。

 それでもいい。

 早く転送を……ターミナルが火を噴いていた。

 血の気が引いた。

 

 室内を見渡せば、ターミナルの前に残されている自分の両足、鮮やかに斬られて火花が散っているターミナル……そして、斜めに切断されたらしい部屋。

 全てライドウが、ハクノの先代だったライドウが成した結果だった。

 

 化け物め……!

 

 内心で慄きながら、罵倒しながら、ターミナルに身を預けるように膝立ちする。

 足を失っても、腕を失ってでも帰るんだ。

 ターミナルはまだ動く。

 希望は残っている。

 

 転送を入力。

 読み込みが開始された。

 早く早く、と祈るように転送を待つ。

 寒い。血が足りない。

 回復を。

 駄目だ、足音が聞こえてきた。

 早く。

 

 びーっと鳴り響いた。

 転送失敗によるエラー音だった。

 

 

 ハクノは絶望のあまり、目の前が真っ白になったかのように感じた。

 

 

 

 

 

 

 ハクノの仲魔を切り捨て、ライドウが軽い調子で進む。

 

「ライドウ! ハクノを達磨にしてどうする!? うぬの子を育てることになるのだぞ!」

 

 その後を追っていた業斗童子が、叱りつけるように叫んだ。

 前のパートナーであるこのライドウは、悪魔と戦い過ぎであり、悪魔に慣れ過ぎであり、そして自身が強すぎた。人間が脆いことと繊細であることに気付いていないのではないかと業斗童子は感じ始めていた

 治せばいい、とライドウが封魔管を取り出した。悪魔と同じ対処法だ。人間を同列に見ているのだ。契約で力を見せて従わせるように、恐怖で縛り付けるのだと。

 

「うぬのような者が後進にある幸運を素直に喜ぶと前に言ったな。……今は撤回させてもらおう」

 

 首を傾げるライドウを無視し、業斗童子がハクノに迫る。

 血を流し過ぎているのか、顔色がひどく悪い。さらに手足を切断されたがために、精神への傷も心配だ。

 だが、ここですぐに回復させる気も無かった。ハクノの様子を見て、まだ死ぬには早いとわかる。逃げたのは悪手だった。さらに、里を滅ぼすような発言は最悪であった。ここで、里に従順であると誓わせないと、ハクノの命が失われるだろう。

 偶然にも道端で拾った命だが、見捨てるには惜しかった。才能もそうだが、何処か娘のように思っていたのかもしれない。

 

「聞け、ハクノ。うぬが弟を大事に思っていることは知っている。だが、今は里を選べ。我が助命してやろう、次いで弟の捜索も……」

 

「……帰…んだ。……の子の……傍に……」

 

「……うわ言か? 少し不味いやもしれん、早く回復せねば」

 

――だが、本当の娘でないのも確かだ。彼女の執念を理解できていなかったのだから。

 

 部屋一面に、魔法陣が広がっていた。

 ターミナルのディスプレイには幾列かの記号並び、『悪魔合体・開始』の文字が走った。

 

「合体だと!? 下がれ、ライドウよ! ハクノは悪魔と合体を目論んで……!?」

 

 最初に緑の光が、次いで闇が世界を覆った。

 

 

 

 

 ビルの外には、再び襲名したライドウのみが立っていた。

 

 業斗童子は何処にもいなかった。

 そして、解任されたハクノというライドウだった者も、何処にもいなかった。

 

 

 

 

 

 --7

 

 無色の派閥が儀式を行っているのだけれど、近くまで来たら首魁であるオルドレイクとかいうハゲはいなかった。

 もしかしてハゲはない可能性……無いか。

 いや無いってのも無残で残酷だけど。

 その代わり、ウィゼル、ヘイゼル、ヘンゼル、グレーテルって人たちは居た。

 自己紹介してくれたから名前がわかった。

 意外と律儀だよね。

 

 ちなみにウィゼルって人は刀で斬り殺しに迫ってきた、頭おかしい。

 ヘイゼルって人はナイフで腹を裂きに迫ってきた、頭おかしい。

 ヘンゼルって幼い銀髪の少女だか少年はでかい銃の銃床で殴り殺しに迫ってきた、頭おかしい。

 グレーテルって幼い銀髪の少年だか少女はでかい刃物で切り殺しに迫ってきた、頭おかしい。

 

