実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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ハッピーエンド^q^


原作:魔法少女リリカルなのは リリカループ10■-authentic

 『100sy■…m…………....

 

 知らない男が笑顔で俺の目覚めを歓迎した。

 見知らぬ場所だ。

 ただ、泥の底から無理矢理引き上げられた。

 そう感じた。

 気分が悪かった。

 ただ、ひたすらに気分が悪かった。

 

 

 

 全身が酷く重く感じ、指先などは鈍く動かすことが困難だった。

 神経が通っていないのではないかと思えるほどだった。

 無理に動かすことを止めてぼんやりと男へと視線を向けた。

 やや長い紫の頭髪、ぎらぎらと輝く金色の瞳、白衣を纏って性格な体躯はわからないが華奢だと感じた。

 何やら喋っている男から視線を外し、億劫に思いながらも情報を得ようと周囲を見渡す。

 あまり広くない薄暗い室内と男を囲むように宙に浮かぶ複数の小さなモニタ、その部屋にはそれくらいしか無かった。

 モニタには数字が羅列されているが俺には何を示しているのかわからない。

 

 男は医者というよりも学者に見えた。

 それもテレビで見るような小難しいことを適当に喋っている”まとも”なやつではなく、漫画やアニメで見れる様な気持ちの悪いモノを宿している種類だ。

 魔導師はどうだろうかと観察するが、魔力と肉体を考慮すると可能性は低いだろう。

 頭を使うような……。

 ただ、考えるだけにしてもどうも気怠くなってしまう。

 目の前の男が何者であれ、今できることなど無いのだから大人しく話を聞くとしよう。

 

 

 

 男の名は「ジェイル・スカリエッティ」、長いのでスカさんと呼ぶ。

 細かいことは面倒なので省くが俺を生き返らせた本人らしい。

 余計なことを……いや、感謝すべきか。

 どうせ俺にはあれ以上の結果を出すことは出来なかった。

 やり直す手間が省けたのだと考えれば悪くないのかもしれない。

 

 俺を甦らせた理由だが、特に無いらしい。

 無理矢理、理由づけすると偶然だったとか。

 スカさんのスポンサーがひどく執心していて、興味を持ったときに偶然手に入れたらしい。

 それってどういう状況だろうか。

 そもそも俺に興味を持つなど、一体どんなスポンサーだ。

 尋ねるが笑みを深めただけだ。

 答える気はないらしい。

 

 溜息を一つ、そしてスカさんに手を翳して動かし難いと文句を言う。

 そんな俺を見てスカさんは呆れたとばかりに表情を変え、当然だと言い返した。

 蘇生によって弊害もあるが、他にも手足が壊死しかけていたことや右腕がちぎれてかけていたのも原因らしい。

 生身に見えるが、現在は一部を機械骨格と人工筋肉に置き換え、極小機械群(マイクロマシン)に指示を出すことで動作しているようだ。

 元の手足のように動かすには脳が経験をもとに発達する必要があるらしい。

 さらに、肉体が細胞レベルで魔力と融合しているため、魔導生物に限りなく近い状態であるとか。

 生命活動に魔力が必須なのに、リンカーコアの95%以上が休眠しているようで、体調がすぐれない理由の筆頭であるようだ。

 刺激すれば覚醒するかもしれないと言われたが断っておく。

 入院したときを思い返すと、あまり手を出したくないからだ。

 もっと弄ってみたかったが未知な部分が多くてマトモなことしか出来なかったと呟いたスカさん。

 マトモ……?

 

 

 

 

 

 大してツラくも無いリハビリを繰り返す。

 手足の動作に関しては機械を動かすような面倒さが加わった。

 体内に巡っているというか、俺の場合は満たされている、魔力を極小機械群に与えないと動作の命令が下らないのだ。

 魔力があまりにも少ない現状だと日常的な動きならば問題は無いが、戦闘行動などは夢のまた夢だろう。

 精密さで言えば軽く生身を超えるところは面白いといえば面白い。

 まあ、色々と出来ることはあるのだろうけど魔力が乏しい我が身では遊べないのが残念と言えば残念か。

 

 やることと言えば、他にはスカさんの研究を眺めて時間を潰すくらいだ。

 生物と機械が彼の専門らしく、戦闘機人というものが研究の結果のようだ。

 人間の肉体に機械を組み込むことでより強靭な存在にするというものだ。

 俺が利用しているのは生身に限りなく近い義手や義足だが、実際は骨格から変えていくとか。

 恩恵を預かっている身としては好きにするといいとしか思わない。

 

 他には人造魔導師を生み出すことを目標にしているらしい。

 超高エネルギー結晶体をリンカーコアと融合させることで高い魔力を得られる可能性あり、さらに低い確率で死人を蘇生できるとか。

 俺を甦らせた方法はこれらしい。

 やっていることが凄すぎて訳がわからないことになっている気がする。

 元から俺のリンカーコアにはその超高エネルギー結晶体が2つも内包されていたので、同様にレリックとやらを仕込むことで復活を果たしたとか。

 親和性は驚くほど高いので、おかわりはいるかと聞かれたが断る。

 そもそもリンカーコアに変なものが内包されているという驚愕の事実に思考が追いつかない。

 何が楽しいのか高笑いとともにスカさんが俺のデータを見せてきた。

 元からあった超高エネルギー結晶体は、限りなく純度の高い魔力で出来ているとのことで、回収されているジュエルシードと同様の性質を持っているようだ。

 というか、そのままジュエルシードが内包されているらしい。

 しかもリンカーコアは複数が集まって群体を形成しているとか。

 数は10や20を軽く超すとの話だ。

 よくわからん。

 

 

 

 

 

 スカさんが戦闘機人を調整したり、稼働させたりを眺めながらリハビリを繰り返すが、かなり飽きてきた。

 リンカーコアが複数あろうとも、1つはDランク前後の魔力しか生み出さないうえに、3~5個程度しか活動していないので魔力が恒常的に不足している。

 そもそも生きるだけで魔力が消費されるとか、人間としてどうなのだろう。

 生命活動にも決まった量が必要なので枯渇したらもちろん死ぬし、生成量を消費量が上回っても死ぬ。

 スカさんの改造でそうなったのならば恨めばいいのだが、徐々に体質が変化したため関係ないらしい。

 ループの影響だろうか。

 スカさんには未知の部分が多く、色々と興味深いと言われたが全く嬉しくない。

 

 戦闘機人とも交流しているが、気難しい娘ばかりで中々上手くいかない。

 というか戦闘機人が女性ばかりというのも難易度を上げている理由に違いない、身近な女性とか少なかったし。

 動作テストの模擬戦で全力でぶん殴ったのも関係ないに違いない、リハビリ中で調節が効かなかった。

 製造時期を聞いてBBA発言したのも関係ないに違いない、活動期間は短いはず。

 なるほど、俺に非は全くないな。

 

