実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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オリ主による未来を歩くほのぼの散歩的日常ストーリーを目指しています。


原作:攻殻機動隊 こーかくきどーたい1

 

 --1

 

 横断歩道を渡っていたら、信号を無視して突っ込んできた車に轢かれて死んだ。

 で、神様と出会って云々で転生ついでに何か才能的なサムシングをくれるという。

 生前は不器用だったのを思い出し、物凄く器用にしてくれと頼んだ。

 これなら異世界でも職人や生産職としてほどほどに生きられるし、現代だったら小物作りとかして生きていけるな。

 

 

 

  ~おわり ^q^~

 

 

 

 

 

 --2

 

 変な夢を見たなぁ、と起き上がれば見知らぬ高架下。

 めっちゃ汚い。

 なんやねんここぉ……と不安に思っていると、すぐ近くの段ボールハウスで暮らすホームレスのおっちゃんが見兼ねたのか質問に答えてくれるという。

 住所を聞くと、なんとここは東京らしい。

 しかも俺の家のかなり近くだったので安心して帰宅。

 うーん、飲み過ぎたのかもしれん。

 

 住所の場所まで近づくも、家はない。

 というかなんか文化レベルで全く俺の知ってる世界と違う。

 中華系の自治区があってアジアンなバラックが乱立してたり、メカメカしいパーツを付けた人が歩いていたり、時折ロボットっぽいのが走っていたり……。

 

 ……来ちゃったか、異世界。

 

 来たくなかったな異世界……。

 

 

 

 

 

 家無かったやでぇって感じで親切なホームレスのおっちゃんのところに戻る。

 可哀そうな者を見る視線で憐れまれた。

 まあ、しょうがないね。

 見知らぬ土地であろうとも俺は困らない。

 一回死んだ物と思って生きていくのが苦しまない秘訣だ、護身は完璧である。

 

 おっちゃんに話を聞くと、魔法は無いらしい。

 でもよくよく聞くと科学が進み過ぎて魔法っぽくなってる感あるよ。

 2028年くらいらしいので、俺が知ってる日本の10年以上未来っぽい。

 いや、10年そこらで電脳とか義体とか極小機械群(マイクロマシン)が一般化できるようになるとは思えないのでやっぱ異世界。

 近代サイバーパンクって感じだろうか。

 

 どうやって暮らせばいいんだろうかと悩む。

 悩みながら、落ちてた山のないプラスドライバーでカリカリと石を削り、夢に見た神を造る。

 流石は未来で異世界のドライバー、本体が舐めてても石を易々と削れるとかすっげぇの。

 ものの五分で完成。

 人でも無いし、物でもない、なんというか概念を無理やり物質化した名状し難い石像が出来上がった。

 ちょっと神々しい気がしないでもない。

 

 

 

 俺の作品に「サイボーグだったのか」と感嘆の声を挙げたおっちゃんが、サイボーグ食を持ってきた。

 内臓とかが機械化されたサイボーグの人たち用の食品である。

 グルテンとかアミノ酸をベースにしたマイクロマシンで出来てるとか。

 フレッシュな人間でも食べられるっぽいけど、俺はサイボーグじゃないので普通のが食べたいです。

 全然サイボーグじゃないっす、と伝える。

 

 首裏を見られた。

 ちょっとでも体にマイクロマシンを入れて電脳にしてたり、機械で代替してたりしたら、管理しやすいように首裏にインターフェースを取り付けてるっぽい。

 で、そのインターフェース、QRSプラグという通信ケーブルを接続することで、情報の遣り取りができるとか。

 人間なのか機械なのか、境界が曖昧になりつつある世界である。

 ナノマシンをぶち込んで電脳化していると、脳内でネットワークというお花畑につなげたり、情報通信できたり、テレパシーみたいな通話ができたり、ハッキングされたりするらしい。

 ほえー。

 おっちゃんは怖いからやってないとか。

 わかる。

 でもサイボーグとか憧れる。

 死ぬかもしれないってことになったら超かっこいいロボットとかになりたい。

 

 

 

 

 

 --3

 

 お金が使えない。

 電子マネーが普及しまくっている社会なのだが、貨幣だって根付いている。

 が、そもそも俺の持っている金はこの世界の文化と異なる場所から持ってきているわけで。

 まあ、無一文です(悲哀)