 全員倒したので大丈夫です。

 やめてよね、俺自身のレベルが0近くだからって魔王の痣に勝てるわけないじゃん。

 呪符で封印しておいた右腕が丸出しになってしまった。

 機械の義手と呪われた腕とかパンチ効きすぎじゃないだろうか。

 

 ヘイゼルって暗殺者の女性が、執拗に追撃してくるが、残念時間切れ。

 俺はほぼレベル0、片や30超え。

 その結果は、生体マグネタイトや殺気に釣られたパーティーピーポーの集合の合図です。

 なんかペルソナの支配に失敗してシャドウとやらに反転したヤバいのとか、飼っていた悪魔に食われたデビルシフターとか集まってるから、治安維持の為に頑張ってね。

 

 

 

 

 

 

 鼻歌交じりに転がっていたデモニカスーツから中身を抜いてパーツを回収してたら、月が浮かびそうだった空が昼になって元気なお日様まで顔を出している。

 あ、これヤバいやつだ。

 太陽神というくらいだし、天体操作くらいするよな。

 これはまずい、マジで詰む。

 

 早く行かないと、とCOMPを操作してたら、空が暗くなり、周囲が闇に包まれた。

 おそらくルーミアのダークゾーン生成による浸食だろう。

 よし、まだセーフだ。

 儀式の妨害がどのくらい保つかわからんが、まだセーフ。

 

 

 

 ゴーレムを召喚し、コックピットに乗り込む。

 壊れるかもしれないすまん、とダークゾーンが広がるアティさんやルーミアがいる儀式場へ突撃。

 隠密とかの余裕がなくなってしまったが、オルドレイクがいることがわかっているので有り難い。

 

 いつでも脱出できるようにコックピットを開けていたら、巨大な試験官っぽいのが飛び込んできた。

 ちょっと割れて、中身の液体が漏れ出ている。

 なんだろうかと隙間から覗けば中には脳や内臓がちらり。

 空からこんなものが降ってくる東京ってすげぇ、マジで怖い。

 微量のMAGを読み取ったゴーレムから、機械の触手が伸びてきて、脳とか内臓を取り込んでしまったんですが。

 

 魔力渦巻く事件の渦中って感じの空気を感じ取る。

 飛び降り、ゴーレムをCOMPに仕舞い込もうとしたら、バトルモードに変形して飛び去ってしまった。

 ええー……。

 見送ったら、空で追いかけっこしている緑と赤の光に混ざりに行ったようだ。

 ま、まあ、自由行動も俺のパーティの売りだからね。

 

 

 

 ……サマナーなのに仲魔が一体だけで敵の本陣に乗り込んでしまったんですがそれは。

 

 

 

 

 

 ダークゾーンを広げることで、周辺の異界化を進めているルーミアを発見。サマナーの特権なのか、仲間判定のためなのか、視界が思った以上に明瞭である。マジモードのルーミアが、左右に滞空させている赤い模様の入った黒い巨大な腕で、周囲の悪魔を磨り潰していた。自らに有利なフィールドにしようと、馴染ませているようだ。

 その近くでは、真っ白でケモミミっぽくなった髪の毛のアティさんが、オルドレイクの片腕を刈り取っていた。

 お揃いですね、とオルドレイクに挨拶。社会人に重要なのは挨拶である、たぶん。

 状況はあれだろう。オルドレイクは魔王召喚の気を窺っているのだろう、腕吹っ飛ばされているけど。さっき夜なのに太陽が出ていたことから、状況は整いつつある。ミトラだかミスラもこっちに来る気満々である。儀式が良い感じに遂行されたら不味そうなので、こっちで横やりを入れることにする。

 ルシべえが教えてくれた、初心者でもできる簡単☆魔王召喚、いってみよう!

 

 脈動する魔王の痣が刻まれた右腕を、地面につける。括目し、絶望しろ。

 

―― 魔王招来 ――

 

 半端な儀式、半端な場所、半端な時間。

 儀式場よりも10mほどずれた場所で、生体マグネタイトも、魔王としての情報も不足した、巨大なスライムが現れた。

 オルドレイクが、怒気を噴出していた。

 笑みを浮かべたアティさんとハイタッチ。うーん、ケモミミもかわいいね!

