烏森の魔女ゲーム〈第3ゲーム〉   作:海神アクアマリン

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第4話

リアボリスに突きつけられた犯人と真犯人の人数に混乱させられている。一体誰が真犯人で誰が共犯者なのだろうか。

「リアボリス卿、これでよかったのですか?共犯を暴けなくても真犯人を見つけて、動機を探して人間が犯人であることを証明してしまえばこのゲームは終わりますよ。」

「あなたにあんな風に言われたから最悪な未来は避けたつもりだよ。これでもダメだった?」

「いえ、それが最善の策でしょう。現にカオル卿が混乱してしまっているのですから。」

「きしし、そうだね。」

リアボリスは頭を抱える僕をあざ笑うかのように見つめていた。そして言った。

「きしし、いつまでも一つのことで悩ませてやらないよ。もうゲームは進んでいるんだからね。先に進むよ!」

 

僕達には意味がわからなかった。僕達はいつから死んだ優妃と共にいたのだろうか?それに芽琉もいつから死んだ莉亜と一緒にいたのだろうか。こんな状況じゃ正確な検死は期待できない。だから死亡時刻も違うのかもしれない。

「あの2人が死んだのなら全員ゲストハウスから出ない方がいいだろう。」

「秋楽お兄様に賛成だけど、いつまでお父様は泣いてるつもりなのかしら?」

「まぁ、そう言ってやるなって、紫音だって少しはその気持ちがわかるだろ。」

ゲストハウスの客間の隅のソファに座ってお祖父様はずっと泣いていた。大好きな孫が死んだのだから泣いていても仕方ないが、壁際で泣いていて酷い顔になってしまっている芽琉と比べればまだマシだ。今は泣いていないが暗い顔で壁に寄りかかって窓を見つめていた。

「芽琉ちゃんも可愛そうね。私の娘はまだ顔が無事だからいいけど、莉亜ちゃんは胸に穴が開いただけじゃなくて頭もやられてるからね。二カ所なんて可哀想だし、それを見つけてしまったのが芽琉ちゃんだもんね。しばらくは忘れることが出来ないわね。」

「いや、一生忘れられないだろうね。僕の娘たちはとても仲が良かった。毎日ずっと一緒にいて同じことをしてきた双子だ。その片方がいなくなることは残された方にとって自分の人生を失うのと同じことなのだろうよ。」

そんな大人の話を聞いてたのか芽琉が突然叫んだ。

「どうして莉亜が死なないといけないの!私にとってかけがえのない双子の姉なのにどうして!どうして私の夢も憧れも失わないといけないの!」

叫び終えた芽琉は再び壁に寄りかかって窓の外の景色を見始めた。

「あそこまで苦しんでるとは、思わなかった。場所を変えよう。お屋敷の客間に行こう。お父さんと子供達と若い使用人はここに残っていなさい。」

「かしこまりました。」

そうして親たちはみんな姿を消した。

「親達がいなくなると静かだね。」

「そうでも無いだろ。お祖父様が泣きまくってうるさいままだぜ。」

「芽亜里の言う通りだ。さすがにうるさくてウザいぜ。」

親達がいなくなってからお祖父様を泣き止ませる役として弥勒がそばにつくことになった。

「あれ?芽琉様はどこに行ったのかしら?」

「僕は知らないよ。業は知ってる?」

「俺も知らないよ。」

ちょっと待て、もしかして莉亜を殺した犯人に気づいて芽琉が殺しに行ったんじゃ。

「何かあったらいけないから、僕と芽亜里と奏太で探してくるよ。」

そう言って僕達はゲストハウスの客間を飛び出した。玄関に向かう廊下の途中で芽琉が歩いているのを発見した。

「芽琉、どこに行ってたんだい?」

「莉亜の遺体が無事か確かめるために2階に行ってただけですよ。」

「そうか。まったく、心配かけやがって。」

「本気で心配してたんだぜ。」

「まぁ、何もなくて良かったよ。」

僕達が廊下で会話していると、玄関から焦った様子の清美さんが入ってきた。

「た、大変です。旦那様と奥様が二階の貴賓室で亡くなっています。」

「なんだって!」

その話を聞いてすぐに僕達はお屋敷の二階にある貴賓室に向かった。

「どうして、母さんと父さんが。」

貴賓室には腹を大きく切られた秋楽おじさんと手足を切り落とされた春香おばさんの遺体があった。清美さんと剛座さんが第1発見者らしい。その2人の話によると貴賓室は鍵が閉められていて密室だったらしい。そして、みんなにはアリバイがある。

そんな状況の中、芽亜里は大泣きした。それからしばらくして大人達がやってきた。遺体があの状態だから彩芽おばさんも検死の必要はないと判断した。

 

「さぁ、第2の殺人が起こりました!この密室のトリックを暴いてみなさい!」

「バアル、現場の再構築を頼むよ。」

「かしこまりました。第2の殺人、現場はお屋敷の二階貴賓室です。貴賓室にて秋楽と春香の遺体を発見。当時現場は密室です。」

「きしし、早速赤を使うね。『隼人、清美、剛座、美代子は犯人では無い』ついでに『お屋敷の扉は内鍵か部屋の鍵かマスターキー以外で閉める方法は無い』『扉は鍵がかかった時点で後から閉めることは出来ない』これであのトリックは使えないよ。」

一気に赤を使ってきた。その上、一つの手失った。それならどうやって鍵の開閉をしたと言うのだろうか?

「それなら、神威、美紅利、弥勒、業ならどうだ。このうちの誰からならゲストハウスを抜け出して犯行に及ぶことは可能だ。」

「『神威、美紅利、弥勒、業の4人は犯人では無い』ゲストハウスから出ることは出来ても、戻るまでにバレる可能性がある。」

「それなら、優妃と莉亜のどちらかが生きていて殺したんだ。」

「すでに赤で『優妃は第1の生贄である』『莉亜は第2の生贄である』と言っているわ。言い直すなら『優妃と莉亜は死亡している』これで優妃犯人説も莉亜犯人説も使えないよ。」

貴賓室にたどり着ける人間が減っていく。とても難しい。今回は十分なアリバイトリックを用意して来たのかもしれない。

 

第2の殺人のトリックは強固だ。簡単には解けない。屈辱の魔女は厄介な戦い方をする。アリバイトリックと死亡時刻操作トリックを混ぜた密室トリックを暴けるのだろうか?

 


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