--4
――不穏の火曜日――
荒廃した大地で目が覚めた。
身体を戦闘に傾け過ぎたため休息を欲していたとかいないとか。
ティコが超怒ってます。
やっべ。
というかよく襲われなかったな、と思っているとクルースニクが魔力が高濃度すぎて悪魔が寄ってこなかったとおしえてくれた。
メギドラオンに使われた廃棄魔力が漂う場所には超強い悪魔がいそうだからビビって来なかったというわけか。
暴徒はジプス内がご執心とのことだ。
暴徒を蹴散らして取り返してもいいが、めんどくせ。
ティコが言うにはリリスに魅了されたやつがジプスに張られていた結界をイジちゃってあんな面倒事に発展したっぽい。
その隙を突いた暴徒の襲撃。
自分たちで責任を取った方が気持ちいいんじゃねとか思う。
そうだ、ヤマト印の電話があるじゃんと使うが圏外。
ジプスの襲撃によって名古屋内では電波がダメっぽい。
糞ですね。
そんなことを話していたらスマホの画面が消えてしまった。
戦闘中はずっとハーモナイザーを使用し続けていたため、電源が切れてしまったようだ。
ティコとは少しの間お別れかもしれない。
ジプスに戻って充電すべきだろうか。
悩む。
凄く悩む。
そもそも戻っても電気使えるかわからん。
とりあえず俺も街へ繰り出そう。
解決したら電波が回復するっしょ。
道に迷った。
何度目だろうか、災害後は道が滅茶苦茶で大変だわ。
むしろ最初から道を知らなかったし、迷ったというより探検じゃね。
藤岡弘、ごっこでもしようか。
待て、この先に悪魔が……!
くそっ毒を持ってやがる……!
気を付けろ!
ライダーキック!
爆散☆
みたいな。
違うか。
街中を闊歩する。
襲われている人がいたら助け、襲ってくる悪魔がいたら粉砕しする。
人助けしてCHAOSよりだった属性をLAW寄りにしてNEUTRALを目指す俺の崇高な理念がわからないんですかねえ(呆れ顔)。
なんか違うと思うけど、こまけえことはいいんだよ!!の精神だ。
でも人助けって結構LAWに寄るじゃん?
地下の廊から助ける時は調整しつつも女性だけは救助……なんの話だろうね。
マップに出現する悪魔をぶち殺しすぎて仲魔が集めにくいだとか、俺にはなんの話か全然わかんないよ。
人助けに精を出してたら悲鳴が聞こえたので駆けつける。
公園で無垢なる民草が虐げられている悲劇に出くわした救世主オリシュ。
とりあえずカーテンで真の餃子ヒーローごっこやってたので変な見た目は勘弁な。
ジュンゴが奮闘GUYな感じで抗争してた。
ドヤ顔でケータイをパカッとしているおっちゃんを撃破する。
対人戦において羅漢銭が強すぎ、余裕でした^q^
タツミーって呼んでくれてもいいのよ?
ジュンゴは礼を告げて去って行った。
寂しい……。
公園にある階段の踊り場で反復横跳びしているとヒロが走って来た。
名古屋に連絡が取れなくなってたから急いできたとか。
そういえば悪魔に襲撃された後、暴徒に占拠されてたよな。
詳しい事情がわからないが切羽詰ってるっぽい。
残念だが俺はそれ以上のことは知らないよと告げ、情報交換をしていると息を切らせたアイリが現れた。
どうしたのか尋ねるとジュンゴを探しているらしい。
今去って行った旨を告げると怒られた。
死に顔動画にアップされているらしいのだ。
ジュンゴを追うことにしよう。
ヒロたちはテレビ塔で情報通とやらに会いに行くらしい。
またソロである。
ジュンゴ探しを諦めた。
右も左もわからない土地で孤独に捜索とかイジメとしか思えない。
とりあえず電気街で充電器を探す。
朝の騒動で荷物を部屋に置きっぱなしにしてしまい、充電できるものが手元にないのだ。
悪魔を握撃で握りつぶしながら電気店に突入した。
悪魔が砕け散る様にビビったのか中を漁っていた男がメモリをくれたが欲しいのはこれじゃないのだ。
充電器を一緒に探してもらう。
途中で猫耳なヘッドホンを見つけた。
かなり良質っぽく男も店員かと思う程に勧めてきたので持ち帰る。
これがあればベル争いに参加できそうだ。
――1と2は関連性がほとんどないからデビサバ2から初めても大丈夫ですよ――
……なんか電波が。
とりあえず充電器も見つけて喜んでいると、襲撃者が……!!
まあ、またもアイリなんだけどね。
ジュンゴ探索が難航していると伝えると情報通が見つけられそうなので着いて来いと言われた。
ちょうど俺が持っているメモリが必要だったとか。
変なところでご都合主義が効いてて意味が無い。
男は情報通の名前を聞いて昇天した。
なんかすげえ。
ヒロや新田、ジョーも合流したのでみんなで情報通の元へ。
情報通は白チャイナを着た女性で名前はフミ。
眼福である。
餃子ヒーローのままなので白コンビですね。
嫌そうな顔しないでくだしあ。
アイリに餃子の皮を捨てられた。
このフミさんはスーパーハカーらしいのだ。
ハッカーじゃないところがすげえ。
キーボードをだかだかぴーぴーってやってるけど時間がかかるからその間は休憩となった。
パソコンに繋いでも充電できるんだよな、そういえば。
後で相談してみようかな。
アイリと情報交換する。
どうやらアイリは情報を集めていたっぽい。
残っていたジプス局員から話を聞いたり、物資を取り戻していたりと働き者である。
朝早くから動いて疲れがたまっていたのだろう、アイリが眠ってしまったので上着をかけておく。
隣で新田とヒロが重い話をしているのを聞かないようにする。
もっと雰囲気のある場所でそういうのはやってください。
ジョーも重い話を持ってきた。
流行ってんのかよ、シリアストーク……。
解析が終わり、これから死に顔動画の場所へ行くことになった。
目的はジュンゴが死なないようにすることと、ダイチの救出である。
朝別れたあとにダイチは攫われたっぽい。
ピーチ姫も驚くだろう。
攫われたので救出ってかなりヒロインだよな、ダイチって。
充電もフルっぽいので電源を入れる。
ヘッドホンを装着し、スマホと接続した。
途中でヘッドホンが変な形だと突っ込まれたがめげない。
これで戦闘中もティコのアドバイスが聞き取り易くなった。
ダイチ姫が捉われたクッパ城……ではなくダイチが捕まっているであろうみんなの科学館に着いた。
新田がなんか妙案があるらしいので任せる。
任せたぞ、スネーク!!
みんな色々考えているので俺も奇を衒ってみようじゃないか。
ヒロ、ジョー、アイリが正面から普通に入って行った。
新田は裏口から段ボールを被って突入。
メタルギア・ジュンゴは軽傷。
俺は天井を踏み砕いて降り立つ。
ヒロのパーティと俺で挟撃した形になった。
人質がどうなってもいいのかと騒ぎ出した。
アギダインで壁を融かして見せる。
人質がいなくなったらああなるのだと笑顔で教えてみたら静かになった。
互いに身動きが取れない膠着状態に陥った。
まあ、少し経ったら新田が段ボールから姿を現してダイチを救出したのだけれど。
内気な新田が頑張ったとあってヒロとジョーが気合入りまくりだ。
ガンガンいこうぜとばかりに悪魔が撃墜されている。
俺もジュンゴを援護して適度に焼き払いつつ、ケータイに向けて羅漢銭。
五百円は高いので十円玉や百円玉で代用している。
どんなときでも 付きまとってくるのが おかねなんだよなぁ。 おりしゅ
みんなで名古屋支局まで戻ってきた。
ヒロイン・ダイチを救ったのでハッピーエンドとはならないのだ。
支局前の広範囲が瓦礫と化していたのだが、フミとアイリが怒り出した。
暴徒のせいだと思ったらしい。
ジュンゴも言いたいことがあるとか。
……俺のせいだとは言えない。
ティコもちょっとキョドってた。
全部暴徒が悪いということで突入。
ジョーが人間と戦うのに慣れてしまった、不思議だーみたいなことを言ってた。
俺なんて火葬も経験しているからね。
戦闘くらいいいじゃないっすか。
指令室で小競り合いをしているようで突入と同時に悪魔を呼び出す。
俺だけ単騎という男らしい戦い方である。
アギダインとか羅漢銭を駆使して悪魔およびケータイを殲滅する。
掴んだ悪魔を盾にして突撃や投擲武器として使ったり、そのまま砕いたりと悪魔使いとしての腕は誰にも負けないと自負しております。
暴徒のリーダーとヒロが戦闘というか言い争いをしているとクルースニク・レーダーが『メラク』っぽい敵影を探知。
空気中に電気が奔り、クリスタルが付いた巨大なリング状の使徒である『フェクダ』が出現した。
ぱりぱりと放電膜を纏っている。
突然の出来事に皆が戸惑っているのでハーモナイザーを起動して咸卦法を発動し、飛び蹴りを放つ。
接触した瞬間にATフィールドっぽい不可視の壁によって防がれた。
幾らか拮抗したが無意味と判断し、弾かれた勢いで離れる。
セイバーの魔力ブーストをパクッた咸卦法のエネルギーを放出する『夢幻の具足』で移動。
ティコが許してくれる限界ぎりぎりまで腕にエネルギーを集中させ、殴る。
炎が黒く染まってやがるぜ、へへ……。
衝突の瞬間、壁を貫通。
無防備(?)な『フェクダ』に拳が直撃した。
気色悪い悲鳴が轟く。
同時に歪むほどの魔力密度を纏った体当たりで俺は弾き飛ばされた。
止めとばかりに電気が頭上から直撃。
正直、パリッときた。
話し合いは終わったらしく、暴徒のリーダー・ロナウドと協力して戦うことにしたようだ。
『フェクダ』に皆が向き直ると数が劣勢と見たか、二つに分裂した。
なんか祭りの屋台とかに置いてありそうな玩具の指輪っぽい。
『メラク』と比べてパッとしない性能である。
みんなでかこんでぼっこぼっこ。
片方を撃墜してもう片方に専念していると、撃墜したはずの『フェクダ』が復活した。
めんどくせ。
合体したら攻撃無効らしいが、俺の咸卦法を纏った黒いパンチはダメージが通るようだ。
ただ、反撃の電気が嫌すぎる。
なんか俺だけめっちゃパリパリしている。
スマホとかヘッドホン大丈夫だよな……?と心配しているとティコがハーモナイザーでコーティングしてある分は大丈夫だと教えてくれた。
無事でよかったわ。
分裂と復活が面倒になってきた。
同時に倒せばいいんじゃねとかフミが言ってたがそれをスルーして何故か合体したら倒す流れになった。
『フェクダ』を砕いていると、先ほどとは比べ物にならない電気がぱりぱりし出した。
耐性持ってないからやべえので、内部で咸卦法を暴発させて放たれる前に破壊した。
『フェクダ』の霧散していく力を吸収しつつ離れ、ヒロたちに合流した。
戦闘後にまったりしているとフミを見かけたので聞いてみる。
パソコンでスマホを充電できるかと。
もっと効率よくしろと怒られた。
そんなこと言われてもスマホだしな、と思っていると悪魔召喚プログラムがインストールされたコミュニケーションプレイヤーがあるのでくれるとか。
ケータイやスマホだとハーモナイザーに割く電気が不安だが、コミュニケーションプレイヤー(COMP)なら大丈夫らしい。
ちょっとでかいので片手だと扱いにくく、誰も使って無いようだ。
とりあえずティコを引越しさせれば使えるかもしれない。
フミが調整して使える様になったら連絡すると言われた。
ぶらぶらしているとジュンゴが茶碗蒸しくれた。
マジうめえ。
茶碗蒸しいえーい!!と走る。
転びそうになったがなんとか踏みとどまる。
食べ物片手に走るモノではないな。
茶碗蒸しを食べているアイリと遭遇した。
ちょっと機嫌が悪いっぽい。
新田がおどおどしているのが苛立つ原因のようだ。
それでいてあのままだとダメだと心配もしているっぽい。
アイリさん、ツンデレっすね。
言葉に出したら殴られた。
みんなが集まって話し合っていたので参加する。
死に顔動画を配信するニカイアのサーバーがどこにあるのかを話していた。
そういう知的な話は苦手だ。
わからないことばかりだとみんなでお手上げ侍をした。
とりあえず死ぬことを回避させたいんじゃねってオチで話は終わった。
名古屋から東京へ帰る時間になった。
面倒だし名古屋にいたいところだが、クドラクに並々ならぬ執心を持つクルースニクがうるさいので帰ることに。
ジュンゴが別れ際にくれた茶碗蒸しマジうめえ。
味噌チョコレートは……ううむ。
とりあえずデレアイリが超かわいかったです。
あ、ジュンゴが蹴られた。
主人公のスキル
指パッチン:炎の魔法が出る。しなくても出る。ただの見せかけ。
魔人化:クルースニクや吸収した不活性マグネタイトとの融合により魔人に近づく。深く融合すればそれだけボーナスが増える。ただし、徐々に人外に近づき最後には戻れなくなる。魔人・悪魔のどちらになるかはステータスによって決まる。
咸卦法:活泉系と魔脈系の融合。出力は合わせる必要があるため、片方だけ三分や五分にはできない。ステータスにボーナスが付くが、合成の程度によって上下する。
夢幻の具足:すごくはやくうごく。咸卦法のエネルギーを放出し、推力として利用したもの。セイバーたんのあれ。
ヒランヤ:深淵を覗いたら向こうも覗いているよ☆というやつ。加護によって即死は防ぎ、魔人としての力を引き出しやすくなる。ただし、魔人に近づきやすくなる。つまり魔人養成ギブスである。
--5
日が昇る前から街を駆け、ジプスから持ち出した物資を対価に話を聞いて回っている。
クドラクは正しい手順を踏まない限り、再び蘇るのだとクルースニクから聞いて捜索することにしたのだ。
クルースニクが感じ取られる範囲内にクドラクの気配はないため、暗いうちから街中を走り回ることになっているのだ。
眠らないことの利点は時間が多く使えることだろうか。
握りつぶした悪魔の身体が光とともに散っていく。
悪魔とのエンカウント率も上昇するのは欠点だけれども。
恐怖か疲労、それから空腹。
いずれもが何も持たない人々の眠れない理由のようだ。
土気色の顔をした人が夢遊病患者のようにふらふらと歩いているのを度々見かけるし、そういった人が悪魔に襲われているのは当然の如く。
避難所からあぶれ、それでも纏まったコミュニティにすら群れることのできなかった彼らは悪魔どもの恰好の餌となる。
喰われているのなら悪魔を滅ぼし道端に遺体を埋め、生きているのなら助けて話を聞く。
自分はどうすればいいだとか、救いはないのだとか、詰まらないことを聞きながら連れ歩く。
徐々に増えていく無気力症を患っているのではないかと思わせる彼らが群がる様はピクミンを思い出させた。
まだ状態の良さそうな建物に彼らを放り込む。
人数が多すぎて鬱陶しく感じ始めたためだ。
脆そうな壁や天井を周囲の建物から剥がしてきた物資を融かして補強する。
俺が初日に寝床にした店舗よりも頑強で、拠点としては十分すぎるのではないだろうか。
ジプスで充電しておいた今まで集めた様々な携帯電話と少しばかりの食糧は行き先見えない彼らの手向けだ。
契約自体は使用者と結ばれるようにしておいたので戦闘になることはないはず。
死にたければ死ねば良いし、生きたければ戦うも良し、逃げるも良し、もちろん死にたい奴を壁にするも良し。
今日まで生きた運があればなんだって出来るのだと静かに告げて、出ていく。
周りに集まっていた悪魔を全力で魔法を放つことで殲滅した。
これで幾らかの時間が稼げるだろう、彼らが考えることのできる時間を作ったのはちょっとした気紛れだ。
携帯電話に悪魔を補充したため、魔貨が空になってしまったが使う気など元よりないのだ。
命のやり取りをする相手に背中を任せようとは思わない。
いや、クルースニクも悪魔なので、他の悪魔も信頼に足るのだろうか?
