実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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ちょくちょく書いてたら溜まってた


原作:東方Project 東方短編(上)

 

 --1

 

 とても悲しい出来事だった。

 運が悪かったのか、俺は結婚できないことが決まった。

 いや、結婚どころか付き合うこともできない。

 政府主導で行われる検査の結果だった。

 そんな予感もしていたが、実際に体験するとツラいものがある。

 

 

 

 そんなわけで、俺は男の娘に屈しないんほぉおおぉ!って感じで頑張ろうとしていた矢先、森の中にいた。

 ……能力による個人の転送実験は失敗の模様です、同志!的な。

 まあ、有用性が発揮されたら女性と結婚される可能性があるので、大失敗で安心だザマァ的な。

 

 とりあえずわかるのは、木々に囲まれた自然な地形である。

 こんなにも緑化が成功していてエコ100000%(?)な場所は初めて見たでございます。

 空気もなんというか、雑多でありながら澄んでいるというのだろうか。肺に優しくてハイになれて脳に優しく適度にイケてて吸ってて気分が良い!

 自然しゅごいのおおおおおおお!

 ……ふぅ、自然の凄さに圧倒されてしまった。

 

 とりあえず落ち着いて周りを見渡そう。

 さっきまで行っていた能力実験の施設とは全然違う。

 緑が凄い。辺りを見渡せば緑、緑、緑。吸い込んだ粒子に緑が含まれているんじゃないかってくらい緑。

 うーん凄い、葉っぱとか近づいていいのだろうか、いや、もしかすると触っていいのだろうか……?

 いや、待て。よく見ると葉っぱとか枝とか落ちてるしそもそも見た事のない芋虫が元気に食んでるし蜘蛛の巣とか張ってあるし蟻とか這ってるし自然しゅごいのおおおおおおお!

 

 

 

 ふぅ。

 危うく天に召されるところだった。

 さて、どうやら物凄い濃い自然の中に何故だか俺は立っていることだけがわかっている。

 寝ぼけて夢を見ている可能性もあるが、俺はこんなにもリアルな自然を思い描けるほど発想力は高くないので多分ないだろう。

 政府が行っている種の保存がうんたらって感じの研究施設なら自然も残っているかもしれないが、俺がそこで勤められる意味がないので無し。

 これはまさかあれだろうか、自然転移とか、そういう伝説的なやつ。

 気づいたら異世界に居て、自然溢れる世界で女性と過ごすという古書のやつ。

 それだったら幸せすぎて脳とろけるんだが。

 

 

 

 

 

 後に語る。

 自然転移で女性も多くてしゅごいのおおおおおおおおおおおおお!

 この後滅茶苦茶脳がとろけた、と。

 

 

 

 

 

 --2

 

 ――父さん、友人たち、俺は今、物凄い犯罪者になってしまっているよ。

 

 

 

 そんなことを考えていたらまた葉っぱを踏んで折っちまったぜ。

 この緑がしみ込んだ靴を売ったらどれほどの値段になるか想像もできないくらいやばい。

 今日だけでどれほどの大罪を犯しているのか、脳内が罪悪感と背徳感でエキサイトしている。

 土の上を歩いているし、葉っぱも時々踏んじゃってるし、胸いっぱいに自然の香りだし、と変な背徳感でぞくぞくしつつ、内心でびくびくしている。

 これだけ自然があるってことは生の動物や昆虫も盛りだくさんで、生の空気であり、もうそれだけでしゅごい。

 なんだここ、ほんとなんだここ。

 可能ならば、俺はここで葉っぱを食べながら死んでいきたい。

 

 森を足蹴にするという大罪にどきどきしながら進んでいると、開けた場所に着いた。

 澄んだ青空、白い雲、背中には大自然の権化である森、目の前一杯の草原。

 あああああああ、と転げる。

 しゅごい! 俺いましゅごいことになってる! 葉っぱの上を転がってる!

 はあああああああんああああああああ!と延々と葉っぱに顔を突っ込んでみる。

 緑がすごいのおおおおおおおお脳がとろけるうううううううう。

 

 おほおおおおおおおお!と喜んでいると、森から人が現れた。

 しかも態々、小さな木の枝を折りながら。

 なんたる暴挙。

 ニンゲン……カエレ……ココハ、カミノスムモリ……的なアピールしようとしたら、大きな青いリボンで結われた赤い髪をした人が現れた。

 首元を隠すような赤い外套、男の娘しか着ているところを見たことがないスカート、男では有り得ないほっそりとした腰、胸のふくらみ。

 ふくらみ。

 

 

 

 

 

 お、お、お、お、おんだああああああああ!!!!!

