実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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とある科学4

 

 

 

 --1

 

 前回までのあらすじ。

 俺のサーシャがミーシャになった。

 聖水をかけたらペルソナを召喚した。

 世界でも有数の錬金術師であるカードダス(偽名)が無能。

 

 

 

 

 

 サーシャがワシリーサへのストレスで天使を呼び出したのかと内心で慄きながら、なんとか攻撃を凌ぎ切って回避運動。

 インデックス(中二病)が放ってきたビームに似た攻撃だったから、耐性を付けているのにダメージを受け続けるという怖さ。

 なんというか、属性がランダムに変化するイメージだ。

 次々と誕生する未知の物質で構成されている光の放流、みたいな?

 俺と神裂以外に当たったら死ぬんじゃね。

 

 サーシャが気になるところだが、退くことにする。

 カードダス先生とインデックス大先生を担いで走る。

 担がれているカードダスとインデックスが揺さぶられて顔を青くしている気がしたが、特に問題はないようだ。

 二人とも礼装を着込んでいるからある程度は大丈夫って言ってたし。

 インデックスの扱いについて文句を言っている神裂(ステイル状態)が追走してきた。

 お前の抱えているステイル(おっさん状態)、マジで死にそうな顔色しているんですが。

 俺らみたいな超速移動をパンピーが耐えられるわけないだろ。

 やっぱ聖人は駄目だな、常識が足りてない。

 力がありすぎて無い奴への理解がちょっと、ね?

 

 その辺、俺はちゃんとしてるから。

 二人の顔色が悪いのは激しい振動による酔いである。

 色々な物理法則的な問題による束縛は、触れてるから俺の延長線上として処理できているために無効状態だったし。

 確かに俺の運動能力があれば、衝撃を軽くすることはおろか殺すこともできた。

 わざとそこら辺だけカットしたというマジで巧みな技術。

 岩の上のカエルに拳を振り降ろし、カエルと岩を粉々に砕くくらい巧み。

 戦闘能力の足りてない二人にうろつかれると邪魔だし、酔っててもらったほうがいいっしょ。

 

 俺の日本人的おもてなしを説明すると神裂ちゃんは目を逸らした。

 ステイルが自力で幾らか防御してなければ呼吸が云々の話よりも血煙になる可能性すらあった。

 確かにこういうのは自己責任だし、あのスタンドの前に置いておいたら豆腐やプリンをスカイツリーから落した感じで死んでかもしれないけど、まさか退避の体で拷問をかけるとは……。

 そのうち「これ、ステイルです」って生首だけ輸送しそう。

 流石は世界に二十人といない聖人だ、侮れないぜ。

 

 安全圏に三人を退避させ、神裂とじゃんけん。

 三人から考察を引き出し原因を究明する係りと前線で殴り合う係りに別れるのだ。

 話を真面目にやってると遅すぎて、あの謎のスタンドを足止めしないといけないのだ。

 急いでいるときは会話くらい一秒で終わらせられるようになるべき。

 実際に一秒で会話できる相手は神裂くらいしか知らんが。

 会話というか発語する口の形を読みあうのだが、今は関係ないね。

 

 

 

 じゃーんけーん、てっぽう。

 はい、鉄砲に撃たれて神裂死亡。

 俺の勝ちね。

 なんか神裂が超怒ってた。

 ステイルがオカマっぽく怒ってるという地獄絵図。

 

 え、神裂ちゃん知らないんだ?

 てっぽうは一回だけ使える絶対勝利技で、常識なんだけど。

 再戦?

 しょうがないな、もう一回だけだからな。

 

 じゃーんけーん、ばくだーん。

 はい、爆弾で神裂死んだから俺の勝ちね。

 それとも何?

 文句あんの?

 え、まさか世界に二十人といない聖人様がパンピーとの約束守れないの?

 未だに魔術と魔法と超能力の違いがわからないパンピーな俺との約束が守れないの?

 

 

 

 

 

 --2

 

 神裂を置いて、サーシャの中に入っている天使を駆逐する作業に入る。

 イメージとしては『凄く頑張る→天使霧散→元に戻る→サーシャと結婚』のハッピーエンドだ。

 おお、なんかやる気出てきたぞ。

 学園都市で新婚生活、それって素敵やん?

