実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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とある科学6-1

 

 --1

 

 ゴールデンレトリバーである脳幹先生に、渋い声で「これでも食ってろ」と何かよく分からん物を口にぶち込まれた。

 口というか顔面が消失したんですが。

 なんて毒物食わせるんだこいつ、と戦慄しながらも「嗚呼、我が身体に耐性が満ちてゆく……!」的な。体は正直なんだぜ。

 ぶっちゃけ美味くないので要らないと断るも、世界の基準点付けのために祈りながら食えやおらぁ!とさらに何かよく分からん物をぶち込まれ続ける。

 おう、そろそろやめーや。

 顔面が物理的に消失してるじゃねーか。

 

 傍から見たら、俺ってワンコに餌付けされてるよね、これ。

 逆だろ、普通。

 ないわー。

 まあ、実際に傍から見たら、ゴールデンレトリバーの背中に取り付けてあるロボットアームが掴んでいる試験管を口にぶち込まれ、小爆発を起こして中身が飛び散り、顔面が消滅するという意味不明ホラーなんだけど。

 四次元殺法コンビの黒いほう化した俺。

 

 タイムタイム。

 ぐいぐい押しこむの止めて。首裏から試験管の破片が飛び出てっから。

 もう腹無くなってるから。ビー玉が無いビーダマンだから。

 そもそも口から胃にかけて無くなってるから。

 

 「君には他の内臓もあるではないか」って、なんだコイツ(戦慄)

 意味のわからん曖昧な情報を食わされた後、今月のショバ代を寄越せ、的な感じでドリンクバーのコーラから生み出されし聖水をカツアゲされた。

 最近確保したアシカと柴犬、イルカ、フクロウなどに補助脳くれって呼んだだけなのに、餌付けされるとか俺って愛されキュートかよ。

 ねーわ。

 

 わんころに、最初の目的を果たしてもらうことにする。

 色々とあって脳波に干渉にして互いの思考をリンクさせることで知能レベルを飛躍的に上がったために木原った動物たちに、軽い補助脳を取り付けてもらって、群であり個でもある生物としてうんちゃらかんちゃら。

 時折数式を吐き出す可愛い動物たちとなった。

 ちなみに、数式は中性子爆弾とか常温核融合、ダイソン球殻生成などについてらしい。

 

 ……げ、げんりはしってる。よく遊んでるし。ちゅーせーしとか、まあ、俺くらいになるとそこらへんで集めて風船に入れて爆弾にするから。

 

 ま、まあ、原理は知ってるよくわからん数式なんてくっそどうでもいい。

 こいつらの利点は、なんと互いの思考が繋がっているという点だ。

 一匹に指示を出すだけで、他の動物にも(こいつ、直接脳内に……)って感じで伝わるらしい。

 電話も念話も不要、すごい。

 しかも知能レベルは俺を優に超えて……ってやかましいわ。

 とりあえずランダムで数式を垂れ流すこと以外は賢い動物なのだ。

 フクロウとか柴犬は家事の補助くらいなら出来るし、アシカもなんか出来る。

 イルカ? 役に立つわけねーじゃん。数式とうんこの製造機よ。嘘だ。実際はカードダス先生の計算機と化している。計算めんどくなったらこいつに聞くと、難解な問題も一瞬だとか。

 というか動物連中に聞けば、様々な観点からの時間や暦、星の位置、電波状況、重力の細かな変化、電波に乗った情報、今日の天気、紫外線、潮流、気流、魔力の流れ、近所の特売、物質の明確な質量や特性、コーラの美味しい温度、テレズマの効率の良い集め方など、ゲッター線、インデックスの消費カロリー……様々な情報に対応し瞬時に応えてくれるので、便利な辞書として活躍してくれる。

 自分ではまともに実験できない木原を一家に一匹ずつ所有すべきではないだろうか。

 

 

 

 「まだまだ残っているぞ」「やめてクレメンス」とワンコと遊んでいると、何故かサーシャとインデックスが絹旗を連れて来た。あと見知らぬ巨乳の女学生ちゃんもセット。

 絹旗と合流するのは午後からだった気がするんだが。

 ……。

 ……っ!