 

 働かないとやべーぞ、と思った。

 が、仕事が無い。

 世界大戦があったとか内戦がどうとかで、この世界はかなりアグレッシブである。

 軍人崩れも多く、そいつらですら食うに困ることもあるようだ。

 つまり、無職モードだ。

 というか、そもそも戸籍が無いです。

 

 金が稼げねえぞおっちゃん!と相談すると、古ぼけたナイフを貰った。

 普通の金属を鋳型で固めたナイフである。

 世の中には電気を通したり、高速で振動させて切れ味を上げるナイフがあるとか。

 いやいやローテクで十分っす。

 まだこの世界の科学は怖いし。

 しょうがないので俺の奇跡的な器用さを売りにするしかないな。

 

 

 

 拾った木材を思うがままに木彫りして、雑紙に値札を付けて持ち歩く。

 口に糊できればいいやってレベルの発想である。

 ゴミ漁りするまでにはまだ成りたくない。

 

 すると、疲れ切ったようなサイボーグや義体の人が買っていくのだ。

 メカメカしい金持ちも売値の数倍の値段で買ってくれる。

 懐かしくて惹かれるとか、精密でありながらも人の温かみが籠っている、的な感想を頂きまくった。

 こ、これがローテクの武器だから!

 原理は知ってたから狙ってただけだから!

 

 

 思った以上に彫像が売れるので、売り歩きながら良さ気な場所を探すことにする。

 ナイフをくれたおっちゃんに別れを告げ、アジア自治区の方へ……銃声とか聞こえてきたので、普通に大通りとか通っていくことにする。

 この日本ってちょっと治安悪すぎない?

 

 

 

 

 

 --4

 

 数か月ほど、路上で売り歩きしててわかったことがある。

 労力がかかるほど人気作が出来上がる。

 また、義体化率が高いほど、惹かれやすいようだ。

 なのでメタマテリアルを利用した超贅沢でお洒落な刃物は不人気、無駄に道具に金がかかっただけでマジ売れない。

 あと豆知識として首都は東京ではない。核が降ったので千葉が沈没。この日本の群馬はグンマーではなかったようだ。

 

 そういうことで、ロボットやサイボーグ、電脳が支配するハイテクな都市で、ノミやゲンノウや小刀を背負った青年彫像家として、放浪することになってしまった。

 戸籍が無いので電子端末も変えず、電子マネーが使えないので現金を持ち歩き。

 金が溜まればカプセルホテルを寝床に、古ぼけた昔ながらの銭湯で疲れを癒す。

 サイバーパンクなのに、俺だけやたらローテクすぎないだろうか。

 若々しい見た目ながら、「古いタイプの人間」とやらと一緒の行動、いや、それよりもローテクな生き方である。

 ちなみに「古いタイプの人間」というのは、ホームレスのおっちゃんのように、自分の年下の餓鬼どもに脳を弄られるのを怖がって、サイボーグ化で頑張ったり、それすらもしない人たちのことである。

 

 本音を言えば、俺もハイテクな世界で生きたいんですけど。

 ただ、金も戸籍も無いから義体化やサイボーグ化はおろか電脳すら積めないんよ。

 世知辛い。

 電脳ならそう高くないが、医療機関に行かないとダメなので、残念なことに俺の脳は未だに童貞である。

 あ、電脳化する場合は機械を入れるから処女のほうが合ってるかもしれんね!

 

 

 

 

 

 道端の縁石に腰かけ、彫刻刀で軽い木彫りに従事する。

 脳みそ以外を義体化して俺TUEEEEしてちやほやされる輝かしい未来はいつ来るのか。

 とりあえず顔はイケメン、身長は高く、足は長く、声もイケボ、そして目からビームだな。

 英雄は目で敵を殺すんだ。

 

 しゃっしゃっと木彫刻をヤスリ掛け。

 何故この世界にダンジョンが無いのか。

 あったらきっと俺の器用さが伝説の武器に反応して、最下層まで行けるね。

 で、そこでミレニアム処女な魔王と出会ってトゥルーエンド。女勇者を弟子にして爛れた日々を送ってちゅっちゅしてハッピーエンド。王女と結婚するもロイヤルビッチでバッドエンド。