 動作データの引き継ぎが出来るようで、そういった生身の人間ができないような点は結構面白い。

 模擬戦も誰かしらと戦ったらそれを元に別の誰かが対策を練って挑んでくる。

 基本は人間なので欠点も多いけど。

 あとは機械で出来ているからか内部への衝撃が苦手らしい。

 矢鱈無闇に接近しすぎると徹の餌食になるので、チンクには是非とも防御や回避といった体捌きを憶えてもらいたい。

 

 

 

 体力の限界か、呼吸を整えるのに必死で倒れたままのチンクを見て、戦闘機人は痛みで物事を覚えるのだろうかと疑問を持った。

 人間を元にしているだけなのだから良い経験になるのではないかと思い、徹を二重に込めた雷徹を喰らわせるのはどうだろう。

 無理矢理起こして試してみようとするが、止める様にと声をかけられた。

 柔らかな女性特有の声へと顔を向けると、少女が透き通るような翡翠色の髪を揺らしながら近づいてきた。

 彼女はロゼと呼ばれていて、俺を拾った人物らしい。

 ジルさんにとても似ている人物で、瓜二つといってもいいくらいだ。

 異なる点は繊細というか華奢というか、そんな細い身体であることと胸である。

 ジルさんとロゼを比べるとヴィータとシグナムくらい違う。

 

 ロゼ→ジルさんに似ている(胸以外)

 ジルさん→リンディさんに似ている(胸以外)

 ロゼ→リンディさんに似ている(合致)

 これが示すことは……ジルさんにも未来があるってことか。

 他には何も気づかなかった。

 何もないに違いない。

 

 ロゼはご飯が出来たので食べようと誘いにきたらしい。

 しょうがないので今日のところは渋々と雷徹を諦めることにした。

 飯を無視したり、遊んだりするとロゼが怒るので大人しくすべきだと覚えた。

 前にロゼがケーキを食べようとしていたので、「こうしたらもっと素敵になる」と言いながらドーナツを乗せたら手加減無しの魔力砲でスカさんが吹っ飛ばされた。

 マジおこぷんぷん丸になると全力で魔力砲を放ってくるようで、苦手意識がある。

 どうせ食っても味はわからないのだからテキトーでいいのだが、ロゼが機嫌を損ねるので食卓に加わっている。

 

 食後に一息ついている各々を眺めながら、そろそろ帰ってみようと思うと言ってみた。

 返事は無かったが何を言っているんだコイツ、といった雰囲気を感じた。

 スカさんが笑いを浮かべながら、空間モニタを見せてきた。

 俺の顔写真とともに書かれていたのは罪状だった。

 身に覚えが……エネルギー駆動炉と質量兵器くらいしかない。

 俺は無実であり、これは冤罪であるのは確定的に明らか。

 見事に次元犯罪者入りだねとスカさんが金色の瞳をぎらぎらと輝かせながら嗤った。

 イラついたのでスカさんに極小の魔力弾を当てる。

 魔力が枯渇寸前になり、死にかけた。

 

 

 

 俺がリハビリしている間に何があったというのだろうか。

 解決するにしても管理局は味方ではないという認識を持つべきだろう。

 そして、逃亡できる程度の力が必要だ。

 自由に扱える魔力が全くといっていいほど無い現状は心細く感じられる。

 休眠状態のリンカーコアに魔力を流してみるが、全てを吸い取られたかのように消え去った。

 乾いたスポンジに水を含ませた、というのが正しい見解か。

 

 魔法が使えない限り、非力で善良な少年でしかない俺にはどうすることもできない。

 誰かが解決するのを待つべきか。

 有りえないな。

 今に至って何の変化も無く、罪状が残っているのならば誰も手を出していないのだろう。

 やはり自分しか……。

 

 リハビリ用に、とスカさんに頼んだ12面体のルービックキューブを片手で弄る。

 一瞬だけ指の腹で弾くことで回転させ、徐々に加速させていく。

 それぞれの面が超速で複雑に動いているため、常に手で持っているわけにはいかない。

 最終的には、触れている時間よりも宙に浮いている時間が長いような状態となった。

 

 動かすときは列を爪先で一瞬だけ弾くことで切り替える。

 傍目には忙しなく動く手の上で表面が蠢く球体が浮遊しているように見えるだろう。

 細かい動きの訓練としておこなっているだけであり、完成させる必要はないため、視線は残った片手に持っている端末に向ける。

 スポンサーから送られてくる様々な情報を読むことができるようだ。

 中には管理局について詳しく書かれているものもあったが、組織として杜撰すぎないだろうか。

 スカさんはテキトーに読んで良いと言っており、今まではあまり気にしていなかったが、そうもいかなくなった。

 なのはちゃんが入院……?

 

 

 

 

 

 久しぶりの娑婆は空気が美味いぜ。

 別にスカさんところが苦難に満ち溢れていたというわけでもないが。

 スカさんや稼働している戦闘機人、ロゼに見舞いに行くと伝えたら緩い感じで許可を貰い、病院の地図が入った端末を渡されて街の外へと転移させられた。

 管理局の情報管理がザルすぎて内心で少し引くが、今はその穴あき具合に助けられているので文句は言うまい。

 

 勝手知ったるなんとやら、白ばかりで目がチカチカしそうな病院内を杖を突きながら歩く。

 片手に杖、片手に12面体ルービックキューブ……無敵だな。

 お見舞いはパインサラダくらいしか持ってきてないので、足りなかったらルービックキューブでも渡せばいいだろうか。

 

 目当ての病室を見つけ、扉をスライドさせて中へと入る。

 なのはちゃん久しぶりだね、ちょっと道が混んでて遅くなったよ。世界中で人が死んでるから生き返るのにも混雑してて今になったって訳さHAHAHA!とウィットに富んだジョークを飛ばし、銀河美少年ばりの輝く笑顔もセット。

 キラッ☆

 なんてね。

 チラッと横目で様子を窺うと、滂沱の涙を流すなのはちゃんがそこにいた。

 ヴァーイ!?

 

 もうなんかよくわからなくてぐちゃぐちゃしちゃって涙が止まらないとか。

 あるある、すごくよくわかる。

 最初の方の死からコンティニューしたときとかそんな感じだし。

 なのはちゃんが杖に視線を向けているので、満足に動けないってことを伝えておく。

 緊急時のために手足の魔力消費は最小限まで削っているのだが、やはり戦闘になるとどれだけ省エネにしても足りない。

 一応、魔力を使い切った際の対策は練っているが万全ではないのだ。

 荒事が無ければ良いのだけれど。

 

 何を泣くまで思い詰めてたか知らないけれど、なのはちゃんなら大丈夫だろ。

 100回くらい死んだら俺でも生き返ったくらいだ、1回くらい不幸になったなのはちゃんなら天使になれるんじゃないだろうか。

 つまり今のなのはちゃんは大天使ナノエルの可能性が微粒子レベルで存在している。

 流石なのはちゃんだな、まさか天使になっているとは。

 

 なんということでしょう、匠の手によって窓際には彩を加えるためのお土産「パインサラダ」が置かれ、殺風景だった病室が南国リゾートのようになったではありませんか!