 

 

 

 サーシャとのハッピーエンドを夢見てたら、水の鞭でぺちぺちされた。

 恐ろしいことにこの水の鞭、インデックスビームと同様でやっぱり耐性が付け切れない。

 ランダムに変化した部分が貫通して俺を物理的に削ってきやがる。

 こんなの反則だよ!

 ロシアだったら無効だから、無効!

 

 うぜぇぞオラァと腕を人狼化させて水の鞭を消し飛ばす。

 衝撃でサーシャに天使が宿ったミーシャとやらの周りにある海水を吹っ飛ばし、余波で湿っていた地面が干上がった。

 俺流モーセの十戒である。

 言えることは蒸発した海水の臭さは異常ってくらいだ。

 

 水源が無くなったから鞭は来ないだろう。

 鞭は来なかったが、翼が飛んできた。

 翼というか、翼っぽいものか。

 ミーシャの背部から放出されている、複数からなる光の帯だ。

 天使の背中から生えている物といったら翼だし、合ってるっしょ。

 まあ、その翼がぴかっと光ってズバッと俺を真っ二つにしてくれた。

 頭頂部から唐竹割ってやつで。

 俺じゃなかったら死んでた。

 

 ミーシャの真後ろにリスポーンし、人狼化して羽根に噛みついて貪り食う。

 魂の所在こそが俺の再生場所だ。

 俺には、真っ二つに引き裂かれてどっちが本物か聞かれても迷うことはないし、粉微塵にされてどれが本体かなどという戯言も無意味なのだ。

 顔面がぼろぼろになったが、羽を食らったお蔭で幾らかわかったことがある。

 こいつの構成しているすべてが、おそらくこの世界に無い物だ。

 しかも構成している力はランダムに変化していて、一定の形を保っていないどころか同じ形にすらならない。

 とりあえず取り込んだ翼を馴染ませて最適化したら俺にも羽根が生えた。

 羽根というか推進用の渦みたいな、なんかよくわからんものが背中辺りで滞空している。

 魔力を消費すれば渦からインデックスビームが放てるという謎現象。

 でも俺はあんまり魔力ないから要らんなぁ。

 ち、ちょっとだけ魔術使えて嬉しいけど、要らないから。

 ふへへ。

 

 渦はどうでもいいが、ガチの削り合いになることを考えて遠い目をしてたら、ミーシャとやらが「何故uy顕udvif」とか言い出した。

 頼む、日本語でお願いします。

 もしくはロシア語。

 が、返事は「rty足りなmne」であった。

 ……?

 足りない、胸?

 確かにサーシャは足りてないけど……それって今重要か?

 

 雑音が入りまくっているミーシャとやらの言葉に首を傾げる。

 俺の反応を見てミーシャも首を傾げた。

 二人とも意味不明である。

 詳しく聞くと、どうも人間が操る人語では情報を介する機構が足りてないらしい。

 イメージはパケット不足である。

 通信が遅いために断絶して情報が半ばで途絶、みたいな。

 最終的に「同胞nr会krp喋rrrie」とか「gj天界からerpy欠片cvc喋れ」みたいなのを連呼された。

 どうもお前が天使語、エノク語的なやつっぽいの、を喋ろよオラァって言われてたっぽい。

 無茶言わないでくれ。

 

 神裂の情報待ちとしてどうしたものかと悩み、ポケットに入ってた飴を渡してみる。

 フルーツ系の飴で、さっぱりとした酸味と果物としての甘みが合わさって最強な飴である。

 インデックスの口に放り込んでおけば、大抵は静かになってくれる。

  「私見一。うん、甘味は良いな。糖の類は長寿の元とも言うし、神の恵みを思い出す」なんて言いながらガリガリと噛み砕いてしまった。

 合ってるけど合ってないというか、いや、好みの問題だけど、噛まれたら不満というか。

 ぐぬぬ。

 舐める物だと伝えると、得心いったと何度か頷いて開いた口を向けてきた。

 餌付けか……。

 ほれ、ともう一個放り込む。

 今度は口の中でコロコロと転がしている。

 どうやら飴の魅力が伝わったようだ、なんか真剣に味わっている。

 果物の飴が気に入ったかと聞くと「私見二。糖で果物を固め、長く味わうとは面白い。果実より得られる水は高い生命力を持ち、徒は摘まみ主は飲むほどだ」と言った後はやはり舌でコロコロする作業に戻った。