 なんてバラ色な世界なのだろう。こんな科学だけ進んだ世界とかマジ無理。

 はぁ、つっら。

 

 興が乗ってきたので木彫刻に彩色も施す。塗りすぎると美しくしくないので、艶消したり、影をちょっとアピールする程度だが。

 科学が進んだ世界で、フルでフレッシュとか逆に異物でしかない。

 店とか入ると、マイクロマシンが無いので脳波が弱く、検知されない場合がある。あとは体がフレッシュ過ぎて、あらゆる探知に引っかからないとか。

 俺を捉えることができるのは熱を読み取るサーモセンサーや重量で感知する感圧センサーくらいである。

 目の虹彩で認識するやつとか、指紋、静脈、などなどは戸籍が無いのでそもそも判定すら発生しない。

 はぁ、つっら。

 

 隣に座りながらひたすら俺のひとり言を聞いていたクゼ君(イケメン)に、木彫刻をあげる。

 無表情な男である。

 ただ、ジッと俺の作業を穴が空くほど見ていたので、欲しいのだろうと判断した。

 無表情ながらも、店に飾られたラッパが欲しくて連日見続ける黒人の少年の様な空気を醸し出していたし。

 今日もテキトーに治安のよさ気なカプセルホテルで寝て、銭湯にでも行こうかなぁ。

 立ちんぼ買いたいけど、病気が怖い。俺は戸籍が無いから保険に入れないのだ。つまり性病になったら高くつく。やっぱダメか。

 そもそも立ちんぼって、身体障害を抱えた孤児を使う場合が多く、義体化やサイボーグ化しているわけで。虚弱でフレッシュな俺とは腕力そのものですら天と地の差がある。一言でいうと抱くのが怖い。

 はぁ、つっら。

 

 クゼ君も彫刻してみたくなったらしい。

 手先は器用なのかと問うと、折り紙は織れるとか。全身義体であり、動かす練習で折り紙を修得したようだ。

 全身義体とか羨ましい。

 この世界に受け入れられているようでマジうらやま。

 道具を広げ、用途を説明していく。といっても、大きい道具は大雑把な作業用、小さいのは細かい作業用って感じなだけだが。あとはヤスリとか線を引くケヒキとか。

 ローテクほど人気があるので、タコ糸使って寸法調節し、糸に沿って鉛筆で線を引き、ノミで掘ってヤスリかけてテキトーに終わりである。

 仏像みたいなのは、仏さんを掘り、なんかテキトーな装備を後付し、テキトーに作った台座に乗っけるという合体方式だといい感じに仕上がる。

 ハイテク世界だからなのか仏像はあんまり売れないんだけどね。

 はぁ、つっら。

 

 クゼ君がドドドって感じで作り終えてた。

 が、情調も遊びもない作品である。

 不思議がっているが、俺からしたら当然なんだよなぁ。

 どうせ電脳化してる連中は記憶や映像を保存しているので、それを模した単なる緻密な作品にしかならないのだ。

 重要なのは、輪郭や色、形である。

 脳殻に脳みそをぶち込んだ連中は、視覚情報を電子化する際に最低でも一回以上は変換している。

 その変換の際に、幾何学的に描く。

 俺の作品は違う。

 生身で作品を見たような、そんな感動を与えることができるのだ。

 何故かって?

 知らん。

 電子化する際にシミュレートしやすい造詣にでもなっているんじゃねーの(投げっぱなし)

 

 

 

 

 

 --5

 

 手先が器用すぎて、時々ホームレスのおっちゃんどもの外皮を作ることになった。

 サイボーグ化したけど金が無くて皮がやべーとか、違法のとこで作って表情筋が溶けたとか。そんなバカな連中の為に、有機素材で顔を整形して張り付ける的なことをやってやるのだ。

 造顔と彫刻が特技のホームレスって俺は何処へ向かっているのだろうか。

 