 ……なってねぇよ。

 パインサラダで病室が変化するとか魔導師もビックリだ。

 とりあえず立っているのも疲れたので椅子に座らせてもらう。

 

 当たり障りのないジャブ程度の会話。

 そして沈黙。

 度々、なのはちゃんは言葉を詰まらせている場面があった。

 きっと何か聞きたいことがあるのだろう。

 なのはちゃんから視線を外し、ルービックキューブを無言で回転させる。

 ルービックキューブの面を揃えては崩すといった作業によって起きる無機質なスライド音と回転によって生じる風切り音が病室に響いていた。

 意を決したように、なのはちゃんが強い視線を俺に向けた。

 少しの間を空けてから絞り出すように呟いた。

 先週、俺がどこに居たのか知りたいのだと。

 ……た、大変はずかしいのですが、地下に引き籠ってました。

 

 俺の返事に何か思うところがあったのか、難しい顔をしていたがすぐに何時ものように笑顔になっており、翳りは一切なくなっていた。

 会話もさっきまで言葉が詰まっていたことなど無かったかのごとく次から次へと喋り続けていた。

 そして、会話が途切れる。

 お茶を汲んで渡すと、なのはちゃんはぽつりぽつりとゆっくりと胸の内を吐き出すように呟いた。

 なのはちゃんはもう一度空を飛びたいらしい。

 怪我に付け加えて疲労によって身体が元の調子を取り戻すかわからないとも。

 悩むことは無いと思う。

 なのはちゃんなら完治したら再び飛べるだろう。

 もしかしたら以前よりももっと速くなっているかもしれない。

 だから、焦らずゆっくりリハビリしたらいい。

 俺にはわかる、なのはちゃんの背中には翼があることが。

 俺にしか見えないけれど、絶対ある。

 

 18対だか36対だか知らないが、天使のような羽根があるに違いない。

 だって大天使ナノトロンだもの。

 

 入室したときよりは幾分か元気になったなのはちゃんにそろそろ帰る事を告げる。

 ノックとともに扉が開くことで来客を知らせた。

 そろそろ失礼しようかと杖を握り、腰を浮かせたところで視界の端に映ったのは飛来する黄色の魔力弾。

 飛雷弾だなと無駄なことを頭の片隅で考えつつ、軌道からなのはちゃんに当たるモノがないことを判断して軽く身を引いて回避する。

 パインサラダが爆発した。

 

 

 

 パインサラダと壁の破片が微塵となって室内に飛び散る。

 破片とパイナップルの欠片を杖で叩き落としながら立ち上がる。

 デバイスを構え、バリアジャケットを展開しているフェイトちゃんが入口を陣取っていた。

 久しぶりの再会で、歓びのあまり帰宅を許さない流れとか?

 モテ期到来の予感!

 ……。

 うん、無いな。

 

 ちょっとよくわからないけど、フェイトちゃんが俺に敵意を持たれているのはわかる。

 聞く耳を持ってくれるかわからないが、魔力弾を生成して周囲に待機させているフェイトちゃんの様子から話し合いは難しいだろうと判断。

 これは撤退する流れだろう。

 撤退戦で重要なのは退路……塞がれている。

 壁を砕くには魔力が足りない。

 怪我しているナノエル様を人質にするわけにもいかない。

 ――おれはてんいをおこなった。……しかし、MPがたりない!――

 ちょっと……いや、かなりよくない状況だ。

 

 魔法を受けたとしても手足のどれかならば中身が爆ぜる程度で緩和できるが、胴体に直撃するとまずい。

 直撃したら重症は免れないし、経験則からいえば死ぬ。

 非殺傷なら安全だと管理局が言っていたな? あれは嘘だ!

 リンカーコアもまともに活動していない汎用人型魔導生物オリシュゲリオンには非殺傷など無意味だ。

 抵抗しようとして魔力が無くなって死ぬ、たぶん。

 つまり魔力を奪って生命活動を行えなくして、じわじわと嬲り殺しにしようというのか。

 フェイトちゃんこわい。

 

 そんな下らないことを考えていたが、決断は早かった。

 こんな室内で戦えるか、俺は出ていくぞ!

 ルービックキューブを「ペルソナァッ!」と叫びながら握りつぶす。

 叫ぶ意味は無い。

 あるとしたら気合が入るくらい。

 

 フェイトちゃんが警戒したのを確認し、四散したルービックキューブの中から漏れだす魔力を取り出した。

 微々たる量だが毎日溜めこんだ俺の努力の成果であり、切り札でもある。

 可愛がってた妹のお見舞いにきたら、知人の少女に襲撃されて切り札を切るハメになったとか冗談が過ぎる。

 ルービックキューブの残骸を見ていると輝かしい思い出がよみがえってくる。

 チンクの頭に「ルービックキューブをシュート! エキサイティング! ……すまん、そんなに背が小さくなってしまうとは」と小粋なジョークを飛ばしたり、メガネ割ったり、地中に潜っているセインを震脚で気絶させて[*いしのなかにいる*]を再現してみたり、めがね割ったり、トーレをターボババアと名付けてみたり、眼鏡割ったり、会話の度にロゼの胸と尻に視線を送り続けるというセクハラしたり、めがね割ったり、ドゥーエとウーノの製造時期を聞いてBBAと呟いてみたり……ルービックキューブとともに過ごした日々は今となっては良き思ひ出です。

 BBAに関してはきっと調整とかで長い間眠っていたから問題ないはず(震え声)

 キレたりしたら肯定していることと同じだと何故わからないのだろうか。

 

 

 

 壁をぶち破り、その勢いのまま外へと身を投げる。

 転移が行えるほどの魔力を得られたわけでもない、戦闘を前提とした全力で動ける時間もほとんどない。

 さらに魔力が切れてしまえば立ち上がることも難しくなる。

 着地と同時に両足へと魔力を送り、走り抜けるしかないだろう。

 落下までやたらと長くかかっているのは4階だったからだ、忘れていたが。

 

 襲い掛かってくる弾幕で直撃するものだけを狙い、一緒に落下している破片を投げつけることで軌道を変える。

 逸らし切れない弾は魔力を込めた杖で破壊する。

 途中で杖が折れたのでフェイトちゃんに向けて投げつけるが容易く弾かれた。

 空中では踏ん張りが効かないから威力が出なかったか。

 

 地に衝撃を逃がしつつ、舞い上がった芝と土が身体に降り注ぐ。

 一瞬でも時間を稼ぐため、身を隠すように衝撃を大袈裟に伝えて巻き上げたのだ。。

 とりあえず杖を投げつけることで着地の瞬間を狙われない様にしたが上手くいったようだ。

 街中、というか病院内で魔法を使用しているフェイトちゃんに内心で舌打ちしながら逃走経路を探し、どのように逃げるかをシミュレート。

 しかし、考えも纏まらない内に土煙が吹き飛ぶほどの弾幕が放たれた。

 転がるように回避する。

 目標を失った魔力弾が弧を描いて再び襲い掛かって来た。

 間違いなく誘導弾だろう。

 