 あああああああああああんはああああああああ!

 おほおおおおおおおおお!

 

 

 

 

 

 --3

 

 俺が能力実験で失敗して訪れたこの神聖な大自然だが、幻想郷という場所の森らしい。

 決して、我々が行き詰まり、ドツボに嵌まって取り返しが付かなくなった船内の研究施設ではない。

 まあ、そんな研究が成功していたら毎日がエブリデイだっただろうが。

 

 恐ろしいことに、この自然は幻想郷のほんの一部分でしかないとか。

 へへへ、それがホントなら想像するのも難しいなんて凄くてすごくて超すごい場所なんだろう。

 手足どころか全身が震えてブルってきやがったぜ。

 しかも女性と話しても捕まらない物凄い神話世界だという話も教えてくれた。

 

 

 

 ――父さん、友人たち、俺は今、楽園に来たみたいですってよ?

 

 

 

 この大自然に囲まれて生きる幸福な民たちが住む人里まで案内してくれる、と親切にも仰ってくれた聖人は赤蛮奇(せきばんき)さんという素晴らしい名前らしい。

 捕まるかもしれないから追記しておくが、様は付けなくていいという慈悲を与えてくれた。

 大天使の可能性も高い。もしかすると女神かな。

 

 10m先くらいの赤蛮奇さんのお尻を必死に見ないように頑張りながら、後を追いかける。

 ほんとは危険だから隣を歩いてくれるとか言ってくれたんだが、心臓が止まりそうなんで無理ですお願いしますってことで先導してもらうことにした。

 女性が近くにいるとか緊張で死んじゃう。

 死んじゃ……森の中ずかずか歩いてるとか俺やべええええええええんほおおおおおおおお

 

 

 

 なんかわからんが意識が飛んだと思ったら女性に抱えられてて、それでまた意識が飛んで、いつの間にか人里に辿り着いていた。

 

 

 

 

 

 --4

 

 幻想郷についてわかったことがある。

 まず自然に囲まれている。9割9分自然。もうやばい。俺の住んでた船と全く逆。ファンタジーかよ。しかも誰も自然なんて意識してないし、あるがままを受け入れてるし、虫とか邪魔だからって殺すし、動物も食う。自然にある物なら食えれば食う。マジヤバい。俺も慣れつつあるがヤバい。

 男女比だが男と女で1対1らしい。すごい。普通に結婚できるし逢引きするし女性が子供産む。凄い。300から500対1じゃないなんてファンタジー。しかも機械で受精じゃなくて自然に受精。すごい。ファンタジーかよ。そもそも機械とかない。凄い。まじやばい。

 そして、ここが地球であるという事実。もうこれだけでファンタジー。すごい。心臓飛び出る。たぶん3回くらい止まった。俺が住んでいた船は、物凄い古い電子媒体に地球を飛び立ったデータが残っているくらい昔から地球を求めながら宇宙を彷徨ってた。というのも月に移住した連中と派閥争いで負けたからだとか聞いたことがある。そして未だに月に民がいるらしい。こんな地球という楽園の近くにいるくせに、穢れているとかでくっそ無駄な宇宙で悠長に過ごしているとか。マジ頭おかしい。宇宙で過ごすやつらって頭おかしいんだろうなあ。

 

 

 

 ――父さん、友人たち、俺は今、楽園にいます。

 

 

 

 

 

 --5

 

 大体の情報を、女性相手が多くて心臓が止まりかけたり、意識が飛びかけたりしながら集め終わった。

 その後は人里での生活が始まった。

 俺としては大自然の中、雨風にさらされながら過ごしても良かったんだが、妖怪というちょっと奇抜な人たちが人間を食ったりするので危ない的な話になり、人里の住居で過ごすことになったのだ。

 俺肉食獣って図鑑でしか見たことないんだけど、幻想郷ってやっぱすげーわ。肉食獣が大自然で過ごしているんだぜ。餌も豊富とか動植物のパラダイスかよ。

 ちなみに住居は赤蛮奇さんが住んでいる長屋である。しかも隣部屋。物音聞こえるだけで心臓止まるかもしれん。

 

