精霊幻想記 ~その両手に宿りし奇跡~   作:asd

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主人公の容姿は黒髪だった頃の天草四郎です。


第1話

ああ、なぜだ。なぜ争うんだ。世界にはこんなにも悲劇に満ち溢れているのに、どうしてそんなにも争うのか

 

益田士郎には理解ができなかった。

 

しかし、世界は彼がそれを理解するまで待ってはくれない。

 

アフガニスタンの紛争地域でボランティアに勤しんでいた彼を迎えたのは、同胞たちの死と今飛んできている一発のミサイルの弾頭だった

 

爆炎に巻かれながら彼は思う。

 

 

 

神よ、人に平和への道を指し示し賜え

 

 

 

爆炎すら感じなくなり、死んだと思った瞬間、声が聞こえた。

 

「やれやれ、このようなこともあるのですね。

 

これも神のお導きということでしょうか。

 

さあ、我が子孫よ。この両手を差し上げましょう。

 

ですから、私の変わりにしっかりと向こうの世界で人類を救うんですよ?」

 

 

 

その声を認識したときにはもう、彼は輪廻へと落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀を振るう、刀を振るう、刀を振るう。

 

彼は転生を果たした。否、目が覚めたときには14であったのだから、転生とは言えないかもしれない。だが、それは些事である。その両手に宿る力を認識した彼はこれまでこの世界で生きていた自分を切り捨てた。自らを先祖だと名乗る声に従い、人類を救うために邪魔だったからだ。

 

この世界での自分はそれなりに裕福な武家に生まれたようだ。おかげでヤグモ地方における常識や、精霊術と呼ばれる奇跡を知ることができた。だが、それ以上は不要だ。この地方に未練はない。親も兄弟も友人もいるようだが、全てまとめて個としての知識は精霊術を使い封印した。

 

だから、この地方に未練はない。ここには人類を救うためのヒントはない。あったとしても、詳しく調べるのは後だ。大雑把だとしてもまずは、全体を把握しなければならない。焦りはミスを生む。ならば次だ。彼はそうして、その先にはかつて交流があったとされる国々を巡るべく、未開地へと足を踏み入れた。

 

そして、盛大に魔物の歓迎を受けた。

 

 

 

 

 

 

未開地の森の中でシロウが遭遇したのは走竜と呼ばれる飛べない亜竜だ。

 

突進や噛み付いてくる魔物である。通常の人にとってはかなりの脅威だが、やはり、シロウにとっても脅威となった。

 

二本足で走る犀がツッコンでくる様なものだ。当然、紛争地帯で活動していても野生の犀に出会うことなどない。シロウは精霊術と未来視で回避と同時に斬りつけてはいるが、回避しながらの腰の入ってない一撃では、竜の鱗を斬るなど不可能だ。

 

「面倒な!」

 

シロウは刀をしまうとやり方を変えた。両手に精霊術で帯電させると走竜の突進をすれすれで回避し、電流を流す。走竜は悲鳴のような鳴き声をあけると、思いっきりこけ、木へと衝突し、そのまま動かなくなった。

 

仲間がやられて動揺したのか、警戒するように止まった突進にシロウは好機とばかりに刀を引き抜き手近な一匹の首を思いっきり切り落とし、そのまま刀に帯電させてもう一匹に投げつけた。

 

投げた刀は見事に刺さり、走竜は悲鳴と煙をあげながら、地面に倒れた。

 

(あとは3匹)

 

どうやって倒そうかとシロウは考えるが、走竜たちはシロウを食い物にできないと判断したのか、すぐに逃げ出した。

 

シロウは戦いが終わったと思い、投げた刀を回収したが、刀は血が付いている上にそれが電流により固まっていた。これは手入れが大変だな。と思っていると、唐突な物音にそちらに目を向けた。

 

そこには木に突進して動かなくなった走竜が、頭いってぇとばかりに頭を左右に振りながら立ち上げる姿があった。俺の分残ってるかなぁ、とばかりに周囲を見渡し、倒れている仲間とこちらを見て固まっているシロウの姿に走竜もまた固まった。

 

走竜と見つめあい、少しして再起動したシロウはとりあえず、走竜たちが去っていった方角を指で指し示した。それにより、走竜も再起動したのか、まってよーとばかりに悲鳴を上げながら、指し示された方角へと走っていった。

 

 

 

 

シロウは走竜の肉を一塊切り取り、精霊術で無理やり乾燥させた。もとより食い物に対してそこまでの執着はない。生前は自分以外が食べるため、しっかりとした料理をつくってはいたが、一人であるのならば別だ。

 

ひとまずは、精霊術でお湯と火を作り刀の手入れをしておく。今日はこのままここで野宿しようとも考え、精霊術で土のカマクラを作る。日は沈んではないが、こういった準備は沈んでからでは遅いものだ。急ぐ旅でもない。

 

 

明日は朝から、ここから見える異常なほど大きな木へと赴いてみよう。

 

そんなことを考えながら眠りに付く

 

 

だが、眠りはそう長くは続かない。ふと目を覚まし、カマクラから外をのぞくと

 

 

彼は狼を幻視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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