 フェイトちゃんの目的は不明だが、誘導弾による移動先の誘導だろう。

 そして砲撃魔法かバインドによって詰め、と。

 近接や直射も織り交ぜるだろうが、終着点は間違いなくそこだろう。

 だから俺は誘導されているかのように動き、彼我の距離を把握することに努めた。

 

 確実にバインドで捉えられるであろう、そんな場所まで誘導された。

 あとはフェイトちゃんの思惑通りに動いてバインド、される直前で抜け出す。

 そして一直線に逃走し、地下道に逃げ込む。

 簡単で完璧だ。

 王道すぎて失敗するのも難しいだろう。

 

 終着点は人が周りにおらず、比較的広い場所だった。

 噴水から空へと登る水がなんとも涼やかだ。

 フェイトちゃんがバインドを放とうとしているのか、今までとほんの僅かばかり動きが固い。

 よし、今……なっ!?

 待っていたフェイトちゃんによるバインドよりも早く、そして数多くのバインドが俺へと迫っていた。

 ああ、管理局員が駆けつけたのか。

 逃走の機会をうかがって時間を駆けすぎたのが敗因だな。

 慢心ってやつか。

 魔力もすぐに切れるだろうから抵抗できない。

 上手くいかないことばかりだ。

 

 

 

 

 

 (警察と裁判所を一緒にしちゃ)いかんでしょ。

 バインドされて逮捕→裁判のコンボである。

 しかも3日と経たずに裁かれるスピード公判。

 俺の弁護士が全く働いてくれない、頼むからなるほど君レベルの弁護士を付けてくれ。

 異議あり!!!とか、全くないから。

 逆転裁判の世界とか事件が多すぎてスピード裁判と化しているとか、こわいね。

 現実逃避している間にも身に覚えのない証拠が詰みあがるとともに刑期が延びていく。

 否認しても黙秘しても無意味とか管理局の恐ろしさを味わっています。

 

 明らかに俺では手が出せないような事件も犯人にされていく。

 なんという出来レース。

 清々しさすら感じ始め、欠伸を噛み殺したころ、俺にとって絶対に許すことのできない罪がかぶせられた。

 高町なのは襲撃の犯人として断定されたのだ。

 

 

 

 あ”あ”!?

 

 

 

 『100sy■…m…………....100周目』

 

 

 

 提示されている証拠など目に入らなかった。

 怒りで視界が赤く染まったから。

 胸の奥が燃えているかのように熱かった。

 怒りで煮えたぎったのか燃えているのか、どちらかわからないが熱くて、堪らない。

 伝搬しているのか、手足も熱を帯びていた。

 魔力を放出しながら拘束具をぶち破ろうと全身に力を入れる。

 引き千切るのは容易く無いが、困難でもない。

 半ばまで破壊すると、無数のバインドによって縛られ、地面に這いつくばることになった。

 それでも怒りは収まらない。

 

 なのはちゃんが襲撃された際の映像が流れている。

 黒い靄を纏った”俺”がなのはちゃんを撃墜した映像が流れている。

 これがなんだというのだ。

 怒りが収まらない。

 

 その”俺”は闇の書を持っていた。

 罪状に不当なロストロギアの所持も加わった。

 自分の中で封印との繋がりを感じられることに気付いた。

 そんなこと、どうでもよかった。

 ただ、闇の書が持ち出されていることで怒りの炎が燃え上がった。

 

 ”俺”の右手には闇の書、左手には通常のデバイス。

 闇の書を持っているが、ビニール傘が突き刺さり、封印されたままで起動していないようだ。

 強固にかけた封印処理がボロボロに破壊されているが、それでも縛り続けている。

 さらに封印の術式に大きな欠損も見て取れる。

 大きく弛んだときに解除しようと失敗したものだろう、ジルさんの凍結は無くなっていた。

 崩した場所を覆う様に封印が十重二十重と歪に重ね掛けされていることから、誰かが解除しようと手を出したのだろう。

 

 俺と繋がっているのに無理に解こうとすれば封印は雁字搦めになっていくはずだ。

 ぐちゃぐちゃにした際に闇の書を演算装置として簡易的に弄り、自己封印をかけ続ける様に組んだから。

 俺が自ら魔力を切って解除するまでは仕込んだビニール傘と制御メダルの演算によって封印が掛かり続ける。

 誰も起動させることはできない。

 欠点は俺が死ねば弛むが、誰かしら術式を補助したり重ね掛けすれば封印は働くはずだ。

 それでも危険には変わりないのだけれど。

 闇の書を見ていると俺のやったことが否定された、そんな気さえしてくる。

 腸が煮え返りそうだ。

 

 吸収してバインドを食い破る。

 四肢が自由になって……。

 それで。

 それで……。

 どうすればいいのだろうか。

 逃亡か、戦闘か。

 逃亡だとすれば、どこに逃げればいい。

 どこに逃げていいのだろうか。

 逃げる場所などあるのか。

 逃げていい場所などあるのだろうか。

 いや、俺に逃げ込める場所など無い。

 となると戦闘か。

 この場で戦闘など自らの罪を認めた様なモノではないか。

 ならば逃亡も同様だ。

 いや、すでに無実を訴える意味などない。

 この場では罪の有無など問われていない、あちらで断定しているだけだ。

 逃亡か。

 逃げて、逃げて、逃げて……そして、どうする。

 

 転移の術式を展開させる。

 何処でもいい。

 まず何処かに逃げて、それから考えれば……。

 

 すぐに行動に移せなかったのが悪かった。

 転移が発動する前に紫色のバインドによって全身を締め上げられた。

 飛んできた方向を睨みつける。

 その先では、はやてちゃんに似た銀髪の少女が偉そうに薄い胸を張っていた。

 怪訝に思っていると、俺の前に車いすに乗った少女がゆっくりと現れた。

 銀髪の少女はディアーチェという名前らしい。

 そして、銀髪少女よりも少し年上の車いすに乗った少女の名前は、八神はやてだった。

 

 言葉は出なかった。

 ただ、驚くばかりだった。

 闇の書と繋がっている証拠である”足”。

 何も映さない曇りガラスのような瞳。

 目の奥に宿るプレシアに似た仄暗い光。

 それらは別にどうでもいい。

 俺が驚いたのは、ビニール傘も刺さっていない、封印によって氷の鎖で雁字搦めにされていない、シーリングの術式が纏わりついていない、真っさらな新品同様の状態の”闇の書”がはやてちゃんのすぐ近くに浮遊していることだった。

 闇の書とは違う。

 色だけでは無い、違和感を感じる。

 紛い物か、レプリカか。

 であるならば、闇の書のようなモノと表現するのが正しいだろうか。

 それを見ていると怒りなど冷めてしまった。

 俺が拘束具を引き千切ったためにちょっとした混乱はあったが、すぐに鳴りを潜めた。

 落ち着いたところで裁判が再開された。

 