 で、舐め終わると催促するようにジッとこちらを見つめてくるので飴を見せると口を開ける、と。

 なんだこれ、可愛すぎる……。

 

 ぶどうとか桃は気に入ったようだが、イチジクとかリンゴとかみかんは嫌そうな顔をしていた。

 蛇がどうとか罪がどうとか言っているのだが、パケット不足で聞き取れない。

 天界と地上を中継するwifiとか無いのだろうか。

 この際有線でも許す。

 ん?

 もしかして天使がサーシャに入っている状態が有線なのか?

 サーシャの中に入るって字面、卑猥じゃね。

 うらやまけしからん。

 

 

 

 

 

 --3

 

 質問を何度か繰り返すことでパケット不足とやらで言語化できない単語を解すことに成功。

 どうやら俺の聖水で抑えていた天使パワーが解放されたのが発端らしく、儀式地点を大まかに割り出せているのでとりあえず地表を一掃すれば儀式が終わり、天界に戻れるんじゃねってことっぽい。

 天才か……っ!

 全部吹っ飛ばせば儀式系は解決するよな、そりゃぁ。

 俺も今度やろう。

 

 あとは「問一。貴方は何時からその形を成したか」とか「問四。貴方が帰還するために『御使堕し』を起こしたのか」とか「問七。儀式への捜査および精査は如何にして行うつもりか」とか、そんな感じの質問のラッシュである。

 魔術は聖水くらいしか使ってない的なことを返事すると、ふむふむと何度も頷きながら手足を触られて納得された。

 違うから。

 魔術が使えないわけじゃなくて、使わないだけだから。

 魔術は神話体系に沿って使うことが多いけど、ロシアって神話的な話が少ないから俺が魔術を使わないのも仕方ないね。

 魔術がよくわからんとかそういうの無いから。

 俺くらいエキスパートになると必要ないから要らないだけだし。

 そもそも殴ってれば解決するから全然魔力とか無くても問題ないし、魔術なんてファンタジーは無縁でも気にしてないから。

 ……。

 ……俺だって魔術を使いたいし、おしゃれに詠唱してぇ(遠い目)

 

 落ち込んでたらミーシャに慰められた。

 いや、まあ、背中を摩られただけなんだが。

 天使はエネルギー体で意思を持たない人形のような物って話を聞いたが、こういった機微を見ているとそうでもないんじゃないかと思ったり。

 独立した悪霊とか、人間への悪意が半端ないし。

 むしろ人間の意思がガイドのように働いているのか……?

 そもそも意思を持たない人形みたいな天使に信仰を委ねるとか宗教ってよくわからん。

 神様に向けてるからいいのか?

 いや、でも天使も御使いとして敬ってる感じだし。

 謎だわ。

 

 魔術の専門家が複数人いるから地表を消す労力を使うより、もっと楽に解決できるはずだとミーシャに伝えて待機。

 二人で海を眺めながら口の中で飴を転がす。

 天使が人間の中に入るとか、どっからエネルギーを持ってきたのだろうかと悩んでみたり。

 『御使堕し』が発動したことで、防御や回避に成功した者以外は入れ替わってるわけだし全人類が玉突き事故よろしく魂が押し出されて椅子取りゲームのごとく体に入ったわけで。

 アシカになったおっさんもいたけど、もしかしたらあのアシカには人間の魂に酷似した純度に達したか、知能が人間並みだった的な感じだろうか。

 まさかの木原の可能性である。

 知能を持つ生物には、なんかすごい科学力を持つ”木原”という存在が誕生するとかなんとか。

 木原系はぶっ殺すと他の地で現れる悪魔のような存在だし、脳だけで生かしておかないと面倒になる。

 あのアシカは後で脳みそにして浮かべておこう。

 

