実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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確信した、これは続かない。
そして面白くない。


原作: Fate/Zero

 

 物質界に存在しない第六架空要素を研究することで”根源”へ至ることができる、そう考えたのは桐谷(きりたに)の家で特に優れていたとされる3代目の思いつきだったらしい。

 第六架空要素とはこの世に実在しない神や悪魔と思われる存在を構成するものだ。

 存在しないのであれば存在しているところから持ってくる、そんな安易な発想だったのかもしれない。

 悪魔を呼び出し、魂を対価に身に宿そうと試むのに時間はかからなかった。

 

 幾百幾千もの人間を使い捨て、親族を短命に貶めることで漸くカタチになったのは7代目の当主が死ぬ直前だった。

 耄碌していたか、最初から無能だったのか、床に伏した当主は元気に走り回る自らの孫に悪魔を宿すよう指示を出した。

 苦しみ、のた打ち回る3歳の孫の姿を眺め、満足そうに頷くと、7代目は息を引きとったそうだ。

 

 悪魔に憑りつかれた孫、9代目は奇跡的に命を落とすことなく、すくすくと成長した。

 むしろ成長しすぎたといってもよかった。

 死ぬまでの年月をかけてその身を異形へと変貌させていくが、反して悪魔を研究するようになった桐谷の中で最も長く生きたようだった。

 成功したのだと、呪われた体を引き摺って、親族は皆よろこんだ。

 その方法が正解に近いのだと歓喜した。

 そして、皆が自らの赤子を贄として差し出した。

 狂気の篭った瞳とともに。

 

 9代目の子が成人するころになると、全ての子がその身に悪魔を宿すようになっていた。

 そして知ることになる。

 呪いは伝染する、と。

 

 

 

 

 

 夜も深まった時間だった。

 冬木市の新興住宅街、その中央に位置する市民会館。

 建設途中なのか、外装は出来上がっていたが内部の床一面がコンクリートだった。

 内部では青年が呟きつつ、寒々しいコンクリートに幾何学模様で構成された魔法陣を描いていた。

 幾何学模様を一心に描き、絶えず唱える。

 書き終えるとゆっくりと立ち上がり、魔法陣を見下ろした。

 

 自分の家は分家がいくつもあるほどに大きかったらしいが、今では数えるのも容易なほど少なくなった。

 寿命に目が眩み、生まれたばかりの子を贄としたことが原因だった。

 あまりに幼い身で悪魔を宿すと魂までもが憑りつかれてしまう。

 そして子が成長する頃合いになると周りの悪魔と共鳴し合い、さらに強くなっていく。

 混ざってしまった魂から悪魔を引きはがすことはできない。

 親から子へと伝染する呪いへと変化していった。

 血をより濃くしようと近親による配合を繰り返したことも悪かった。

 より深くなった呪いは、より強い共鳴を起こし、魔を呼ぶ。

 悪魔がさらに入り込み、呪いがより濃くなっていく。

 それほど代を重ねず、人はいなくなった。

 皆、悪魔に命を吸われていった。

 

 馬鹿なことをしたものだと考える。

 どれだけ目を曇らせたら根源を目指す手段が寿命を伸ばす手段へと変わるというのだろうか。

 桐谷家のたちを思い浮かべる。

 同じ年頃の子ら等、同じ時を過ごすだけで異形へと変わっていった。

 年上のもので人間の面影がある者など残っていない。

 魂を蝕まれる痛みに喘ぎ、醜悪な姿へと身を落としていく。

 本当に、馬鹿なことをしたものだ。

 

 勝たなければいけないと強く思う。

 全てを叶える願望機でなら悪魔を引きはがすことが可能だと、それしかないと思い到った。

 ”根源”など遥か昔に興味を失っていた。

 鏡を見る度に涙を流す姉の姿を見たときから、魔術など忌むべきものでしかない。

 噛みしめた唇から血が流れ、コンクリートを汚す。

 傷口がすぐに塞がる。

 それがまた、憎かった。

 

 

 憎悪を胸に、詠唱を始める。

 真っ暗な内部が暗く輝く紋様に、異形と化した顔半分が照らされた。

 触媒となる聖遺物の用意はない。

 英雄などが現れでもしたら、戦いにはならないだろうから。

 バケモノを退治して身を立てた英雄どもとこの身の相性が良いとは思えなかった。

 蔑まれるくらいなら、背後から刺されるくらいなら、縁に頼った何かを呼び出すほうがマシだった。

 詠唱が終わりへと近づく。

 煮えたぎる憎悪が胸を焦がした。

 

 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 

 一際、光が強く輝いた。

 人間の瞳では眩んで見えなくなるような光だろうと異形の瞳は瞬き一つしなかった。

 光が納まり、そこにいたのは青いワンピースを着た小さな少女だった。

 長い金髪は光を反射して太陽のようで、頭頂部で結ばれた白いリボンが愛らしさを際立たせていた。

 そして、病的なまでの青白い肌は屍を彷彿とさせた。

 

 「アナタがわたしのマスターね?」

 「そう、だとも」

 

 あどけない笑顔を浮かべ、少女はそう言った。

 少女然とした高く綺麗な声だったが、背筋が凍るような深さも持っていた。

 異形の半身がざわつき、たどたどしい返事となった。

 

 「とても素敵なお顔。アナタはわたしとお友達になれそうね。わたしはキャスター、あなたのサーヴァント」

 

 半身が引きつったかのように動かない。

 キャスターは何が面白かったのかクスクスと上品に笑う。

 そしてじっと俺の顔を見つめると、柔らかく微笑んだ。

 

 「コンゴトモヨロシク」

 

 キャスターの見た目と異なる、魅惑的な笑顔だった。

 そして年相応の可愛らしさも秘めていた。

 

 

 




時系列としては第四次聖杯戦争を予定。

オリ主 
名前は桐谷さん。
悪魔に憑りつかれているため、肉体が異形と化している。前衛型なのでサーヴァントと殴り合いをする。悪魔の浸食率を上げるほどに強くなるが、健常な部分が減っていく。精神も摩耗し、人間性を失っていく。
予定としては人間らしさを取り戻すために戦争に参加したのに、徐々に異形と化していく己に絶望する話。

世界観から悪魔は人間の云々らしいが面倒なので悪魔憑き的な何かにした。超つよいレベルの代行者が必要なくらい究極完全体悪魔憑き。

切嗣とともに汚れた聖杯に絶望する役目もあるかもしれない。
聖杯を受け止めて悪鬼となるルートとかもあるかもしれない。
言峰に灰にされることで感謝するルートもあるかもしれない。

同盟はおじさんしかない気がする。


キャスター 「アリス」
真名は「ナーサリー・ライム」であり、スキルを利用して絵本の伝承を呼び出し、それに乗っ取る形で降臨した魔人。「アリス」で固定しているため、全ステータスがEとなっている。
宝具は赤おじさん・黒おじさんを模したぬいぐるみであり、魔力が枯渇または致死ダメージを受けた敵サーヴァントに埋め込むことで、2ランクダウンしたゾンビとして使役できる。敗退して”座”へと戻ったサーヴァントには使用できない。
対軍宝具としておじさんがすごい一撃をぶっぱする。
個人の宝具は魔力C以下を即死させたりする呪文だが、命中判定は幸運に依存する。

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