 いつ、どこで、どのように、それを手に入れたか問う。

 返答はなかった。

 静粛に、とは裁判長っぽい人の声。

 そして俺が静かになると罪が一つ増えそうになるという理不尽。

 俺が闇の書を所持して云々とかいう話になっている。

 はやてちゃんが所持者だったはずだと述べると、有り得ないとばかりに否定されてしまった。

 今、はやてちゃんが所持しているのは紫天の書という闇の書に対抗するための本らしい。

 

 行き過ぎた機能の拡張によるバグが闇の書だ。

 そんなものがあるのだろうか。

 そんなことがあっていいのだろうか。

 クロノくんやリンディさんは長い間、闇の書を追いかけ続けたが解決法を見いだせていなかった。

 ロッテリアとジルさんが苦難の末に導き出した答えは所持者ごと永久封印だ。

 有り得ない。

 有り得るはずがない。

 有り得ていいはずがない。

 有り得たとしたら、俺の行いは必要なかったことになる。

 何度もやり直した結果が否定されることになる。

 俺が無意味になる。

 ――だから、認められるわけないじゃないか。

 

 怒りがふつふつと湧き上がる。

 わけのわからない本ごときが俺を否定しようというのだから。

 破壊してしまいたい衝動に身を任せようかというときに、八神はやては被害者であり、捜索の協力者であると告げられた。

 冷や水をかけられた気分だ。

 怒りが、心が、急速に冷え込んでいく。

 

 

 

 そうかそうか、つまり君はそういう奴だったんだな。

 

 

 

 

 

 

 手足の無くなった生活というのは初めてだ。

 まあ、生活といえるほどの自由が保障されているわけないのだが。

 実験し易いようにと切断されただけだから仕方ないことだ。

 サンプルとしても使うとか言っていたかもしれないが。

 俺が置かれている実験室は高濃度AMFが展開されており、奇妙なヘッドギアを被った白衣を着た人間が何人も入ってくるのが見えた。

 実験室は部屋自体がAMF発生装置で壁は巨大なスピーカーのようなタスクジャマーとなっており、魔法と思考の阻害が非常に鬱陶しい。

 最初に研究員を殺しまくったことでビビったのか、ガチガチなメタ対策である。

 ヘッドギアはタスクジャマーの影響を受けない様に、とのことだ。

 

 実験自体は胸に突き刺された管から様々な種類の魔力を流されるだけだが、非常に詰まらない。

 そろそろ肉体が劣化してくるので脳髄とリンカーコアだけにするとかしないとか。

 魔導生物的な位置づけなので鮮度が弱点ということか、意味わからん。

 単に魔力を送らないようにしているだけだが。

 四肢切断は仕方なかったが、脳髄保管は勘弁である。

 アキラ君でもR戦闘機乗りでもないから断らせてもらおう。

 ちょうどリンカーコアの使い方も思い出せてきたところだ。

 現状でも体内でなら単純な魔法ともいえない魔力を使った自爆が使える自信がある。

 そのうち匠って名乗ろうかと。

 

 一度目の自爆で胸骨を爆ぜさせ、内臓と血飛沫を撒き散らす。

 空気中に散布された魔力を利用し、血で出来た手足を形成する。

 血液に含まれる魔力を操っているだけだが、無いよりはマシだろう。

 AMFによって結合が解除されるまえにモブ研究員を八つ裂きにし、魔力を吸い取って室内に撒き散らす。

 モブの血飛沫の御蔭でAMFを幾らか緩和できた気がするので、再び体内から魔力を放出する。

 気分はサイコガンダムの拡散粒子砲である。

 欠点として魔力が体内から突き破って出てくるので、血飛沫と内臓で汚れることか。

 壁を、天上を、床を、部屋を破壊する。

 魔法と思考の阻害が解除されたことを感じ取り、演算を開始する。

 逃げ出したやつも、腰を抜かしたやつも、目を輝かせているやつも平等に殺してやるよ。

 どう考えてもルビコン川を渡りきった技術部のクズどもを道連れにするだなんて、俺はホントに世の為に生きている気がして泣けてくるよ。

 俺を基点として次元震を発動させる。

 規模は知らん。

 全部巻き込んでおきたいところだ。

 見知った魔力が突入して来るのを感じたが、一言も交わさずに転移で別の世界へと飛ばしておく。

 遠いが地球に近く、次元震の影響も受けない安全な場所だ。

 何故こんなことをするかだなんて、わかりきっているだろう。

 そうするのが一番だっただけだ。

 

 

 

 自殺など誰が好むものかよ。

 嗚呼、忌々しい。

 

 

 

 

 

 『101周目』

 

 スカさんとの目覚めの邂逅をあっさり流してデータベースを漁って、百代 光陰(ハクタイ コウイン)の軌跡を辿る。

 66年から表立った活動を始めているようで、それ以前については明記されておらず罪状だけが連なっている状態だ。

 俺が目覚める前から動きまわるこいつは……。

 

 

 

 手足の不自由さをマイクロマシンで補いつつ、動作確認を念入りに行っていく。

 今回はリンカーコアが完全に稼働しているようで、理想的な動きが再現できている。

 未熟な戦闘機人ならばデコピンで相手ができる程度だ。

 別に未熟じゃなくともデコピンなら一撃で倒せるのだけれど。

 骨格を機械で構成している戦闘機人では衝撃を内部に伝えることがきできる俺とは相性が悪すぎる。

 魔力強化したらフレームをぐちゃぐちゃに出来る身としてはもう少し強度を上げられないのかと心配になる。

 

 身体は好調だし、動き回っても問題無さそうだ。

 この穴蔵で戦闘機人の相手をするだけなのも飽きてきた、そろそろ外に出てもいい頃合いだろう。

 手元にデバイスが無いのが残念でならない。

 

 

 

 近くの管理世界を探し、無ければその近くの無人世界、さらに観測指定世界、果ては管理外世界と転移して捜索を繰り返す。

 目的は”俺”を探すことだ。

 あれを見つけない限り、俺にはどうすることも出来ない。

 見つけたとしてもどうしたらいいかわからんが、捕まえてから考えることにしよう。

 

 データベースを漁った際にわかったこととしては、どうやら研究施設をメインに襲撃しているようだ。

 昼夜のどちらでも現れ、合法・違法を問わずに襲撃し、管理局員と必ず一戦してから逃走するため罪状が増え続けるという。

 糞野郎すぎて殺したくなる。

 

 何故かロゼがついて来ることとなった。

 俺が逃げないようにとのお目付け役だろうかと思ったがスカさんがそんなこと考えているとは思えない。

 逃げたとしても行くところなど無い。

 とりあえず今後はどこを襲撃するかとロゼと考察するが一切わからない。

 完全にランダムとしか思えないのだ。

 今回もダメだったと結論を下し、チンクやセインと模擬戦をするためにスカさんの拠点に戻る。

 

