転生したら厄介事が付きもの 〜お約束に手を出すとロクな事にはなりません〜   作:ち~やん

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働くのは程々にしましょう。




第2話 現代社会は女神様までブラック。そんなお話

 

 

 いつものように布団に入り、目を閉じる。ゆっくりと呼吸をして心を無にするとよく寝られる、とはいつかテレビで仕入れた情報だ。

 

 心を落ち着けて、大きく息を吸って、吐いて。そうすれば自ずと眠気がやって来る―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――『■■■......ん......』

 

 

 ―――『り■■......さ......』

 

 

 ―――『りがみ......ん......!』

 

 

 ―――『りがみさん......!!』

 

 

「......ん、あと5分......。」

 

 誰かが僕の名前を呼んでいる。

 

 

『利上さん、目を開けてください。』

 

「わかった......もうちょっとだけ......。」

 

『利上さん、目を開けてください。』

 

「......ぐぅ......。」

 

『利上さ~ん!』

 

 さっきから誰かがうるさい。僕の安眠を妨害する奴は誰であろうと......

 

 

「......ぐぅ。」

 

『寝るなぁぁぁぁぁ!!』

 

「はいっっ!!......って......ん?誰?」

 

 気づくとそこは、シャボン玉のように光る膜でできた不思議な空間だった。

 

 

『......やっと起きた。じゃあ改めて。お前......じゃなくて貴方は次元の断裂に巻き込まれて死ん......亡くなってしまいました。今から2つの選択肢をあげる......選べるので、どちらかひとつを選んでください。』

 

「いやちょっと待って全然わからない。まずここどこ?ていうか誰?」

 

 目の前に、銀髪で髪の長い一人の幼......少女がいる。どうやらさっきからうるさいのはこの少女らしい。

 

 

『あ、私は神だよ......です。』

 

 なんてこったい、これはイタい。人を拉致した?挙句「私は神」ですって。八百万(やおよろず)の神もびっくりな宣言だ。

 

 

「はいはい、そういうのはいいから」

 

『いやホントだから......じゃなくて、本当です。』

 

「ああそう。で、女神(笑)さんが何の用?ていうか僕家に居たはずなんだけど。」

 

『かっこわら......?まあいいです。ゴホンっ......貴方は死にました。』

 

「......頭大丈夫?」

 

『だ、だから!死んだといったら死んだんだ!今から証拠を見せる!』

 

 そう言うと自称女神様がふわりと浮き上がる。いきなり怒鳴るなんて。情緒不安定なのかな?この幼女は。ていうか浮くんだ。

 

 

『今から貴方の体が救急車に運び入れられるところが見られる......ますよ』

 

「......は?」

 

 周りの膜が僕のよく知っている場所へ変化する。電柱、アスファルト、夜の明けかけた空、そして一台の救急車と僕の家族。そう、僕の家の前だ。

 

 

「......っ!母さん!」

 

『あ、ここから人間界の人たちに声は聞こえないよ。映像みたいなもの......ですから』

 

「......!?なんでだ......?」

 

 目の前で運ばれていく僕の体。映像とは思えないほど現実味のある"それ"に触れることができない。まるで実態のない幻のような......。違う。幻は自分の方だった。世界に干渉することを封じられているかのような抵抗のなさ。そして......

 

 

『女神様ー!ここの、『りがみすぐる』さんの魂の取り違えミスって向こうの担当者ににどう......説......明......を?......あ。』

 

『あ、ヤバい......。』

 

 急に膜が弾け、自分が白い部屋に居ることに気づく。部屋にはデスクと椅子が置いてあり、入り口のような部分は白く発光している。そして今入り口から、背中に羽の生えた天使のような姿の美少女が叫びながら出てきた。......っておい。そこじゃない。ミスってなんだ。ミスって。

 

 

「君たち。ちょっといい?」

 

『『......っ!は、はい......』』

 

「ミスってなに?」

 

『......』

 

『そ、それはその......こっちも......疲れているので......。でも......申し訳ないというかなんというかゴニョゴニョ......』

 

 疲れているとは何だ!僕は家に帰って快適睡眠ライフを送りたいんだ。幼女に構っている暇はない。というか、質問に答えてもらってない。

 

 

「ミスってなに?」

 

『あの......その......偶然、死んで天に召される方の魂と貴方の魂が......入れ替わってしまいまして。』

 

「......偶然?それに"入れ替わってしまった"?」

 

『すいません。ミスです。私たちの不手際です。』

 

 天使の姿をした少女が言うには、僕の心が完全に無になった瞬間に誰かと魂を取り間違えて昇天させてしまったのだと。"よく寝られる"って永眠じゃないか!詐欺だ!もう絶対にあの番組は観ないぞ。

 

 

「そういえばさっき言ってた次元の断裂が云々って......?」

 

『作り話でしだー!ずびませんー!』

 

「うわっ」

 

 嘘だったらしい。寛大な僕はそんなことでは怒らないが、ミスって人を殺した上に隠蔽なんて立派な犯罪者だ。ちなみに神様云々はもう疑っていない。今更だしね。

 

 

「ところで元の世界に帰りたいんだけど。早く帰んないと死亡認定されそうで怖いし。」

 

 地球で体が焼却されて精神生命体にでもなったらホラーだ。

 

 

『わかりました。』

 

『1000年コースと3000年コース、10000年コースがあるけど、どれがいい?ですか?』

 

「ちょっと意味がわからない」

 

 曰く、一度肉体を放棄した魂は再定着に数千年かかるとかなんとか。......おい。

 

 

「もしかして帰れない?」

 

『もしかしなくても帰れません。......あ、数千年かければ帰れますが。』

 

 まじですか。これは不味い。どれくらい不味いかというと、体感的に国家予算級の慰謝料を請求できるレベルだ。

 

 

「誠意ある謝罪と賠償金を要ky......って、何物凄いヘマしてくれてんだ!」

 

『だってもう4日も寝てないんですよー!』

 

 神界もなかなかにブラックらしい。

 

 

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