 手慰みにマジックも学ぶ。折角器用なのだから、いけるとこまでやっておこう。

 機械化した目を騙せるようになってからが本番である。どうせ情報を受け取るのは脳なのだから、騙せない道理は無い。

 自分の技術がどれほど高まったかと疑問に思い、造顔した顔を被る。

 で、マジックで学んだ小手先で、AIが積んであるアンドロイドに悪戯してみる。重要なのはいくつかの矛盾点を任意で作ったり消したりすることである。普段の癖を行ったりやらなかったり、別人のようになってみたり。すると思考の出口や妥協を持たないアンドロイドは無限ロジックに陥って……やっべバグってる。

 つまり、そういうことである。飽きたり、慣れたり、といった思考の余分な遊びってひどく重要なんじゃないだろうか。状況判断の末に諦めるって行動を取れるのも強みかもしれん。

 そんなわけで、俺は自分の器用さに徐々に目覚め、そして……

 

 

 

 

 

 がんばれゴエモン状態となった^q^

 

 

 

 

 

 --6

 

 巷を騒がす義賊ゴエモンとは俺のことです。

 最後は釜茹でにされろホームレスってことだろうか。

 なにこれつっら。

 

 事の経緯であるが、あ、考えるのもめんどくさい。

 要約すると、商売道具である彫刻道具と彫像が盗まれた。それを取り返すため、俺は顔を変え姿を変え、盗賊活動でラノベ2巻分くらいのストーリーを経て取り返す(なおヒロインは現れなかった)。相手が超お偉いさんだったので、指名手配される。しょうがないので、ホームレス仲間や見知らぬ人たちが盗まれた大切な物を取り返す日々。そのままエスカレートした末に己の限界も見定めたくなって、なんか評判が悪い政治家のとこに忍び込んだら成功してしまったので金を盗ってばら撒いた。今ではきっとちょっとした有名人。

 みたいな?

 ……ちょ、彫刻家として魅力ありすぎてごめんねー☆(現実逃避)

 

 

 

 結局さ、どれだけお金を盗んでも俺はホームレスのままなんだよな。

 懐もあんまり潤わない。

 金持ちって電子マネーを疑っているのかってくらい現金でため込んでいるわけだが、その正体は血税だったり脱税だったりするわけで。

 俺が持ち去るのもちょっと違うよね、そもそもほとんど納税してないし。

 まあ、電子化が進むほどに、偽造しやすくなるほどに、ローテクの信頼性は高まるのかもしれん。

 つまりこの社会において、俺は信頼度抜群ということか!

 

 アホなこと考えてないで作業作業、と。

 ギィ、と音がした。

 このハイテク世界でベタな音を立てて木造の扉を開いてメイド服を着たアンドロイドが入ってきたのだ。

 ピンチだ。

 超ベタなくらいピンチ。

 窓ガラスをパリーンとしながら逃げなくては!とベタなことをやろうとしたら、メイドなアンドロイドであるメイドロイドがアグレッシブな跳躍で俺の前に降り立った。

 

『メッセージが一件、届いております』

 

 !?

 

 

 

 GTOっぽく表現してみた^q^

 

 

 

 

 

 --7

 

 差出人は不明のメッセージが一件。

 内容は、近くの公園に箱が埋めらてあるので確認してほしいとのこと。

 恐ろしいのは俺が監視されているという事実……は、どうでもいいか。

 ハイテク社会だし、何時かはバレると思ってた。通報されたらやべーよ、戸籍ないし、盗みとかで怨みを買っているので闇に葬られてしまう。

 ため息を吐きながらメッセージの場所へ赴き、掘り出すと、電脳硬化症という病気についての詳細や論文が入っているだけだった。

 電脳硬化症とは、脳みそを脳殻にぶち込んだり、電脳化処置を行った人間に、超低確率で発症する贅沢病である。

 贅沢病なのだ(必死)

 

 まあ、電脳硬化症だが電脳化した部分が硬くなり、最終的に脳死するという病気だ。

 機械とのアレルギー反応っぽい。っぽくない?

 そんな病気の進行を遅くするにはマイクロマシンやワクチンで治療するのが一番らしい。

 メールによると、マイクロマシンが普及しているが全く効果は無く、村井さんが作った特効ワクチンが一番だという。

 多分、メッセージ的にはマイクロマシンのしょぼさを世に喧伝し、ワクチンをアピールしてくれってことだろう。

 

 昔の新聞や週刊誌などの紙媒体を漁る。

 ここ1年くらい全くインターネットしてないわ。

 してないというか出来ないんですけどね!

