--1
父が家事をして母が仕事へと出かけたことに内心で混乱しながらも何とかやり過ごした。
数日を過ごすうちにわかったのだが、この世界は色々とおかしい。
世界が変わったとでも言えばいいのか。
世界が変わったと感じたのはとてもシンプルな話なのだが、どうも男女の価値観というのだろうか、対応というのだろうか、そういったものが俺の知っているモノと逆転していたのだ。
どうやら服装など基本的なモノや表面的な類は俺の価値観のままであるが、感覚が逆転しているようだった。
性についての犯罪や差別が主に女性を主としたものになっていたのだ。
いくらか運が良いことに、どうやら俺の現状は高校3年生への進級を控えている春休みが始まったばかり。
突然ナイフ一本で雪山に放置されるかのごとく外に放り出されるような事態にはならず、いくらかの情報を集める時間が得られたのは有り難い。
家事を手伝いながら父の話を聞くに、どうやら我が家の家族構成は父と義母、俺、義妹の四人家族らしい。
再婚したようで、妹は一つ下の女子高生。
父に、妹と仲良くしてはどうだと頻りに聞かれてしまった。
元の俺はあまり交流していなかったようだ。
今の俺も時間に余裕はできていたが、情報収集ばかり行っていたため以前と同じようにほとんど交流は無し。
どうやら義母が心配して気を揉んでいるようで、父も気になっているらしい。
義母が働き手なので家庭の事で気を使わせるには申し訳ないし、テレビや新聞、それにちょっとの会話だけでは限界を感じていた。
ちょうどいいので血が繋がっていない妹を情報源に使うことにした。
異性とのコミュニケーションは得意ではないから失敗するかもしれないが、まあ前向きに交流しようとしていることはわかってくれるはずだ。
得意だったらビッチになるのだろうか、それとも気軽な陽キャか。
休みを利用して義妹と仲良くなるだなんて、なんだか恋愛ゲームみたいだぁ、とのんきなことを考えてみたりもした。
家事を積極的に手伝いながら父に話を聞いたり、一緒に買い物に行ったりと様子を探ったり、ニュースから情報や感覚を集めていると、部活に行っていた義妹が帰宅してきた。
料理を作っていたのだと話のタネにしてみるが反応が薄く、鋭い目つきがさらに鋭くなっていた。
父が言うには思春期で恥ずかしがっているのだとか。
はあ、そうですか。
どうにもピンとこない。
だがしかし、父の言葉に義妹はほんのりと顔を赤くさせていた。
恥ずかしいのか怒っているのか、どちらにしろ父の言葉は遠からずといった様子。
もしかすると元の世界の発想を逆転させるのが大事なのではないだろうか。
イメージ的には男子高生が部活から帰ってきたら一つ上の義姉が料理を用意していた的なシチュエーションだろうか。
女子側はもちろん、男子側も体験したことないからわからん。
義姉側は今体験してみたが肩すかしを食らったので、やはりよくわからない。
義母が帰ってきたので家族で夕食を囲む。
義母におかえりと言葉をかけるのもほどほどで、義妹は俺が作った料理には興味津々っぽい。
部活で動いたのだし、色気より食い気なのかもしれない。
BGMとして点けていたテレビでは家事をしない男子が増加中という特集が流れていた。
内容を見ると、男の数が減ったので家事をしなくても求められるようになっているとかで、その姿勢が怠慢かどうかという議論で盛り上がっていた。
それを見ていた父は、うちには関係ないだろうと上機嫌に言って俺を褒めてくれた。
義母も同意してくれるので、ちょっと照れてしまった。
義妹は苦々しい表情を浮かべていたが、料理がまずかったのだろうか。
料理の出来が心配だったが、おかわりもしていたので問題なかったと思う。
翌日、情報収集の触りとしてネットで色々と調べてみることに決めた。
俺の部屋にはパソコンが無かったので朝食を食べながら父と義母に訊ねると、義妹が持っているという。
