転生したら厄介事が付きもの 〜お約束に手を出すとロクな事にはなりません〜   作:ち~やん

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中世はロマン。


第18話 異世界の街。そんなお話。

 

 

「とりあえず、着替えたいんだけど......。」

 

 二人は構わずに近づいて来る。仕方なく湯船に体を沈め、顔だけを出す体勢になる。

 

 

「君が......あのドラゴンを倒してくれたのか......?」

 

「え!?あ、は、はい。その。」

 

 太った方の男が話しかけてくる。どうやら異世界なのに言葉が通じるようだ。女神(ようじょ)や角のおじさんは会話、というよりテレパシー、概念のようなものでのコミュニケーションだったから言葉を話していなかったしね。

 

 

「まずは礼を言おう。そして私はマルス。商会を経営している。こっちは息子のエリックだ。」

 

 紹介された若い方の男―――エリックが会釈してくる。が、今の僕にとってそんなことはどうでもいい。人......。ついに人と出会えた!一ヶ月の孤独なダンジョン生活で擦り切った精神がみるみるうちに復活する。

 

 

「あー。それでお嬢さん、恩人である君の名前を教えてもらってもいいかな?」

 

 恰幅のいいおっさん―――確かマルスと名乗っていた男―――が、尋ねてきた。......何でこのおっさんはこんなに冷静なんだ?風呂に入っていることはスルーですか。

 

 

「あ、服を着たい、んですけど......。」

 

「そうだった。これは失礼したね。ドラゴンに追われて気が動転していたよ、すまない。」

 

 慌てて二人は後ろを向く。その隙に着替えようとしたが、服のサイズが合わない。体型が変わったからだ。こんちくしょう。

 やむを得ずコートだけ羽織って、他の服はインベントリに仕舞った。

 

 

「あ、もういいですよ。」

 

「済まなかっ......た?......ね?......。ああそうだった。君の名前を教えてもらっても?」

 

 マルスはコートしか羽織っていない僕を見て、反応に困っていた。が、スルーすることに決めたようだ。

 

 

「名前......。」

 

 ここは異世界。名字は名乗らないほうが良い筈。......昔の人は名字持ちは偉い人だけだった、と、本で読んだことがある。

 

 

「えっと......優、です。」

 

「スグルちゃんか。いい名前だ。......ところで、」

 

 何かを聞きたそうだが、口に出しにくいらしい。何のことだろう?と、ここでエリックが口を開く。

 

 

「スグルちゃん。さっきの魔法は......一体誰に習ったものか、教えてもらっても?」

 

「さっきの魔法?......誰にも習ってません、けど。」

 

「そうか。ふむ、なるほど。人に言えないのなら別にいいのだが、アレは素晴らしい魔法だった。」

 

 本当に誰にも習っていません、なんて言えない雰囲気。だからとりあえずお礼を言っておくことにした。

 

 

「ありがとうございます。」

 

「謙遜しなくていいんだよ?アレは凄かった。」

 

「えっ?アレって凄いんですか?」

 

「「......え?」」

 

「え?」

 

「「......」」

 

「......」

 

 あっ、なんか言っちゃいけないこと言っちゃったみたい。認識の差を感じた。

 

 

「ま、まあそれは置いといてだね。ちゃんとしたお礼がしたいから、私の商会まで案内させてもらってもいいかな?」

 

「ま、街があるんですか?」

 

「「えっ。」」

 

 ......またやらかしたらしい。ともかく、ようやく人間の街に行けることになった。

 

 

 

 

****************

 

 

 

 

「あっ!」

 

 馬に揺られること1時間。人工物らしきものが見えてきた。街だ。壁に囲まれている。ちなみに僕はエリックの方の馬に乗せてもらっている。......お尻が痛い。

 

 

「街が見えてきた。そろそろ着くから用意してくれ......ってお嬢ちゃんは身軽だから大丈夫か。」

 

 この世界にインベントリの存在は知られていない。しかも見た目が見た目だからか、エリックは「まったく一人で森を出歩くなんて。おかげで助かったが、無防備にも程があるだろう」なんて呟いていた。そんなことをしている間に門に着く。

 

 

「入市税を。一人銅貨3枚だ。......ってマルスさん!?無事だったんですか!先に帰ってきた連中がドラゴンがどうとか言ってましたが......。上手く逃げられたみたいですね。」

 

 門に着くなり、衛兵らしき人に声をかけられる。槍を持った、リアルな衛兵。どうやらマルスとは顔なじみらしい。

 

 

「あー。まあ、そうだね。う、上手く逃げ帰ることができて、よ、よかったよ。」

 

 当のマルスは、僕の方をチラチラと見て、吃りながら答える。......このおっさんテンパると駄目だな。

 すると、視線に気づいた衛兵が尋ねる。

 

 

「ところで......この子は?」

 

「あ、ああ。その子はだね。森の中で見つけて保護してきたんだ。」

 

「森の中で!?」

 

「あ、ああ。はぐれたのかもしれない。とにかく無事でよかった。」

 

「それは......そうですね。早くこの子の両親に知らせてあげた方がいいですよ。」

 

 上手く誤魔化してくれた。流石に「この幼女がドラゴンを倒しました」なんて言ってたら大騒ぎになっただろう。

 

 

「ああ。そうするつもりだよ。それじゃあこれが税金だ。」

 

 そう言うと、マルスは何か茶色の硬貨らしきものを3枚、衛兵に渡した。エリックもそれに続く。

 

 

「お嬢ちゃんはまだ子供だから1枚だ。」

 

 衛兵がそんなことを言っているけど、よく考えたらこの世界のお金を持ってなかった。

 

 

「あ、あの。」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「お金を持ってません。」

 

「......?1枚だけでいいんだよ?」

 

「いや、その......。1枚も......ありません。......あと銅貨ってあの茶色のやつであってますか?」

 

「「「......」」」

 

「えっ?」

 

 わー。またやらかしたー。そろそろこの世界の常識とかを知りたい。

 

 

「す、スグルちゃんの分は私が払おう。」

 

「アッハイ。」

 

 マルスが僕の分を払ってくれる。何はともあれ、こうして僕は街の中に入ることができた。

 

 

 

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