ちょっとわからなくなってしまった。
ただ、金銭での関係は少し怖い。
三つ目の避難所となっている体育館は血によって彩られ、所々が朽ちていた。
太陽の光によって照らされた内部は赤黒いペンキが塗りたくられているかのようだ。
生きている人間はいないらしく、悪魔の群れに占拠されていた。
聞いた話は無駄なことが多かったが一つだけ有益な情報を得ることができた。
それは、吸血鬼が夜な夜な現れ、人間を吸血して歩いているという話だ。
この話を元に避難所で情報を集めようと近場にある二か所の避難所を訪れたがいずれも門前払いを受け、やっとのことでたどり着いた三つ目のここには誰もいない。
予想以上に面倒だなと苛立っていると支給された携帯電話の軽い電子音が出ることを催促した。
少しキツイ語調とともに電話に出ると、その態度を気にしていないのか何時もと変わらぬ態度のヤマトが『ドゥベ』や『メラク』、『フェクダ』の同類が出現したのだと知らせてきた。
こちらでも確認したと簡単に返事し、通話を切った。
外に出るとアイスクリームコーンを思わせる『ドゥベ』の下部に酷似した敵、『メグレズ』が出現していた。
戦闘は瞬く間に終わった。
魅かれる様に集まった悪魔どもも苦も無く融かした。
弱すぎる、それが『メグレズ』を撃破した感想だった。
動きは鈍重で火力が不足しており、何もかもが雑魚としか言いようがなかった。
微弱な地震を引き起こすのが厄介なだけで、何度か殴るだけで倒せてしまったのだ。
携帯電話にジプスへ集合する旨を伝える連絡がきた。
電話をかけてきたヒロも釈然としない何かを感じているようだった。
どうせ面倒ことなのだろうとティコやクルースニクに愚痴りながらジプスへと向かった。
――変容の水曜日――
ジプスでは情報が集まり次第、ということで解散になった。
とりあえず『メグレズ』本体は別の場所にいて、今は芽を出しているのではないかと
ヤマトも思案顔だったが、頭脳労働は彼に任せておくとしよう。
これから健康診断があるというので時間まで余裕がある。
ダイチが仕事をするというので時間を潰すついでに手伝うことにした。
名古屋の襲撃で人手がこちらから結構な数が移動してしまったようで、こうしてダイチが手伝うことになったらしい。
戦闘でなければ手伝うことに抵抗はないようだ。
ダイチが物資を一般人に配り、争いに発展するなど面倒事に繋がったがなんとか騒ぎもおさまった。
自分たちが不満なく過ごせている現状に何を思うのか、苦々しい表情だった。
命を賭けている対価として過不足無く優先的に物資を得られる、と楽観的には考えられないのだろう。
俺は彼らが『ドゥベ』のような侵略者と戦っていない代わりに物資の不足くらい、と思ってしまうのだが間違っているのだろうか。
悪魔にも人間にも怨みを買っているジプスなど安全では全く無いのだし、せめて物資くらいとも思ってしまうのだ。
ジプスに戻るとジュンゴが立って寝ていた。
どうしたものかと困っているとイラついているワクイが健康診断が始まると知らせにきた。
大阪組や名古屋組も到着していたようで、ジュンゴが立ち寝しているのは朝が早かった影響だろうか。
供に戻ったはずのダイチは何処かへ行ってしまったようで、姿が消えていた。
ワクイの後姿を見送って俺も向かうことにした。
寝たままのジュンゴを置いて行くのも可哀相なので引き摺って向かう。
ジュンゴは背がでかいのでときどき壁にぶつけてしまったのだが、途中で目を覚ますことはなかった。
健康診断を滞りなく終えることができた。
身長が伸びていたことや体重が少し増えたこと、全体的に感覚が鋭敏になっているくらいだろうか。
女医のオトメさんも問題ないと太鼓判をおしてくれた。
悪魔を身に宿しているのだが、特に目に見える影響はないようだ。
ヒロが見知らぬ誰かと会話をしていた。
クルースニクが得体の知れない雰囲気に反応しているがティコは特になんとも思っていないようで静かだ。
相反する反応に困ったが、ヒロが変わらずに対応しているので俺も様子見がてら会話に参加してみる。
雰囲気がエヴァンg……アニメの敵キャラとして出てくる最後の使者に似ていた。
そんなカヲルくんは自分を憂う者だと名乗った。
それは名前なのか……?
最後のシ者っぽいなと呟くと肯定された。
つまり彼は使徒なのだろうか……?
最期の使者という響きを気に入ったのか、見た目には分かり難いがティコ曰く上機嫌で去って行った。
アプリを使わず悪魔を召喚し、『メグレズ』の芽を消し飛ばして。
ヒロと別れてジプスに戻ると、立って眠っているジュンゴとそれを睨むアイリを見つけた。
アイリはヒナコに身長をからかわれたことを気にしているらしい。
それはまた、難しいことだ。
伸ばそうと思って伸ばせるものでもないし。
ジュンゴを見ていると寝る子は育つという話も真実なのでは、ということらしい。
確かに22時くらいに睡眠をとると成長ホルモンが……などと聞いたことはあるけれど。
でも、アイリさん。
立ったまま寝たとしても身長は伸びないよ。
むしろ普通は寝れないよ。
遠回しに間違いを正しておいたがわかってくれたのだろうか。
なぜかおどおどしているダイチといつも通り飄々としているジョーがマコトと話していた。
マコトが言葉を発する度に、ダイチが挙動不審ぶりを披露していた。
ジョーがそれを面白がって煽り、ダイチが慌てふためき、マコトが困惑するという事態に。
とりあえず覗きはほどほどにすべきだと思う。
あと、俺も誘って欲しかったわけで。
COMPが用意できたと連絡がきたのでフミの元へ向かう。
フミから受け取り、ティコを移していると小さな振動で床が揺れる。
そして、強い揺れが生じた。
フミが転倒しそうになったので軽く支える。
どうやら『メグレズ』の芽が集まって大きな振動を引き起こしているらしい。
今の揺れで分断されてしまったヒロ・マコト・オトメが脱出するためにフミは使用する装置の準備をするようだ。
フミと別れて外へと向かった。
街中に『メグレズ』の芽が現れているらしく、ジプスが総出で当たっていた。
しかし、揺れ動く足場や崩れ落ちてくる瓦礫に苦戦している模様だった。
できるだけ早く数を減らさなければ更に揺れが強くなる可能性もある。
自由に動ける俺が先行して近場の芽を潰していく。
新調したCOMPによるハーモナイザーは想像以上に優秀らしく、長丁場にも耐えられるようだ。
見た目は完全に3DSだが、ヘッドホンを繋いでポケットに入れっぱなしだから問題はない。
周辺の芽を潰しきると揺れが弱くなった。
これならジプスの局員でも対応できるはずだ。
ゆっくりと歩いて戻っているとカヲルくんが佇んでいた。
輝く者――ヒロと話したかったようだ。
それならばと電話で呼んだのでそう間を置かずに来るだろうし、少しばかり相手をしていよう。
会話はそれほど弾まなかったがわかったこともあった。
ニカイアを作ったのはこのカヲルくんだったようだ。
そして侵略してくる悪魔とは違った存在である使徒たちの名称はセプテントリオン。
じゃあ、最期の使者を肯定した彼は……。
考えているとヒロの姿が見えたので立ち去ることにした。
別れ際にセプテントリオンを食べる者がいるとは思わなかったと呟いていた。
……それは俺が悪食ってことなのだろうか。
芽の襲撃も治まったようで、みんなもジプスに戻って来たようだ。
ターミナルという装置が使える様になったので東京・大阪・名古屋を一瞬で移動できるようになったと聞かされた。
ジプスの技術力は世界一ではないだろうか。
どういう原理なのかは不明であり、ヤマトの家で見つけたオーパーツが使われているらしい。
悪魔も人間も情報が集まりなのだから転移させることも可能であるらしい。
うん、なんだか使うのが怖くなったな。
フミが呆れたように電波で情報を送る原理も完全に解明云々……と言われたがそれとこれとは別だ。
ダイチと新田が再び食糧を配っていたのだが、強奪者との争いが起こった。
ヒロたちも颯爽と現れ、悪魔が次々と召喚された。
戦闘開始まで秒読みというところだが面倒なのでアギダインを掌に灯しながら、食糧を燃やされたくなければ全員に止まるよう叫ぶ。
子供から大人、老人までいるこの場で争うとはどういうつもりだと説教しつつ、携帯電話を取り上げていく。
途中でおかしなことに気付いた強奪者たちが悪魔に指示を出そうするも動き出していたヒロたちが電話を踏んで破壊した。
とりあえず状況が落ち着いたので配給を再開する。
荒んだ強奪者を見てしょんぼりしていたダイチと新田も配給を受けた人たちからお礼を言われてなんとか持ち直したようだ。
沈んだり、浮かんだり、気分ってやつは難しいものだね。
ジョーの死に顔動画が届いたと騒ぎになっていたがそれどころではなかった。
俺の死に顔動画をティコが持ってきてくれたのだ。
両腕と頭の欠けた氷像にされている俺と男の姿だ。
クルースニクが激しく反応しているし、なんとなくだがクドラクの面影を感じる。
ヒロたちはジョーに電話が繋がらない様子で焦っている。
探すのにも時間がかかるだろうし人手を考えると手間を欠けるには心苦しい。
用事が出来たのだとジョーを捜索しているみんなに伝えて、死に顔動画の現場である公園に向かう。
あれ、俺ってワクイくらい協調性ないんじゃね?とか若干ながらもショックを受けつつクドラクを探す。
吸血されたのだろうか、周辺にはミイラのように乾燥した死体が転がっていた。
クルースニクが気配を捉えると同時に氷結系の魔法による影響か公園が凍ついた。
宙を飛び回っている複数の氷塊に向けて、炎で対抗した。
全ての氷が溶け、現れたのはクドラクをスタンドとして背後に佇ませている見知らぬ男だった。
……誰だろうか。
クルースニクの意見としてはただの憑代だろうとのことだ。
クドラクと波長が合い、悪魔を宿すことのできる才能を持つ貴重な人物ということか。
見知らぬ人でも仕方がない。
クルースニクとしては憑代とされている人物を助けたいようだが、クドラクと合う人物かと思うと決断が鈍る。
吹き荒ぶ吹雪を炎で防ぐも全身が凍りついていく。
咸卦法で氷を振り払うが動作が鈍く、震えが止まらない。
呪いに等しい凍結をくらったようだ。
これ以上凍ると不味いと思い、炎を燃やしながらクドラクに迫った。
面倒なほどに強化されたクドラクを弱い炎で燃やすことで、ほんの僅かずつ削る。
どうにかしてクドラクだけを祓えないかと考えた末の答えが見知らぬ男が纏っているマグネタイトを削ることにしたのだ。
俺ほどの深度まで憑依できないないためか、マグネタイトを効率よく吸収するために覆う様に纏わりついているようだ。
周りのクドラクを構成するマグネタイトさえ消し飛ばせば、どうとでもなる……はず。
クルースニクの要望は男を傷つけないように細心の注意を払って救出、ということだが今の俺にしてみたら人間はあまりに脆すぎる。
クドラクに憑かれていて普通よりも肉体が強化されていたとしても殴るだけで血袋と化すだろう。
俺は神経をすり減らしながら右手でかすめる様にマグネタイトを削り、左手で撫でる様に吸魔する。
氷結魔法は鬱陶しいがメギドラオンと比べれば戦闘に影響はほとんどない。
とは言うものの、氷結状態のため反応が鈍くなっていて、思うように動けない様に苛立ちを抱えているのだが。
更なる凍結を防ぐために咸卦法で防御しているため、『夢幻の具足』を使うことができない。
もっと限定的に咸卦法のエネルギーを使う工夫が必要なようだ。
強化した脚力を用いて地面を全力で蹴る。
力がほぼ垂直で伝わってしまったのか、震脚もどきとなってしまい、地面が激しく砕けて陥没した。
弾くように力を伝達させるをイメージをして、再度蹴る。
移動速度がかなり速くなったが、直線的な動きとなってしまい、クドラクに紙一重で回避された。
もっと速い必要がある。
踏み込む瞬間、足裏から纏っているエネルギーを放出して推力を上げる。
クドラクの捕捉範囲を超えることができたようだが、直線的すぎるのか容易に回避されるようになった。
もっと移動方向にも遊びが必要に違いない。
公園内に炎を撒き散らしながらクドラクに迫る。
瞬動もどきで加速する。
回避されるが震脚もどきで地面を踏み砕きながら無理やり方向転換して更に後を追う。
クイックブーストのように咸卦法のブーストを小出しして移動速度に緩急を付けながら、進路に先回りする。
クドラクを置き去りにしつつ、一方的に攻撃する。
最初のうちは回避されていたが、段々と掠るようになってきた。
避けられようとも、逃げられようとも執拗にクドラクを攻撃する。
徐々に削れてきたようで、クドラクに焦りが見え始めた。
撒き散らしていた炎により、凍りついていた公園内の氷が融けて氷結魔法の効果も弱まってきた。
有利な地形として内部を凍らせることで魔法の威力を底上げしていたようだ。
燃え上がるように炎を纏うだけでクドラクが行使する魔法のことごとくを無効にする。
周囲の熱により男が脱水症状を起こし、劇的にクドラクが弱まっていく。
とうとう男が倒れ、クドラクが逃走を始めた。
マグネタイトを削られ、弱ったクドラクの速度では俺からは逃げられない。
追撃の後、封印しようと接近した瞬間、クドラクが倒されていた。
あるぇ~?
ワクイが俺の後を追いかけていたらしく、氷が邪魔で入れなかったが溶けた為に加勢しようとしたとか。
普段は一匹狼のくせにいいところもあると思う。
俺のために来てくれたのも大変うれしく思う。
ツンデレだとも思う。
だが、ケイタが余計なことをしたのも事実である。
何とも言えない気分だが、復活したクドラクが更に強くなると考えると面倒でしかないのだ。
気絶している男を近くの避難所に放り込んでおいた。
ジョーの捜索に遅れながらも参加する。
動画の場所は俺が餃子ヒーローごっこをしているときに訪れた公園だった。
ジョーが消し炭になるシーンの後ろで畳まれて置かれている白いカーテンがシュールだった。
ツンデレ全開のケイタを引き連れ、ともに現場へと到着した。
誰もいないようなので、再び餃子ヒーローごっこでもやろうとしていたら、俺らがいる反対側から暴徒リーダー・ロナウドが歩いてきた。
ケイタが喧嘩腰で邪魔なので端に文字通り投げ捨てるとジョーが一般人たちを連れて現れた。
その後ろから悪魔の集団が迫っているようで、合流して避難誘導を行う。
ロナウドがこっちだとか叫んでいるが、悪魔の集団を横切ってまで向こうに行くメリットは無いに違いない。
ケイタが嬉々として一般人を無視して戦闘を始め、ロナウドがそれについて怒りながら悪魔を召喚した。
そして、ヒロたちも続々と現れ、公園は乱戦状態へ突入した。
そんな混沌とした現場に救世主が!!
