実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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いまいちですね。
そんで書くの飽きました。


原作:ポケットモンスターオメガルビーアルファサファイア ポケモンORAS1

 

 --1

 

 いえーい!

 日本にいる両親と兄、姉、従兄弟、数少ない友人たち見てるー?

 俺は今、試される大地にいます!

 

 何故って?

 はぁ……。

 無いわ。

 ナンセンス。

 じゃあ逆に聞くけど、なんで日本に住んでるかって説明できんの?

 9割9分以上が生まれたから住んでるって答えるっしょ。

 つまりそういうことだよ。

 起きたらそうなってた。

 

 憑依とか転生とか難しいことは無しね。

 そもそも俺が意識した時は赤ん坊のときだったし、現代だと自我の芽生えは1歳から2歳の間、物心はそれ以降、なんて話があるから 乗っ取りとか言われても、意識ないとこに入りこんだって話にもなるわけじゃん。

 動植物に憑依したら乗っ取りになるのって話だし。

 まあ、俺が自由にしているから俺はオレなわけ(哲学的)

 

 

 

 

 

 そういうわけで試される大地で子供やってます!

 やったね!

 ちなみに北海道ではないです!

 北海道っぽい場所です!

 試される大地ではあります!

 むしろ熊しか出ない北海道よりも危険地帯!

 その名もシンオウ地方!

 なんと、ポケモンが蔓延っています!

 というかポケモンが作ったと神話で語り継がれる大地です!

 

 ポケモンやべー!

 あいつらマジやべーの!

 体積以上の水とか吹き出しちゃう!

 平然と体内から炎を吐きだしちゃう!

 葉っぱを超速で成長させて攻撃しちゃう!

 雷を落とす!

 吹雪を生み出す!

 雨乞いで雨が降る!

 超能力とかバンバン使う!

 岩が雪崩れる!

 自己再生する!

 催眠術かけてくる!

 怪しい光で混乱させてくる!

 人間よりも強い!

 サラマンダーよりも速い!

 一部かわいい!

 

 

 

 

 

 ゲームで知っていても体験すると混乱する、なんだこの世界……。

 

 

 

 

 

 --2

 

 生まれて初めて目を開いた時の話だ。

 ぼやけて何も見えなかった。

 いや、胎内のときはちょっとだけ見えていたけど。

 あ、俺を生んだ偉大なる母は見えた。

 そして、当然のようにハピナスに抱かれた。

 生まれた直後に母親の顔を見て愛を知り、間近でハピナスフェイスを見せつけられて恐怖を叩きこまれるという、人生は飴と鞭で構成されているとでも教えてくれているかのようだった。

 ハピナスは装飾過多なピンクの卵みたいなやつ、あれが医療関係の補助についているらしいのだ。

 その後はさとり様みたいに腕短すぎて俺を抱えられるのかという恐怖との戦いだったが、意外とポケモンの腕は可動域が広いようで、特に問題は無かった。

 

 俺が眠っている病院はハピナスだけじゃなくてなんかいっぱい居た。

 知ってるポケモンもまあまあいた。

 ポニータとか。

 俺はそこで悟ったね、なんかポケモン的な世界だなって。

 エメラルドまでやり込んだのでポケモンの知識は問題ないだろうと思い込んでいたのだが、見たことないポケモンがいっぱいいて困った。

 

 そういえば最近のポケモンは副題にアルファベットが付いていたはずだと思い至った。

 XとかYとかZとかそんな感じで。

 座標軸的なストーリーかもしれない。

 もしかしたらミュウツーの逆襲にあった「自分とは何か」みたいなテーマが同じように決まっていて、自分のいる場所を確定するための座標を探す旅が始まるとか考えた。

 もしくは遊戯王とコラボしてXYZ―ドラゴンキャノンバージョンになっている可能性が高いと導き出して、俺の知らないポケモンは遊戯王カードのモンスターの可能性もあると考察したり。

 

 赤子ってのは暇だったからね。

 自由な発想しても許されるわけだよ。

 むしろ睡眠か空想しかやることがなくてビビった。

 考えすぎると疲れて何時の間にか寝てるし。

 活動範囲が狭すぎて父のガルーラのお腹の袋で、ガルーラの子供らしい存在と一緒に揺られたりもする。

 

 

 

 まあ、自分の座標を決める旅に出る可能性が高かろうと、まずは自力でトイレに行けるようになりたい。

 大便がねとねとで不快なんやで。

 我慢とか出来ないっぽい。

 もうあれ、反射的に出せるときに出すスタイル。

 ゲップするのが下手で緑色のうんこ拭かせてすまんな父よ。

 

 

 

 

 

 --3

 