 思考が逸れたが、人類の玉突き事故によって生じたエネルギーで天界まで影響した、みたいな感じでいいのだろうか。

 帰るときは位置エネルギーよろしく玉突きで移動したエネルギーで戻ってくる的な。

 ミーシャにエネルギーを使わせないほうがいいのかもしれん。

 いや、天界ってエネルギーの塊らしいからどうでもいいのかもしれないが。

 そういえば宇宙の始まりである無にはエネルギーのみが渦巻いていたらしいし、宇宙の外も同じような状態のようだ。

 宇宙については三次元的な観測しかできていないし、計算式では十次元超えを果たしているが結局はわからないことばかりだし。

 

 

 

 

 

 海の家でソフトクリームを食べる。

 ミーシャもかなり気に入ったようだ。

 天使は甘味が好きなのだろうか。

 でも結局は飴をねだってくるんですけどね!

 

 椅子に腰かけながら、海水浴客を眺める。

 男と女が入れ替わってる客もいるわけで、それらが各々の元の性別に則した水着を着ている。

 つまり、眼福です。

 

 夏の間はこのままでいい気がしてきた。

 問題はおっさんが化粧して女性用の水着を着ていることだったりするけど。

 キモい。

 尻とか毛とか見えてて気持ち悪い。

 そういう人に限って自信満々だからげんなりする。

 普段は容姿が優れているのだろうけど、勘弁してほしいわ。

 

 

 

 情報を整理し、色々と策を巡らせていたであろう神裂が現れた。

 海を眺めながら飴をコロコロしているミーシャの姿に脱力していた。

 「なんで戦ってないんですか!」とか「民衆に被害が……」とか言っていたが、そんなに戦いたいのだろうか。

 戦いで解決しようとするなんて聖人って野蛮だわ。

 ほら、ミーシャも薄い感情でドン引きしてる。

 

 

 神裂の体に男が入っていてもしかしたらどっかで海水浴を楽しんでいるかもしれんなぁメロンが見たいなぁと零すと殴られた。

 衝撃を全部海に伝達したら、東映の「荒磯に波」みたいな感じになった。

 要するに、海水浴客ごとざっぱーんである。

 聖人ってやっぱり常識がないわ。

 

 

 

 

 

 --4

 

 儀式の心点、つまり中心をダウジングすることになった。

 大地を巡る自然のエネルギー、龍脈とも呼ばれる物を利用しているから逆探知できるはずという話だ。

 流石世界の砂粒ひとつまで究明しきった錬金術師のカードダス先生は有能やでぇ。

 それに比べてインデックス大先生の無能さですよ。

 俺のやきそばを食う、ミーシャに張りあって飴をねだる、ミーシャに飴をあげたら噛んでくる。

 そろそろ慈愛に満ちたシスターってやつを見てみたいんですが。

 

 殲滅白書なんてワシリーサのババア魔術、ビッチヌフラ、藻の生えた醜女……。

 これはサーシャを可愛がってもしかたないね。

 一般の信徒なんて悪魔憑きが多くてヤバい。

 髪をふり乱して白目向いた人間が口の端から泡を吹いて醜い罵声を吐き出すのを見てたら、ちょっとなぁ。

 半分以上が悪魔憑きじゃなくて精神疾患だから、その、マジで困る。

 むしろ学園都市で科学を信奉しながら脳みそいじったほうが効果ありそうなんだけど。

 

 

 

 ダウジングによって大まかな座標が解ってきた。

 術者は移動と停止を繰り返しているようで狙いを定めるのは面倒であるが、儀式を直接吹っ飛ばせば問題ないっぽい。

 ミーシャは天使としての力で天体制御が行えるというので夜に固定し、儀式術式の座標を中心に手加減したメギド的なのを降らせて街の一つか二つ分ほど消し飛ばせば解決じゃねって言い出した。