 そして、なのはちゃんが撃墜された時期が迫っていたことに気付いた。

 失念していたが、正確な日にちはわからないのだ。

 もっと真面目に調べておけばよかった。

 不確定なので、事件が起こる前に捕捉するつもりだったが仕方ない。

 なのはちゃんの行く先々を張り込んで捕まえることにしよう。

 

 

 

 ストーカー……じゃなくて後をこっそり追い続けること三週間。

 その間は暇だったのでずっとジャミングやステルスの術式を改良しまくってた。

 索敵から完全に消失する魔力弾を開発してみた。

 結構なリソースを喰うので戦闘中を想定すると同時使用できるのは4発前後が限界だが、十分強いのではないだろうか。

 暗殺的な意味で。

 

 ルービックキューブで遊んでいると、なのはちゃんが任務を終えた様子が見えた。

 どうやらこの無人世界から帰還するらしい。

 俺はいなくなるまで見ているからロゼは先に転移しておくように伝える。

 今日も何も無かったな、と安心していると別の局員が騒ぎ出した。

 距離が遠いので音が拾えず、近づこうかと悩んでいるとなのはちゃんを含めた3人で飛んで行った。

 帰還しなくてよいのだろうかと思いつつ、木々を縫う様に跳びながら後を追う。

 

 時間にして5分も経たずに目的地へとたどり着いたようで、各々が空から降りてくる。

 歩き回ったり、サーチャーを飛ばしたりと周辺を確認しているようだ。

 まさか俺の完璧なストーカー行為がバレたのだろうか。

 捕捉された場合に備えて転移の魔法を組んでいると、なのはちゃんたちが念入りに地面を確認している。

 何かあるのだろうか。

 

 気になったのでもう少し近づいてみようと、周りに追加の人員が調べるために索敵を広げる。

 接近する人影を捕捉した。

 目視したが管理局員ではない。

 そいつは、心待ちにした”俺”だった。

 

 転移で正面に躍り出る。

 貴様の化けの皮を剥いで俺は帰るのだと魔法を組む。

 全力の一撃で葬りたいところだが、証拠を逃しては意味がなくなってしまう。

 ただ、バインドを使うのは嫌だ。

 非殺傷を組み込む。

 

 闇に、染まれ

 ――デアボリック・エミッション

 

 俺を中心に、球形の広域魔力攻撃が展開された。

 

 

 回避されないようにと使ったが魔力消費が馬鹿にならない。

 そろそろ良いだろうと解除する。

 一撃で倒すのが理想だったが、やはり上手くいかなかったようだ。

 相手はシールドを全面に張ることで凌いでいた。

 まあ、防御に回すため魔力はかなり削れるので良しとしよう。

 シールドを解いて魔法陣を展開した相手の死角から誘導弾をぶち込んだ。

 

 やはりステルス性を上げまくった魔力弾は使いやすい。

 ちなみに魔力消費はお察しである。

 1発を当てて仰け反ったところに2、3と当てる。

 そしてシールドを張った瞬間に背後で漂わせていた弾が、闇の書を握っていた手に襲い掛かった。

 肘のあたりで切断された腕が闇の書とともに吹っ飛んだ。

 

 確実に非殺傷だったのに何故だし、と疑問を抱きながら腕と闇の書を回収した。

 封印を解除しようという努力は垣間見れるが未だに程遠いことが見てわかる。

 腕はしょうがないとして、とりあえずバインドで捕獲しようかと組んでいると管理局員に襲撃された。

 狙うべきは俺じゃなくてあっちの……逃げられていた。

 握っていた腕は黒い靄となって消えていった。

 これに見覚えが……。

 そう考えているとバインドが飛んできて縛られた。

 

 続々と局員が集まってくる。

 ここにいる全員が全員、俺を捕えようとしている。

 違う。

 俺じゃない。

 魔法を使うか、使わないか。

 ロゼさんが現れて、俺を転移させた。

 

 

 

 スカさんのアジトで休養をとる。

 何もしたくない気分だ。

 あの黒い靄は見覚えがあった。

 ユウくんやクロノくん、変態仮面となったロッテリアがゲシュペンストに憑りつかれているときに発している魔力に酷似しているのだ。

 つまるところ、あれはゲシュペンストだろう。

 何かに憑りついているのか、自身で変身しているのか、そこまではわからない。

 

 犯人がいなくなってしまった。

 ”俺”を捕まえれば解決ともいかなくなってしまった。

 ゲシュペンストを捕まえても証明できる自信がない。

 魔力の波長などを調べれば、とも考えたがあの裁判を思い出すと無意味だろう。

 変態仮面を暴いてロッテリアが出てくるように、”俺”を暴いて潔い犯人でも出て来てくれないだろか。

 ゲシュペンストとか犯人にするのは無理だろうし。

 

 

 

 スカさんが闇の書に興味を持ったらしい。

 ちょっと使ってみようぜと言いだした。

 危ないから止めた方がいいと告げるが、問題ないの一点張り。

 八神はやてを思い出す。

 そして、これを放棄したのだと思い至る。

 そもそも関係ないとまで言っていた。

 ならば貰っても構わないだろう。

 

 封印を解除する。

 デバイスを引き抜き、久方ぶりに相棒を撫でる。

 ジャミングで闇の書がどこか行かない様に固定して、スカさんが機器に繋ぐのを見守る。

 飲み込もうとしてきたのでOWでぐちゃぐちゃにしてシーリングをかけまくる。

 一度中身を真っ白にしてみようと提案されたので了承する。

 ぐちゃぐちゃになっているが幾らか残っていると言われたが、危険があるかもしれないので真っ白にしておこうと強く助言。

 これで繋がりが切れれば、はやてちゃんも歩けるようになるね。

 蒐集したリンカーコアだけ残すこととなった。

 

 内部は保有魔力を除いて基礎的な機能以外は真っ白となった。

 危険なロストロギアを直す俺とスカさんが次元犯罪者とか管理局は何もわかっていない。

 とりあえず調べていくと、防衛を司るプログラムが不具合を起こしているようだった。

 スカさんでも直せそうにないらしい。

 

 ……無傷の管制プログラムと繋げて何とかしようということとなった。

 それから何度も防御プログラムを呼び出してみるがうんともすんとも言わなかった。

 空になっている可能性があるらしい。

 防衛を司るのに空って……。

 

 

 

 なのはちゃんが入院したらしい。

 今回は襲撃ではなく、過労のようだ。

 働きすぎていたのだろう。

 心配なので前回にならって見舞いに行く。

 

 そして、再びフェイトちゃんに斬りかかられた。

 半泣きになりながら転移して逃亡。

 襲撃しにきた犯人と思われていた、本気で泣きそう。

 

 

 

 ガジェットのテストに呼ばれたのでついていった。

 戦闘機人と管理局員のドンパチに巻き込まれた。

 竜也くんに殺意を向けられながら斬りかかられた。

 泣いた。

 