 ネカフェって映像記録を撮られてるから、あんまり行きたくないし。

 他人の端末をパクったら、紐付けされてるからすぐに警察とか駆けつけてくるし。

 忍び込んで使うにも認証が必要だし。

 つらいしぬ。

 

 

 

 調べた結果、電脳硬化症の特効薬として最も効くのが村井ワクチンのようだ。

 現状では最強レベル。

 企業とかがごり押しして販売しているマイクロマシンは雑魚。

 効いているのか怪しいレベル。

 マイクロマシンが普及している理由としては、技術を昇華させるためとかもあるようだが、やっぱお金絡みのようだ。

 俺もお金欲しい。

 甘いものを求めて思考戦車用のオイルを出来心で舐めるほどカツカツ。

 彫刻の売り歩きも足が付くから出来なくなったし。

 はぁ、つっら。

 貴金属や現金を数十億円規模でばら撒く盗人が、一日一食生活とかそこんとこどうよ。

 

 無駄に培ってきた倫理と矜持が盗んだお金で飯を食べるのを拒絶するんです……。

 取り返してきた物と、いくらかの食べ物を物々交換する的な感じだし。

 ローテクどころか、もっと古い文化に遡りつつあるんですがそれは。

 そのうち(なめ)した皮とか着るように……ならないでしょ。ならないよな?

 

 話は戻すがマイクロマシンが幅を利かせている理由はやはり、1999年に核が日本に撃ち込まれたのが大きいだろう。

 核汚染を除去するのに、マイクロマシンは活躍しまくったようだ。

 で、そのマイクロマシン技術を退化させないようにという名分の下で硬化症の特効薬として喧伝。

 ちなみに電脳硬化症が発症したのは2019年。マイクロマシンの技術の進退が20年後の病気一つにかかるとか、ねぇ……?

 で、その硬化症に特効を持つ村井ワクチンの認可については2021年、マイクロマシンもそこら辺である。

 村井ワクチンは中央薬事審議会により非認可になって日の目を見ることは無くなり、マイクロマシンは三か月で認可されたり。

 

 ……。

 ……^q^

 

 

 歴史の闇を、異邦人の俺に投げかけてくるんじゃぁない!

 

 

 

 

 

 嗚呼、なんで俺がこんなことを、とぶつぶつ呟きながら厚生労働省医薬局へ。

 異世界ならメイドとちゅっちゅするとか、猫耳や兎耳の亜人とちゅっちゅするとか、激可愛な魔王で朝までちゅっちゅとか、するべきじゃないのだろうか。

 これは夢なんだ。俺は起きたまま寝ているんだ……。

 

 なんて事を思っていたら、厚生労働省医薬局麻薬対策課強制介入班とやらが俺をぶっ殺しに来た。

 動きはえーよハゲ。

 いや、俺が局長を狙って忍び込んだから反応されたのか。

 銃とかばんばん撃って殺しに来るしサイボーグや義体ばっかだし俺は人を撃ったり傷つけたり出来ないし詰んだぁ……俺が未だに厚生労働省内に居たらの話だが。

 残念ながら俺の方が早かった。

 局長室で盗みを働いてみたが、全く何も手に入らなかったのですぐに見切りを付けたのだ。

 で、外で情報を集めてた。

 

 次は如何した物かと悩みながら、輸送ヘリに光弾やら熱攪乱弾やらを放り投げ、パイロットを潰す。

 で、パイロットに、露天で捨て値で買った電脳と直結させてやる。

 バグとかノイズとかゴーストの接触で気絶した。

 サイボーグのようなので、表皮を剥いで、眠らない目をもぎ取って装備。とうとう鞣した皮(意味深)まで着るようになってしまった。

 他のサイボーグや義体どもの反応を見て、皮を剥いで捨てておいたサイボーグの普段っぽい行動を再現。

 誤魔化せてしまった……^q^

 

 なんなの馬鹿なの?