 やはり天才か。

 が、止める。

 街の一つか二つ分の人口で問題が起きるとは考えにくいが、玉突きに失敗してサーシャが帰ってこなかったら嫌だし。

 普通に解決しよう。

 そもそも地軸を弄ったら世界がヤバい。

 まあ、俺とか神裂が魔術的なファンタジー制御なくダッシュしたら、地表が衝撃波で吹き飛んで押し出された空気がハリケーンとなって真空が渦巻いて更なる空気の負の連鎖がどうとかで崩壊するくらい地球は脆いからしょうがないね。

 

 海水浴している人々からちょっと離れ、閑散とした砂浜に水銀とかで術式を描いてダウジングしているわけだが。

 神父とか修道女とかスク水みたいな痴女、メロン、2m近い緑髪、2m超えの赤髪神父が難しい顔で砂浜に描かれた奇怪な図を見つめている姿って異様だよね。

 むしろ変な儀式と勘違いされるレベルだ。

 いや、人払いはしてあるけど。

 

 距離が離れているらしく、位置の割り出しに時間がかかるというのでインデックスを煽って遊ぶ。

 インデックス大先生は食べてばかりですけど何時本気になってくれるんですかねぇ、みたいな感じで。

 あとはこういうときのために飯を食わせてるのに食い逃げっすか無駄飯ぐらいっすか、みたいなのも追加である。

 ステイルと神裂のコンビが殺意たっぷりの目で見つめてくるが無視だ。

 過保護すぎでしょ。

 こうやって煽っておけば、無力を悟って渦中に飛び込まないようになる……無理か。

 脳みその容量の関係で燃費が悪いんだろうかと思いながらイカ焼きを口に放り込みながらオラオラなんか言ってみろや暴食シスター、とインデックスの頬を指でふにふにする。

 おおう、すげぇ柔らかくて繊細な手触りだ。

 

 指齧られた^q^

 

 

 

 痛くないけど唾液が付くからやめーや。

 べちゃべちゃのイカ焼きも付着してるという悲劇。

 耐性が付いているから弾けるが、態々無害な物まで弾くのはめんどくさいのが祟ったわ。

 指べとべと。

 ミーシャが俺らの様子を静かに見ていた、飴を舐め終えたらしい。

 ほれ、と飴を摘まんで差し出す。

 

 指ごとしゃぶられた^q^

 

 

 

 一方通行にインデックス、ミーシャと指を食べるのが好きなやつらだ。

 他人の指をしゃぶるのが流行ってんのか。

 なんだその流行り、怖すぎ。

 いつから日本はこんな猟奇的になったんだ。

 

 「ジェヴォーダンは赤水着に甘すぎなんだよ!」とインデックスが叫んでいるが、甘やかしたいのはミーシャじゃなくてサーシャなんだよなぁ。

 インデックスが頑張ってミーシャを引き剥がそうとするが地力の差が隔絶しているのか微動だにせず、「第九の解答だが、貴女の行いを模倣した。親より賜われた糧をより感じられて悪くない」と俺の指ごと飴を舐め続けている。

 根負けしてへばったインデックスをステイルと神裂が介抱していた。

 インデックスは完全に運動不足だな、お腹周りとか大丈夫だろうか。

 身体のフォルムが出やすいエロ修道服だし太ったら情けないことに……。

 

 だから指齧るのやめーや^q^

 

 

 

 

 

 --5

 

 儀式について、ある程度の座標がわかったので移動を開始する。

 近くに行ったら再びダウジングして校正する予定だ。

 どっこいしょと気絶したインデックスを抱える。

 手についていたイカ焼きを舐めたら顔を真っ赤にしてたので、茶化すついでに美味かったと伝えたら気絶した。

 免疫ゼロか。

 

 カードダスの運転する車で、事前に捉えていた座標に近づいていく。

 世界で有数の錬金術師は車の運転まで容易とする有能さである。

 どっかの聖人や数多の魔導書を納めた目録も見習ってほしい。

 座標が曖昧になってきたため再検索をかけるので、一旦喫茶店で休憩。

 喫茶店のマスターがいただけだが、メンツが奇抜すぎて引いてた。

 

 現在地からだと術者のほうが近いようだ。

 いつの間にか移動していたらしい。

 こっちが認識できていた大まかな座標内で移動されていたようだ。

 ああ、もうめんどくさいな。

 