 5歳くらいまでは外で行動するのが不可能なわけで。

 それまでは、生まれた俺を抱っこしたハピナスに抱えられて生活していた。

 このハピナスだが、父のポケモンだとわかった。

 ハピナスって貧弱なんだが俺を抱っこしても大丈夫だろうかと怯えたりもした。

 よく考えたら”はかいこうせん”を撃っても体勢が崩れるだけで、自分がダメージを受けないのだから人間よりも遥かにパワフルなのだろう。

 でかいタマゴを腹に入れているし。

 そう考えると安心して身を委ねられるようになった。

 

 で、立ち上がって歩き回れるようになったので外を探検するのだが、すぐに帰宅するスタイルを取っている。

 子供だから大した距離が移動できないのは当然である。

 しかも俺が住んでいるキッサキだが、北海道で言う稚内である。

 冬とか超寒い。

 死んじゃう。

 

 というかこの地方、炎ポケモンが少なすぎて暖も取れない。

 普通はポケモンで温まるのが定番じゃないんですかねぇ。

 ハピナスのもちもち肌しか味わってねぇ!

 

 キッサキジムはこおりタイプメインなので、ジムは冷凍庫状態だ。

 スケートも楽しめる。

 父がジムリーダーをしている関係で遊びに行けるのだが、寒すぎて死ぬ。

 このジムの恐ろしいところはあまりに温度が低すぎてトレーナーの体力と判断力を削られることと、こおりタイプのジムなのに俺の父であるジムリーダーがノーマルポケモンをガンガン使っていくことか。

 糞ゲーもいいところである。

 まあ、父としてはノーマルタイプ専門のジムにしたいようだが、街の要望で氷タイプジムを装っている。

 なので無理してユキノオーとかオニゴーリとかも使ってる。

 けど俺には関係ないね!

 

 

 

 

 

 --4

 

 両親に10歳の誕生日プレゼントは何がいいかと聞かれたのでポニータと即答した。

 普段は無口キャラを演じている俺が、すぐさまリアクションを取ったので両親は驚愕していた。

 ちなみに俺は病気持ちである。

 サトラレ?とかいうやつで、考えていることが伝わるとか伝わらないとか。

 この世界にはそういった超能力染みた能力を持っている人間が時々生まれるらしい。

 エスパーとかイタコとかいるじゃん? ああいうカテゴリーっぽい。

 昔話だか神話だかで人間とポケモンが結婚することもあった、みたいな話もあるのだから、そういう力を持った人は昔からいたのだろう。

 不思議世界で困るね!

 俺のストレスが100%に達すると、世界中のみんなに心の声を届けることができる可能性がある……?

 

 まあそんな感じだ。

 サトラレの効果を詳しく調べることもできたのだが、両親や医者が心に傷を作ったりするかもしれないからそこら辺は慎重に進めていくとか。

 そんな感じなので無口でも気持ちが以心伝心ですよ!

 

 まあ、そんなどうでもいいことよりもポニータである。

 ロコンが良かったけど、試される大地であるシンオウ地方だと滅多にいないらしい。

 リザードンとかバクフーン、ウィンディも同様。

 なのでポニータで妥協した。

 炎のたてがみとか暖かそうだし。

 

 キッサキにはポニータがいないので、家族旅行も兼ねて試される大地を南下することになった。

 流石は試される大地、めっちゃ広い。

 北海道と遜色ないんじゃないだろうか。

 ゲームの世界だろうと侮った認識を改めることになった。

 一人旅したら間違いなく死んでた。

 

 そんな広大な大地を主に車で移動するのだが、何時間も座りっぱなしだった。

 しかも風景は雪がある森か雪がない森かの違いだけ。

 ちょっとした変化としてシンオウの大地を縦に割るように聳え立つ山々が顔を見せている。

 ……し、自然の美しさに心が洗われる(目逸らし)

 

 

 

 ポニータの生息域まで来たが、捕まえられなかった。

 テンガン山の麓の211番道路、ハクタイシティからクロガネシティまでの206、207番道路を粘ったがいなかった。

 ポニータで妥協するという上から目線が悪かったのか、どこにもいない。

 父の話だと草を食んでいる姿を見られるはずなのに、どこにもいない。

 探さなくても最低1匹は見かけるはずなのに、どこにもいない。

 

 ビッパは沢山いた。

 可愛くないからノーサンキュー。

 目当てのポケモンが見つからないのはよくあることだと父に慰められた。

 優しくされると泣きそうになるからやめるんだ!