義母も持っているが、仕事に持って行くので使えないとか。
そのうち共用のパソコンを用意するという話になった辺りで朝食を終える。
義妹は部活に行ってしまったので本人はいなかったが、義母は好きに使っていいと言ってくれたので、言葉通りに義妹のパソコンを有りがたく借りることにした。
義妹の部屋は年頃の女の子らしい可愛らしいものだったが、大人を意識しているのか背伸びした化粧品な衣服やアクセサリーも目に入った。
もっとシルバー巻くとかよ、って言葉を参考にしたのかもしれないが、ケバくなると思うから今のままでいて欲しい。
そういえば化粧品は女性が使うんだな、と思った。
パソコンの置いてある机へと進むと、傍にある本棚の漫画に目を惹かれた。
後で参考にさせてもらおう。
目的であったノート型のパソコンはスリープ状態だった。
どうも掲示板を読んでいる途中だったようで、スリープから起こした画面には『深夜の淑女会』というタイトルが付けられたスレッドが。
淑女っぽい喋り方で日常を語るスレらしい。
愉快な話だったり、家族との日常だったりと穏やかなスレだ。
義妹も何か書き込んでいるのか無性に気になってしまい「テスト」とIDを確かめるために書き込む。
遡って書き込みを見つけたので読んでみると「私には義兄がいるわよ。エロゲみたいなのよ。性格も容姿もマジでナデシコインですの」と深夜2時くらいに書かれていた。
穏やかなスレでマウント取りに行くのは高校生っぽいけど、ちょっと恥ずかしいからやめてほしいとも思う。
それはそれとして、俺がゲームみたいだと思ったように義妹も同じことを考えていたようだ。
いや、俺はエロまでいってないけれど。
テストに反応した人たちに「兄です。空気読めない義妹でごめんなさい」と書き込むと、レスが加速した上で聞いてもいないのにナデシコインの意味を教えてくれた。
「撫子+ヒロイン+ちんちんしこりたい相手+まんまんにインさせたい相手」などを組み合わせた造語らしい。
えぇ……。
一応教えてもらったんだし、とお礼を書くと、出会い目的に連絡先を聞かれたり、裸の写真目当てにねだられたり、ネカマなどを疑われたが個人情報とか怖かったので、手の写真だけアップしておいた。
ついでに淑女会というのを興味本位で調べてみると、どうやら俺の知ってるやきう民やとしあきみたいなもののようだ。
折角なので、この世界での価値観を知るために、女性は主にどういった趣味があるのかと質問した結果、遊びでブラギガスを産んだ女性(直喩)がいることを紹介されてしまった。
うーん、どの世界もやはりどこかしらは狂っているんだなあ。
せっかくなのでweb漫画とか小説も漁った。
ほとんど逆転してるだけだったが、それも参考になるので為になったと言えるだろう。
部屋の扉が開く音がしたので振り返ると、義妹の姿が。
パソコンに熱中しすぎていたらしい。
唖然とした義妹に、勝手に使ったことを謝り、あんまりパソコンのやりすぎで寝不足にならないようにと注意して部屋を出ていく。
家事の手伝いもあるが、パソコンを使った気まずさもちょっとあるからだ。
家事を手伝おうとリビングに向かうと、義妹の叫び声が聞こえた。
物静かで三白眼なのに珍しい。
そういえばパソコンで淑女会やブラギガス(意味深)のスレを開いたまま出てきたのだ。
悪いことしたかなぁ。後で謝るべきだろうか。
わからなかったからブラギガスを調べてごめんね、と告げると鋭い目つきが涙目になって曇ってて可愛かった。
--2
漫画を読みます、よろしくお願いします。
ということで、義妹の部屋の漫画を読むことにした。
父に許可を取ったのでセーフ。
なお義母は苦い顔をしていたが父に押し切られていた。
理解あるほうが婿に行きやすいというのが父の主張で、義母はそんなに頑張らなくてもいいという様子だった。
さて、本題の漫画だが、バトル、ギャグ、日常、ラブコメ、より取り見取り!!