俺っすwwwww
などとドヤ顔を披露しつつ餃子ヒーロースタイルでポーズを決めた俺と固まる悪魔たち。
ヒロは黙々と行動し、それに連れられるように仲間たちも動き出した。
程無くして悪魔の集団を殲滅した。
ジョーがヒロたちに問い詰められている。
どうやら携帯電話を充電し忘れていて、電池が切れていたらしい。
電池切れが生死を分ける現状で充電を忘れるとは、ある意味で凄い。
見習いたくない凄さなのだが。
自分を軽く考えている顕れなのだろうか。
まあ、そういった精神面のケアはヒロがしてくれるだろう。
ジプスで事の進展を聞いているとマコトが落ち込んでいた。
原因はオトメやフミとマコトの差、らしい。
オトメは24歳という若さにしてジプスの医療関係を一手に引き受けているし、フミは研究以外が興味のないマッドサイエンティストだ。
自分の立ち位置を曖昧に感じているのかもしれない。
ヤマトにしたら都合がいいと思うのだけれど。
情に篤いというのだろうか、恩を着せるだけで枷になって唯々諾々と従う。
疑いつつも結局従う。
忠犬の鑑のようじゃないか。
それも稀有な才能だと俺は思うんだ、言わないけど。
とりあえず俺みたいにもっと人間関係を浅くすればいいんじゃないだろうか。
ヒロ、ティコ、クルースニク以外なら話し合いなしで戦える自信がある。
盲目的と言えないまでも、他人を信じるのは難しいのだとマコトの様子から思わされた。
分析にはもう少しかかるようだ。
大体の位置なら掴めているが、より精度を高めている段階というのだろうか。
軽くヤマトと話したが、かなり偏った考え方をしていた。
それは力あるものが世界を管理し、正しく支配するというものだ。
半ば軟禁状態で教育を受けていた後遺症かもしれない。
否定しないが、肯定できるような思想でもない。
管理された世界など、息苦しくて堪らないに違いない。
時間つぶしの代わりに悪魔を倒したり、アプリ使用者から携帯電話を巻き上げているとカヲルくんがヒロと話している場面に出くわした。
話の内容は世界の行く末について、だろうか。
人間の可能性こそが終焉を回避できる可能性があるとか。
彼の話はどうも理解し難いものがある。
だが、世界の行く末には興味がある。
以前と元通りにはならないだろう。
ならば、どこへ向かうのか。
ヤマトの理想も可能性の一つなのかもしれない。
デルタ浮上作戦、これが今回のセプテントリオン撃破の作戦名だ。
東京、大阪、名古屋の三か所に別れ、同時に『メグレズ』本体を叩くというものだ。
東京はヒロが加わり、大阪はヤマトが主導するようだ。
東京に向かっても良いのだが、それだとバランスが悪くなると思い、俺は名古屋組に参加することにした。
ターミナルで名古屋へ瞬間移動。
これがジャッジメントですの!の気分……。
とりあえず、ジュンゴの茶碗蒸しうめぇ。
……決して茶碗蒸しに惹かれて名古屋に決めたわけではないのだ。
パーティのバランス準拠だ、たぶん。
『メグレズ』の出現ポイントに向かっているとロナウドが追いかけてきた。
襲撃の際、ジプスに不正アクセスを行っていたのだが、そのときに見つけたデータを解析したことで恐るべき事実を発見したらしい。
だから、どうしてもヒロに相談に乗って欲しいとか。
こいつやヤマトはなんでヒロに対して初っ端からほぼ縁MAX感じなのだろうか。
チョロインかよ。
発見した情報は黒い影のようなモノに街が浸食されていく映像だった。
場所は福岡らしく、タワーも呑み込まれていた。
これは本物なのだろうか。
ジプスに敵対しているロナウドが持ってきたものだし、虚偽の疑いも……。
まあ、どっちでもいいか。
ヒロが判断するだろうし、そもそも福岡いかないし。
むしろ確かめるために行くのもありかもしれない。
平静の海を前に『メグレズ』を待つ。
海から現れるらしく、顔を出したら叩けという作戦だ。
静かな夜の海、という表現が似合いそうだ。
でも戦闘中に落ちたら死ぬかもしれんね。
そういうときって死に顔動画にはどう映るのだろうか。
流される様子だけか、それとも衰弱していく様子がうつるのか。
溺死したりと死因によって動画内容も変わるかもしれない。
試しようがないのだが。
やる気に溢れているロナウドの横で、アイリが嫌そうに眉根を寄せている。
この前のように人類の敵が襲撃してくるので倒しに行くと教えると、なぜか着いてきてしまった。
ジュンゴは海を見つめ続けているし、フミは興味ないのか潮風でパソコンがダメになると愚痴っている。
フミは研究者なのだから現場に来なくてもいいのでは、と思った俺は間違っているのだろうか。
ジプスも人手不足だからとはよく聞くのだが。
携帯電話が暴走した末に発生する瘴気によって悪魔が湧いてくるので、それを撃退しながら時間を潰す。
『メグレズ』が水しぶきをあげながら、姿を現した。
同時に電話が着信を知らせた。
どうやらヒロも確認したらしい、すぐに戦闘になるため通話を切る。
大阪から連絡はきていないが、同じように確認できていると思われる。
全員に指示を飛ばし、ハーモナイザーを起動させた。
『メグレズ』は球体に歪な棘を生やした姿をしている。
棘を射出することで芽である子機を其処ら中に配置した。
一つの子機が震えると、それを合図に全てが震えはじめた。
揺れが大きくなり、やがて地震が起きた。
桟橋が揺れ、横波が襲いかかる。
ジュンゴたちが思う様に動けなくなり、姿勢を低くしてなんとか落ちない様に堪えていた。
俺は気持ちの悪い虹色をした子機を潰すために、瞬動で海上へと飛び出した!!
やっべ、つめてぇ^q^
虚空瞬動の真似したら海にダイブしてしまった。
なんとか下半身だけで済んだのでCOMPやスマホ、ヘッドホンは故障を免れた。
ビチャビチャに濡れてしまい、かなり寒い。
瞬動を完璧に修得出来ていないのに虚空瞬動の真似事なんて成功するわけないか。
とりあえず普通に地を蹴り、空に浮かんでいる悪魔を足場として思いっきり蹴りつぶすように瞬動する。
空中だと方向が掴みにくいので真っ直ぐ進めなかったが、悪魔を蹴ることで下を決定。
まっすぐとは言い難いが今度は海に落ちずに移動できた。
次は軽く跳躍して身体が宙に浮いている状態で、地面で瞬動するようにして虚空瞬動。
宙での踏切に失敗してやや上向きに進んでしまったが、なかなか上手くいったと思う。
虚空瞬動(仮)の練習をしていたらアイリとフミに怒られたので芽を潰しに動く。
ちなみにジュンゴはフジツボの気分を味わっていて、ロナウドは必死に頑張っていた。
羅漢銭で芽を射撃するが小銭は貫通しただけで機能しているようだ。
威力が弱すぎたのだろう、近くに配置されていた芽を抱えて別の芽へ投げつけた。
衝突すると同時に気味の悪い光を放ち、悲鳴をあげながら消滅した。
なんかSAN値がごっそり削られた気がするが、なんとか芽を潰しきる。
やっと終わったぞ、と本体に向かおうとしたら再び芽が落下してきた。
そして、アイリが俺に芽を潰す係りを任命した。
げっそりしながら、芽のことごとくを潰し切るのと『メグレズ』が沈むのはほとんど同時だった。
終わったんですか、やったー!!と喜んでいると水しぶきとともに再び『メグレズ』が浮上、そして芽を射出した。
――なん……だと……?――
そして始まる芽を潰すお仕事。
苛立った俺は子機を拾っては本体に突き刺す、という動作を繰り替えした。
瞬動と虚空瞬動が上手くなったが、全然嬉しくない。
悲鳴をあげて沈んでいく『メグレズ』。
焦燥した様子でやっと終わったんだな、と喜んでいると電話が鳴った。
通話を押すと、同時に倒さないと死なないらしい。
水しぶきとともに浮上する『メグレズ』の姿。
アイリは当然として、ジュンゴとフミの表情が引き攣っていた。
俺たちの反応を見たロナウドはジプスの活動に少しばかり理解をしてくれたかもしれない。
うわあああああ!!
うぜえええええええええ!!
全員の魔法が『メグレズ』へと殺到した。
倒す準備ができたと連絡がきた。
俺たちの怒号と『メグレズ』の悲鳴が響き渡った。
電話で撃破に成功したかヤマトに確認する。
そんなに強くなかったが、『メグレズ』の芽を潰すたびに何度も響き渡る悲鳴が脅威なのだ。
アイリが怒鳴りながら何度も俺越しに結果を催促してくる。
騒がしさに流石のヤマトもドン引きしつつ、電話越しに終了を伝えた。
歓びを分かち合いながらジプスへ戻る。
かつてないほど疲れたのだが、これからのセプテントリオンは精神的に攻めてくるということなのだろうか。
そうだとしたら、なんて嫌な敵なんだ……。
つらつらとそんなことを考えているとジプス前まで来ていた。
ゆっくり休むぞ、と戻る中にロナウドの姿。
おまえの所属はここじゃないだろ……。
疲れておかしくなっていたロナウドに元の場所に戻るよう伝える。
やっと気付いたのか、ふらふらと還って行った。
と思ったら戻って来た。
ヒロに会いたい旨を伝えて欲しいとのことだ。
了承すると再び帰って行った。
……俺もちょっと休みたいのだけれど。
ヒロを探しに東京へ向かうのだが、すでに大阪に行った後だった。
ぐぬぬ……。
ふらふらしているジョーに話を聞くと結婚をする予定らしい。
病気のカノジョにこの戦いが終わったら結婚しよう、とプロポーズしたようだ。
なんという典型的な死亡フラグなのだろうか。
テンプレすぎて逆に何も起きないでくれ、と祈らずにはいられなかった。
大阪にジャッジメントですの!するとすでにヒロはいなかった。
名古屋に向かったとか。
アイツ、自由すぎるだろう……。
がっくりと落ち込んでいると、小さな女の子に励まされた。
少女の名前は菜々子……ではなく、小春ちゃん。
お母さんを待っているらしいのだ。
ヒロを追うのも怠くなったし、ちょっと休憩がてら遊んでいようかなと。
適当に紙束を見つけたので、一緒にお絵描きしてみよう。
小春ちゃんは悪魔が好きなのか、悪魔の絵ばかり描いている。
なるほど、と頷きながら俺も描きはじめる。
俺くらいになると実写かと見紛うばかりの悪魔の絵が描けるのだ。
全身を強化して機械で印刷しているくらいの早さで書き上げていく。
ついでに悪魔の詳細を書き加えて表紙を付ければ悪魔全書(偽)の完成である。
さあ、これで勉強するが良いと渡すと凄い笑顔で受け取ってくれた。
この娘、間違いなく天使やで……。
感動しているとヒナコが呆れたような表情で立っていた。
むしろ俺はおまえのその格好に呆れているよ。
子供の前になんて破廉恥な……そういえば踊りが得意とか言ってたな。
お絵描きばかりも飽きるだろうと痴女ダンスを小春ちゃんと楽しむことにした。
恰好からしてワイルドなダンスでも披露してくれるのかと思いきや、行われたのは日本舞踊だった。
やるじゃないか、ヒナポッポ……。
見る目が変わったわ。
痴女だけど。
ヒナコの踊りで和んでいると小春ちゃんの母親が迎えに来たようだ。
その母とはオトメさんだった。
なるほどと納得した。
天使の娘は天使なのは当然だよな、うん。
むしろ大天使の可能性を垣間見た気がする。
決して~エルとかメタトロンとかの悪魔は関係ないです。
今は悪魔のせいで天使って表現すると侮辱しているような気がしないでもない。
もうオトメさんと小春ちゃんのために天使根絶とか目指そうか……
二人が仲良く帰って行く姿を見送ってヒナコと別れた。
女神なら褒め言葉になるのでは、と考えながらターミナルに向かった。
名古屋につくとヒロは外出していると聞いた。
行き先を追うとそこにはロナウドと会話するヒロの姿があった。
……。
……。
……俺の中でロナウドはブチ殺し確定なんだけど。
俺、クルースニク、ティコの全員がロナウド抹殺に承認した。
合議制を採用した脳内会議をしていると、袖を引っ張られたので意識を戻す。
振り向くと嬉しそうにアリスが微笑んでいた。
アリスは機嫌が良かった。
笑顔で跳ねる様に歩き、その後を追う。
首からかけられている水筒が激しく上下に揺れている。
月に照らされた金色の髪が輝いている。
アリスは友達なのかと問いかけた。
俺は友達だと答えた。
アリスは俺にいつまでも友達なのかと問いかけた。
俺はもちろん友達だと答えた。
アリスは俺が魔人になるのかと嬉しそうに聞いた。
俺は出来る限り人間でいたいと答えた。
アリスの笑顔が崩れた。
魔人になるか、死ぬか。
それがアリスの友達だった。
残念だが、俺は人間だ。
悪魔や魔人にいくら近づこうとも、人間だ。
人としての感覚が薄れ、忘れようとも人間でいたい。
悪魔の力に手を伸ばして、届いたとしても人間で在りたいのだ。
だから、人間以外の俺を望むのならば友達にはなれない。
それが俺の答えだった。
アリスは月を背にした。
俺には表情がわからない。
赤おじさんが来るらしい。
それでもなれない。
黒おじさんが来るらしい。
それでも、なることはできない。
アリスが泣きだした。
涙を零しながら消えて行った。
残ったのは、アリスに渡した水筒だけだった。
……ぶち殺されるのか。
怖ぇ。
死にたくないんだけど。
今からでも悪魔になります、むしろ貴女のイヌになります、むしろすでに貴女の魔獣ケルベロスです、パスカルですわんわんとか言って土下座……してもアリスを泣かせたとしておじさんに苦痛とともに殺されるかもしれん。
うわぁ、自殺したほうが楽かも……。
色々混ざってる右腕のすごーいパンチ:万能属性。
左腕のすごーいパンチ:吸魔
--6
今のように時間ができると今後の世界に思いを馳せてしまう。
限りなく遠くに感じる未来の話だが、その時になって深刻な問題は悪魔の存在だと思う。
いなくなるのであれば、人間は再興を目指して進むだろう。
普通の人間にとってベストといかないまでも、現状を鑑みれば十分な世界のはずだ。
まあ、ベストは全てが無かったまま進む世界だろう。
だが、至る所に蔓延って害虫の如く増殖した悪魔が消え去るなどあり得るのだろうか。
悪魔を殺すには非力すぎるし、還すにはあまりにも無知だ。
人間を容易く殺すことのできる悪魔共が徘徊する世界では、非力な存在である人間は隠れ住む必要があるはずだ。
つまるところ、力こそが全てを従える世界になるのだろう。
ヤマトの考えはそういった悪魔すらも配下に置き、歯車とする世界なのだろうか。
だが、理想とは限りなく遠い気がするのだ。
この状況で理想の世界を語り、同意を求める姿は別の何かを目指している風にも感じられた。
それが何なのかはわからない。
ヤマトの理想とは別だが、少しだけ力が支配する世界に惹かれるモノがある。
戦いが続けば、ある意味で世界は平和なのではないだろうか。
悪魔という共通の敵がいれば人間は手を組むかもしれいないし、醜く争うかもしれない。
少なくとも世界がゆっくりと腐ることはないのでは、と。
そう考えると、悪魔がいるという状況も悪くないと思えてくる。
悪魔が存在する世界なら、魔界とやらに接続してしまうのも面白いはずだ。
永遠の闘争を続ける世界、ヨスガとかどうだろうか。
まあ、結局は勝ち残っても孤独になるから意味ないけど。
ヨスガだとコトワリに応じて顕現する神が便器だっけか。
やっぱり無いな。
誰が好き好んで超強い便器を召喚しなければならんのだ。
いや、トイレは好きだけど。
――驚愕の木曜日――
世界の行く末から便器までをこんな朝早くから考えていたのには理由がある。
それは目の前で不機嫌全開のフミの相手をしているからだ。
日の出る前にクドラクの痕跡探しをしつつ、未だに死ぬことのできなかった幸運か不運かわからない星の下に生まれたピクミンたちにオニヨンを提供して戻ってくると幽鬼のように彷徨っていたのだ。
フミは何か大事な物を落としてしまい、不機嫌が有頂天らしい。
不機嫌が有頂天というのも変な表現だが、むしろ正しく表せている様にも思える。
普段から死んだ魚の瞳をしているというのに、今日はそれを上回る暗さだ。
俺のペルソナであるニャル様くらい闇っている。
闇に飲まれよ、である。
やみのま!