 

 宿を予約しているクロガネシティで話を聞くと、どうやら今年の冬は寒波がどうたらこうたらでめっちゃ寒くなるらしい。

 で、暖を確保するためにポニータが流行った的な。

 神は死んだ……。

 

 人生初の手持ちポケモンが手に入るとワクワクしていた子供心に賺しはツラい。

 死んだ目とかしてしまう。

 話を聞かせてくれた気の良い兄ちゃんであるヒョウタ君が困っていたが、誰も俺の心を慰めることは出来ないんだぜ。

 ヒョウタ君が岩ポケモンをくれるというが遠慮した。

 岩って可愛くないじゃん……。

 

 

 

 岩を宣伝できなかったことに(´・ω・`)としていたヒョウタ君が代わりに探検セットとやらをくれた。

 ヒョウタ君の祖父が作ったらしい。

 とりあえず遊べば気が紛れるだろって感じである。

 シンオウ地方は空気の循環を地下通路で行っていて、通気口が入口になっていて探検できるという話だ。

 あまり今は流行っていないが、そのうち人気出るんじゃねって空気だった。

 なるほどなー。

 

 まあ、子供騙しでしょとクールに地下へ。

 思った以上に広いし、作りもしっかりしている。

 土壁の部分は付属している化石堀りセットで色々な石や化石を集めることができる。

 通路を作ったときに作業員が休憩所にしていたような、ちょっとした空間があってそこに秘密基地も作れるという。

 子供騙しとか馬鹿にしてゴメン、ヒョウタ君。

 これかなり面白い。

 

 地味に化石堀りが面白すぎてヤバい。

 慎重に削って綺麗に掘り出した化石を掃除するのだが、セットが充実しすぎて捗るのだ。

 タガネ、刷毛、筆、ブラシに紙やすり。

 しかも地下通路なので集中が途切れることも無い。

 気づいたら日が暮れていたレベル。

 これヤバい。

 廃人になるかもしれない。

 ヒョウタ君とか凄い良い笑顔で楽しさを語っていたが、いつか地下通路の住人にならないか心配だ。

 

 

 

 気が晴れたのでヒョウタ君にお礼を告げた。

 でも岩ポケモンは要らないです。

 

 

 

 

 

 化石もいいけど可愛いポケモンが欲しいんだよオラァ!とアピール。

 ヒョウタ君の父親であるトウガンのおっさんが鋼ポケモンを見せてきた。

 やっぱり可愛くないんだよなぁ。

 コドラとかドーミラーとか可愛いだろ!とか言われたけど、全然同意できない。

 進化したらコドラはかっこよくなるけど、ドーミラーはちょっと……。

 

 あ、思い出した。

 クチートなら可愛いじゃん、欲しいから何処にいるか聞いてみる。

 ホウエン限定でシンオウにはいないらしい。

 トウガンのおっさんもホウエンに伝手は無いとか、通信技術がもっと発達すれば遠隔地とも交換できるとか。

 神は死んだ……。

 

 

 

 

 

 --5

 

 ヒョウタ君がトウガンのおっさんとタタラ製鉄所に行く予定らしい。

 ジムリーダーをしている父とトウガンのおっさんは交流があり、一緒に行かないかという話だ。

 ここにいてもポニータを捕まえられないし、化石を掘るくらいしかやることもないので俺も付いていくことにした。

 タタラ製鉄所はハクタイシティの西南に位置しており、205番道路とハクタイの森を抜けた先にある。

 つまり、結構距離があるのだ。

 205番道路は車で移動できるが、森はポケモンが多く生息しているから開発が進んでいないので歩く必要があるとか。

 森は虫が多そうで嫌です(都会っ子感)

 

 

 

 205番道路をガーッと走り抜け、車を止めて森に入っていく。

 数分でうさぎっぽいポケモンをゲットした!

 その名もミミロル、ハクタイの森に生息するうさぎポケモンだ!

 体長は40cmくらいになるらしい、結構でかくなるっぽい。

 やっぱり森は最高だ!ポニータなんて要らなかったんや!と手の平を返す。

 ピンクでもふもふしてて可愛い。

 やっぱポケモンは見た目でしょ。

 

 まあ、森をガンガン突き進むと虫ポケモンが多くてなんとも言えない気分になるけど。

 ポケモンはでかすぎてなぁ。

 ケムッソとか30cmを超えてるうえに、重量も3kg超えなんだ。

 キモい。

 ツチニンなんて50cmを超える。

 やっぱり虫は愛せないんだよなぁ。

 

 そういえば俺ら10歳だけどジムバッジを全部集めるための旅とか出ないといけないのかなぁ、とヒョウタ君に聞いみた。

 それはちょっと修羅過ぎぃ(意訳)という返事だった。

 流石に10歳では無理だし、そもそも試される大地だと行方不明になるんじゃないだろうかみたいな話だった。

 だよねー。

 ポケモンリーグとか目指すならジムリーダーの元でジムメイトとして実戦を積むとか、トレーナーズスクールで知識を養うのが重要だとか。

 で、そこで成績が良かったら更に上を目指していく感じっぽい。

 なるほどなー。

 ヒョウタ君はトウガンのおっさんの元でジムメイトをしながらジムリーダーを目指すようだ。

 俺も父の教えを受ける流れか……と思ったがキッサキにはトレーナーズスクールがある。

 どっちも行ってみて合ってる方に通うのがいいだろうか。

 今はそもそもポケモンリーグを目指す予定もないけど。

 父とトウガンのおっさんはリーグを目指すなら戦うのが楽しみだと笑っていた。

 なんだかなぁ。

 