内容は俺が知っているのと同じだが、ほとんど全部TSしてる感じだ。
バトル漫画とか激戦を繰り広げると上半身裸になってるのが気になってしょうがなかった。
胸の大きさは小さいのが多いのは戦いやすいからだろうか。
パソコンで調べたらあんまり大きいと自己投影できなくて人気が出ないとか、そういう意見もあるらしい。
エログロ漫画となると、男が犯されてる描写とか出てきて、なんというか、変な感じだった。
犯されてる男のちんちんおっきいです(火の玉ストレート)
あとすぐ射精しててちょっと笑った。
凌辱とか暴力まで入ると片方の金玉を潰したり、ちんこ千切ったりしてた。
ヒュッてなるからやめてくれないかなあ……。
俺の世界で言う百合物とか、あの、その、男同士でお尻を触れ合うなよ!!!
ラブコメはあれ。
もうトラブルが起きてラッキースケベともなると、棒に囲まれてた(比喩表現)
胸に触ったりするじゃん?
あれがビーチフラッグスみたいな感じになってた。
あかん、勢い次第では折れる。
なおフラッグされた男は気持ちよさそうに絶頂して、主人公を孕ませる妄想をしていた。
他にも絶妙に急所を隠すカットインを入れながらも、隠喩的に描写するという超絶技巧を披露していた。
……やっぱ神は常識が異なっても神だったな(思考停止)
アニメとか映画もこんな感じなのだろうか、とパソコンで調べてみる。
安価でまんまんに突っ込むスレがあったので、デスザウラーと書き込んだら踏めた。
俺の下にはハバネロチップスがあったから良かったよかった。
評判のアニメを調べると、ガンソードに似た作品では主人公が処女だと叫ぶらしい、いいね。
あとガンダムはメンヘラ度が増してる上に、誰が一番メンヘラか評価していたが結局Zで落ち着いていた。
おっぱいリロードはこっちだとちんこを勃起させてリロードするらしい、あたまおかしいね。
映画は空を飛んだり、分裂したり、陸上を走ったり、ハリケーンになったりするサメをチェーンソーで倒すだけらしい、うーん常識的。
女性が魔法少年に変身して戦ったり、男子高校生たちがプールを舞台に尻で戦ったり、ハンターになるための試練でクイズにわざと間違って急所を揉んだり。
こんな世界で生きていけるのか俺。
大丈夫か、俺。
先行きに暗雲が立ち込めてきた気がするぞ俺ぇ。
もう義妹ちゃんのパソコンと漫画の確認も終わりにしようかなって操作してたら、パソコン上でゲームを発見。
シンプルにゲームってフォルダに入ってたので、気分転換にやってみる。
フル画面からの「鬼畜姫ランス」の文字。
ん?
ガハハハって言いながら自分のあれをハイパー兵器と呼んで男を犯す超乳主人公。
それってガバガバなのでは……?