 

 

 闇の書に無理やりリンカーコアを繋いで主となった。

 なお使い道はない模様。

 単に八神はやてが手に入れる可能性を零にしたかっただけ。

 

 

 

 そして、俺は無人世界へと流れついた。

 心が折れた。

 もう俺には何もない。

 

 世捨て人のような生活がはじまった。

 人と関わらない。

 なんて素敵。

 この世界にきてすぐに見つけた山猫とは毎日心を通わせるのが日課である。

 あとは毎日小さな魔導生物のリンカーコアを餌の代わりに貰って闇の書に注ぐ生活。

 起動したけどしょぼすぎて微妙だった。

 

 そんな寂しさを紛らわせるため、山猫を撫でる。

 四六時中、膝の上や肩、頭の上とどこかにいるくらいには懐かれた。

 リニスとかユーノくん、アルフ、ロッテリアは使い魔だったことを思い出す。

 なんというか、否定しない話し相手が欲しくなった。

 全てを肯定というわけではないが、主を思いやってくれるという癒し系だし羨ましい。

 このままだと孤独死しそうだ。

 でも人がいる場所だと管理局に見つけられて知り合いに矛を向けられたら死にたくなる。

 もう使い魔を造るしかないね!

 闇の書から守護者の項目を探しだし、山猫を組み込んで生成。

 

 現れたのは一人の少女。

 シュテル・ザ・デストラクターという名前らしい。

 なのはちゃんに似ていた。

 自分の未練がましさと女々しさに死にたくなった。

 

 

 

 

 

 悲しみは時が癒してくれるような気がする。

 必要な物資を買いに行くくらいしか街に行ってない。

 金は街で買い集めたジャンクでテキトーにデバイスを組んで売ったりすることで稼いだ。

 管理局に関わらないって素晴らしい。

 

 そんな感じでシュテルと過ごしているとロゼが現れた。

 数年ぶりにあった彼女はメロンとなっていた、凄い。

 シュテルがいじけた。

 戦力差が激しいからね、しょうがない。

 

 管理局と戦争をするらしい。

 戦場に出てきそうな管理局の人員、それも俺に縁のありそうな人物をピックアップした資料を渡された。

 味方につけということでもないらしく、好きにしたらいいと言い残して帰って行った。

 そういうのが一番困る。

 

 シュテルには悪いが、使い魔の契約を切った。

 

 

 

 

 

 見知らぬ戦闘機人を捕縛する。

 たぶん、後期ロットなのだろう。

 戦力不足のようでどこもかしこも酷い戦場だった。

 目に付いた場所から薙ぎ払い、そのまま管理局員に混ざってゆりかごへ突入。

 

 闇の書の注目度は一味違うぜ。

 戦闘機人、ガジェット、管理局員、全てからターゲットされる。

 泣きたい。

 

 最深部まで目の前に現れる一切合財を薙ぎ払って進む。

 成長して大きくなったなのはちゃんが戦闘していた。

 綺麗になったねと感動しているが忙しいらしい。

 娘とバトっているとか。

 相手は誰だよ。

 怒りでついOWを起動させてしまった。

 

 戦闘に手出ししないようにと頼まれて待機。

 ゆりかごを破壊しようかという魔法を放って決着した。

 娘にそんなにビームを撃ちこんで大丈夫なのだろうかと心配になりつつ話を聞く。

 OWを使っているが、非殺傷だから大丈夫らしい。

 え、OWって普及してんの?

 驚きつつも娘について聞く、積もる話は後にして。

 

 

 

 

 犯人はスカリエッティ。

 

 

 

 スカさんと感動の対面となった。

 グラインドブレードで内部を破壊してスカさんに襲い掛かるというサプライズ付きだ。

 復活の貸しはガジェットテストと竜也くんに斬りかかられたという悲惨なイベントでチャラにしたから問題ないはず。

 そもそも頼んでないし。

 

 ウーノ、ドゥーエ、トーレとジャンクにする。

 訓練したときとあまり変わっていない気がする。

 いくらかは変わったが、やはり戦闘機人としてのスペックでゴリ押ししている感が否めない。

 最後にスカさんだ。

 手袋のようなデバイスが操る紐みたいなモノを容易くちぎって完勝。

 俺のOWが型落ちしていようとも、スカさんに負けるわけがない。

 内容によってはグラインドブレードでミキサーしてしまう可能性があるが、とりあえずなのはちゃんの娘について話を聞く。

 スカさんが生み出した聖王のクローンらしい。

 ……首が離れ無くて良かったね。

 

 

 スカさんを捕縛、他の戦闘機人も捕まったようだ。

 色々となのはちゃんと話した。

 実は俺がすでに捕捉されていて周囲の世界から徐々に封鎖されているという話まで聞いた。

 いつの間にかひどい状況に陥っていたようだ。

 

 大方話たころに軽傷を負ったユウくんとリニスが現れた。

 戦闘機人と動力を担当していたらしい。

 ユウくんが投降を呼びかけてきた。

 裁判を受ける権利があるとか。

 ……裁判とか言われると悪い印象しかない。

 

 悩んでいると説得された。

 また一緒に暮らしたいとかそんな程度のことだ。

 そんな程度のことだが、俺には響いた。

 弟の言葉が心に染み込むようだった。

 投降しよう。

 

 公正な裁判を受けられるよね、と確認しておく。

 頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 弟だと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。

 思い出せばユウくんはいつも俺の敵に回っていた。

 裏切られていた。

 いや、俺が勝手に信頼していただけなのだろう。

 

 

 

 

 

 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは

 

 

 

 

 

 逃げても追いかけられるなら、全部壊す。

 

 

 

 

 

 『102周目』

 

 なのはちゃんが撃墜される日が迫ってきた。

 ストーカー……見守りが捗る。

 そういえばなのはちゃんたちが何か見つけていた気がする。

 あのときはゲシュペンストと管理局員のせいで逃げる必要があったが、今回は確認できそうだ。

 先回りして地面を探る。

 サーチャーで検査するがどうやら内部に建造物があるようだ。

 どこかから入れないだろうかと念入りに探してみるが見つからない。

 埒が明かないので魔法で吹っ飛ばした。

 音が生じるが、その点は諦めた。

 さっさと転移して逃げれば問題ないだろう。

 

 中を調べるが研究施設のようだ。

 すでに放棄されているのか無人ではあるが、電気は生きていた。

 行われていた実験はクローンの製造でベースは……。

 資料を漁っていると俺に化けたゲシュペンストが襲撃してきた。

 咄嗟に地上へと強制的に転移する。

 内部で肉弾戦のほうが良かったかもしれないが、憑りつかれる可能性を考えるとやはり地上の開けた場所で距離を取るのが一番だった。

 

 魔力弾をばら撒いて距離をとる。

 デアボリック・エミッションで消滅を狙おうと魔法陣を展開。

 高速で飛来する魔導師を捕捉した。

 なのはちゃんだった。

 舌打ちが出た。

 