 

 

 俺だと相手が肉片になりそうとか言い出した神裂が単独で捕縛に向かった。

 失礼なやつだ。

 ちょっとイラついているから小突くかもしれないだけなのに。

 パフェを食ってたら目がぎょろぎょろしたヒョロい男を連れてきた。

 神裂のドヤ顔がちょっと腹立つがこれで解決する、褒めてやろうじゃないか。

 

 分析した結果だが、術者でないことが判明。

 二重人格で『御使堕し』を回避したっぽい、なんでこんなに複雑な事件へと発展しているんだ。

 ついでに聖人のストップ安が止まらないんですが。

 一人の少年を救ったらしいが、ミーシャが臨界点に達したときにはメギドが始まるんだけどわかってやっているのだろうか。

 

 魔術関係者だったら情報が入るはずだが、そういう動きも一切ない。

 『御使堕し』でテンパってる関係各所のお偉い方からも犯人と思わしき人物を見つけられていない。

 神裂もそういう関係の人物は近くにいなかったと証言しているし。

 いや、聖人()だから信憑性が薄いけど。

 これらの結果から素人が偶然に発動させたんじゃねって話になった。

 地球には60億から70億の人間が生の営みを繰り返しているから偶然そういうのが起きても不自然じゃないよねって話である。

 確かにロシアでも鏡の自分にお辞儀したら、なんらかの儀式と時間やシチュエーションが酷似していて悪魔憑きになった事件とかもあるし。

 うーん、偶然って怖い。

 

 顔もわからないし、一般人だと素行や魔力では判別できない。

 ということで儀式場に向かうことにした。

 神裂が捕まえてきたヒョロい男はどうでもいいのでカードダス先生にちょっとした思考誘導をしてもらって解放した。

 

 こういう事件は責任の所在が重要なのだ。

 俺はさっさと解放されたい。

 

 

 

 

 

 解放したヒョロい男が民家に立てこもったらしい。

 なんか殺人犯だかなんだかだったらしい、実にちょうどよかった。

 無辜の民だったらさすがの俺も気にしてしまうからな。

 まあ、運悪くそいつが立てこもっていた民家の一室に隕石が落下したため重傷を負ったようだ。

 落下した隕石は肉眼でわかるほどに燃えていたが、現場から発見されなかったとか。

 偶然って怖いわ。

 報告書に殺人犯が立てこもった民家で動かしたお土産によって偶発的に『御使堕し』が起きたと書いて提出。

 時系列なんていくらだって誤魔化せるし、詳しく調べるやつもいない。

 隕石で証拠も吹っ飛んだ今となっては俺の報告が正真正銘の真実でしかないんだけどね。

 

 

 

 

 

 --6

 

 事件も解決したし、そろそろ学園都市も静かになっただろうと帰路についたら見知らぬ男に攻撃された。

 ロシア成教が動きすぎているのを憂いた組織が抑止として襲ってきたとか。

 嘘っしょ。

 絶対嘘っしょ。

 だってロシアって凄く雑魚だし。

 国内だと特別な許可がないと魔術が使えないくらい雑魚。

 ローマとバチカンが調子ぶっこいて、それをイギリスが歯噛みしていたりするけど、ロシアなんてシカトされてっから。

 扱いとしてはアメリカよりも危険……と思われてたらいいなぁ。

 俺が好きに動いてもフランス以外は無視である。

 フランスはローマにパシられた関係で嫌われたので、完全に冤罪ですね。

 

 ちなみにこの男だが、原子崩壊ビームを放ってくる相手だった。

 ドラえもんのひみつ道具か何かか。

 流石の俺も不意打ちだと光速は避けられず、ミンチより酷い状態にされた。

 防御用に聖水を撒いたら直撃したらしく、何故か顔面の皮が剥がれて下から褐色の男になった。

 サナギだった可能性が高い……?