俺は訝しんだ。
そしてぽこじゃかと皇女子宮で孕んでは産む。
お前が孕むのか(困惑)
というか毎週産むのか(混乱)
なんなのだこれは、どうすればいいのだ……。
軽く混乱していると、扉が開く音。
振り向くと、目と目が合う俺と義妹。
目を見開いた義妹が、手に持っていた荷物を床に落とした。
画面にはまん堕ちさせて喜ぶ主人公。
「……女の子もチン堕ちするのかな」
小粋なジョークで場を和ませるナイス判断を下した俺。
流れるイベントシーン。
妊娠し、すぐ出産する主人公。
義妹は何故か泣いた。
--3
リビングのテレビを点けると動物特集をやっていた。
実をいうと俺は動物が好きだ。
毛がもふもふしてるのが大好き。
虫は無理。
足が多いのも、薄い羽根も、グロテスクな胎も苦手だ。
犬が走り回っている姿を口を開けっ放しで見ていると、義妹が入ってきた。
目があったので、一緒に見ようと誘う。
春休み序盤にパソコンで情報収集して、オブラートに包んだ表現ではあるが何度かページを開いたままにしたことで、義妹とちょっとギクシャクしてしまったのだ。
春休みも終わりに近づき、なんとか関係改善が進んでいるはずなので、ここでもう少し馴染んでおこうと思ったのだ。
場面が移り変わり、仔猫の姿に「ほわあああああ……」と呟きながら見ていると義妹を思い出した。
一緒に見るのが嫌だったのか、近くに座った気配はなかった。
食卓に座ったのかなとテレビから視線を外すと、扉の前に立ったままだった。
どうもテレビの前にあるソファの真ん中を俺が陣取っているので、どこに座っていいのかわからないようだ。
実に思春期っぽい。
ちょっと横にずれてここに座りなよ、とソファを軽く叩く。
ちょこちょこと近づいて、俺からちょっと距離を置いて身を縮めながら座った。
これが俺たちの距離感かあ、と残念に思いながらテレビに視線を戻した。
チベットスナギツネの切ない目に「ほわああああ……」としていると視線を感じた。
チラッと見ると義妹が俺を睨んでいた。
いや、彼女は単に目つきが悪いだけなのだから、俺の様子をちょっと横目で伺っていただけだろう。
チベットスナギツネからハシビロコウ特集に場面が変わる。
めっちゃ義妹に似てて笑いが込み上げてきた。
本人と確かめようかとテレビから義妹に視線を移す。
義妹はひどく驚いた様子で、前髪がぶわっと浮いていた。
おでこが出ていると、目つきは、ちょっと悪い程度に収まるようだ。
前髪のせいで、三白眼になっているらしい。
それはそれとしてすごい似ていたので、ハシビロコウに似ていると告げる。
義妹はよくわかっていないのか首をかしげるだけだが、それがまた似ていて面白かった。
--4
社会の学習がてら父の買い物に付き合う。
近所のスーパーもいいが、大型デパートへとちょっと遠出した。
通勤通学の時間には後部車両が男性専用になるのだとか。
俺の知っている世界と大きくは変わらないようで、少しの違和感を覚える程度だった。
とはいえ、細々としたそういうものが積み重なると、無視できないストレスに繋がるのだけど。
思ったよりもナヨナヨとした男性はいないのだが、所々で女々しい面を見てしまうと、逆にそれが気になるというか。
ちょっとした仕草だったり、声色だったり。
ぶりっ子も見かけたが、作ったオカマっぽい印象が強くて、背筋が震えた。
年老いてもあんな感じなのだろうか……あんな感じなのだろうな。
父の買い物が予想以上に長いので、フードコートにて買い食い。
タピオカドリンクとか可愛いカップアイスが流行らしい。
なるほど、世界に馴染むなら華の男子高生を演じなければいけないよな、と理想を思い描く。
常に想像するのは最強の自分……!
マヨネーズとソース、青のりを大量にぶち込んで貰ったたこ焼きを、熱々の舞を踊るかつお節ごともしゃもしゃ。
ぶっちゃけ最強の自分はタピオカとかアイスじゃなかったから仕方ないね。
近くの席に学生の男女が座ったようだ。
聞こえてくる会話からデート中なのかもしれない。
男子の脳内お花畑なマシンガントークが俺にまで届く。
トーク内容を聞いているが、俺が華の男子高生になるのは無理かもしれない。
というか、声が低いのに変に媚びてて聞いてるのがしんどい(素直)
たこ焼きが終わったので次はケ○タッキー、手づかみでダイナミックに食らいつく。
脂はなんでこんなにうまいのか、世界の神秘なんだよなぁ。
鳥の丸揚げとか売ってくれないだろうかと考えていると「鳥さんが可愛そうでウチってケンタ食べられなーい」などと聞こえた。
ケンタ? 健太? カニバリズムは俺でも無理、加工される鳥なら食用以外の未来がないし気にせず食べられる、なんてことを考えながら横を見る。
ファーストフードをチビチビと食べている男子高校生と目が合った。
鳥が啄ばむようにちょっと食べてはごっくん(音声あり)、ちょっと食べては音声認識機能を発動させて嚥下するDK(男子高校生)。
……チビチビ食べるのは女々か、介錯しもす、チェスト種子島!