 

 

 ゲームみたいにチャンピオンになったら将来の問題とか何も無さそうだが、果たしてどうなるのだろうか。

 話は変わるが、この世界のポケモンのレベル限界はトレーナーによって決まるらしい。

 時間をかけてレベル100まで上げれば余裕でチャンピオンかと甘く見ていたが、ゲームと比べてポケモンのレベルが上がるのにはかなりの時間がかかる。

 さらにトレーナーの才能によって上限が決まるので、下手したら最大レベルが10にも満たない場合があるとかないとか。

 ジムリーダーになれる人は才能豊かで70付近まで上げられるし、リーグに挑むなら最低でもそのラインまで届かせる必要があるようだ。

 年齢が上がれば徐々に上限も上がっていくが、やはり才能は頭打ちが来るらしい。

 歳を召していてレベルが50以下のポケモンを繰り出すと言うのは、限界が来ているからという悲しい現実。

 ボーマンダに進化できる直前までが上限のトレーナーに捕まえられたタツベイとかコモルーの気持ちを考えると涙を禁じ得ない。

 

 俺もジムリーダーの息子だし、多分70くらいまでは育てられる気がする。

 もしかしたら80くらいまで届くのかもしれない。

 80まで練度を上げられたらリーグとかで雇ってくれないかなぁ。

 トレーナーズスクールなら講師になれるかもしれん。

 

 

 

 

 

 製鉄所はもののけ姫の舞台の一つをイメージして期待していたのだが、機械化が進んでいてつまらなかった。

 ヒョウタ君のテンションがとても上がっていたので逆に冷めたのもあるかも。

 見学を終え、トウガンのおっさんとヒョウタ君と別れることになった。

 トウガンのおっさんがジムリーダーをしているミオシティに行って勉強するらしい。

 

 あ、友情の証として岩タイプのポケモンや鋼のポケモンを渡そうとしなくて大丈夫です。

 代わりに化石を渡す、使う予定ないし。

 ヒョウタ君が何度も渡そうとしてくるので、そのポケモンを使ってジムリーダーになってくれよ的なことを伝えると感動された。

 

 なんやかんやあって頑張ってねと見送った。

 

 

 

 

 

 

 --6

 

 大天使ミミロップで挑戦者を屠る。

 トレーナーズスクールで勉強していたのだが、ミミロルがミミロップに進化してからは父のジムで経験を積むためにジムメイトもするようになった。

 普段は家族にミミちゃんと呼ばれている色違いのピンクで可愛いうさぎだが、バトルとなると相手の戦意が途絶えていようとも気絶するまで追い詰めるバーサーカーだ。

 うちのピンクバニーちゃん(♀)は凶暴です。

 

 ちなみにポケモンバトルはアニメとかポケスペを混ぜてスマブラにしたような感じ。

 足が速いほど攻撃を当てる回数が増え、回避もできる。

 技数は4つだけじゃなく、覚えた分だけ所持しているがそれを上手く使い分けて指示できるトレーナーは少ない。

 強い技や安定した技は連射したくなるというのが人情だ。

 カウンターやミラーコートは効果時間は数秒だが、ダメージを受ける前に発動すれば完全反射するなどぶっ壊れている技も多い。

 トレーナーの腕で最も重要なのは練度の高い技を、最大効果で発揮させることが出来るかってことである。

 

 俺自身トレーナーとしての力量はかなり上がってきていると自負しているが、やはりミミロップだけだと限界を感じることもある。

 というかミミロップが下位相手には強すぎてバッジ7個目または8個目の挑戦者の選定でしかバトルさせてもらえない。

 雑魚戦の女王として君臨。

 

 ただ、7個目や8個目のバッジ選定戦ともなると、挑戦者の数は極端に少なくなるが選出できるポケモンが増えるので、ミミロップ1匹のみだと勝てない戦いも起きる。

 しかも試合の一つ一つが当然ながら激戦である。

 ジムリーダー戦に合わせて交代制となったのだが、辛酸を舐めてばかりの展開になる。

 2匹くらいまでなら倒せるが、それ以降は相性が良くないと無理だ。

 