話が逸れたが、つまりフミは機嫌が悪いのだ。
黒いオーラが出ている。
そんなフミを置いて逃げるなど俺には出来なかった。
というか逃げるコマンドが無くなっていた。
実験機具で身動きを取れなくしておいた、だと?
なるほどなー。
でも俺ってば一応は人間離れしているわけですよ。
逃げようと思えばちょちょいのちょいで。
正直、フミのチャイナを間近で見たかった。
フミは昔、といっても数年前だがかなりの努力の末に留学とかしていたらしい。
無いと気になるけど、大切なのかわからないし、とりあえず気になるし、もしかしたら重要かもしれないホストファミリーとの写真が原因のようだ。
探しに行こうかと提案するが今は俺の解析が忙しいのだとか。
でも昨日ジュンゴが吹っ飛んでる様子を見てたからできれば写真捜索のほうが……。
なんかフミの機嫌も和らいできた。
ホントに少しだけど。
でも人間と違う箇所を見つける度に興奮するのはやめて欲しいわけで。
ここ数日でよくわからなくなっているのに、追い打ちは勘弁してほしい。
脳と神経が特に凄いとか語られた。
人間は多層構造で無駄な部位が多いのだが、徐々に創り変わっている様子が見て取れるとか。
不必要な部位を最適化するように変化していて、今なお進んでいるらしい。
神経は神速インパルス超えだとか……アメフトやろうかな。
原因は悪魔を構成しているエネルギーの浸食によって引き起こされているようだ。
脳だけでなく身体のどこかしらが常に変化し続けている、と結果が伝えられた。
そろそろ悪魔の摂取を止めなければならないようだ。
やはり食べ過ぎは身体を壊すということか。
腕の痺れとか、眩暈とか、幻覚とかに悩まされなければ良いのだが……。
などと考えていると今後もエネルギーであるマグネタイトを摂りつづける必要があると言われた。
すでに供給量を超えた状態で成り立っているのだから足りなくなれば当然のように身体からそれらが欠けていき、スライム化が妥当だろうとのことだ。
人間として供給できる量を超えてしまっているのも原因かもしれない。
悪魔が手放せなくなったとか、中毒かよ。
辛うじて人間であると判断してくれたが、なんとも言えない。
マジでアリスに土下座して仲魔にしてくれるように頼んだほうがいいかもしれない。
また不機嫌に戻りつつあるフミと茶を飲んでいると、ヒロが訪ねてきた。
その後すぐにヒナコやアイリが押し掛ける様に入ってきて、新田やダイチが扉から室内を覗き込む。
これからターミナルを使って福岡に行きたいようだ。
昨日話していたからか、またはロナウドの情報が出回ったかわからないが真相を確かめるつもりなのだろう。
ヤマトは問題ないと言っていたが、民間協力者は信じていない者がほとんどのようだ。
敵対勢力にもたらされた情報で疑われるとか人望が無いな。
だが、フミは嫌の一点張りである。
別に局長であるヤマトのためではなく、機嫌が悪いからやる気にならないだけという。
ホントにヤマトは人望が無いな。
ヒロなんて初対面の相手でも指示を与え、的確に動かすのだから見習うべき。
俺はソロプレイヤーだから、そういった能力は必要ないのだ。
……ちょっと欲しいかも。
機嫌が急降下で絶不調なフミが机に垂れているのを横目に、今日の死に顔動画をチェックする。
呆れるほどに死にまくっている俺の中から、ヒントになりそうなモノを選別するわけだ。
一つ一つを見るわけでは無く、ティコによって篩いにかけられるのだからとても新聞を読むよりも遥かに楽な作業で一日の死亡フラグがわかってしまうのだ。
このお手軽さはやはりティコがいるお蔭である。
もし無人島でサバイバルすることになったらティコを連れてくに違いない……充電できないけど。
そんな感じで俺の死亡集をダイジェストで流しているが中には興味深い動画が二つあった。
一つは緑色のスライム・クドラクとの戦闘が映されている物だ。
内容は戦っている最中に毒々しい玉葱に直撃して死ぬという衝撃的な展開だ。
とりあえず、クドラクとまたエンカウントすると考えておけばいいか。
もう飽きてきたよ、クドラクの相手をするのは。
もう一つは黒いスーツの紳士が俺をぶち殺す動画だ。
たぶん、アリスが言っていた黒おじさんだと考えられる。
多くのパターンがあり、代表的なのは死んだ俺がゾンビになるというものだ。
他にも腹をぶち抜かれて死ぬ、汚い花火、現代アート、奇妙なオブジェ、とても価値のあるオレンジといったバリエーション豊富な死に方だ。
面倒なことに多くのアンデッド的な悪魔を次々に召喚することができるようだ。
ただ、有り難いことに黒おじさん単体で襲ってくるらしいので何とか凌げれば生き延びることができる……はず。
自分の死亡シーンのダイジェストを見ていると気が滅入るので、軽く気分転換をしようとCOMPの画面から顔を上げる。
……フミの苛立った顔では気分が逆に悪くなる。
なんとか気を紛らわせようと、小春ちゃんにしたようにお絵描きをする。
今回は悪魔を描くのではなく、単なる似顔絵なのだが。
ささっとフミ本人を描いた紙を渡す。
俺の意外な特技に驚いたのか、気をよくしたのか、目を丸くしたまま紙を見つめていた。
折角だからと他のメンバーも描いてみる。
ヒロたちがフミの落し物を見つけるまでお絵描きは続いた。
落し物が見つかって機嫌がよくなったのか、フミがターミナルを使える様にしてくれた。
福岡へ行くことのできるコードは自分たちで見つけるようにとも。
ヤマトが命令で釘を刺していたようだ。
局長の権限って凄くね。
フミが従うとか半端ない……組織ってこういうものか。
驚いて損したわ。
ヒロに呼ばれたので着いて行く。
今日のセプテントリオンと思われる影を見つけたらしい。
なんとなく一緒に歩くのは久しぶりな感じがするのだが、気のせいだろうか。
新田とかダイチ、ジョーといないのは珍しい。
そんなことを考えていると、ヒロに「人の生きる意味」を訊ねられた。
生きる意味……。
それを考えて生きている人なんてほとんどいなかったと思うし、今もそれほどいないんじゃないだろうか。
まして意味を見つけた人など皆無かもしれない。
誰かの為ってのが基本だが、実際はどうなのだろうか。
最近はホントにそういった感覚がわからなくなってきた。
なんというか、薄くなってきているように思える。
悪魔との親和性の高さが原因のようだが。
俺の生きる意味ってなんなのだろうか。
死にたくないからと惰性で生きている。
意味なんて考えたこともなかった。
ばあちゃんのようになりたいと思ったことがあったけれど、それとは違う気がする。
カッコいい人で憧れたが、それだけだった。
誰からも慕われていて、何時までも笑っていそうなばあちゃんは簡単に死んでしまった。
静かな部屋に寝かせられた姿がとても怖かったことを憶えている。
二度と起きることのないばあちゃんは全て失ったように思えたのだ。
生きるとは失わないことなのだろうか。
失わないということは死なないとういうことか。
死なないことこそが生きる意味?
寿命だけで言えば悪魔は人間よりも遥かに永く生きられる。
つまり悪魔になることこそ人間の生きる意味……なわけないか。
そういえば、ヒロのおじさんとおばさんはどうなったのだろうか。
親身に世話をしてくれた良い人たちだった。
恩を返せないままこんな世界になってしまったのが悔やまれる。
たぶん、死んでるだろうし。
……ばあちゃんも死んだときに沢山の人に惜しまれていたことを思い出した。
死んだ後ですら、それぞれに何かを残すことのできる人だった。
もちろん、俺にも。
人間に固執する理由はばあちゃんを思い出すからかもしれない。
人との縁を大切にしていたばあちゃんを。
作戦室に入るとすでにみんなが集まっていて、ヒロと俺が最後のようだ。
俺たちの姿を確認するとすぐにヤマトが口を開いた。
東京に神経毒が蔓延しているらしい。
セプテントリオンと思われるので、情報収集しに行こうぜってことだ。
張り切る学生たちと、それを見送るジプスの制服を着た大人。
なんか間違ってないだろうか。
というか、戦闘のエキスパートとかいないものか。
あ、死んだのか。
それ、エキスパートじゃないから。
戦闘ならゴルゴ13くらいの不死性を持ってないとダメに決まってる。
外に出て街を徘徊する空気の中、毒々しい色のタマネギが降ってきた。
空に目を凝らすと幾つかのタマネギを上空から様々な地点に落下していた。
『ドゥベ』のじばく、『メラク』のれいとうビーム、『フェクダ』のでんきショック、『メグレズ』のじしん。
これらのことから不用意に近づいてはいけないと学んだのだ。
そんなことを考えているとジプス局員がおもむろに近づいて行き、タマネギが割れた。
悲鳴をあげながら局員が倒れた。
これは間違いなく神経毒だな。
本日のセプテントリオンはどくどくが得意技のようだ。
たぶん毒タイプなのだろう。
ヤマトがセプテントリオンの解析に入ったので防衛しろと言いだした。
面倒だなと思いながらも戦っているが、ヤマトを援護する必要が全くない。
むしろガンガン前に出て戦い、ピンチの仲間がいたら援護する始末だ。
ツンデレとかそういうレベルじゃないぜ……。
というか解析はどうなっているんですかね。
そろそろ解析の終わりが見えた頃に、増援が現れた。
増援とは緑色の苔のようなモノに覆われた人型であるヒトコトヌシだ。
背中にスライム化したクドラクに憑りつかれているのか、徐々に接している箇所が溶けている。
キモい姿をみんなで眺めていると、やがてヒトコトヌシの身体がスライム・クドラクに取り込まれた。
そして復活したクドラクは元気に宙へ浮かぶと、タマネギが直撃した。
毒を浴びてグズグズになっていき、消え去った。
一体何がしたかったのだろうか。
タマネギ爆撃をやり過ごしているとヤマトの解析が終わった。
セプテントリオンのコードは『アリオト』。
東京タワーに向かっているようで、ここからでも見えるようだ。
でかい(小学生並の感想)。
空の彼方から徐々に迫ってくる姿は、巨大怪獣としか思えないフォルムである。
しかも空を飛んでいるのでこちらから干渉できそうにない。
なんだかナスカの地上絵のモデルっぽいし。
タマネギで街が汚染され、悪魔も人間も関係なしに死んでいる様をクルースニク・レーダーで捉えた。
セプテントリオンがガチ過ぎてどうしようもない。
ヤマトが対策を思いつくまで待機の知らせを受けた。
上空から毒物ばら撒く相手への対策とはどんなものだろうか。
ミサイルとか持ち出したら完全に特撮になりそうだ。
巨神兵東京に現る、みたいな。
プロトンビームがあれば『アリオト』も撃墜できそうだ。
Wikiで巨神兵を調べると「架空の人工生命体」ってカテゴリになるんだけど、そこにはヴォルケンリッターが含まれている。
「つまり二つは同じなんだ!!」「な、なんだってー!!!」と脳内で遊んでいるとケイタがシャドーボクシングっぽいことをやっていた。
宮田くんやカマキリの姿は見えない普通のシャドーボクシングだ。
ただ単に眺めているとジュンゴが猫を抱いて現れた。
じゅんごという名の猫らしい。
自分と同じ名前を付けるとは、ジュンゴさんはやはり天才やでぇ……。
ワクイの真似をするとパンチがシュッと出やすいことに気付く。
シュッと出やすいのだ。
……大阪はシュッとしているよな、うん。
パクッたモーションを利用すると居合拳が使えるようになった。
ポケットに引っ掛からない様にシュッとするのがポイントだ。
鞘のように使ったら破れたから間違いない。
……ちょっと着替えて来よう。
居合拳の威力は大したことは無いが、携帯電話の破壊には役立つはず。
とりあえずコスプレっぽい白と青の制服を脱いで、上黒で下赤な感じに着替えた。
ネコミミヘッドホンとも相性ばっちりで魔王とかになれそうだ。
これだけだと寒いので上着が欲しいところだが……。
ダサカッコいいメカメカしいスーツを見つけたが、俺は謎の穴へ奇妙な旅をするわけではないので却下。
白スーツに黄色ネクタイとかオールバックの人向けなので却下。
オレンジっぽい合羽のような服は並行世界のモノであって、ここにあってはダメそうなので却下。
他にも学生服とか、奇抜な服が見つけるが明らかに俺が着ていいものではないので却下。
詳しく解説してはいけない気がするものばかりで辟易してきた。
発光する刺青でもいれるか、とふざけつつティコに相談していると黒地に緑のペンキをぶちまけた様なオサレな外套を見つけた。
これは……!!