おっと変な妄想が。
デート中なら相手はどんな……どう見ても義妹だった。
えぇ……男の趣味わるくない……?
鳥を手際よく解体し、もしゃもしゃと食らいつく。
軟骨もぼりぼり噛むし、肉だって口を汚しながら食べつくす。
食べ終えたので、手を洗おうと立ち上がる。
義妹はポテトを咥えたまま固まっていた。
しかし、失敗は成功の母。
この社会だと父か?
まあなんであれ、ここで新たな知識を学習できてよかった。
この世界にも趣味の悪い男女がいるって事実だ。
こういった文化的な部分は共通していると気づくと、なんだか安心してしまう。
人間はいつだってどこだって根本は同じなのかもしれない。
油汚れを落としてくれた、流れるひんやりとした水が心地よい。
せっかく気づいたのだからと綺麗になった手を振るも、義妹はポテトを咥えたまま固まっていた。
固まった妹をなんとか再起動させようと頑張る男子高校生(DK)。
DKってことはドンキーコングの可能性もある。
ウホウホウホホホ、みたいな感じじゃないと会話が伝わらない可能性があるのかもしれない。
いや、無いな。
食べ終わった骨とか包み紙を捨てようとトレイを持って立ち上がる。
散々揺らされて再起動した義妹に、険しい表情のドンキーが問いかける。
媚びた声は置き去りにされていた。
俺じゃなかったら聞き逃しちゃうね。
忙しそうなので挨拶は省略。
邪魔して悪かったね、と告げてクールな俺は爽やかに去るぜ。
特に何かを含んだつもりは無かったのだが、DKは何かを感じ取ったのか、マシンガントークがチェスト種子島トークへと進化した。
進化というか酷い化学反応というか。
「食べ方汚い男はマナーがなってない」だとか。
手が汚れるだけの俺はセーフだよな……セーフでいいや。
アウトだったらセーフだと感じる友人を作り、将来的にはそんな女性と付き合うのでやはりセーフ。
俺は俺に甘い人とだけ付き合い、俺の好みに合った人と結婚するんだ。
さて、新たな知識を吸収したことで新たな混乱が出現。
細かい差異があるということに気づいた。
もぐもぐごっくん然り、鳥さんがかわいそう然り、趣味の悪い人間然り。
俺の知っている常識と、知らない知識が合体して、
やべーよやべーよ……。
父の買い物がまだ終わらないようなので、店内を見て回ることにする。
必要な物とかあるかもしれないし。
あ、むしろ部屋に何があるかわからん。
文房具とか買っといたほうがいいのだろうか。
気づいたらまた元の世界に戻るかもしれないし、限界まで散財しようかな。
なーんちゃって。
そんなわけで歩き回ったのだが。
何も買わなかった……!
無欲……!
圧倒的無欲……!
無欲というか散財するほど欲しいモノが無かっただけ……!
漫画もゲームもあれすぎる……!
そろそろ買い物が終わるらしいので父と合流……!
圧倒的合流……!
小物を見ていたので俺も流れで付き添う……!
確定で付き添い……!
黄色い髪飾りを発見……!
これは……くちばし……!
買い……圧倒的買い……!
定価品……!
贈り物を割引など……邪道……!
こ れ が 心 か。
そういえばカイジとかの福本系の漫画も読んだけど、やはり性転換してた。
あと顎がとんがってる。
顎とんがってて少女マンガ感ある。
あと福本モブが福本喪女になってて、絶妙に可愛くないクズなのがおもしろかった(純粋な感想)
小物も買って満足したので帰宅する。
男性だと荷物は少量でも無料で宅配してもらえるサービスがあって、そういうところがちょっと面白いと思った。
まあ、手で持てる分は持って帰るのだけど。
少し大きめの荷物を両手で抱えて持ち歩くと萌えポイントが高いらしい、パソコンでちょっと見かけたので試してみる。
電車内でチラチラとこちらを伺っている見知らぬ女子学生のグループと目が合う。
鳥さんかわいそう発言と同じ間違った知識の可能性を思いつく。
俺、やってしまったか……!?