 ブースターとか可愛いし導入したいがイーブイがいないんだよなぁ。

 スクールで面倒を見ているスズナが「気合い!」と言いながら両手で握りこぶしを作って胸の前でグッと構えたが、気合いだけだと常勝できないし。

 俺は敗北しない安定した勝者になりたいのであって、綱渡りで勝利するようなスタイルは遠慮したいわけだ。

 地力が強いポケモンを使うと言う話もあるが、可愛いポケモン以外は使いたくない。

 強ければいいと考えているトレーナーもいるが、可愛くないリアルなポケモンと絆を深める根性は俺には無いのだ。

 

 あとポケモン単体の能力差が酷過ぎ。

 ゲームと違って数値化されたステータスなんて無いし、バランス調整も狂っているので、大きいやつほど硬くてタフで強かったりする。

 ドラゴンとかマジやべぇ。

 氷のジムで動きが鈍くなっていなかったらなぶり殺しにされるレベル。

 飛べるポケモンはそれだけで強い。

 

 速い、でかい、飛べる、この三つが強いポケモン足らしめる要素ではないだろうか。

 

 

 

 ミミロップ?

 可愛いからセーフ。

 種族としての能力は低いが、可愛さで補ってるからセーフ。

 足りない部分は俺というトレーナーの指示で補うから問題ないね。

 え? 結構挑戦者に負けてる?

 知らんがな。

 むしろ勝ち越してるからセーフ。

 

 

 

 

 

 --7

 

 最近、シロナさんというトレーナーが挑戦に来たのだが、なんか色々と凄かった。

 博士にもらったポケモン図鑑を埋めながらジムバッジを集めているという人で主人公っぽい少女だ。

 で、そのシロナさんと戦ったのだが、トゲキッスに負けた。

 ”しんそく”によって超速で移動と回避を行い、そのままミミロップを轢き逃げするという恐ろしい戦い方だった。

 ”ねこだまし”と”みがわり”でなんとか二度やり過ごせたのだが、結局三度目で捕まってそのままエアリアル無限コンボによるハメ殺しだった。

 勝ち抜きルールは交代不可なので空中コンボから逃れられないという縛りを上手く使った戦い方ではあると感心した。

 ちなみに空中まで轢かれながら天井付近まで飛ばされたミミロップだが、傷つきながらも室内を零下に下げるために設置されている冷凍装置にトゲキッスをぶち込んで倒れるという、闘志を絶やさないバーサーカーっぷりを発揮してくれた。

 まあ、落下ダメージで気絶したミミロップの負けだったけど。

 交代制でも、ミミロップしか持っていない俺には交代なんて意味無かったわけで。

 

 でも12歳の餓鬼である俺に、16歳のシロナさんはもう少し手加減してくれてもいいと思った。

 マジで精神も12歳だったらポケモン止めるレベル。

 あんなのトラウマになる。

 半冷凍のトゲキッスと傷ついたミミロップが天井から降ってくるとかマジやべぇ。

 

 

 

 その後は俺をボコしたその実力により父がジムリーダー戦を認めたので6つ目のバッジを賭けたバトルも行われた。

 ルールは交代制の6vs6。

 最後まで見学したがかなり面白かった。

 交代制はポケモンを入れ替えることで不利な状況を抜け出せる反面、出してからの指示に手間取るとその隙を狙われて沈むことも多い。

 やはりバッジ6つ目ともなると挑戦者側も交代によるミスは全くなく、むしろ回避技術の一つという感じだった。

 戦闘も”はどうだん”で宙に緊急回避するルカリオとか、ケッキングが地面を殴って移動中の相手の体勢を崩すとか、ガルーラに浮かされたガブリアスが”はかいこうせん”の反動で距離を取ったりと色々と勉強になった。

 氷タイプのジムなので室内が凍りついているからといって、父のミロカロスが”ぜったいれいど”で更に氷漬けにして場を支配しようとしていた。

 あまりに寒くてミミロップを手放せなくなった、もふもふであったかいんだわ。

 最終的にジムリーダーの本気としてはあまりに練度が足りないユキノオー、オニゴーリ、マニューラが地力の差で負け、バッジはシロナさんの手に渡った。

 シロナさんとしては氷ジムなのに氷ポケモンが弱かったことに肩すかしだったようだが、俺は楽しかったので良し。

 父はノーマル専門だからなぁ。

 8つ目のバトルだったとしても氷ポケモンの強さはあまり変わらないと言う残念なジムなので、8つ目に回されることも多い。

 

 

 

 さっきまでの戦闘の興奮冷めやらぬ、といった具合で感動を共有しようと連絡したヒョウタ君もトウガンのおっさんの元を離れ、クロガネジムで頑張っているようだ。

 炭鉱でグループリーダーになった的な話をされた。

 なぜに炭鉱……。

 

 

 

 

 

 トレーナーズスクールに行くと俺が挑戦者に負けたという話が早くも広がっていた。

 バトルを挑まれるが、いつもと変わらない戦績である。

 俺が弱くなったわけでも、挑んできたクラスメートが強くなったわけでもないのだ。

 勘違いは良くない。

 