 まさか俺への愛が溢れて「来ちゃった(はあと)」的なラブロマンスだろうか。愛され系でごめんねー!

 マイスイートハニー、胸に飛び込んできていいのよ!みたいな。

 まあ、今は胸というか上半身が無いんだけど。

 

「大神の本名は大神次郎ですよね。そうに決まってます。横文字の偽名とか超似合ってませんし本名ですね。はい超論破。二人も今後は大神って超呼ぶように」

 

 それは偽名なんだよなあ。

 

「ジェヴォーダンなんだよ! 赤水着もパンモロも人の名前を間違えるのは良くないんだよ!」

 

 それも偽名なんだよなあ。

 

「……現在はあの装束ではありません。第一の質問ですが、貴方の名前はベート・シャステルですよね。解答は受け付けてません。以後、ベート・シャステル神父様の名前を間違えないように」

 

 それも偽名なんだよなあ。

 

 あのね、君たちはそれ以外に聞く事ないのか。

 例えば犬っころが喋ってるとか。

 教会内に水が循環していて、イルカとアシカが泳いでいるとか。

 フクロウと柴犬が将棋しているとか。

 一方通行が祭壇前の椅子で寝てるとか。

 もっと、ほら。

 大本命で、この教会の神父様が半分消滅している件とか。

 あと絹旗はパンモロしたの? 後で懺悔室で見せるように。

 

 残っていた腕でしっしっとジェスチャー。

 巨乳の学生に悲鳴を挙げられた。

 まあ当然っていうか。

 知ってたというか。

 何故か新鮮というか。

 あとサーシャと絹旗はもうちょっとなんか反応があってくれてもいいと思う。私が知ってる名前が本名ですよね答えは聞いてない、とか暴論すぎない? 君たちやばくない?

 インデックスもそのまま無視してカードダス先生にお菓子貰いに行くのやめーや。もうちょっと俺に興味持てよ。ちょ、待てよ。

 おう犬畜生も、そろそろ追加するのやめ……おごごごごご^q^

 

 

 

 

 

 --2

 

 試験管責めに満足したのか、犬が程なくして帰った。

 厚意で用意した朝食には手を、というか口を付けていなかった。

 折角人が丁寧に玉ねぎとアボカドを使ったサラダとチョコのデザートを調理してやったというのに。

 

 犬を見送り、改めて絹旗が来た理由を尋ねようと声をかけるが、何故か俺の名前がゲロ神父で統一しかけていた。

 女の子がゲロって言うのは止めなさい。

 あとパンモロも修道女が使う言葉じゃないです。どうしても言いたいなら、神父様の逞しい棒が欲しいですにしておくように。

 

 「大神がこっちに来て下さい。ペットは名前を呼ばれると超駆けつけるんですよ」と絹旗がドヤ顔で席に座ったまま動かないので無視し、インデックスとサーシャ、打ち止めに、そろそろ出掛けないと遅刻すると言って準備させる。昨日の夜に、午前中は暇で時間があると電話してきた麦のんに、インデックスたちの世話を押し付……頼んだのだ。

 御目付役の一方通行が起きそうにないので、椅子を取り外し、アシカに渡す。そのままイルカが泳ぐ循環プールへ投入された。反射してても酸素足りなくて起きるだろう。起きないまま死んだら……嘘、まさか俺が学園都市一位(お目目きらきら)

 最強だぜ!やったぜ!と喜んでいたら、水面を蹴って一方通行がダイナミックに飛んできて、俺にベクトルパンチをかましてきた。

 なんだこいつ頭おかしい……^q^

 

 

 