勘違いの恥ずかしさにちょっと顔が赤くなっているかもしれないが、誤魔化すために控え目に微笑んでみる。
全員顔を真っ赤にして目を逸らした。
こ、これがニコポ……!
もしや本当に萌えポイントだったか……?
それとも居た堪れなくて目を逸らしただけ……?
相手の思考が読める超能力が欲しい!
どっちかわからなくて変に恥ずかしい!
どうすればいいんだ!
葛藤をなんとか飲み込んだ末、帰宅した。
なんとか電車内でのことを忘れようとテレビを見てたらちょこちょこと違いを発見。
俺の知ってるのだと「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」だけどこっちだと「ど゛う゛し゛て゛な゛の゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」みたいな。
あとお盆をひっくり返して大事なとこを隠す芸なんだけど、基本的に下しか隠さない。
というか女性は上を隠さない。
隠してくれないと嬉しさがダダ下がりやなぁ。
型崩れするからブラジャーはしてるらしい。
しかしデスザウラーはデスザウラーのままでいてくれただけで百人力。
君は膣にぶち込まれたとしてもいつまでも変わらないでくれよ。
夕食はやっぱり肉、ですかね。
父は見目麗しいさっぱりした物とか謎コラボ料理を作ろうとするので、コントロールするために手伝う。
食べたい物も作りたい。
男子はかわいくてあっさりみたいな偏見、やめてよね。
味が濃くて脂が乗ってるのだって好きだから。
あと可愛く出来あがるとインスタ用写真タイムで冷えたりするので、可愛くないがっつり系に誘導するためでもある。
写真タイムは休みの朝や平日の昼にやってください(切実)
玄関から物音が聞こえたので、おそらく妹が帰ってきました。
それから足音が小さくなって少し経ち……なんと義妹がリビングにエントリーするも素通りし、ちゃんと台所まで来て律儀な「ただいま」宣言。
これは高得点が期待できますね。
普通は玄関で済ます、良くてリビングに入ってから小声でただいま宣言を終えて自室に向かう若者が多い中、家族へと告げに来るとは。
加点ポイントを重ねることで妹ランクが高まり、俺の兄ランクも高みへと至る可能性が見えてきましたね。
あまりの可愛さに義妹から妹に昇進です。
さて、採点に戻りましょう。
父に貰ったエプロンのまま妹へ「おかえり」宣言で理想の兄妹コンボ確定です。
これは温かみあるアットホームな我が家ですよ。
「夕食はからあげでーす」と菜箸で揚げたてのからあげを見せてドヤ顔を披露し、「ちゃんと手は洗った?」と問う。
これは返答次第では大幅な減点という関門ですが果たして……おーっと!?
どうやら手洗いとうがい、そして部屋着への換装を済ませた模様。
うーん100点!
完璧です!
「うんうん良い子だね」と喜びから高まったテンションのまま爪楊枝で揚げたてのからあげを刺して、妹の口にIN!
あーんも忘れない!
俺も100点!
固まった妹をにこにこと眺めながら、今週の仲良し大家族計画はここまで!
では、理想の家族となって義母から昇進した母が帰ってきたようなのでみなさんまた来週!
母が帰ってきたし、すぐに準備も終わったので夕食タイムの後に、雑談タイム。
父も見かけたという妹がデートしていた話題へと推移。
価値観の学習中なのであんまりよくわからなかったが、とりあえずかっこいい雰囲気のする子だったね、と褒めてみる。
男子高校生があんなにも甘えた声を出してアピールしていたのに「部活の備品を揃えるための買い物で、デートでも無いし、好みでもない。絶対違う。……違います」というガチトーンでの返答が。
妹は残酷。
あ、そうだ(唐突)
今日買った小物を妹にあげる。
恥ずかしがるだろうなと思って髪飾りを買ってみた。
つけてみると本当に顔を真っ赤にして恥ずかしそうなのが面白い。
これが価値観が変わった世界での俺の特権……!