 スクールの先生が、敗北したらイップスになるトレーナーもいるからと心配してくれたが、負けたことないというわけでもないから問題ない。

 そもそも初めて父と対戦したとき、ミミロル出したらケッキングを出された位だからそういう物だと割り切った。

 今は負けても仕方のない準備期間なのだ。

 精々今の内に笑っているがいい。

 俺を負かした連中の連絡先は控えているので、お礼参りに行く予定である。

 勝負の世界は血統が物を言うのだ、彼奴等が成長限界に達した時に遥か高みから嘲笑いながらボコしたいと思う。

 

 

 

 俺が指導しているスズナが、何故か俺の敗北に凹んでいた。

 スズナは氷ポケモンが好きなので勉強するためにトレーナーズスクールに通い始めたのだが、面倒を見ることになった俺が最強だと疑っていなかったらしい。

 早熟すぎてスクールでも相手できる人がほとんどいないため、基本的に俺とばかり戦っているので視界が狭まってる感。

 まあまだ7歳だからな。

 そもそも俺に3タテされるのは進化前の氷ポケモンを繰り出して、ミミロップの”とびげり”の餌食になってるだけだから(小声)

 

 スクールからイーブイを貰った。

 優秀な学生になんちゃらかんちゃら。

 スズナも貰っていたが、イーブイはオスだった。

 

 俺は最優秀なのでメスの優秀な個体だとか。

 イーブイのメスは少なくて極めて希少とか。

 優秀過ぎですまんな、手加減が苦手なんだ。

 

 

 

 

 

 --8

 

 父がジムリーダーを辞めた。

 というか辞めさせられた。

 やっぱ氷ジムは氷ポケモンをメインにしてないとダメっしょ的な話で解任されてフィニッシュだ。

 ですよねー。

 シロナさんに負けたのも要因かもしれない。

 父が謝りながら次の勤務地はジョウトだと教えてくれた。

 

 ジョウト!

 それは素晴らしい!

 色々な舞台を巡れたほうが楽しいってものだ。

 

 

 

 スズナと毎日めっちゃ寒い場所でイーブイを鍛えていたのだが、これからは付き合えそうにない。

 イーブイの適応力は凄いから、寒い所にぶち込んだら氷タイプになるんじゃないかという子供心いっぱいの発想から行っていたことだ。

 たき火にぶち込んでもブースターにならないから無意味じゃん、などと言ってはいけない。

 スズナの純真な気持ちがイーブイを進化させるかもしれないし。

 

 俺は付き添いだった。

 ミミロップとイーブイたち、スズナを存分にもふもふしてただけ。

 結果は、イーブイが氷的なサムシングに目覚める前に、ミミロップが冷凍パンチを憶えたくらいだ。

 ノーマルタイプなのに冷凍パンチ。

 ポケモンはホントに謎多き生物だ。

 

 俺のサトラレ?

 超すごい天才的な能力なのでセーフ。

 そもそも表面的な感情が伝わるだけというショボい効果だし、あってもなくても意味ない。意味なくない?

 

 

 

 

 引っ越し準備とか、挨拶周りとかで忙しかった。

 スクールでスズナがガチ泣きしたり、ヒョウタ君に綺麗な石を貰ったり、シロナさんに引っ越す旨を添えたメールを送ったり、色々やった。

 ……やだ、私の知り合い少なすぎ?

 ガチ泣きしたスズナは、俺のセーターを生贄に捧げることで静まった。

 ヒョウタ君は探検セットで見つけた化石を送ったらとても喜んでくれた。

 シロナさんは頑張ってるっぽいが、なんかよくわからん。

 

 

 

 

 

 --9

 

 ジョウトのコガネで暮らすことになった。

 イーブイはピンクが愛らしいニンフィアに進化した。

 フェアリータイプってなんやねん……。

 あとミミロップもこの地方だと物珍しいらしく、すんごい珍しいポケモンを二匹も持ってるぼっちゃんやなぁって評判を抱かれたようだ。

 

 あとは街の開発が進んでてリニアモーターカーがどうとかこうとかでなんちゃらかんちゃら。

 かがくのちからってすげー。

 

 あと2年前にロケット団が少年によって滅んだとか。

 レッドのちからってすげー。

 

 で、カントー地方のグレン島が噴火したとか。

 しぜんのちからってすげー。

 

 

 

 重要なことだが、シロナさんがチャンピオンになったらしい。

 若いのに凄いことだ。

 若いのに。

 ポケモンと一緒に旅に出て、街を周り、チャンピオンに至ることができたのも若さが重要なのだろう。

 若さって偉大だよな。

 シロナさんじゅうはちさい、若さを謳歌する。

 そんな栄光を手にした彼女の近くに男の影は無いらしい。

 彼女の近くに立とうとすれば、比べられるし、張りたい見栄も張れなくなる。

 強すぎるのも罪だなぁ。

 