 人里での生活だが、もう凄くてやばい。どのくらい凄くてヤバいかというと、マジやばい。そんで凄い。

 まず木こり。木を切る。もうこれだけでどのくらい凄いかわかる思う。しかも木を持ち運んだり、更に切ったりする。凄いすぎて頭おかしくなりそう。

 次に皿洗い。土より生み出されし陶器を、自然から抽出された天然水で洗うという贅沢。もうこれだけでどのくらい凄いかわかる思う。しかもそれに自然食品とか盛っちゃう。頭がフットーしそうだよおおおおお。

 さらに客商売。これはヤバい。もうこれだけでどのくらい凄いかわかる思う。女性と話せる。しかも年齢問わず。お礼も言われたり、時には会話までできる。もうこれだけでどのくらい凄いかわかる思う。読んでるだけで小説だとかファンタジーだとかSFだとか思うくらいやばい。気絶しそうだよおおおお。

 もっとランクが上がると、寺子屋で学問を教える。これは凄い。まず子供がいる。機械にぶち込まれたまま学習装置で脳内に知識をぶち込まれ、促成で成長させるとかそういうのが無い。凄いファンタジー。しかも教師に女性まで居る。うっそだろお前って思うじゃん。事実なんだよなあこれが。もうこれだけでどのくらい凄いかわかる思う。

 そして一番ヤバいのは畑作業的なやつ。母なる神聖な大地に、尊き植物の種を撒き、自然の恵みたる植物を栽培、禁断の果実を収穫するのだ。禁忌侵しまくり。ヤバすぎ。流石の俺もまだこれには手を出す勇気がない。

 あとは職人だとか、妖怪退治だとか、俺の想像を絶する凄いのが沢山あるのだ。凄い。幻想郷マジ凄い。

 

 

 

 

 

 --6

 

 巫女っていうのがいるらしい。会いに行ったら誰でも相手してくれる女性だってよ、凄い。

 吸血鬼っていうのがいるらしい。血を吸う女性だってよ。凄い。

 神様もそこら辺で歩いているらしい。女性だってよ。女神様凄い。

 閻魔様という死後も相手してくれる人がいるらしい。しかも女性だってよ。凄い幻想郷すごすぎる。

 そういう凄いのがいっぱいいるらしい。

 遠くが見えてなんか色々と薄い紙に書く天狗とか、相手の心を読む覚とか。

 

 俺の部屋で酒を呑みながら赤蛮奇さんが教えてくれた。

 女性と喋るのも慣れた頃に赤蛮奇さんを誘ったら、定期的に一緒に呑んでくれるようになった。

 やはり女神か。

 下心? あるよ。無いわけないでしょ。

 女性を見ただけでも捕まる軛から解放されたら、そらもう女性と話したいに決まってるじゃん。

 一緒の空間にいるだけで満足しそうになる、女性って凄い。

 

 さて、今回赤蛮奇さんと呑んでいるのはやりたいことがあるからだ。

 俺一人だとやっぱ行き詰るので、相談しようという思惑。

 ちなみにやりたいことというのは養蜂である。

 自然界に満ちる至宝である花から蜜を集める天使こと蜂から、蜜を取り上げる禁忌であるのは理解している。それでも俺はやりたくてしょうがないのだ。

 幻想郷で味わった蜂蜜という素晴らしい甘味は俺の脳をとろかせた。そして更に凄いモノを食べたいという悪魔のような欲求に取りつかれた。

 現状で手に入る蜂蜜では納得できなくなったのだ。

 つまるところ、俺は物凄い蜂蜜を作りたいですってことである。

 「俺は禁忌を侵してでも最高の蜂蜜をつくります。なんだってやります!」と宣言したところ、赤蛮奇さんは「お、おう」という微妙な反応を返してくれた。

 

 あるぇー?

 

 

 

 ちなみに恥ずかしいので、赤蛮奇さんのほうは見ずに部屋の隅で宣言したと付け加えておく。

 

 

 

 

 

 --7

 

 蜂蜜作りに重要なのは、ミツバチである。

 神の使徒であるミツバチを、私腹のために働かせるなど、命が惜しくないのかと脳内で警鐘が鳴り響く。

 だが、男にはやらなければならないことがあるのだ。

 なので、お願いします!とリグル・ナイトバグという可愛らしい女性に頼む、8m先で。

 

 大量の虫を嗾けられた。

 しかもそのほとんどが失われし自然のアイドル、蝶である。

 脳がとろけそうだった。

 その後はなんか色々な虫に覆われた。

 この虫たちは幻想郷で生きている虫なのだという。

 幻想郷のあまりの楽園っぷりがわかった。

 

 

 

 絶頂しそうになった。

 

 

 

 

 




(下)が出来たら短編として切り離したいなって思うのですよ

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