たぶん、並行世界の従兄が着てるに違いない。
つまり今はヒロにこそ相応しい……無いな。
とりあえず奇抜だが他に良さそうなのも無いし、これにしよう。
ヒロがパスパタが何なのか知りたいということで相談された。
いや、知るわけないだろ。
それはジプスにあるらしいのだ。
パスタの親戚か何かでしょうか。
そういえば「ぱしたさん」って凄い響きじゃないだろうか。
破壊力抜群だわ、うん。
オトメさんが笑顔で「ぱしたさん食べましょう」とか誘ってきたら瞬殺される自信がある。
悩殺そのものである。
プロポーズまで一直線。
オトメさんマジ女神。
パスタの親戚の線が濃いということで食堂を目指しているとマコトが通りかかった。
挨拶もそこそこにパスパタについて聞いてみた。
どうやらパスタは関係ないようだ。
パスパタとはシヴァがブチギレたときに出る炎のことだ。
瞑想しているときにカーマがシヴァに矢を当て、ちょっと心を乱したときにパスパったらしい。
それを再現して『アリオト』を撃墜することになった。
つまり、カーマなら簡単にキレさせることができるからマトになって安らかに死ねってことだ。
日本なのにシヴァやカーマのようなヒンドゥー教が出てくるのかと疑問を持ってはいけない。
悪魔に国境はないのだ。
クルースニクが転がっている日本だし。
これが和洋折衷ってやつか……。
シヴァは踊りを好んでいるという。
ヒナコ一択ですね、これは。
むしろヒナコが以外が踊ったらブーイングの嵐だ。
主に俺とヒロによるものだが。
次は色気というが……。
フミは機嫌が悪いのかわからんが、色気とかぶち殺すぞヒューマン状態である。
マコトは苦手だと言い残して逃げた。
オトメさんが最有力候補だ、俺の中では。
女子力MAXだし。
ヒロは新田が推しメンのようだ。
そんな感じで話しているとアイリが顔を真っ赤にしながら怒鳴り始めた。
つまり、アイリが色気担当でいいのだなと半ば引っ張るようにジプスから連れ去る。
……アイリは可愛いと思うが色気は微妙な気もするけど。
歌舞伎町の広場まで悪魔を蹴散らしながら来ると、フミがパソコンを操作した。
ゴゴゴ……なんてそれっぽい音ともに謎のオブジェ(人間ではない)が出現。
どうやらカーマはこれに封印されているらしい。
中にジャムみたく詰め込まれているのだろうか。
もしかしたらマグネタイトの状態でぶち込まれているかもしれない。
だとしたら悪魔のスープだな。
そんなオブジェの前に立って待っているが、何の変化も起きない。
風とともに空き缶の転がる音まで聞こえてきた。
早く色気出せ、アイリさん。
煽ってみるとポーズを決めてくれた。
どうやら彼女なりのセクシーポーズというやつらしいのだが……。
ヒロが空き缶を転がして不満をアピールした。
俺も空き缶を転がしてみた。
アイリが怒ったでござる。
そんな感じでアイリをおちょくっていると呆れた顔でフミが色気をなんとかしてくれるそうだ。
俺「録画だ!!」
ヒロ「●REC」
などとフミのサービスシーンに期待を膨らませていると、放っておいたアイリがキレた。
流石に茶化しすぎたかと反省しているとアイリが上着の裾に手をかけて脱ごうとしていた。
よし、任せろ!!とフミからアイリに録画状態のスマホを向ける。
ヘソが出たあたりでカーマが出現した。
空気読めよ糞悪魔。
クロノス教頭みたいな話し方しやがって。
言っておくけど遊戯王カードでは何も解決しないからな。
デュエルを挑んでそのまま喰われたやつとかいるから注意しろよ。
カーマにパスパれと命令するが断られた。
理由は「ぼっ」とされるからだとか。
俺は今、貴様を「ぼっ」としたい。
「ぼっ」というか「ぐちゃっ」みたいな感じで。
スライム直前までマグネタイトを削って、パスパるときに最低限与えようかと思っていると怒りがおさまらないのかアイリがカーマを殴り飛ばした。
ダメージはほとんどなかったようがさらに怯えたのか、ジャックランタンを召喚した。
そしてカーマもジャックランタンに姿を変え、逃走をはかった。
背中を見せていたジャックランタンたちを追い抜き、進路を塞ぐように立つ。
怯んだのか、立ちすくんでいる姿を横目に転がっていた空き缶を拾う。
カーマさん♪ カーマさん♪
ここに空き缶があるでしょ~?
――数分後の貴様の姿だ――
空き缶が潰れ、溶解した。
現世に在るカーマは分霊だ。
分霊は本体の力を一部と記憶を受け継いでいる。
もちろん、恐怖も同様だった。
苦行の末にシヴァの子以外に滅ぼされることのない肉体を約束されたターラカを倒すために、神々は真冬の山に籠っているシヴァを必要とした。
シヴァは苦行を己に課していたのだ。
神に命じられ、シヴァを矢で射ることこそがカーマが抱き続ける恐怖の原因となった。
いつもと同じようにオウムに騎乗し、ミツバチを弦としたサトウキビから作った弓を持ち、妻ラティと親友のヴァサンタを伴って、冬山を登った。
いつもと同じように苦行者を邪魔するがごとく、先端に花を彩った矢でシヴァを射た。
いつもと同じように命中し、いつもと同じように心を乱した。
いつもと違ったのは、妻を亡くしたばかりで哀しみを忘れる様に瞑想していたシヴァが相手だったことだ。
生じた欲望によって心が乱され、カーマの矢によって邪魔されたことにシヴァは気付いた。
激怒したシヴァはカーマを焼き尽くした。
カーマは自らの身体が徐々に灰になり、消え逝く様を見せつけられた。
そして、激怒したシヴァに滅ぼされたときと同じような恐怖をカーマは感じていた。
シヴァによって再び燃やされるくらいならばと逃走を試みたが、人間に先回りされてしまった。
姿を捉えることができないほどに速く動く人間だった。
その人間に最も近かったジャックランタンが握り潰され、頭部が消し飛んだ。
次はその近く、その次は更に近く、と徐々にカーマへと迫ってきていた。
逃げ道を塞ぐように巧妙に移動しながら。
近づくにつれて、ジャックランタンが悲鳴を漏らした。
そのジャックランタンは現界した姿のまま、マグネタイトを吸われていたのだ。
スライムの姿へ変化し、吸収速度が緩やかになった。
だが、解放されることはなかった。
より永く苦しむようにと、炎で燃やしていたのだ。
人間は炎に魅入るように笑みを浮かべ、スライムと化したジャックランタンは苦悶の声をか細く発した。
その様が、肉体を灰塵にした炎が未だ燃え続けるように焼き付いて脳裏から離れない恐怖を思い出させた。
恐怖で震えることしかできなかった。
ジャックランタンだったモノが挙げた奇声で気付いた時には、すでに自分しか残っていなかった。
逃走を止めるだけならば、ここで手を止めるだろう。
残り一体となった自分がカーマなのは、当然のことなのだから。
しかし、この人間が止まるのか。
ふと、直前で放たれた言葉を思い出した。
――数分後の貴様の姿だ――
このままでは自分は殺される。
融けゆく物質と同じように、自分は身を焼かれ殺されるのだ。
そう確信した。
しかもシヴァのように怒りに身を任せて殺すのではなく、ゆっくりと遊びながら苦しめながら殺される。
人間とはそういうものなのだ。
変えていた姿を元へと戻し、すぐさま人間に従うと伝えた。
爛々と燃え盛る炎が「ぼっ」と目の前を通り、瓦礫を融かした。
遅れるように熱風が通り過ぎ、人間が満足気に肯いた。
話し合いは世界を救う気がするね。
カーマを見てそう思った。
他人と分かり合うには理解を示すことだと思うんだ。
こんな廃れた世界だからって諦めてはいけないよね。
肉体言語から会話へのコンボに気付くとは、やはり天才か。
何も言わずに余っていた携帯電話へとカーマを強制的に収納。
会話?
悪魔と会話とかエクソシストの仕事だろ。
残念ながら俺は違うんだわ。
宿しているだけ。
陰陽師の才能があるかもしれんけど。
ソワカ!!とかニワカ!!とかやるんでしょ。
超得意だわ。
あと破っ!!とか。
これは寺生まれか。
次はシヴァ降臨の儀式だ。
シヴァは踊りが好きな神様なので、ヒナコの見事な日本舞踊で一本釣りというわけだ。
ちなみにシヴァの妻はパールヴァティなのだが彼女は元は色黒だったらしく、シヴァに肌の色を馬鹿にされたことを恥じて森にこもって苦行に明け暮れるという萌えキャラである。
可愛すぎるだろ、パールヴァティ。
褐色系としての可能性も秘めていたというから凄まじいポテンシャルだ。
なんやかんやあって黒い肌と別れたのだが、その黒い肌はパールヴァティの怒りと合わさってカーリーになったとか。
カーリーは勝利のダンスで世界を危機に陥れ、シヴァが下敷きになったという逸話もあるほどアグレッシブル。
シヴァどんだけ妻が好きだったんだって話だ。
カーマもブチギレられて当然だね。
今日パスパるけど死んでもしょうがないよね。
ちなみに最初の妻でパールヴァティの転生前のサティは父親に結婚反対をされたから怒って焼身自殺した。
シヴァはブチギレてサティの遺体を抱きながら都市を滅ぼして回ったとか。
半端ないね。
ホントにシヴァは妻、というかサティがどんだけ好きなんだって話だよね。
カーマはパスパられるけど頑張ってね。
愛の神だし大丈夫だ、問題ない。
わかってくれるはず。
愛を確かめるためとか言っておけばいける。
寂しかったの、とか。
おまえに飽きたんだ、とか。
あなたが一番よ、とか。
類似系もいっぱいあるし、大丈夫だろ。
……まあ、本音言えば無理だろうけど。
人間だって無理なときがあるんだから、シヴァにそんなことを言ったら滅ぼされるに違いない(確信)。
死んだら拾ってやるから安心するがいいさ。
カーマのときと同じような謎のオブジェに向かってヒナコが踊りを披露していると、悪魔がわらわらと集まって来た。
音に釣られたのか、踊りに引き寄せられたのかわからない。
悪魔を呼ぶ儀式の際に、踊る方法もあるらしいし踊りには悪魔を引き寄せる力があるのかもしれん。
とか思ってたら、フミがシヴァの力に引き寄せられてるだけだと教えてくれた。
ツマンネ。
悪魔を倒すのも飽きたのでヒナコの踊りを座りながら見る。
指パッチンで燃やしておけば処理できるし。
メギドラオンで周囲を消し飛ばしたら早いんだろうが、さすがにダメっぽい。
ヒナコの胸が横チラしかしなくてCERO-Bを呪っているとシヴァが現れた。
披露された踊りに上機嫌である。
頼みごとも出来る限りでなんでも聞いてくれるとか。
俺もヒナコの絶対領域を突破できるなら何でも言うことを聞いてしまいそうだ。
九条緋那子でググれば俺の気持ちをわかってもらえるはず。
ジプスへ戻って来たが、解析待ちのため自由時間。
黒おじさんとやらの対策会議を開いた。
前にお香をもらったときにティコが解析したデータがあるのだが、凄まじいの一言に尽きる。
しかも、この数値が全力ではないとのこと。
死ぬかもしれんね。
自力を上げるために悪魔を狩るが、それだけでは心もとない。
とはいうものの、生存フラグになるようなモノが欲しいところ。
相手を必殺できる都合の良い技などは望んでいないのだが、やはり難しいか。
とりあえず出現場所を探って射程外から地道に削るのが最善だろう。
スマホでは出来なかった死に顔動画による予知を本格的に導入しようということだ。
黒おじさんにだけ絞ればある程度までティコが頑張ってくれるらしい。
俺、この戦いが終わったらティコと結婚するんだ……。
冗談だ。
冗談だけど、ティコ超かわいい。
行動する度に死に顔動画による黒おじさんの出現位置が変わるという遊びを発見した。
運命とは行動することで簡単に変える事ができ、自分次第なのだなと納得した。
あ、黒おじさんが便所に出現した。
そんなことをやって黒おじさん無限出現√遊びをやっているとヒロが仲間を伴って現れた。
これから福岡に行くらしい。
暇だし俺も行くことにしようかな。
マコトを問い詰めてターミナルへ向かう。
福岡へ乗り込めー^^と転移した。
外へ出ると黒い何かが街を切り取るように浸食していた。
これが……。
これがシュバルツバース……。
あのシュバルツバースに触れると人間でも悪魔でも消えてしまうらしい。
つまり「人類よ。これ以上何を望むのだ」状態ですね、わかりません。
巨大なターミナルを作ってセプテントリオンをぶち込んだら戦闘を楽に解決できそうなんだけど。
闇に『アリオト』を落としたら瞬殺じゃないだろうか。
でも東京から札幌まで移動してたし、闇も乗り越える気がする。
この未元物質(ダークマター)はセプテントリオン側のモノってことか。
もしくは少年の陰からホムンクルスみたいにわらわらーって……だとしたらセリム探してぶっ殺すしかない。
戻ってくると皆どこかへ行ってしまった。
ヤマトに福岡の惨状を問い詰めるとか言ってたけど。
ヒロは達観、ダイチは置いてけぼり。
俺は小春ちゃんを見つけたので優先順位が一瞬で書き換わった。
俺、ロリコンなのかな……。
折り紙を見つけたので二人で折ることにした。
オトメさんが最近は働きすぎで心配だということを相談された。
確かに一人でかなりの役割を占めている。
心配になるのもわかる気がする。
小春ちゃんも心配しすぎで暗くなってしまったので折り紙で悪魔を生産する。
段々と興が乗っていき、数多の折り紙の集合である『砕け逝くジャックランタン』を完成させてしまった。
でかい(小学生並の感想)。
腹部や頭部のパーツを外すことで徐々に崩れていき、最期にはバラバラになる。
カーマのときに喰ったジャックランタンを再現してみたものだ。
小春ちゃんの受けが予想以上に良かったのでレギオンも作ってしまった。
キモいぞ、これ。
色も再現したからな……。
小春ちゃん的には可愛いらしいのだが、色んな意味で将来が有望だ。
オトメさんが小春ちゃんを探しにきた。
少し外へ行くことになったようだ。
小春ちゃんが嬉しそうにオトメさんに飛びついた。
ジャックランタンがバラバラになった。
まだ仕事中なので相手できないと伝えられた小春ちゃんが寂しそうに離れた。
外へ散歩代わりに連れて行けばいいし、俺も付いて行くので心配ないと提案する。
渋々ながらも許可をもらい、小春ちゃんも大喜びだ。
タワーに行き、そこで警備しているジプス局員の状態を調べるというのが今回の仕事だ。
俺とオトメさんで小春ちゃんを間に挟んで手をつなぎながらゆっくり向かう。
ときどきぶら下がるように体重をかけるのが好きなようで、オトメさんが少し困っていたが楽しそうでもあった。
タワーに着くと悪魔の集団に囲まれているヒロとヤマト、マコトの姿があった。
俺たちとヒロたちで挟撃した形になってしまった。
小春ちゃんが危険なので肩車する。
あまり激しく動くことができない縛りプレイに突入である。
まあ、オトメさんの魔法で怯んだ敵を居合拳で潰すだけなんだけど。
それほど時間も経たないうちに悪魔の数が半数を切っていた。
劣勢だと気付いたのか指揮官級の悪魔が小春ちゃんを人質に取ろうと一直線に走ってきた。
骸骨のような頭部に高貴な装束、火の灯った燭台を片手に持った悪魔であるビフロンスが全速力で迫ってくる姿は明らかに気味が悪い。
小春ちゃんのトラウマになってしまうかもしれない。
そんな可能性を零にすべく、全力で居合拳を放つ。
ビフロンスの左半身を消し飛ばし、尚も威力が納まらない拳圧は射線上にいた悪魔たちをも巻き込んでいった。
……メギドラオンを込めたら予想以上だった。
残っていたビフロンスの半身も居合拳で消し飛ばし、マグネタイトを回収していく。
小春ちゃんは間近で悪魔が見れて喜んでいたが、オトメさんは胆を冷やしたに違いない。
バガブーは出現しなかったが、関係ないに違いない。
ヤマトと合流するとセプテントリオン対策が整ったと伝えられたのでジプスまで戻る。
折り紙しながら聞いた作戦はサードアイ作戦。
『アリオト』の射線上にカーマを配置し、パスパタで撃ち殺して貫通するであろう熱線により外殻から本体をたたき出す。
そして、外殻から振り撒かれるであろう毒を中和しつつ本体を倒すというものだ。
もちろん、小春ちゃんはお留守番だ。
折り紙で『真っ二つビフロンスくん』を作ったので暇つぶしにはなるはず。
あの巨体を撃墜しても平気なのかとヒロが聞き、ヤマトは問題ないと答えた。
札幌に撃墜予定だが、すでに無秩序な崩壊した世界しかないので大丈夫らしい。
ウソか、ホントか。
どちらでもない、半端な状態が正しいといったところか。
たぶん生き残りはいる。
多くはない。
避難は満足に出来ていないが、ジプスもあったはずだ。
活動できる程度には機能していたようだし、その周囲は少なくとも北斗の拳よりはマシだったはず。
俺の考えは確実ではないし、信じ切っている面々には何も言わないでおこう。
ヤマトは信じていないのに都合がいい部分は信じてしまう。
こんな世界だ、しょうがないのかもしれないが。
士気を下げるのは良くないし、そもそも面倒だ。
人命救助や避難誘導を言い出すに違いない。
すでに避難所も機能しているか怪しいし、していたとしても受け入れられる余裕はない。
毒混入タマネギが降り注ぐ中での作業などしたくもない。
だから何も言わない。
他人のために行動できるのは彼らの美点だと思うが、俺には関係ないのだ。
たぶん、若さってやつなのだろう。
つまり躊躇わないことか。
ヤマトも躊躇わないのは若いからだろうか。
カーマを断頭台に送る途中でダイチに話しかけられた。
浮かない表情だ。
ここ最近はこんな感じだからいつも通りなのかもしれないけれど。
話の内容は「自分たちがなぜ戦う必要があるのか」というものだった。
確かにそうかもしれない。
俺もなぜ戦っているのかよくわからん。
一応は拠点として使っている礼のつもりではあるのだが。
解決してくれる誰かが現れないから自分たちで解決しようとする。
聞こえはいいが、利点も無しにヤマトが動くとは思えない。
あんな性格だし、「無能は死ね!!」とか言いながら安全圏を確保するはず。
つまり、戦った先に在るモノが……。
なんか考えるのめんどくさくなったな。
ヤマトに問い詰めたら答えてくれそうだし、そのうち聞いてみようか。
そういえばダイチの相談にちゃんと乗って無かったわ、俺。
めんごめんご。
『アリオト』が見えて毒タマネギが降らない見晴らしのいいビルの屋上でスタンバイ。
せっかくだから俺は赤のカーマを選ぶぜ、と召喚。
何の赤かって?