 シロナさんにお祝いのメールを送ったら、ポケモンを貰ってしまった。

 嬉しいのだけど、いいのだろうかと疑問を抱くレベル。

 送り返すのも明らかに失礼だし、無難に返事を書いておこう。

 大げさなくらいが喜ばれるだろうし「このポケモンでシロナさんのように強いチャンピオンを目指しますね」って感じにしよう。

 もちろん見栄である、男の心はビン底のように狭く深いのだ。

 

 貰ったポケモンはアグノムだった。

 青くて小さくて、その瞳から強い意志を感じさせるポケモンだ。

 秘めているパワーも物凄い。

 強いぞーかわいいぞーって感じだ。

 いやマジで貰っていいのかホントに疑問なんだけど。

 むしろもっと凄い物語を紆余曲折として手に入るポケモンなんじゃないかと思ったり。

 可愛いので有り難く愛でるけど。

 

 

 

 コガネ弁のモジャ毛が、珍しいポケモンやなぁってまた話しかけてきた。

 スクールで貰ったイーブイも、このモジャのとこのイーブイのタマゴらしい。

 まじかー。

 転送装置のテストついでだったとか。

 カントーとジョウト間なら手軽にいけるが、試される大地シンオウ地方は難しかったようだ。

 普及するまでに、かなりの時間を要するだろうとのこと。

 ふーんって感じだ。

 

 淡泊な反応かもしれないが、仕方のないことだ。

 だってこの人を見てるとザ・フライを思い出すから生理的に嫌。

 生前のトラウマなんだ。

 あまり真面目に対応したくない。

 

 

 

 

 

 --10

 

 ラプラスはレアポケモンだった……!?

 

 ロケット団残党と思われる戦闘員と交戦して知った、ちょっとした豆知識だ。

 この繋がりの洞窟は海に繋がっているらしく、野生のラプラスが休息に訪れることでひっそりと知られている。

 そこにロケット団残党が目を付け、捕獲し、売りさばこうとしていたようだ。

 ラプラスは過去に乱獲されて個体数が激減しているので、希少価値が高いらしい。

 なるほどなー。

 

 ロケット団残党とマサキから得た情報だ。

 マサキはポケモンバトルが糞雑魚なので、戦闘は俺に任せた的な感じである。

 任せられても困る。

 犯罪組織との矢面に、そんな気軽に立たせないでください(懇願)

 

 最も悩ましいのは、ロケット団残党が大して強くないことである。

 手に負えないくらい強かったら、自分に言い訳して逃げたのだが、頑張れば凌げそうなのが口惜しい。

 数だけ多くて鬱陶しい。

 

 

 

 俺の手持ちに疲弊が感じられた頃、ロケット団残党の幹部っぽいのが姿を現した。

 重役出勤かよ。

 元気なときに来てくれたらボコして終わりだったのに。

 雑魚も頑張らないで撤退しただろうし。

 

 アグノムもバリアーからの衝撃波を連打するくらい頑張ってくれたが、どうしてなかなか限界かもしれん。

 加護対象のラプラスも冷凍ビームで支援してくれていたんだが、エネルギーが切れた的な感じだ。

 つーかラプラスを一匹捕獲するためだけにどんだけいるんだよ、こいつら。

 ニートか。

 ニートなのか。

 そもそも15歳の子供(俺)に苦戦する悪の組織って一体……いや、そもそもレッドさんに滅ぼされたんだから、底は見えているような気がしないでもない。

 よく考えたらレッドさんは別格だったな。

 うーん……。

 よし、とラプラスにモンスターボールを投げて捕まえる。

 

 俺は守る、あなたたちは捕まえる、互いに目的が達成できなかったから手を引こうと提案。

 ガチギレされた。

 だよねー。

 俺だって怒る、誰だってそうする。

 

 

 

 目の前で捕まえられたら腹立つから、先にラプラスを捕まえただけだし。

 ポケモンをボールごと奪われることもあるので、怒らせた分マイナスかもしれない。

 それに俺の手持ちはこの地方だと珍しいものばかりだ。

 困ったな。

 ポケモンに関してはマサキに転送すれば解決するんだが。

 人間である俺が残るんだよなぁ。

 ゲームみたいに穴ぬけのヒモで出口まで一っ跳びだと有り難いのだが、残念ながら現実は甘くないのだ。

 穴ぬけのヒモを持っていない的な意味で。

 今度からアイテムは必要十分以上に持っておこう。

 一般人を逃がすために渡しても大丈夫なくらいってどのくらいだろうか。

 