 

 そもそも下品な言葉で盛り上がるってどんな班だ。

 班長なんて同性愛者だし、愛を囁かれるし。

 死にてえ。

 というか俺を殺しに来たから排除しとこう。

 ヘリの操縦はテキトーにやったら出来た。器用なのもあるが、自動操縦だからね。科学の力ってすげー。

 

 

 

 重要な知識として義体化率が高いほど、泳げなくなる。というのも、身体を占める機械の割合が増えて、単純に重くなりすぎるためだ。浮くための脂肪なんてないし、あっても無意味だ。

 つまり、機械人形どもにとって海など、水など、無いも同じである。ただ引かれるように落下するのみ。

 あとは人形って壊しても気にならない。大きい人形を壊したら人を模しているのでちょっと変な気分になるが、それでも人形なので罪悪感など抱かない。見えないところで無くしたら、どうでもよくなるのだ。

 

 海上まで行き、パラシュートを背負い、自動操縦を切る。

 じゃあなジャンクども、と別れを告げて外へと飛び出す。

 阿呆な班員たちは、装甲に守られて気密性の高い後部の貨物室で呑気に過ごしていて、未だに気付いていないようだ。

 

 彼らが奇跡的に助かったらもう一回落としてやろうじゃないか。見えないところなら気にならない。そもそも平然と人を殺すなんて人形しかやらんだろうし、しょうがないね。

 

 

 

 

 

 よし、生きてる!と着地。

 光弾とかまた買わないといけないからカツカツだなぁとローテンション。

 そんなアンニュイな俺はゴリッと後頭部に銃を突き付けられた。

 

 えっ^q^

 

 公安らしい。両手を上に、そのまま跪かないと撃つとか。

 なんというバイオレンス。

 でも捕まったらどちらにしろ死ぬのだ。

 両手を上げて、袖口からシュッといくつかの玉を取り出す。

 煙とか熱とか光とか催涙とか諸々がセットになったお得な玉である。こういうのが高額なので、俺は貧乏なのだ。

 俺の後頭部に銃を突き付けていた巨漢の義眼レンズである眠らない目ならまだ反応できるかもしれんが、追撃に放り投げたこれには耐えられないだろう。すっげぇ微弱な電磁パルスを発生させる使い捨ての玉である。外部装置を狂わせる超お高い虎の子です(震え声)

 高性能程狂いやすいので、この場に限り最強。

 

 高笑いしながらダッシュで逃げる。

 笑ってたら声に反応して撃たれたので無言でマジ走り。

 こっわ。

 撃たれたら保険も無いし、お金もないので、化膿して腐って死ぬ。

 

 

 

 

 着ていた皮を脱ぎ、あとは海を泳いで逃げれば俺の勝……光学迷彩だと!?

 闇夜からいきなり女性が現れて銃を向けてきた。

 光学迷彩とは政府組織にのみ許された、姿が消えるやべー装備だ。流石公安、俺をぶっ殺しに来ている。いや、さっきの同性愛者が班長をやってた班も装備してたけど。

 

 驚愕しながらカラーボールをぶん投げる。空中で撃ち落とされたが、マイクロマシン入りの蛍光塗料さえ当たればオッケー。微弱な電気を流すのでいくらか機能不全を起こすし、蛍光塗料で見やすい。

 とりあえず見逃すことが減ったので、なんとか逃げるしかない。

 挙動や表情から、おそらく全身が義体しているタイプだろう。瞳孔のカメラアイがすげー動いているし、重厚感がありながらも手足は自然に動いている。頭部も若干大きいが、脳殻が成長を阻害しないようにしているのだろう。それを自然に隠せるようになっているとかブルジョアすぎぃ。

 相手が100%泳げないのはわかっているので、時間さえ少しでも稼げれば勝ち確定である。

 トリモチを顔面にはっ付ければ反応が遅れるだろうとトリモチ玉を6個ほど投げつけて……空中で撃ち落とされた。

 

 ……なにそれ、やっぱずっるい。

 

 

 全身義体とかサイボーグどもって反則だよね。瞬きする間に目の前にいるくらい足だって速い。

 こいつら疲れにくいんだ。しかも馬力もある。機械化には物凄い苦労が付いて回る。脳が生身だった頃を忘れられなくて発狂しそうになる。無くなったはずの痛みやかゆみを感じる幻肢も起きる。意識しなければ普通の人に見える。ヒトだって言い張る。