血の海に決まってんだろ、言わせんな恥ずかしい。
シヴァの準備もできたらしく、こちら次第という段階になった。
合図を出したら矢を射ろと指示を出していると、勝手にカーマが矢を放った。
……あ?
カーマを全力で放り投げ、『アリオト』の外殻に突き刺した。
毒とかモロに浴びてヤバいだろうが関係ない。
死ねばいい。
ちょうどパスパタが視界を横切り、カーマごと『アリオト』に突き刺さった。
落下しているのを確認してターミナルへと帰還。
毒に耐性あるのか不安だし、落下の衝撃も凄まじいに違いない、それを免れたとしても毒の海に沈む人々など見たくない。
ジプスまで戻ってくると中和剤を担いで準備済みの面々がやる気に満ちていた。
毒が拡散するまで少し時間が空いたので待機だ。
とりあえず一つだけ言っておくことがある。
茶碗蒸しうまい。
茶碗蒸しを食べていると、若干機嫌の悪くなったアイリが隣に座った。
ヒナコが離れたところでにやにやとした笑みを浮かべ、周りから人がいなくなった。
たぶん、ヒナコがアイリをおちょくって怒らせたので火の粉が降りかからない様に逃げたのだろう。
アイリがプンスカと擬音が聞こえてきそうな表情をしながら女性メンバーを批評し始めた。
ヒナコは確かに痴女だし、同意する。
新田はヒロの支持が強いので何も言えねえわ。
マコトは意外と可愛い、まことさんにじゅうろくさいかわいい。
フミは……ぶっ飛んでるしところもあるから何とも言えない。
オトメさんマジ女神、ちなみに小春ちゃんは実子ではないという魅力2倍キャンペーン中だがすでに魅力は無限大で天元突破、止まるところを知らない。
本音を言ったらヘソを曲げそうなので相槌を打ちながらマフラー似合ってて可愛いよと褒めておいた。
照れてるアイリマジ天使。
……天使だと褒め言葉にならないから。天使はマジで滅ぼしたほうがいいかもしれん。
まあ、冗談抜きで褒め言葉に照れてツンツンしちゃうアイリは可愛いよ。
マフラーの無重力感を考えながら、ジュンゴの茶碗蒸しのおかわり。
そして俺が食べ終わるのを見計らって作戦が決行。
基本的に俺は戦場の端から援護、残りはパーティを組んで『アリオトコア』へと向かった。
外殻と比べてやたらと可愛くなった『アリオトコア』だが、毒タマネギを降らせるのが厄介な点だろうか。
俺が居合拳でどこかへ飛ばしたり、『アリオトコア』の羽だか触覚だかよくわからん物にぶつけて遊んだりすれば無効化できるのだが。
『アリオトコア』が目に見えて弱り始めたのだが、外殻がまだ動くらしく毒を撒き始めた。
毒タマネギは弾いているが、長引くと中和剤が切れるかもしれん。
悩んでいるとフミが新しい中和剤ができたと知らせてくれた。
中和剤を抱えているのはジプス局員だが、毒沼で命を懸けて戦うよりはマシだろうし頑張ってくれ。
俺の元まで必死になって運んでくれた中和剤を片っ端から投擲する。
とりあえず、必要な場所に配置できたはずだ。
残りを『アリオトコア』目前の位置に突き刺した。
戦場から一気に毒が中和され、リンチされる『アリオトコア』。
哀れなほどにぼっこぼこである。
最後は自らの外殻に潰されてこの世を去った。
死んだのかわからんが、エネルギーを撒き散らしていた。
スタッフが美味しくいただきました。
途中で死にかけのカーマを見つけた。
パスパタで焼かれ、毒に侵され、それでも現界していた。
凄まじい執念だ、感動的だな。
だが無意味だ。
カーマを踏みつぶした。
俺は二通りの方法で吸収する。
マグネタイトとして吸収する方法と悪魔の形で取り込む方法だ。
マグネタイトは悪魔をぶっ殺して食べ、取り込む場合は丸呑みして徐々に吸収だ。
マグネタイトのほうが効率は良いが、丸呑みは姿が変わらない合体のようなものなので気分で吸収方法は変えている。
カーマは最後の最期でパスパタに巻き込もうとしたので砕いて跡形も無くし、毒素を散らしてから食った。
結構溜めこんでたな、こいつ。
作戦終了後に問い詰めるとヤマトが目的を話した。
『ポラリス』というセプテントリオンの親玉がいて、そいつの力で新しい世界を創造するというものだ。
世界創造とはスケールが半端ない……のだろうか。
宇宙とか含んでそうなのに範囲が地球、というか日本だからなぁ。
なんか微妙だ。
たぶんすぐに皆が知ることになるだろう。
人の数だけ願いがあることだし、三国志状態の予感。
俺はどうしようかな。
何も考えずに『ポラリス』とやらに吶喊するのも悪くなさそうだけど。
特に思いつかないんだよね、望む世界とやらが。
残っていたので収穫してきた毒タマネギと毒沼エキスを詰め込んだ容器、中和剤を詰め込んだスーツケースを片手に持ってジプスを出る。
黒おじさん襲撃の時間だ。
ここに留まっていると押しかけてくるっぽいし、外のほうが戦いやすい。
ティコが手を借りたらどうかと提案してきたが却下した。
自分のことは自分でやりなさいという教えが俺にはあるのだ。
むしろ、それしか無い……はず。
何か他に教えられたっけなぁ。
随時生成されている死に顔動画で黒おじさんを予知しながら移動。
人が全く居らず、悪魔が蔓延っている場所を戦場に選んだ。
投げやすそうな瓦礫がそこら中に転がっているのも俺としてはポイントが高い。
黒おじさんの出現場所がこの先にある公園に固定されたのを確認し、ビルの屋上を狙撃ポイントに選択。
高濃度のマグネタイトが出現するのを感じながら、毒タマネギを持つ。
強い衝撃を与えない限りは爆ぜないらしい。
つまり思いっきりぶつければ破裂する。
黒おじさんの出現と同時に毒タマネギを投擲した。
失われし数多の意思よ 我が元に来たれ!
ここだ!クレイジーコメット! 更に!トゥインクルスター!更に!ミックスマスター!更に!プリンセスオブマーメイド!
転がっている瓦礫を黒おじさんを飲み込んだ毒沼目がけて投げつける。
弾幕は数だ!!
瓦礫による弾幕の中、こちらを捕捉したらしい黒おじさん。
姿は悪魔のものになっており、堕天使ネビロスというデータを確認した。
古より伝わりし浄化の炎…消えろ!エンシェントノヴァ!!……に似た置き土産とともに離脱する。
ネビロスが俺のいた場所に出現すると同時に破壊の炎がビルを破壊した。
虚空瞬動で別のビルへ移動し、再び瓦礫をネビロスに投げつける。
方向は死に顔動画で随時確認している。
出現しそうになったら毒を撒いて離脱、移動によって発生するエネルギーの残滓を雑魚悪魔を砕いて紛らわせ、別のビルから投擲を繰り返した。
攪乱はメギドラオンが一番理想的だが、魔力がもたないので悪魔で代替した。
距離は徐々に、そして確実に詰められている。
それでも削りを続けるのは俺の方が確実に自力で劣っているからである。
ときどき、オークションで買った悪魔や取り込んでいた悪魔を喰って回復していたがそんな余裕はなくなった。
互いに目視できる距離まで近づいた。
スーツケースを遠くに放り投げて咸卦法を発動させる。
一瞬で迫ってきたネビロスに居合拳で牽制するが意に介した様子も無く、そのまま突撃してきた。
つよい(小学生並のかんs……防御した右腕がぶっ飛んだ。
……っょぃ。
死に顔動画やティコ、悪魔知識などによるとネビロスは魂を引っこ抜くらしい。
それで死んだがために餃子ヒーローとしてよみがえった人がいたとかいないとか。
近接戦は完全に死地ですね、腕だけで済んで良かった。
メギドラオンで一度距離を取って、右腕を拾う。
ぐりっとやると元通り、切断面が綺麗で良かったぜ。
冗談だ。
回復魔法も使ったけど、魔人街道を一直線だからできる芸当でもある。
俺、人間やめるってよ。
未だに血が赤いのがとても嬉しく感じた。
ネビロスと距離をとるとキモい悪魔を召喚し始めた。
ネビロスに牽制しつつキモ悪魔を潰して食い、魔力を回復。
さっきの攻撃で魔力を奪われたのが痛かった。
ネビロスは魔力を吸収、というか強奪するような能力を持っているらしい。
……なんて嫌らしい悪魔だ。
なるべく接近されない様に回避しつつ戦っているが、火力不足が否めない。
削れてるんだかわからん。
もっと俺に力を……え、無理?
そう言わずに頼むよ。
無理?
マジか……。
現状は肉体が魔人へ向かっていて、これ以上混ざると悪魔になるって感じらしい。
寄越せ!!って無理矢理やっても何かに阻害されてて強制停止状態だ。
ヤバい。
このままだと死ぬ。
喰らえ、逆転の一撃!!とメギドラオンを込めた左腕で居合拳を放つ。
メギドラオンの衝撃で大ぶりになってしまい、接近を許してしまった。
腹を貫かれ、何かが抜かれていく。
同時に虚脱感に満ちて動きの鈍くなった右腕をネビロスに突き刺す。
メギドラオンがすべてを包んだ。
右腕がメギドラオンの衝撃でめっちゃ痛い。
というか腕だけでなく全身を焼かれて悲鳴があがるが、生きているので良し。
ネビロスも立っているが内部から吹っ飛んだのだ、そろそろ限界が見えてきたはず。
スーツケースから毒液が入った容器と中和剤を取り出した。
ここまで誘導したのだ、最期まで気は抜けない。
中和剤を足元に突き刺し、毒液をぶちまけた。
元気なときと違って、スライム化が迫る弱った身体に毒はキツイはずだ。
残っている魔力でメギドを腕に込める。
メギドラオンは厳しい。
さあ、俺が今立っているここがセーフティゾーンだ。
ネビロスが襲い掛かってくるモーションを見せた瞬間、居合拳。
メギドを込めた居合拳はネビロスを砕いた。
キツ過ぎてゲロ吐きそう。
黒おじさんが死んだ跡に変な人形が落ちてたから拾ってしまった。
どう見ても黒おじさんを模した物だ。
おじさん、実は人形だったのか……。
今日はヤバい。
マジでヤバい。
もう休むから。
絶対寝るから。
ジプスに戻り、自室で寝るからとみんなに挨拶しようとして会議室に訪れると嫌な静寂に包まれていた。
嫌な予感しかしない。
俺の逃走しようという意思を読んだかのようにヤマトがドヤ顔で世界の支配者になると宣言。
……面倒なことになったな。
平行線の言い争いに発展するに1000魔貨、と。
久しぶりに寝たいんだけど、叶わなそうだ。
オリ主の技
真・夢幻の具足:瞬動+咸卦法のブースト。飛べる、というか滑る。超はやい。
万魔の一撃(仮):強化されつつあるすごーいパンチ。セプテントリオンとか悪魔とか食べてるから超すごい。
至高の魔弾(仮):メギド・メギドラオンを込めた居合拳。暴発させたりする。燃費が悪い。超つよい。
茶碗蒸し:ジュンゴが作った茶碗蒸し。猫も食べる。超うまい。
メギドファイア:Law……?な主人公には一生使えない。超ぎょうざ。
--7
悪魔を使役するサマナーと悪魔は密接に関係している。
俺がマグネタイトとして吸収せずに残している悪魔のほとんどは過去に様々なサマナーに使役されていたことがあるらしい。
そんな悪魔たちの話は主に使役していたサマナーの話なのだが、これは暇つぶしには最適だ。
魂が移ったために別人として生きたり、アイテム係りのカツオハッカーだったり、東京の崩壊に巻き込まれたり、金剛神界に置いていかれたり、崩壊後の世界に生きて唯一神を倒したり、目覚めたら魔人になっていたり、ペルソナと呼ばれるもう一人の僕を駆使したり、ダサカッコイイスーツを着て人類最後の旅を楽しんだり、コール!!したり……本当に様々だ。
悪魔たちは分霊なのでサマナーとの面識がないが、どことなく楽しそうだった。
一度でいいから俺も会ってみたいものだ。
――決別の金曜日――
昨日は面倒で仕方なかった。
ヤマトが『セプテントリオン』の親玉である『ポラリス』の力で願望を叶ようとしているという事だったのだが、そこから各々の主張を繰り広げられた為に話が長引いてしまったのだ。
考えが違うのは当然だが、ヤマトに反発する者が多かった。
激化する実力主義か、歪な平等主義か、またはどちらでもない別の何かか。
実欲による更なる格差は好まない、責任が増えそうで超めんどくさい。
可笑しなくらい完全な平等も無いな、何もかも均等とか気持ち悪いし。
中立は現状ではありえない、考えが極端だとか仲間同士での争いはしたくないだとかで先が見えない。
時間的にも余裕がないし、あんまり選択肢が無いな。
全員ぶっ殺して俺が勝ち残ったら、この世界を消滅させて別の世界に飛ばしてもらうとしようかな。
神に別世界に飛ばされて仕方なく生きてるけどなんだかんだ~、みたいな。
なら「ハリー・○ッター」の世界でおなしゃす!!