 誰か助けに来てくれないかなぁ、と自らの幸運にかける。

 この世界に来たくらい運が良いので、正義のヒーローが駆けつけてくれるだろう。

 これこそが運命力(どやぁ)

 あと電話の先にいるマサキはさっさと何らかの助けをここに送るべき。

 このままだとリンチされて俺が死んでしまいます。

 ポケモンは転送するので大丈夫だけど。

 

 

 

 限界の向こう側へと旅立ったポケモンをボールへと回収。

 まだ戦えるミミロップで牽制し、転送準備を進めていると、轟音とともにロケット団残党を巻き込んで壁が吹っ飛んだ。

 幹部っぽい偉そうなやつも、一般の雑魚も、ついでに吹っ飛んだ。

 芸術点を付けるなら8.5点だ。

 ロケット団は着地が下手だからね。

 その後に洞窟が崩れるんじゃないかと内心で心配しながら、音のした方へ目を向ける。

 

 プロテクターを付けたミュウツーが参戦した。

 

 

 

 うわぁ……^q^

 

 

 

 

 

 --11

 

 生前に、ミュウツーの逆襲という映画を見た記憶がある。

 人工的に生み出されたポケモンが、自己の在り方を探る的な感じだった気がしないでもない。

 初代ポケモンで最も強いパーティはミュウツーを六匹集める的な記憶も或る。

 

 まあ、そんなわけで我々の前に現れたミュウツーなのだが、強すぎて制御装置であるプロテクターでガチガチに固められている。

 それでも強い、シゲルのサイドンとか触れないで勝てる。

 強すぎてプロテクターぶっ壊すくらい強い。

 プロテクターなんて飾りですよ。

 そんなポケモンがすぐ近くに出現した俺とロケット団残党の気持ちは、きっと誰にも理解されないだろう。

 言葉にできないほど怖いのだ。

 

 まあ、俺や残党(雑魚)と違って、幹部連中はテンション上がってるんだけど。

 映画だと、ミュウツーは途中までロケット団が保有していた。

 ああ、まさかのダメ押し……。

 これは詰んだぁ……。

 

 絶望に膝から崩れ落ちそうになったが、ミュウツーは俺を攻撃する気はないようだった。

 瞬く間にロケット団残党のポケモンを一掃した。

 残っているのは俺のミミロップ、ロケット団残党幹部たちのポケモンが10匹に届かない程度、そして歩く哲学・考える葦・生きるって素晴らしいミュウツー。

 なんだこの戦況……。

 

 

 

 動くタイミングを計っていたら、ミュウツーが崩した穴から青年が現れた。

 白いニット帽に黒いマフラー、鉛色のダッフルコートに身を包んでいた。

 ニット帽を深く被っているため目元が隠れているし、黒いマフラーで口元を隠しているし、さらにダッフルコートで完全防備。

 たぶん寒がりなのだろう。

 彼の足元には青いキュウコンがすり寄っている。

 

 幹部連中が色めき立つ。

 幹部の一人が、勝利確定ザマァ!みたいな煽りフェイスを俺に向けてきた。

 うぜぇ。

 おまえ攻撃されてたじゃんか。

 青年がミュウツーに一言告げると幹部のポケモンを不可視の一撃で薙ぎ払っていた。

 

 「何故攻撃したのですかハイロさん! 今こそがロケット団復活の時です! 世界を我々の手にするチャンスですよ!」と叫ぶ幹部。

 幹部に『さん』付けされているのだから、多分超幹部とかなのだろう。

 で、なんか仲違いしているようだ。

 ハイロと呼ばれた超幹部の青年が、銀のように澄んだ涼しい声で「サークル活動は終わりだからみんな自立しなさい」と告げた。

 この温度差である。

 知り合いでも争うのだから、人は一生解りあえないんだなって思いました(悟り)

 

 

 

 

 




主人公
周りに自分の感情が伝わってしまうサトラレの能力者。ポケモンと生活を続けることでサトリの素養をいつか開花させるだろう。
手持ち:ミミロップ(色)、ニンフィア、アグノム、ラプラス

センリ
主人公の父。捕まえたばかりのミミロル相手にケッキングを出す程度にはスパルタ。

ヒョウタ君
主人公の友だち。炭鉱で頑張っている。

シロナ
主人公の友だち。なんか事件とかなんやかんやあるので、信頼できそうなトレーナーにアグノムを贈った。
決して知り合いが少ないわけではないし、ボッチ系でもない。だってチャンピオンだもの。

ハイロ
ミュウツー(装甲)とキュウコン(色)を引き連れて参戦してきた空気読まない系男子。
趣味は絵。苦手な物はレッド。武器はバール。
タマムシ地下で死闘を演じたワタルとは水と油、グラードンとカイオーガ、ドラえもんとエモドランの間柄らしい。

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