 俺も義体になって俺つえーして賞賛浴びて贅沢して偉人になってちやほやされたかったぜ。

 

 

 

 ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁ^q^

 

 

 

 

 

 --8

 

 知らない病院で目覚めた。

 寝る前の記憶は、全身義体の女性に殴られ、防御した腕が複雑骨折を起こして骨が飛び出したやつである。グッロ。

 ちなみに、俺のあまりの脆さに、殴ってきた女性のほうが驚いていた。なんとか衝撃を流そうと最善の動きを行ってこれである。

 自分たちが如何に危ないかって理解しろよ機械ども。

 あと腕がめっちゃ痛い。

 あちゃー、夢じゃなかったかー。

 昨日は3時間しか寝てなかったからなー。本気出せなかったなー。最高のパフォーマンスだったら完璧に逃げ切ってたのになー。

 チラチラ、と俺を睨んでいる爺さんにアピール。

 

 戸籍が無いから、今までの罪でえげつない殺され方をするだろうな。とか言われた。

 ひょ、ひょえー。

 逃げても全身義体の女とスナイパー、眠らない目の男が昼夜追いかけてくるとか。

 助けてくだしあ……。

 

 

 

 

 

 公安9課とかいうところに、備品として搬入されることになった。

 荒巻課長とかいうマジゲス。

 戸籍もねぇ! お金もねぇ! 全く機械も入ってねぇ! ということで、備品扱いなのだ。思考戦車やオペレートするガイノイドたち、銃の弾薬一発と同じ扱いという驚愕の事実。

 腕が痛いので、超贅沢で高性能な米帝が開発した全身義体でイケメンにしてくれメンスと、課長に頼む。

 怒られた。久しぶりに普通の人間と喋っている感じがしてちょっと嬉しかった。

 ちなみに、なぜダメかというと、俺のフレッシュな肉体が諜報や張り込みなどに便利だからとか。なので治療にもマイクロマシンは無しだし、古典的な投薬のみだとか。マジで腕が痛いのに……。

 

 課長、ちょっとマジでゲスすぎない?

 

 

 

 

 

 --9

 

 メンバーと顔合わせ、の前に仕事があるとか。

 人形使いという、電子生命を主張するなんかよくわからんのが現れたらしい。

 俺の仕事はそいつの観察、あとは危険があったら破壊である。

 ナイーヴな俺にそんな危険任務は無理ですぅ、とぶりっ子でアピールするも、課長にはシカトされた。

 

 しょうがないので、課長が何か話し合っている間に俺も忍び込んで準備する。

 現在、その人形使いとやらは高性能の義体に入っているらしい。

 これは嫉妬案件ですわ。

 ちなみにスタンドアローン状態。ネットワークに逃げられていたら俺ではどうすることもできないので、義体に入っているのがオリジナルかつオンリーワンかつ本体として対処しよう。分霊とか作られてたら知らん。

 

 話し合いが良くない方向に転がり始めたので、隔壁で課長などを隔離。

 で、話し合いに使っていた部屋の近くにあった、分析装置を冷やすためのデュワー壁を第三まで解放し、壁を爆破。漏電も起きているので大成功である。

 安全なコントロールルームから絶対零度空間を生み出し、空間で超電導を引き起こすことで、室内の人形を焼き払うという近年稀に見ない超ファインプレー。

 全部黒焦げとなって滅びた。

 ちなみに漏電させた理由は、不運な事故を演出するためである。悲しい事故だった。あと機械人形の脳って高電圧をぶち込まないと外部からだと焼けないし。脳を機械の殻で守るとか、マジ羨ましい。だから壊した。

 

 

 

 

 

 課長にやり過ぎだとめっちゃ怒られた^q^

 

 

 

 

 




オリ主
器用MAXな貧弱野郎。だいたいワンパンで致命傷を負う。
100%フレッシュ過ぎて世界に馴染めていない気がしており、機械へのコンプレックスを持つ。
義体化率が高い相手ほど嫉妬と殺意、尊敬を抱く。
課長に構ってもらうのが嬉しくて人形使いを施設ごと吹っ飛ばした可愛いやつである。
特技は絵画、彫刻、変装、潜伏、諜報、マジック、人形破壊などなど。

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