「お辞儀をするのだ!!」「うるせえメギドラオン」とかワクワクする。
まあ、全部冗談っすよ☆
……たぶん。
今日の死に顔動画も興味深いものが二つあった。
輝いている新田を背に見事な氷像にされているモノと赤おじさんと思われる紳士に焼き殺されているモノ。
どうやらクドラクが再び襲撃にくることと、おじさん☆リベンジが行われるということを示唆しているようだ。
すぐにティコやクルースニクと作戦会議をする予定だが、今日もまた忙しい一日になるだろう。
人気者はツラいぜ。
たぶんクドラクは放っておいても襲撃してくるだろうし、受け身でいいか。
蔓延っている悪魔を喰い歩く。
悪魔の腹を素手でぶち抜いて活きの良いまま取り込んだり、砕いて取り込んだりとグルメな喰い方だ。
喰うって言っても口でパクッとしているわけではなくて手で吸い取っている感じだからね。
渇きが満たされた・・・とかとは違うんです。
喰奴ではないのだ。
もっと上品に食事しますから。
マジで食うとか芸が無いわ。
そんな感じで朝から元気に悪魔を喰っていると憔悴しているロナウドと出会った。
ジプスにフルボッコにされて暴徒はほぼ解散したらしい。
ジプス打倒を目標として活動していたのに勝ち目が見えなくなって迷っているらしい。
ポラリスの話でも流しておくか。
俺の言葉を何も疑いもせずに信じるロナウドが少し心配です。
まあ、真実だし精神的にも限界がきていたのだろう。
追い詰められた状態で逆転の機会が都合よく転がってきたのだし、信じてしまうのは人間として当然かもしれんね。
これで間違いなくロナウドは平等を掲げる勢力を引っ張るに違いない。
わかりやすいやつが先頭に立っててくれた方が俺も楽だし、きっと他の勢力と争ってくれるに違いない。
ヤマト、ロナウド、中立。
全員が争うことで俺がソロで活動しても勝ち目が出てくるというものだ。
争え……もっと争え……なんてね☆
説得されたらその勢力にコロッと所属しそうだけど、種くらい蒔いても構わんだろう。
ジプスに戻ってくるとジュンゴが血相を変えて走ってきた。
少し怪我をしたじゅんご(猫)を抱えている。
悪魔に襲われそうになったらしい。
猫って悪魔には餌としてどうなのだろうか。
オトメさんのところに連れて行くことにした。
ジプスではなんでもかんでも怪我ならオトメさんって感じなのだがオトメさんは大丈夫なのだろうか。
現場に出て、医療面で働いて、子育てして、と休む暇がないのではないか。
ここにオトメさん超人説が生まれた……。
オトメさんのもとにじゅんごを預けた。
軽傷だからそれほど心配するほどでもないとか。
ジュンゴはじゅんごをそのうち街に放す予定があると言っていた。
街は悪魔が蔓延っててヤバそうなんだが、いいのだろうか。
オトメさんの顔色がちょっとよろしくないのが気がかりだ。
大阪本局の出入り口近くまで来るとヒロたちにこれからビリケンさんという幸運の神にお参りに行かないかと誘われた。
皆やる気に満ちていて、ヒナコなど念入りに悪魔をチェックしていた。
どういうことなの……。
とりあえず俺はいいかな、と断って別れる。
赤おじさんが襲撃してくるまでに溜めこまないと死亡フラグが折れないからだ。
悪魔はどこに沢山いるかなと索敵しているとジプスから小春ちゃんがこそこそしながら出てきた。
おやおや、小さなお嬢さん。こんな危険が溢れる世界に一人でどこへ行くのかな?
ミソビタミンDを求めて外へ飛び出したという話だ。
オトメさんが多忙で疲れも溜まっているため、なんとか元気になって欲しいとフミに相談したら勧められたとか。
味噌パワーで凄いとかなんとか。
ホントは説教とかしてジプスに帰すのが正しいのだろうが、そんなことはしない。
全部肯定してくれる優しい親戚のおじさんとかお兄さんとかそういう人いるじゃん?
小春ちゃんにとってのそういうポジションになりたいのだ。
マスオさんと呼んでほしい。
俺にはそんな人はいなかった……ヒロか?
まあ、そんな感じだし我慢ばかりの小春ちゃんには是非ともワガママを言ってほしい。
後でオトメさんに怒られるが、それも兼ねてだよ。
現代アートなどがありそうな場所を避けつつ悪魔を小春ちゃんの視界に入らないようにぶち殺して歩く。
テキトーに魔力を飛ばしておけば蔓延っている悪魔程度なら砕け散るのだ。
あとは漂うマグネタイトを回収するだけという簡単なお仕事。
真っ赤なザクロが飛び散っていない壊れているが内装はまだ安全な店を探す。
有名な薬局のチェーン店からミソビタミンDを見つけたので買っていく。
レジにお金を置くのはマナーだからね!
ホームセンターとかヒランヤとか俺の記憶には残ってない。
悪魔に襲撃されたくらいで店主がいなくなるのが悪いのであって俺は悪くない。
俺の後ろには母を心配して無理をした娘と娘がいなくなって心配した母の二人が抱き合う感動的な姿があった。
お互いの絆を確かめ合って( ;∀;)イイハナシダナーと単純に感動したいところだが、そうもいかなかったりしちゃったり。
『セプテントリオン』の一体である『ミザール』が襲ってきたので迎撃している途中なんだな、これがな。
そういえば俺はアホセルのほうが好きなんだけど。
OGは未だに違和感が……。
いや、ラミアルートだと敵のアクセルがガチモードなわけだが。
あれはビビった。
しかもあんまり「~、これがな」とは言わない気がする。
ソウルゲインはHP回復が付いていて火力が高い、アンジュルグはおっぱい、アシュセイヴァーは移動が速くてソードブレイカーもかっこいい、ヴァイサーガはシールドにHPが用意されていて壊れるまで本体は無傷という超仕様。
しかもGBAのスパロボAだとニュータイプなんだぜ、アホセル。
マジでつよい(確信)。
……ラーズアングリフ?
そんなことよりも『ミザール』が倒せない。
『ミザール』自体は脆いのだが、攻撃したときにもげた一部から更なる『ミザール』が出現して、そいつもまた……と延々とループ。
ループするなら大人しく死んでくれませんかね。
今回は増殖するタイプのようだ。
面倒になってメギドラオンで吹き飛ばすが倒すよりも分裂速度のほうが速い。
分裂した子機を殲滅して撤退したほうが良さそうだ。
とりあえず周辺の『ミザール』を取り込んで退避を選択した。
ジプスに戻ると巨大な魔法陣が都庁の地下にあるという話をしていた。
どんな噂だ。
悪魔召喚プログラムは契約、召喚、送還、報酬取引、合体、などの色々な機能も揃ってるとティコが言ってた。
召喚は儀式のプロセスをコンピュータで行うものだし、スパコンのようなものを使って更に凄い儀式を行えば魔法陣をわざわざ使わずに済む気がするんだけど。
素人の浅知恵では及ばない何かがあるために魔法陣があるのだろう。
そもそも魔法陣がない可能性のほうが高い気がする。
巨大というのだから超すごい悪魔とか召喚できそうだ。
メタトロンとかどうですかね(棒読み)。
あの巨大なら『ミザール』も倒せるんじゃね。
『ミザール』撃破の作戦を練りたいところだが、一番知識のあるヤマトがいないので待機だ。
自由時間みたいなものだな。
普通にジュンゴの茶碗蒸しを食べながら駄弁るだけだ。
アイリは昔、ピアニストを目指していたが諦めてしまったとか。
俺も絵を描いてた、ばあちゃんが生きてる頃からかなり昔だけど。
今ではちょろっと描くだけだ。
見せたい人がいなくなったのに頑張って描いてもしょうがない。
アイリは続けたくても続けられなくなった。
俺も同じようなものだろうか。
喜んでくれるなら描いてもいいかなって思うけど、どうなのだろう。
俺は続けようと思えばできるのだから、贅沢なことか。
まあ、現状では続けようがないとは言いっこなしか。
考えているとヤマトが入室。
『ミザール』を倒す方法があるが、賭けになるっぽい。
昨日福岡で見た世界を消そうとしている闇から守っているのが各地のタワーから張られている結界の力のおかげなのだが、それをカットして凄い力で『ミザール』を撃破するというものだ。
何が賭けなのかというと、結界を切ることによって闇の浸食が早まるらしい。
三日経たずに浸食されきるというから確かに賭けになるだろう。
他に良い方法が思い浮かばないのだから、超凄い力を利用するしかなさそうだ。
このままだと解決せずに時間切れになりそうなら早いうちに賭けに出て、終焉が訪れる前に『ポラリス』へ向かうということだろうな。
それで話が終われば良かったのだがドヤ顔でヤマトがこれからを語り、ヒロを勧誘し始めた。
それを見て堰を切ったように各々が主張を始めた。
主張する意見があるやつらは元気だが、ダイチと新田は伏し目がちだ。
どちらに与することもできないというのだろう。
ダイチも新田も誰かが解決するのを期待して、その誰かが解決しようとしている。
しかし、その誰かの主張が納得できない。
そんなときはどうするのだろうか。
決まった主張が無いというのも難しいものだな。
実力主義、平等主義、どちらでもない。
ヒロはこの三大勢力から大人気だ。
放置された俺としては羨ましい限りだ。
つうか誰か俺を誘えよ。
マジで別世界行こうか悩んでしまう。
そんなボッチな俺は小春ちゃんと折り紙ですよ。
小春ちゃんマジ女神。
……そろそろ天使狩りにいこうかな。
山の火口にある結界のクサビをちゃっちゃと抜く。
チームはこの前と同様に分かれたが、特に苦も無く終える。
問題と言えば、ヒナコが凍えていたくらいかなー☆
あの布の面積じゃ、防寒も糞も無いよな。
俺も上着をフミに貸したから薄着ってレベルじゃなかったが、悪魔ぱうぁー☆のおかげで大丈夫だった。
抜くのは問題なかったが、その後にヤバいことになった。
富士山が噴火した。
なんかやっちゃった感じがヤバい。
とりあえず、富士山から目を逸らして寒かったから夜はみんなで鍋だなという話になった。
食材は一人一品を持ち寄る制度だ。
悪魔……ダメだよな。
再びジプスに戻ってくると次の作戦へと移行。
結界の超凄い力を龍脈に集中させて龍を召喚するというものだ。
だが、このときに依り代となる者が必要になるので危険だとか。
ちなみに依り代は適正のある新田だ。
俺はぶっちぎりだが先約がいるからダメっぽい。
喰ったら使えそうなのだけれど。
ちなみに憑依したら死ぬかもしれんとか。
召喚に使う悪魔は毒か何かかよ。
ショックを受けたのか新田が何処かへ行ってしまった。
ヒロが説得に向かい、それほど時をおかずに戻ってきた。
決心できたらしい。
新田に憑依させる悪魔召喚の儀式のために都内の公園へ。
公園に着くとカーマやシヴァのときと同じような装置を呼び出して、ルーグを呼び出す。
新田に悪魔を憑依→龍脈の力を新田に憑依した悪魔が集約→魔法陣に注ぐ→龍召喚、という流れのようだ。
この龍脈の力が強大なので失敗すれば死ぬかもしれないとか。
俺でもいいんじゃねって思ったけど、ヤマトは俺がこれ以上力を持つことを危惧してるんで新田さん頑張ってね。
失敗したら俺がやるだろうけど。
すでに無数の悪魔を中にいることだし今更ルーグを取り込んでも問題ないだろう。
だから安心してくれても構わんよ。
……安心できないか。
ルーグがふわぁっと出てきた。
が、浸食を受けているために実態が保てないらしい。
光の球と化してどこかへ飛び散ってしまった。
ドラゴンボールみたいだな。
マグネタイトに引き寄せられた悪魔と争奪戦が起きた。
まあ、それは問題ではないのだ。
ほとんど一撃で片付いたし。
問題はこの光の球を取り込みたいな、と。
つまみ食いを我慢するのが大変だった。
この力で『ミザール』を倒せたらドラゴンボールそのものかもしれん。
願い事をかなえて~な感じで。
使い終えたら石になるのだろうか。
ルーグの欠片を集め終えた。
どうやら新田の死に顔動画があったらしいのだが、場所が違うらしいので解散っぽい。
龍脈の力を利用する時が新田の死亡フラグだろう。
死にかけたら悪魔とか食わせたら蘇ったりして……。
新田は死ぬ可能性を前にして少しだけ意思が強くなった気がする。
ダイチも誰かを当てにするのではなく、自らが変えようと決意したようだ。
それでも仲間とは戦いたくないし、主張も極端すぎてついていけないとのことで中立のようだ。
それだと逆に戦いになる気がするのだけれど。
どこかで妥協するのが生きることで、でも妥協すると妥協した世界に生きることになるわけで。
決意が遅くなくて良かったと思う。
今だからこそ、妥協せずに済むのだろうし。
負けたら結局妥協したのと同じになるだなんて言うのは無しだ。
生きるって窮屈だな。
何かある度に誰かしらとぶつかり合ってしまう。
主張なんてそれこそ消える可能性すらあるわけだ。
極端なほうが主張がわかりやすいし、中立は厳しい立場になるだろう。
まあ、俺は中立には属す予定が全くないけど。
先週までの平和な時間に戻すとかやりそうだし。
否定された時間を繰り返してどうするつもりだよ。
ループものにしたいのだろうか。
デビサバループとかすんのか。
俺は嫌だぞ。
戻したとしてもそのうち同じことを繰り返しそうだし。
『ポラリス』のさじ加減一つにかかっているとかマジ勘弁。
ならば元を断つとかどうだろうか。
元ってどっちだ。
人間か、『ポラリス』か。
というか、かなり関わっている悪魔が道具の一種でしかないのが不思議でしょうがない。
危険で便利な隣人、というやつか。
隣人にしては物騒すぎる。
脳内で警鐘が鳴り響き、クルースニクが危険を知らせた。
ティコが死に顔動画が更新され続けていると呟いた。
視界いっぱいに燃え盛る炎が降り注いだ。
遅れて悪魔どもが騒ぎ始めた。
死に顔動画や予想よりもかなり早い赤おじさんこと魔王ベリアルによる襲撃だ。
捕捉できる範囲よりも外からの攻撃だった。
色々な方向に回避しながら移動してるのだが、大体の位置は捉えられているようで、少し前にいた場所に凶悪な炎が降り注ぐ。
炎については耐性、というか無効化まで出来るのだがこの炎をどれだけ軽減できるのか心配だ。
わかりやすくいえば赤犬に貫かれたエースみたいになりそうだし。
魔王は伊達じゃないっすよ。
マグネタイトの保有量も尋常じゃない。
ネビロスと戦った時も街の一角を焦土と化すくらい粘ってスライム化だった。
マジで洒落にならん。
遠すぎて未だに捕捉できない。
というか炎の角度で位置を判断していたが、よく見ると炎はワープしてきている。
ワープという表現が正しいのかわからんが歪んだ空間が出ている感じだ。
ということは、俺が向かっている方向が間違いな可能性もある。
探し回ってスライム化、といきたいがここら辺は人間の活動域だ。
悪魔だけの廃墟なら良かったのだが。
魔力を滾らせて気合を入れる。
中にいる悪魔が騒いで鬱陶しい事このうえない。
『セプテントリオン』やリリス、ネビロスのときは静かだったのに今回は騒ぎ過ぎだ。
炎に飛び込むくらい、問題ないだろう。
メギドラオンと比べるとぬるま湯に違いない、たぶん。
足を止め、感覚を狭める。
炎が出てくる瞬間、流れに逆らう様に飛び込んだ。
空間を逆流しベリアルの目の前に降り立った。
俺が死ぬには火力がちょっと足りなかったな。
ベリアルを目の前にしたイメージは鈍重だった。
間違いなく行動は遅い。
その遅さを長射程の炎で補っている。
力は受けないことにはわからんがネビロスでさえ馬鹿力だったのだし、ベリアルは間違いなくヤバい。
距離を取って……!!