 

 神話とか伝承に則った魔術って個々人の魔力によって性質が異なるから耐性つけにくくて嫌いだわ。

 四大元素を使ったもっとシンプルなのにして欲しい。

 そしたら何も考えなくて済むのに、互いに。

 

 

 

 俺は天使が離れたことでサーシャがちゃんと元に戻ったかどうかを確かめるひつようがあるので、カードダス先生に戦闘を任せてみた。

 先生が魔術っぽいことしたのは最初に錬金術で生成した粉を撒いたくらいで、あとは物理でボコってただけだった。

 魔術を発動できなくする凄い粉らしい。

 あとは高速で射出されるペンデュラムでちくちくと刺すくらい。

 以前のパチモノが使ってた金製造機よりも速くなってたが、金にはならないようだ。

 流石は俺たちの先生やでぇ、と慄く。

 強すぎて戦闘の体を成してない。

 

 鉄砲玉は情報を抱えていることが少ないし、どうしたものかと。

 ロシアに送るのは面倒だが、他の組織に渡すのも間違っているよなぁ。

 どうしたものかと悩んでいたら、褐色の少女に男を連れて行かれた。

 あちゃー。

 追いかけるのも面倒だと見送ったら、相手は学園都市の内部に逃げて行った。

 学園都市の入退管理、ちょっとがばがば過ぎない?

 

 

 

 

 

 ついでにスーツの強面のおっさんに襲われた。

 インデックスが欲しいらしい。

 情熱的なプロポーズかと思いきや解呪に必要な知識だけ求めているとか。

 もう俺は忙しいから聖水でも飲ませとけと追い払う。

 

 泣いてたおっさんをツンツン頭の少年が慰めていた。

 で、二人で連れ立って去っていった。

 二人とも見つめ合った後に笑顔を浮かべていた。

 ……なるほど、ホモか。

 

 

 

 

 

 

 --7

 

 うぇーい、とファミレスで一方通行に挨拶。

 すげぇ嫌そうな顔してるんだけど。

 露骨に避けようとしてくる一方通行の席に、俺たちズッ友じゃんと詰め寄る。

 なんか毛布ロリを連れていた。

 ……。

 …………誘拐はいけない(迫真)

 

 ベクトルパンチで首とれた^q^

 

 

 

 毛布ロリだが、レールガンのクローンらしい。

 打ち止め(ラストオーダー)と呼ばれる特別個体のようだ。

 レールガンが研究所を襲撃した際に嫌がらせしまくったことから、俺はクローンたちからすげぇ嫌われてるらしい。

 洗ってない犬の臭いがするという噂が流布しているとか。

 やめて!

 俺はこんなに好意を持っていると言うのに、まさかの一方通行である。

 レールガンが襲撃してくれたおかげで情報を抜いて魔術サイドにばら撒くことが出来たし、麦のんを煽りまくれた。

 しかも麦のんの美声を録音して仕事用の電話の着信音にできたのでかなり楽しかったんだが。

 

 『パリィパリィパリィってか? 笑わせんじゃねえぞクソガキ!!』

 

 おっと電話がかかってきた。

 電話内容は「麦野を如何にして学園祭に出すか」と「都市外へ逃亡しようとしている研究者の暗殺」という話だったが口癖の「こいつめこいつめ」がウザくて切った。

 あと飯時に暗殺指令とか頭おかしい。

 常識を養うべき。

 店員に注文を伝え、ふと視線を向ける。

 打ち止めにドン引きされてた。

 何故だ。

 

 

 

 

 

 五分くらいして現れた麦のんの前でパリィな着信音が鳴り響いて、電話が消し炭にされた。

 俺のガラケーがぁ……。

 学園都市に来た翌日に勧められたまま買ってしまった在庫処分品だったが、ちょっと愛着湧いていたのに。

 それに、外の電話と比べると遥かにハイスペックだし。

 

 俺が凹んでいる間にアイテム連中が盛り上がっていた。

 女性が三人集まれば姦しくなるというが、落ち着きないとがさつに見え……ビームはやめてマジで。

 話題の内容だが、どうやら毛布ロリは全裸らしいのだ。

 包まっている毛布を除けばつんつるてんとか。

 うわぁ、幼女を露出プレイとかマジで引くわ……。

 一方通行の性癖に戦慄していたら、クローン調整槽からバックれたために服がなかったらしい。

 なるほどなー。

 だからといって毛布だけで連れ回すとか、レベル5って頭おかしいよね。

 現実離れしてるほどに能力は強くなる気すらしてくる。

 飯食ったら服を買いあさるという話に至った。

 

