転生したら厄介事が付きもの 〜お約束に手を出すとロクな事にはなりません〜 作:ち~やん
少し歩くと、ある大きな建物に着く。
......街の中は、昔のヨーロッパのような世界だった。建物は石造りだし、街行く人はTシャツなど誰も着ていない。......それと、武装している人が多かった。案外治安が悪いのかもしれない。気をつけよう。
「ここが私の、マルス商会だよ。」
「アッハイ。」
そのままだった。だけどこんな大きな商会の会長なんて、凄いことなのかもしれない。門番に敬語で話しかけられていたのも、そういうことか。すると、建物の中から沢山の人が出てくる。そして僕たちの方を見ると誰もが、
「会長!ご無事でしたか!」
「ドラゴンが出たと聞きました!」
「護衛が皆逃げたというのは、本当ですか!」
「よくぞご無事で!」
なんて言いながら押し寄せてくる。マルスが彼らを落ち着かせてくれた。よかった。
「部屋まで案内しよう。」
「アッハイ。」
中に通された。誰もがマルスの生還を見て驚いていたけど、中でも秘書の人は涙を流しながら喜んでいた。愛されてるな、おっさん。階段を登り、廊下を通って部屋に入る。ちなみにエリックとは途中で別れた。
「とりあえず座ってくれ。改めてお礼が言いたい。」
「アッハイ。」
座らされた。
「君がいなければ私の命も、商会の未来もなかっただろう。」
「アッハイ。」
「実は最近王都に店舗を出したばかりでね。他の商会に狙われているんだ。」
「アッハイ。」
「今私が死んでいたら、商会は大混乱していたはずなんだ。」
「アッハイ。」
「つまり君は私と息子の命だけはでなく、ここの従業員の仕事、家族まで守ってくれたんだ。」
「アッハイ。」
「だから改めてお礼を言おう。助かった。そしてありがとう。」
「アッハイ。」
全く反応ができない。
「受付に話は通しておいたから、いつでも頼ってくれていいんだよ。」
「アッハイ。」
「ところで......何故あんな場所に一人で居たんだい?親御さんはどこに?」
「アッハイ......え?」
「だから、どうして一人森の中に居たのかと思ってね。」
そんなこと僕が知りたい。
「それは......わかったんですけど。」
「うん。」
「ここってどこですか?」
「......?私の商会、マルス商会だが?」
「それはわかりますが......この街は?」
「......?キレニアという街だよ。」
「国......の名前、は?」
「ジュルア王国だが......スグルちゃん、体調は大丈夫かね?」
「大丈夫、です。」
正確には性転換してるけど。
「あ、それと......。」
「それと?」
「何か、日雇いの仕事はありませんか?」
「は?仕事?」
何を言われたかわからない、といった顔をしている。そりゃまだ10歳くらいの見た目の女の子が仕事を探してたら驚くよね。
「すまないが......親御さんはどこに?」
「......ここにはいません。」
「それは......失礼したね。済まなかった。」
いや、死んでないけど......。あっちの世界だと多分僕の方が死亡認定されていると思う。救急車で運ばれた後のことは知らないけど。
「さきほどの話だが......見たところスグルちゃんはお金を持っていないね?」
「はい。」
「つまり今日泊まるところもないわけだ。そうだね?」
「はい。」
今まで野宿していたから、生活には困んないんだけどね。でもお金を持っていないと、街に入れないから困る。
「今日のところは......商会で宿を手配しよう。そこに泊まるといい。」
「えっ。......あ、ありがとうごじゃ......ございます。」
噛んだ。それよりこのおっさん、そこまでしてくれるなんて。
「なに、ほんのお礼の一部だよ。」
そんなことを言って笑っている。イケメンだ。僕が男でよかった。おっさんだけど。
「それとお金がなくても困るだろう。......これを渡そう。」
巾着を渡される。中には、銀色の硬貨が10枚入っていた。
「じゃあ後はこの女性から聞いてくれたまえ。......明日の朝、またここに来てくれるかい?」
「わかりました。」
「じゃあ、ついてきてください。」
紹介された女の人は、例の秘書さん。部屋を出て、宿へ案内される。と、その道中。
「今日はうちの主人を助けてくれてありがとうございました。」
......おっと、そう来たか。秘書さんはマルスの奥さんでもあるらしい。道理で帰ってきたときにあれだけ喜んでいた訳だね。
そして、宿に着いた。
「では、ここの2階が宿になります。食堂は1階で、別料金です。宿泊費は商会の方で払っておきました。明日の朝にまた迎えに来るので、それまでゆっくりと休んでおいてください。」
「は、はい。ありがとうございます。」
奥さんと別れて、建物の扉を開けると。......武装した人間がたくさんいた。奥に階段がある。
ナニココ。コワイ。タスケテ。
......急いで階段を登って避難した。あそこが食堂らしいけど、あんな怖い場所行けない。
幸い食糧の焼いたトカゲ肉は大量にあるので、それを食べて寝ることにした。
「おっと、忘れてた。」
寝る前に、あることに気づく。
「この体......どうにかしないと。」
さらば幼女形態。