 疲労などを考慮すると間違いなく戦闘すべきではない。

 笑顔で助けにきたと言ってくれたが、現状では人質になるかもしれないと考えると厄介この上ない。

 疲労を蓄積するような魔導師に手伝ってもらうことはないと突っぱねるが聞き入れてもらえず。

 ゲシュペンストに牽制で魔力弾を放ちながらなのはちゃんをバインドで縛って強制転移を開始する。

 なのはちゃんに、きちんと休息がとれるようになったら手伝って欲しいと伝えて転移させた。

 

 ここでゲシュペンストを滅ぼしておかなければならない。

 俺の罪状が積み重なるからだ。

 ホントに迷惑でしかない。

 あと闇の書を持ち歩くのもやめてほしい。

 八神に渡ったらどうするのだ。

 腕を撥ねて闇の書を奪った。

 

 そして、バインドで捉え、シーリングをかけた。

 捕獲成功だろうと安心していると、”俺”の姿をしていたゲシュペンストが変形を始めた。

 そして化け物となり、ボエー!と唸り声をあげた。

 ……なんだ、こいつ。

 大きさは5mほどだがフォルムが異様で、情報が何もない状態で戦いたいと思えない。

 飛んできたが驚いて動きを止めた管理局員たちを強制的に転移させる。

 足手まといってレベルじゃない。

 むしろ俺もバックれよう。

 予想以上だった。

 闇の書を戦利品として撤退を決めた。

 

 

 

 前回と同様、闇の書を真っ白にした。

 そのまま俺を主として登録しておいた。

 ここまでしたらシュテルを探しに無人世界に行くしかない。

 

 シュテルと心を通わせつつ、研究施設を襲撃する。

 ゲシュペンストが狙っているのだから、どこかで出会えると期待して。

 なかなか当たりを引けないまま、襲撃を繰り返す。

 

 エリオという少年を拾ってしまった。

 

 

 

 スカさんの拠点に放置して戦闘機人に相手させるのもなあ、と悩む。

 絶対に歪んだ人間性を発揮しそうだ。

 俺が連れ歩くのも問題だろう。

 ちょっと幼すぎる。

 刷り込み、というわけでもないが何故だか俺にべったりになってしまった。

 ちょうどシュテルとも契約したので幼子を2人も抱えることに。

 なんか頭痛がする。

 

 調整の際に起こされたノーヴェやディエチ、暇を持て余している他の戦闘機人の相手をしながら、エリオやシュテルを可愛がる。

 無垢な2人を振り払えるほどの畜生にはなれなかった。

 戦闘機人たちを相手にしつつ、興味を持ったエリオに手ほどき。

 時間ができればシュテルのプログラムを弄るという日々だ。

 

 

 

 子育てに悩んでいると、通りがかったスカさんが俺に声をかけた。

 臨海第8空港に”俺”が現れるらしい。

 絶対だと言い切られた。

 なぜならレリック狙いだから、だとか。

 ううむ。

 

 

 

 

 

 

 空港内に火の手が上がる。

 壁や天井が大きな音を立てて崩れていく。

 その様子を横目に黙々と突き進む。

 落下してきた障害物は逸らしたり、浮かせたりと被害が及ばないようにする。

 流石に人が助けを求めていたり、危険な目に遭っていたりすれば助ける。

 クアットロの馬鹿が何かを企んでいたが、ゲシュペンストに襲撃されて暴発したらしい。

 死にはしなかったらしいので転移させたが、当分の間は調整槽行きだろう。

 

 深い傷を負ったゲシュペンストの後を、零れている魔力を辿って追いかける。

 徐々に近づいてきた。

 被害が少なく、火がついていない場所に出た。

 罅の入った壁を見て、長居はできそうにないと思った。

 

 ピアノの音が聞こえる。

 災害にミスマッチだと少し笑った。

 魔力を辿って着いたのは、コンサートホールのような場所だった。

 

 広いホールだった。

 ガラス張りの天蓋からは空が透けて見えた。

 中央のステージに置かれたグランドピアノからひとりでに曲が奏でられている。

 横たわる化け物がボエーと鳴いていた。

 レリックの爆発に巻き込まれたのだろうか、痛々しく身体が欠けていた。

 傷口から魔力が流れだし、淡い紫の光が零れている。

 

 チャージを終えたディバインバスターを撃ちこむ。

 1度ならず2度、3度。

 撃つたびに苛立ちが込み上げ、心が急かす。

 ディバインバスターの連射によって砕けたゲシュペンストに近寄る。

 生意気にもボエーと噛みついてきたので逆に掴んで持ち上げる。

 地面に何度も叩きつける。

 構成している魔力が砕けて周囲を紫色の光で染める。

 壁に向けて全力で放り投げた。

 ホールが音を立てて崩れ始めた。

 ピアノの旋律が聞こえる。

 

 ディバインバスターを放った。

 

 

 

 

 

 『--』

 

 

 

 「投降してください」

 

 放ったディバインバスターを掻い潜ってユウくんが現れた。

 いつも輝いていた金色の髪はくすんでいて、濁っているようにも見えた。

 愛らしい顔立ちも、青ざめて深い隈が刻まれた今では幽鬼のようだ。

 心配だという思いを抱く反面、投降という言葉に苛立ちを覚えた。

 隣に立つリニスは小さな少年を抱え、ジッとこちらを見ているだけだった。

 姿は昔と全く変わっていなかった。

 先ほどまでいた化け物の姿は無くなっていた。

 少年の胸元にはゲシュペンストの残骸と思われる黒い球体が漂っていた。

 

 「貴方には裁判を受ける権利があります。だから投降してよ、兄さん……」

 

 ユウくんの言葉が脳を焼くようだった。

 色々な思いが鬩ぎ合って、どうすればいいのかわからなくなった。

 そして前回のことを思い出してスッと冷えた。

 全てが凍ったようだった。

 

 「断る。俺が投降することは二度とない。やっと気付いて、決めた」

 

 デバイスを構え、無数の魔法陣をホール内部にばら撒いた。

 宙に解き放たれた9枚のメダルが鳥のように舞う。

 

 「……ユウ」

 「わかってる、リニス。絶対に掴んでみせるから、今度こそ。もう間違えない」

 

 リニスの言葉に答えるように、自分に言い聞かせるように呟いた。

 カートリッジのリロードとともに薬莢が飛び出し、槍形のデバイスが音を立てて変形していく。

 最後に展開したブレードが熱で赤く輝き、そして回転するその姿はグラインドブレードに酷似していた。

 

 

 

 内部に蔓延る魔法陣から魔力弾が吐き出された。

 荒れ狂う暴力によってホールが崩壊していく。

 壁が崩れ、床が抉れた。

 椅子は軒並み吹き飛んだ。

 落下する天蓋が自動演奏のピアノを圧し潰した。

 悲鳴のような騒音が響き渡った。

 不可視の弾丸がユウを貫いた。

 

 

 

 

 

 

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