付けてみると灰色がかった髪と三白眼、黄色の髪飾りでやっぱりハシビロコウに似てて可愛い。
うーん100点!
自分のセンスが恐ろしくなる。
「髪をあげると目つきも可愛くなるのにねー」と手で前髪を上げてデコ出しさせる隙を生じぬ二段構え。
俺の大胆な接触技に、妹は顔を真っ赤にして固まった。
またつまらぬものを凝固させてしまった……。
父がハシビロコウをタブレットで調べ、母と覗き込んで「かわいい……?」と二人で首を傾げていた。
えー?
とってもかわいいでしょ?
--5
今日は妹も部活が休みのようだ。
どうやら休みは昼まで寝るのが普段の過ごし方らしい。
そして今日はエイプリルフール。
ふふ、理解した!(理解してない)
起きてきた妹に遅くなったが朝の挨拶。
俺が手招きすると、寝起きで思考が鈍っている彼女はふらふらと近くに座るのだ。
唐突に「俺を好きにして良いよ」と両手を開いて薄着でアピール。
妹はやはり固まった。
俺がてめーの時を止めた……!
再起動を確認。
ぼーっとしていた妹に、エイプリルフールと告げる。
カレンダーを指させば、目を何度も瞬きさせてから理解したようだった。
部屋にあった漫画の真似をしたが、ぶっちゃけ恥ずかしいから無しだなこれは。
妹は顔を真っ赤にしていた。
ちょっとやりすぎたかもねって。
俺の可愛さが無限大かもねって。
ちっ、反省してまーす。
まだ寝ぼけているのか視線を俺と宙の間を行ったり来たりさせて船を漕いでる妹の隣に座り、録画しておいた動物系のテレビを見ることにした。
ハシビロコウ、いいよね……。
俺がちょっとテンション高めに眺めていると、妹が部屋の外へ。
飽きたのかなって思ったが、違ったようだ。
すぐに戻ってきて、この前あげた髪飾りを付けてちょっとドヤ顔を披露してくれた。
やだ、尊い……(世界に思考が引っ張られた)
--6
内心で未知の世界にドキドキしながら妹と高校へ。
思った以上に問題なく学生生活を送れそうだと判断できたので、朝の緊張は吹っ飛んだ。
噂話を聞いてると妹の同級生が車で轢かれてどうたらかんたら。
ほわぁーこっわいなぁ。
お昼休みにお弁当を取り出すとですね、俺が二人分持ってたわけですよ。
これはつまり……
弁当「俺が二人分になろう」
俺「弁当さん!?」
弁当「これが俺の能力
俺「ほわぁーすっごいなあ」
なるほど、緊張しすぎて妹の分も渡さずに持ってきてしまったってことですねお弁当さん!
「妹ぉ! 一緒に弁当食べようぜ! 食べようだぜ! だぜだぜー!」
と、妹の教室へ吶喊。
ざわつく教室、固まる妹、集まる女子生徒、値踏みしてくる男子生徒。
女子生徒に妹との関係を問われたので「義理の妹! おべんと渡し忘れたから届けるついでに一緒に食べようかなって! 喜べ少女、明日も明後日もなんなら来年も手作りのおべんとだ!」と正直に答える。
妹を可愛がっている料理ができる兄的なぶりっ子アピール。
この前見たデートを参考にした。
俺の学習能力と優秀な頭脳のコラボ、見せ付けちゃったかな。
「イケメンの義理の兄とか裏切りか!?」と妹は女子生徒たちに連行されていくので後を付いていく。
後を付いて行ってると、口々に褒めてくれるので「えへへ……」と照れながら首裏に手を当てる。
恥ずかしいと口や首を触ったりしたくなるじゃん???
そういうわけで、とりあえず女子にちやほやされるのは楽しかった。
サークルの姫とかぶりっ子をやめられないのもわかる気がする。
将来はそういう路線もいいなあ!
いや、やっぱ黒歴史になりそうだからやめとこ^q^