 飛び散った水滴が重力に逆らい、教会の壁と天井を包むように循環するプールへと戻る。

 インデックスビームによって解放された天井に取り付けられた採光窓から降り注ぐ日光が反射し、幻想的な空間へと劇的ビフォーアフター。

 カードダス先生ってば匠すぎんよ。

 

 インデックスやサーシャ、打ち止めも準備が終わったようなので、「さあ彼女たちとともに光の世界へ行くがいい! モンスターテイマー・一方通行よ!」と優しさと慈愛を込めながら告げる。

 「はァ?」という反応が返ってきた。むしろ俺が「はぁ?」である。俺が行けって言ったら行くべきでしょ。

 頭おかしいなこいつ。

 絶対に外に出たくないのだと引きこもりっぷりをアピールする一方通行に、懇切丁寧に俺が説明してあげることにしよう。

 学園都市一位だ(キリッ)とか言って、頭も一番いいですよアピールしまくる、一方通行くんに、この僕が。

 

 ベクトルパンチされた。

 なんだこいつやっぱ頭おかしい……^q^

 

 

 

 昨晩、打ち止めのためにこの教会に泊めてあげたじゃん?

 

「オマエが勝手に連れて来たンだろうが」

 

 一宿一飯の恩義があるじゃん?

 

「オマエが勝手に食わせたンだろうが」

 

 雑魚に負けて勇者の資格を返上してモンスターテイマーになったわけじゃん?

 

「……あァ?」

 

 あ、日本語わかんないのか。

 ジュワワワジュワワ、 ジュワジュワジュジュワワワワワ?

 

 

 

 ベクトルパンチされた。

 なんだこいつやっぱ頭おかしいまともなのは俺ひとり……^q^

 

 

 

 

 

 教会がぶっ壊れたので、とりあえずインデックスの食費と俺の娯楽費とともに一方通行に請求しよう。

 ウルトラマンみたいな服を着た白もやしが少女三人を引き連れるという、ラノベみたいなパーティを見送って、再び絹旗チャレンジ。

 絹旗がドヤ顔で立ち上がり、「大神! 超オイデ!」と両手を広げた。

 犬の躾コマンドやめーや。

 

 肩に留まっているフクロウに指示を出す。

 すると壁側のプールからザバっとイルカが飛びだし、空中を水の塊に包まれながらふよふよと進み、絹旗へと迫る。

 濡れるのを嫌がって絹旗がこっちに来るので両手を広げ「絹旗! 超オイデ!」と愛を叫ぶ。

 

 全力ダッシュからの窒素パンチやめーや^q^

 

 

 

 「麦野の機嫌が超悪かったので遊びに来てあげました」と絹旗。

 昨夜の電話ではそんなに機嫌悪そうじゃなかったのだが、まあいいや。

 「あとついでに、教会の前で超迷える子羊と出会いましたよ」と眼鏡の巨乳女学生を紹介してくれた。

 何故か俺を怯えた目で見ながら、絹旗の背に隠れている。

 身長もそうだが、胸の差が凄い。絹旗が遠まわしに煽られている気がしないでもない。

 迷える子羊なら導くのが俺の仕事だ。しかも超迷えるのなら、超凄腕の神父である俺しか導くのは不可能だろう。

 親愛なる友人として、頼れる隣人として、優しい言葉が重要なのだ。

 そして俺は囁くように言うのだ。

 

 

 

「君、アヘ顔が似合いそうだね(ニコポ)」

 

 

 

 

 

 ゼロ距離窒素パンチやめーや^q^

 

 

 




オリ主
名前なんて無くたって、石ころ一つ押し返してやる!

ゴールデンレトリバー
犬。
木原さんちの女の子ってかわいい。かわいくない?
テレスティーナ……? え? 女の子って言ってんじゃん。
はい論破。

絹旗
脱ぎたてのパンツがほしい。ほしくない?

インなんとかさん
ハイドロポンプさんの名前をインなんとかさんとかイカデックスって呼ぶの止めてやれよ!



設定
上条がインなんちゃらさんと出会わなかった世界。
全部オッティが悪い。

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