広域魔法、だと……?
視界が炎で塞がれた。
空気が焼かれて呼吸が儘ならない。
ベリアルの位置を感覚で捕捉しようとするが、膨大な魔力でマヒしているのかボヤけてしまっている。
動くべきか、踏みとどまるべきか。
悩んだのは一瞬だったが、それを読んだかのように衝撃が炎を突き破って俺を襲った。
衝撃波によって抉られた跡が地面に刻まれていたが、それを見ている余裕はほとんどなかった。
ベリアルが持っている銛っぽいものが振られる度に斬撃が飛び交う。
別世界のベリアルはそんな危ないモノ持ってなかったはずだ。
龍というかエリマキトカゲというか、そんな感じだった気がするのだが。
まさかイメチェンしたのか……。
斬撃を掻い潜って接近する。
牽制でばら撒いたアギダインは吸収されてしまった。
炎は効かないようだ。
掠った個所から勢いよく血が噴き出していった。
裂れた傷口から衝撃で噴出しているらしい。
火炎系は耐えられるが衝撃系は厳しく、じわじわと削られている。
マグダイン!!とパチモン魔法を物理で放つ。
つまり地面を殴って石つぶてを飛ばしているだけだ。
激しく降り注いでいる炎を突き破ってベリアルと肉薄した。
メギドラオンを込めた正拳突き。
ほとんど動じないままベリアルが拳を振りかぶった。
腕に力を込めて防御。
物理反射ごと後方に吹っ飛ばされた。
反射を貫通とかどうなってんだよ、あいつ。
万能属性か何かだろうか。
だが、物理反射はきちんと働いていたとティコが言っている。
おそらく反射の限界を超えたのだろうとも。
つまり反射で跳ね返っていた力すらもそのままねじ伏せたというのが一番近いのかもしれない。
ベェェェりあァァァるくゥゥゥゥゥゥゥゥン!!って感じにブチギレそうだわ。
反射が役に立たないとは話が違うじゃないか。
正直、準備期間がなかったので詰んでいる気がしないでもない。
馬鹿の一つ覚えのように斬撃を掻い潜って接近する。
ここで戦闘するにはマズイ。
ジプスまで被害が及んでターミナルが吹っ飛んだ場合、かなり不味い。
それに一般人がゴロッと死んで、ヒロたちが集まるかもしれない。
集まっても構わないが、今日まで過ごしたやつらが死ぬのは夢見が悪そうだ。
最近は夢見ないけど。
とりあえず、戦闘はもっと遠くで行いたいのだ。
ベリアルに組みついた。
足りない力を補う様に悪魔を融かして吸収していく。
何らかに阻害され、限界が訪れたのを見計らって全力でベリアルを投げた。
虚空瞬動でビルを蹴りながら追う。
投げ飛ばされた勢いを羽を広げることで殺し、飛んで戻ろうとしているベリアルへと至高の魔弾(仮)で追撃する。
降り注ぐ炎に身を焼かれながら更に空中を滑って連打を浴びせる。
ほとんど効いていないが、慣性だかなんだかでベリアルは吹っ飛んでいる。
世界を浸食している闇が見えてきた。
このまま突き落としてしまえばと甘い考えを持ったが、どうやら無理らしい。
ベリアルを中心に獄炎が渦巻いき、そして空ごと俺を飲み込んだ。
広域魔法か……!!
燻っていて焦げ臭い。
一応、火炎は無効なんだがな。
核熱か何かかよ。
重力に引かれて地面へと落下していく俺が見たのは太陽を背にしてベリアルが放つ斬撃の嵐だった。
マジな話、死にそうだ。
溜めこんだマグネタイトを使い切る前に死にそう。
もっと供給量を増やせないのか。
ゆっくりではあるが、上限は解放されているらしい。
これ以上ペースを早めると悪魔になってしまうが、今の上限なら馴染んで魔人になれるらしい。
魔人になる前に俺が死んでしまう。
悪魔でもいいからもっと増やせと催促するが阻害されているから無理なようだ。
原因はなんだ。
教えたら壊すって当たり前じゃないか。
死にたくないんだよ、俺は。
何もせずに死ぬだなんて、忘れられるなんて、絶対に嫌だ。
ヒランヤを砕いた。
ガラス細工が割れるようなきれいな音だった。
俺を縛っていたのはヒランヤだった。
アリスが縛っていたのだ。
泥のように濁った闇が影に溶けていく。
留まっていたマグネタイトが隅々に流れ、染み込む。
悪魔だったモノたちも同様に溶けていく。
そして心音以外、ほとんどしなくなった。
静かだった。
俺の中にいた悪魔はクルースニク以外全て吸収したから当然なのかもしれない。
ほんとうに静かになった。
砕けたヒランヤが粒となって、砂のように風に乗って消えて行った。
すまんな、アリス。
ヒランヤは間接的にだけれどベリアルが壊してしまったよ。
ベリアルがいなかったらヒランヤは今もその形を保ったままに違いない。
つまり全部ベリアルのせいだ。
わるいおじさんだな(すっとぼけ)。
あんまり変わった感じがしないが、どうやら影のみが悪魔になったようだ。
ヒランヤが直前まで肉体を縛っていて、精神というか魂はクルースニクがいたためと予想するがどうだろうか。
足元で影よりも遥かに濃い闇色の泥が脈動している。
血走った目玉がぎょろぎょろと蠢くように獲物を探し、鋭い牙を生やした口が音を立てて開閉を繰り返している。
……これならハガレンのセリムごっこができるな。
変化を読み取ろうと呆けているとベリアルの斬撃に襲われた。
強化などを全解除状態だったので飛び散る肉片とそれを見ている俺。
肉体は以前と同じように半魔のような状態だが、マグネタイト次第で再生というか修復可能のようだ。
肉片が影に溶け、時間が戻るように飛び散って欠損していた部位が戻っていく。
影、というか口が飛び込んできた斬撃や瓦礫を片っ端から飲み込んで分解している。
肉体はあまり悪魔化の恩恵を受けなかったようで、影と比べると脆弱そのものだ。
影なんて飲み込んだものを分解してマグネタイトに変化させるという超性能だというのに。
それでも膨大な量のマグネタイトを消費しているのだから燃費の悪さが窺える。
頭の中では何度も繰り返すように飢えと渇きを訴えている。
この身体はひどくお腹が空くようだ。
ベリアルで満たさせてもらおうか。
全てが俺の食糧だ。
降り注ぐ炎も、飛び交う斬撃も、散らばる悪魔も、ベリアルも、みんな。
満たされない飢えと渇きが困ったものだが、それ以外は悪くない。
平面でしか存在しなかった影が俺の足元を基点に三次元の存在として動くようになった。
足場として乗るのも良いし、そのまま食らいつくように飛びつかせるのも良い。
俺がいくら頑張って攻撃しても無傷だったベリアルにダメージを容易く与えられる。
死角から迫った口が腕を食いちぎった。
思ったよりもやわらかかったな、ははは。
周囲の瓦礫を飲み込んで、それでも足りないので影を伸ばして悪魔たちを飲み込む。
気付いた時には地上は俺の影だけになっていた。
空には満身創痍のベリアルが浮かんでいる。
全てを覆う様に影が空へと伸びていく。
回避するベリアルの逃げ道を徐々に塞いでいく。
夜が訪れたかのように、闇の泥が広がる。
空を黒に塗り潰し、最期にはベリアルをも飲み込んだ。
さすがの魔王、溜めこんでいたマグネタイトはかなり上質だった。
つまり、うまかった。
かゆ うま
というか、べり うま
目の前で赤おじさんを模した人形が落下してきた。
拾おうとするとどす黒い闇に飲まれた。
俺ではない。
つまり、アリスだろうか。
後始末はしなくても良さそうだ。
どうせ世界を浸食している闇が切り取ってしまうだろうし。
この闇を喰えたら俺が支配者に……触れた部分の影が飲み込まれてしまった。
止めておこう。
ジプスに戻ると騒ぎになっていた。
俺が強い悪魔と戦っていたと伝えると納得したのか静かになった。
どういうことだし。
そろそろ作戦を始めるらしい。
新田に悪魔→龍脈集中→龍召喚、というやつを本格的にやろうぜってことだ。
夕方で日も暮れてきた。
新田にルーグの光を近づけると徐々に吸収されていく。
あとはヤマトが噂で出てきた魔法陣を完成させれば龍を呼べるらしい。
待っていると悪魔がルーグの力に誘われたのか、集まって来た。
新田は力を統合しているようで、動けない。
防衛線の始まりだ。
クドラクも襲撃してきた。
誰得だよ。
クルースニク得だな。
四肢を食いちぎって転がっているクドラクに近づく。
災厄が云々とか。
なあに、これからは俺の中で飼い殺しだからそのうち見られるさ。
不味そうな見た目だったので一息で飲み込んだ。
準備が出来たようだ。
ヤマトの知らせとともに、新田が光り輝いた。
ルーグの力を纏ったのか、軽い跳躍で都庁の高さまで飛び、光の槍を顕現させていた。
美味そう……ではなく、神々しい。
槍が地面を突き破り、魔法陣を照らした。
そして、轟音とともに龍が地下から飛び出した。
遠くの方で龍が『ミザール』を飲み込んでいる。
これで解決かと気を抜いていると、どうやら『ミザール』はビルにしがみついているらしい。
なにそれ可愛い。
アホなことを考えてないで現場に急行だ。
ビルの屋上で『ミザール』が龍に飲み込まれないよう耐えている。
龍は噛みついているのか傷口から『子ミザール』が生み出されて、地上に落下してきていた。
とりあえず俺はここで『子ミザール』を処理する係りになった。
落下の衝撃で死ぬのが大半だが、影を広げることで踊り食いが可能なのだ。
上ではかなりのドンパチが繰り広げられているようで、落下物が半端ない。
悪魔とか、『ミザール』の一部とか、瓦礫とかだ。
思ったよりも食べ放題で嬉しい限りだが、俺が普通の人間だったら死んでるからね。
瓦礫とかヤバいから。
死に顔動画もレッドアラートだわ。
自動で食いながら空を眺めていると、『ミザール』が龍に飲み込まれた。
どうやら勝ったらしい。
そういえば誰かが降ってきたら飲み込むことになってたけど、どうせ死ぬんだから俺の力になったほうがいいよねという俺様論を展開しておく。
まあ、人間は飲み込んでないから問題ないね。
『ミザール』を飲み込んで満足したらしく、落下してきた龍を放置してジプスへ戻る。
後で龍って食ったらダメなのだろうか。
龍脈の力とか引き出せそうなんだが。
ジプス本局で鍋である。
みんなが持ち寄った具材という恐ろしい縛りで行われる鍋パーティー。
ちなみに俺はミソビタミンDにしておいた。
他にはリンゴだったり、柚子、青汁コーヒー、たこやき、茶碗蒸し、いか焼きヨウカン、味噌チョコレート
ミソビタミンD以外は結構まとも……ではないな。
柚子は新田が持ってきたがソデコポジションを意識したのだろうか。
ヒロが普通にロナウドを連れてきた。
鍋に省くには可哀相ってことか。
ねぇよ。
ロナウドはクッリキーの名に恥じぬ材料である甘栗を剥いたお菓子を躊躇わずに投入しやがった。
鍋が更なるカオスへ……。
空腹感が半端ないので誰も手を付けていない鍋を食べながら会話を聞いてみる。
やはり各々の主張する世界を目指して云々ってことらしい。
『セプテントリオン』はラス1だから倒すことで、ここにいるメンバーなら『ポラリス』に会えるようだ。
ヤマトの実力主義、ロナウドの平等主義、旗本のいない中立。
中立は新田が立つかもしれんね。
そんなことより、誰か俺を誘えよ。
明日もソロとか悲しくて泣けるぜ。
いじけていると小春ちゃんに似顔絵をもらった。
上手というわけではないが、にやけてしまう。
つまるところ、こういうのはすごくうれしいわけで。
もうね、おっさんは本気出しちゃう。
そういえば、ばあちゃんも俺が絵を描いたら笑っていたのを思い出した。
同じようなことなのだろうか。
本気出して『ポラリス』ぶち殺して良い世界作っちゃうよ。
どの思想も極端すぎるわけよ。
実力主義とか疲れるし、平等主義とか怠いし。
中立のように時間を戻して、なんて再びいつの日か『セプテントリオン』チャレンジが訪れるに決まっている。
小春ちゃんがいるときに『セプテントリオン』が来るかもしれないし。
だから、可能性の芽は摘むべき。
『ポラリス』を取り除いて、別のに変えてしまえば解決するんじゃないかな。
ほら、カヲルくんとかどうよ。
なんかいけそうじゃん。
今の今まで欠番だった死兆星に違いないよ、彼。
異常は取り除いて正常に戻すべきだ。
そう思わないか、ヒロ。
え、ロリコンじゃないよ。
ロリコンだとしても、ロリコンという生き様の悪魔だよ。
オリ主の変遷
人間→人間(悪魔憑き)→装備・悪魔→半魔→半魔人→半魔人(アバタールチューナーもどき)←今ここ
悪魔に変身するわけではなく、常時悪魔として顕現しているため粗製品であることは間違いない。
オリ主のスキル
影(闇色の泥):アリスのヒランヤ(強制ギブス)を基礎として、取り込んでおいた悪魔やマグネタイト、周囲の悪魔を融かして作った「悪魔のスープ」。お歴々のサマナー方の仲魔の分霊が使われているため高品質だと思われる。互いの意識が混ざり合って狂ったため、悪魔としての飢えや渇き、力への欲望といった本能だけが影に残った。内部にとどめておくべき核が外部へと剥き出しであるため、所詮は粗製品の悪魔である。肉体と影の両方に当たり判定がある。影が枯渇すると死ぬ。