 

 

 

 よし、嫌がらせも済んだし帰ろうか。

 ……あ、やっべ。魔王召喚が止まらん。助けてルシべえ!

 

 ぼこぼこと、そこら中で魔王級の悪魔が顔を出してきて、巨大なスライムが片っ端から食らいつくす。

 スライムだった半端な悪魔が、魔王へと姿を変える。

 

―― アナライズ成功 魔王ミトラス[Lv.46]

 

 地上はルーミアの闇が支配している。空は魔王ミトラスによる天体制御で太陽が昇り始めた。

 

 

 

 

 

「約定の時だ、定命の者よ。その腕を奉げよ。その肉を奉げよ。その脳を奉げよ。その魂を奉げよ。……その心を奉げよ」

 

 岩から上半身を出した、色白の男性に似た姿の魔王ミトラスが、自らを召喚した少年に告げる。

 少年が何か言う前に、片腕を失った壮年の男が横から割って入った。

 

「お前を呼ぶ儀式を執り行ったのは私だぞ!」

 

 悪魔に重要なのは召喚者、それだけだ。その主張に意味は無い。

 

「そうだな、そうだとも。そうなるように、私が仕向けた。出迎え御苦労、ニンゲンにしては大儀であった、見逃してやろう。もう帰って良い」

 

 詰まらなそうに、ミトラスがほんの少しだけ視線を向けて男に告げる。それだけだ。

 殺さないのは利用したがためであり、完遂したための褒美だった。

 話は終わりだと、ミトラスは男を意識の外に追い出した。この場において、重要なのは痣を持つ生贄、その意思のみだ。

 

 ミトラスが、権能を行使した。

 この場において、ミトラスこそが絶対者だ。四文字すらも上回る、力を持っていると自身を持てるほどに。

 支配者たるミトラスが、全ての契約を解除した。サマナーは仲魔を繋ぐ鎖を失った。

 

「さあニンゲンよ、私が貴様らの神である。悪魔に殺されたくなければ、全てを奉げよ」

 

 再度、痣を持つ生贄の少年に告げた。

 受け取ってやろう、その矮小なニンゲンの虚弱な身を。

 受肉のために。世界を支配するために。

 

 再び、世界の神になるために。

 

 

 

 

 

 --8

 

「お父様に体を貰えず、醜い体で動く。貴女はまるでジャンクね。……ローザミスティカはどこ?」

 

「……絶対に許さない。絶対に、絶対に、絶対に」

 

「暴力だけを撒き散らすだけで、会話すらもできないのね。ジャンクそのものよ」

 

「……許さない。お父様も、お姉さまも、許さない。私の身体を奪った。絶対に、絶対に、絶対に、許さない」

 

「……貴女もお父様に作られた栄えあるローゼンメイデンでしょう。お父様を恨むなんて恥ずかしいと思わないのかしら」

 

「……許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない。許さない」

 

「話にならないわ。ジュン、MAGを頂戴。痛みを与える趣味はないもの」

 

「……止めてやれよ。可哀そうだ。それに姉妹なんだろ?」

 

「……私は、体のない人形をそのままにしておくことが、持ち主を探そうとしないまま過ごすことが、幸せだとは思わないわ。憐れみは何も生まないのよ?」

 

「それでも、僕は真紅が姉妹を殺すところを見たくない」

 

「妹を殺す……。妹、ね。わかったわ。でもね、ジュン。後になって後悔しても、私は知らないわ」

 

 

 

 

 

「言うだけ言って先にCOMPに戻るのかよ……」

 

「……絶対に許さない」

 

「……お前も帰りな。それで二度と来ないほうが良いぞ。真紅に殺されても僕は知らないからな」

 

「……私を見るな。身体を寄越せ。なんで私だけなんでなんで……。絶対に許さない。私にだけ下さらなかったお父様は絶対に許さない。じぶんだけ身体を持つお姉さまも許さない。身体を持っている人間なんて絶対に許さない。私を無視するすべてを許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」

 

「言っても無駄か。こいつらのお父様って何を考えているんだろうな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこは白い世界だった。飛び散った人形の破片だけが、真っ白の世界を汚している。