 

 打ち止めの頼んでいたハンバーグが置かれたが、一向に食べようとしない。

 絹旗が聞くと、みんなでいただきますがしたいと答えた。

 なんだこいつ、喋り方のウザさに反して超かわいい。

 電話のこいつこいつめ星人に聞かせてやりたい。

 ハンバーグが冷えるという欠点は一方通行の超能力で解決できるし。

 

 「え、あっためておいてくれないの? 学園都市製はおろか外の電気炊飯器すら保温ができるのに、第一位が使える能力は炊飯ジャー以下? マジで? うそっしょ? ……いや、ごめんな、無理言って。まさか炊飯器以下の働きしかできないなんて思わなくて。……その、ほんとにごめん」

 

 

 

 全力で申し訳なさそうに炊飯器以下だと謝ったのに、なぜかベクトルパンチされた^q^

 

 

 

 

 

 --8

 

 調整槽育ちの打ち止めが舌を火傷したトラブル以外は楽しく食事を終えた。

 そしたらアラバスタで飯食ってる最中に眠ったエースみたいな感じで打ち止めが倒れた。

 どうやら調整途中でなんたらかんたら。

 一方通行がぶつくさ言いながら店を出て行った。

 普段ダベっているときは全員が店を出るまで居続けてくれて、よく飯代まで出してくれるイケメン一方通行が途中離席。

 

 導き出される答えは……。

 やだ、ツンデレでかっこよすぎっしょ。

 

 

 

 白衣のおっさんに銃を向けられた。

 打ち止めが欲しいらしい。

 最近、俺はおっさんと縁がありまくりで嫌になるんですが。

 金にがめつく若作りしていて友だち思いで脚線美のフレンダが、暗殺のターゲットだということに気付いた。

 そういえばそんな電話があったような無かったような。

 報酬は分散するといまいちなので、じゃんけんで決めようぜってことになった。

 態々じゃんけんするまでもなく、『ばくだん』という禁じ手がある俺が最強って訳だけどな!

 

 麦のん以外ばくだんだった。

 最近、ふざけてアイテム連中に使い過ぎたなぁなんて思い返してみたり。

 で、一人だけ普通にぐーを出した麦のん。

 純粋さに完敗、だな。

 

 

 

 

 

 報酬で麦のんが電話を弁償してくれるとか。

 明日一緒に買い物に行くことになった。

 「デートか! デートなのか!?」と煽るとビームを撃たれて否定された。

 打ち止めの服や生活用品ついでにアイテム連中も来るらしい。

 地下が品ぞろえいいらしい。

 よく考えたらあんまり遠出したことないし、楽しみである。

 

 

 

 

 

 

 

 




大神
アイテムに所属するレベル4の『肉体変化(メタモルフォーゼ)』とされているが……。
よく麦野のビームで焦げてたり、ベクトルパンチで肉体がもげてたりするが元気に活動している。
ミサカクローンからはオリジナルを煽ったためにゴキブリ扱い。一方通行を煽るから打ち止めからはイナゴ扱い。

ジェヴォーダン
ロシア成教の殲滅白書に所属してる人狼。 ニコライ=トルストイがロシア全土から集めた『天使の力(テレズマ)』を用いて形成した幻想種。制御するために人間を理解させようと幾らかの知識を与えたところ、何処かから勝手に人間性を獲得して自由意志を持って行動し始めた。つまり制御不能の幻想状態。
『天使の力(テレズマ)』のみならず現世に存在するエネルギーを取り込むことで個として活動している。オカルトの体現であるために伝承によって存在が左右されるはずだったが、耐性として害への対処を学び続けているため、高い不死性を帯びている。
名前のない幻想だったが、フランスへの任務時に「ジェヴォーダンの獣」という記号を得た。

聖水
幻想にそうあれかしと祈られたために軽い幻想種へと至った液体。



ネタバレ
大神=ジェヴォーダン

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