貴賓室のトリックはどうやって作ったのだろうか。ここまでの推理で犯行可能な人間は少なくなっていった。
「貴賓室での犯行は客間の大人達でも可能だ。何かしらの理由をつけて部屋を出て二階に向かい貴賓室で2人を殺害したんだ。」
「バカバカしい。『相馬、紫音、優香、彩芽、蓮司、城助は犯人では無い』あんまりバカバカしいことばかり言うと一気に潰しに行くよ。」
魔女にバカバカしいと言われたのなら、もうあの手でいくしかなさそうだ。
「リアボリス、君はさっき真犯人は1人で共犯者を含めて2人以上だと言ったね。」
「言ったけどそれがどうかしたの?」
「今回の犯行は1人ではなく、2人で行われたんだ。共犯者は使用人の誰かでマスターキーを真犯人に渡したんだ。そして真犯人は貴賓室に向かい、2人を殺害してマスターキーを使い施錠して何もなかったかのように元の場所に戻ったんだ。」
「きしし、なかなかやるね。それなら、次に進むよ!」
僕達は貴賓室で遺体を発見してから、大人はお屋敷で完全籠城、子供とお祖父様と若い使用人はゲストハウスで完全籠城することになった。何か緊急なことがない限り客間の扉は開かないことになった。
それから2時間が経過した。こちらでは何もなく静かにしていた。すると突然お祖父様が立ち上がって言った。
「我が子達が心配だ。少し様子を見に行ってくる。」
「お一人で出るのは危険です。お館様。」
「それなら、僕達全員で出たらどうかな?」
「全員で警戒しながらなら少しは安全だと俺は思います。だから、薫様に賛成です。」
それからみんなの了承を得て全員でお屋敷の大人達のところに行くことになった。
お屋敷の扉に着くと扉にはちゃんと鍵がかかっていた。美紅利が扉を開けて中に入り客室に向かった。客室の扉を開けると中には相馬と彩芽の遺体があった。それと、地下ボイラー室にくるように書かれた手紙があった。
地下ボイラー室に行くと城助と優香の遺体が発見された。側に使用人室にくるように書かれた手紙があった。
使用人室に行くと隼人と剛座と清美と美代子と蓮司と紫音の遺体と一緒にマスターキーも部屋の鍵も全て当主の部屋に封じたりと書かれた手紙が置かれていた。
当主の部屋に入ると、当主の机の上に全ての鍵が置かれていた。生きている使用人のマスターキー以外があることを確認したから間違いない。
「この2時間の間にどうしたらこれだけの人が殺せて、こんな密室トリックが作れるというの!」
芽琉が叫んだ。僕達がこうしてる間にも刻一刻と時間は過ぎていく。今は午後8時だ。
「くふふ。犯人が魔女なら当主部屋にこもろうよ。お祖父様の術式と私の術式があれば少しは時間稼ぎができると思うよ。」
芽琉の申し出に従って僕達は当主部屋に閉じこもった。するとお祖父様と芽琉が何かの魔法陣を壁とかに書き始めた。
「これでどうにかなればいいが。」
「これでダメならもうなすすべがないね。」
こうして当主部屋での籠城が始まった。
「きしゃははは!どうですか!私の自信作!最高の出来でしょ!」
僕は大笑いするリアボリスに対して笑って見せた。
「あははは!それが君の自信作だって?笑わせないでくれるかな?そんなものにも穴はきっとある。そこを突いて君を倒してみせるよ!」
「はぁ?出来るものならやってみな!薫さんごときに解けるものなら解いてみろ!」
まずは全員の死亡を確定させた方がいいだろう。
「復唱要求だ。相馬、彩芽、蓮司、紫音、城助、優香、隼人、剛座、清美、美代子は死亡している。」
「受けて立つよ。『相馬、彩芽、蓮司、紫音、城助、優香、隼人、剛座、清美、美代子は死亡している』ついでだよ。『相馬は第5の生贄である』『彩芽は第6の生贄である』『蓮司は第7の生贄である』『紫音は第8の生贄である』『城助、優香、隼人、剛座、清美、美代子は第9の生贄である』」
つまり殺された順番的には客間、ボイラー室、使用人室の順番に殺されたのだろう。しかし、鍵をどのタイミングで当主部屋に封じたのか。それによっては推理を変えなくてはならないな。
「あぁ、言い忘れてたけど、『鍵は第3の殺人前に当主部屋に封じられた』つまり、不可能犯罪よ。」
これで推理がほとんど決定したが、一体どうしてこんなことになったのだろうか?
「それならば復唱要求だ。扉は全て鍵がかけられていた。もう一つ、窓は鍵がかけられていた。」
「きしし、あなたが何をしようとしてるか分かったよ。復唱を拒否するよ。これが密室だったのなら、また2人で片付ける気なんでしょ。片方が鍵を渡し、もう片方が殺人を行う。それを使おうとしてたなら愚かだよ。『ゲストハウスから誰も外に出ていない』これでアリバイが証明出来たよ。さぁ、どうする?」
そんな、アリバイがあって犯行不能ならどうして第3の殺人が起こったというんだ。
「ゲストハウスから出ずに殺すことなんて不可能だ。どうやっても出来るはずがない。」
「あれぇ?諦めるんですか?私達魔女に屈しちゃうんですかぁ?きしゃははは!もっと屈辱的な顔をしてくださいよ。敗者になるならそうしてくださいよ。」
リアボリスに負けを認めれば全てが終わる。バアルと共に現実に帰ることもできない。クロノエルとの決着もつけられない。どうすればいいんだ。
「リアボリス卿、私がお相手します。薫様は離れたところで見ていてください。」
僕がうなだれているとバアルが一歩前に出て宣言した。
バアルがリアボリスと対峙する。悪魔が魔女を止められるというのだろうか?