 

「あの日、壊せば良かったわ。妹と思わずに、ジャンクだった貴女を」

 

 白い茨が真紅の身体を弄ぶ。軋んだ体が限界に耐えかねて、悲鳴を挙げながら、血しぶきのように破片を撒き散らす。

 

「まあ、お姉さまったら怖いことを……。今では貴女がジャンクですものね。綺麗な私への嫉妬かしら。あ、私が愛されているのが不満なのでしょうか? それだったら愛されていて御免なさい、とでも言いましょうか」

 

――嗚呼、サマナーも罪な人……。こんなにも胸を焦がせてくれるんですもの……。

 くすくすと、白薔薇に片目が隠された少女然とした人形が笑みを浮かべた。傷一つない見事な造詣の人形、その顔は熱が浮いたように赤らんでいて、倒錯的に美しかった。

 

 

 

 

 




ファントムソサエティ
ルシべえの手によって解放された堕天使たちによって作られた組織。
なんか代替品の電霊を作って愛する人間を守ろうとしたら、一個の生命と力ある支配者としての主張を行われて反旗を翻された。
ICBM投下後は、この電霊のせいで全世界のネットワークが死ぬ。

ノア
ファントムソサエティが生み出した代替品。
マニトゥの欠片とバロウズの模造品によって誕生した。
世界崩壊後は、セキュリティが死んだことでマニトゥ狩りを始め、強大になっていく。

ニュクス・アバター
とある財閥が、人間の集合的無意識がどうとかこうとかから生み出した死そのものが活動する姿。

ニャルラトホテプ
死を振り撒く音楽で、人間どもがダンスを踊ると聞いて、駆けつけました!

デス
人間が恐怖する死。
またICBMのこと。東京が死んで、なんちゃらかんちゃら。

ノウマン
俺たちの世界が荒廃しているのに、なんでこの世界は綺麗なんだ死ね!って感じの破滅主義者のおっさん。部隊を率いていた。ヨークシンと呼ばれる都市で、部隊を生贄に魔王召喚に挑戦したりした。
nのフィールドから来た、異なる世界からの来訪者。
なお契約していたローゼンメイデンはルーミアに破壊された。

メタトロン
空からの贈り物。機械人形に入って活動している。
サマナーは地獄から生き返った人らしく、パルチザンの技術によってやり直しを行ったこともある。
だが無意味だ。

神霊・シシ神
ルシファーに踊らされて調子扱いた餓鬼どもを抹殺しに、シシ神ステップで襲い掛かった。
相手は死ぬ。

ハクノ 【カオスヒロイン(姉)】

ライドウだった女性。誰かの姉らしい。一体何マトグラフの姉なんだ……。
異界などで血反吐を吐いて時間を切り売りし、ライドウへと至ったが、その名をはく奪されて離反した。
ゴウトと合体したので、はくのにゃんとして再登場なるか。

ウィゼル、ヘイゼル、ヘンゼル、グレーテル
なんか雇われた人たち。
電話帳で「殺し屋、殺し屋」と探しても見つからないくらい凄腕。

レオ
ヨークシンの儀式でノウマンを止めるために相棒であるジェフティが自爆。相棒を失い、復讐に身を委ねる。戦う度に身体を失い、最期には造魔の身体になったがぶっ壊れて冥府に送られた。
が、冥府行きは人間の魂のみで、造魔に宿った意志は復讐を止めなかった。偶然受け止めた造魔と融合し、自我が残されたわずかな時間でリベンジへと赴いた。

魔王ミトラス
なんでキリスト教が支配してるんよ!
もういい、ここら辺だけでも私の支配下にするんだから!
強制的に契約解除したから、仲魔に殺されたくなければさっさと身体を奉げてね(チラチラ
みたいな。

きらきー
最近、サマナーを見てるだけでジャンボパフェを三杯くらい食べられる気がしてきた。



ちなみに集合的無意識が空っぽの理由は過去にマニトゥが抽出されたり、オルドレイクが行った儀式でアティさんを介して色々と飛び出て行ったため。ついでにニャル様も飛び出た。
で、次にデスが出てきたため。
個々人の意志のみで、流れを決める大いなる意志が無かったら、そりゃあもう当然の如く空っぽです事よ。

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