護衛は安泰の夢を見れるか   作:ラギアz

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どうも!ラギアです!
初めまして、かこんばんは。今回は東京を練り歩いているときに思いついた小説です。不定期更新です。
慣れない三人称ですが、どうぞ!


プロローグ・殺し屋ランク・332位「ミッシング」

「お嬢様!! 今度はどの殺し屋を雇ったんですか!?」

「あら、早かったわね」

「パソコンの履歴に検索結果を残して!! それをわざわざ私にLINEで送りましたよね!?」

「ええ。今回は殺し屋ランク1000分の332位、サード階級の「ミッシング」よ。仕事が早いらしいから、じゃあ早めに伝えなきゃ、ってね」

「……サード階級……」

「ふふふ、上位よ。依頼者は私で、名前は伏せたわ。ターゲットも、わ・た・し」

「お嬢様」

「どうしたの、護衛」

 

「そろそろ自分で自分を殺すように殺し屋に頼むの、やめてくれません?」

「嫌よ。だって私、護衛の困る姿が大好きなんだもの」

 

☆☆☆

 

 護衛の朝は早い。

 とある貴族の大豪邸に住み込みで働いている護衛。彼は朝五時に起床し、まず豪邸の見回りを行う。その際に忘れてはならないのが、物音を立てないことだ。

 侵入者もそうだが、護衛とは雇い主を守る事を目的とする。

 守る、以外の干渉は基本的にしてはらない。故に主の睡眠を妨害するような事はタブーの一つである。

 護衛の彼は右手にのみ(、、)嵌めている黒い革の手袋を引っ張りつつ、やや幼さを残す顔で周囲を見渡した。彼は短くも長くもない黒髪を一回撫で付けながら、180の長身を猫背に丸めた。

「……ああ、辛い……辞めたい……農家してえ……」

 護衛は疲れていた。

 毎朝毎朝早い。保護対象に付き添うがために夜は遅い。睡眠時間はあまりとれず、そして主が暴君のため仕事は増え続ける。本来やらなくていい仕事――――――洗濯、料理、掃除は本職の執事とメイドに混じってやる始末。もう手順は全て覚えていた。

 そして、一番厄介なのは護衛の主、お嬢様の『楽しみ』だ。

 今日も今日とて、彼は『楽しみ』に巻き込まれる。

「殺し屋、異名は「ミッシング」。姿と凶器を全く見せない事からこの名が付いた。ふーん」

 護衛は昨日、件のお嬢様に殺し屋の事を話された。今持っている紙は、その情報をネットから印刷したものだ。

「案としてはピアノ線とか小型ナイフ、毒とかでも凶器は見つけにくい、か。後は遠距離射撃……は銃弾が残る。姿を見せないって事は逃げるのが上手いのかな」

 護衛はプリントを丁寧に折りたたみ、内ポケットにしまい入れた。その後数歩歩き、立ち止まり、

「……まあ、一番良いのは後が残らない殺しか。いや、死体なけりゃ分からねえな。死体も消えてるから「ミッシング」なのかな? ……つまりは血を残さず、それでいて即効性のあるもの」

 ぼそぼそと呟きながら、護衛は黒スーツの左袖からバタフライナイフを展開した。カチャン!! と鳴り響いた金属音が鳴りやむ前に、護衛は背後へナイフを振りぬく。

 同時に弾かれたのは、闇に潜む黒塗りの針。

 恐らくはその先端部分に凄まじい毒が塗ってるのだろう。護衛は瞬時に判断するや否や、闇の中へとナイフを投擲。

 暗い廊下に、くぐもった声が響く。何かが落ちる音も聞こえ、同時に護衛は走り出していた。

 ナイフは当たっていた。護衛の視線の先、さっきまで護衛自身しかいなかった廊下に居たのは、腹部にささった

バタフライナイフを抜こうとしている男。その足元には吹き矢の筒が転がっていた。

「全身黒ずくめで闇に紛れ、黒い針を吹き矢で撃つ。毒殺の後に死体を移動させ、誰にも発見させなくする。……こんなところか。なあ、「ミッシング」」

 冷静。

 淡々と相手の殺し方を全て暴きながら、護衛はミッシングの足を引っかける。物理法則に従う男の体へ、彼は踵落としを打ち込んだ。

 ダアン! と地面に体を叩き付けて、ミッシングは動かなくなる。

 護衛はバタフライナイフを抜こうとし、抜いたらミッシングが失血死することに気づき、伸ばした左手をポケットに入れた。そのままスマホを取り出して、彼は早朝帯にコールする。

 相手は豪邸の主。6コール程で出た豪邸の主は、無論寝起きだった。

『もしもし、護衛君』

「早朝の無礼をお許し下さい、ご主人様」

『いや、いい。……そのう、また娘がやったのか……?』

「……えっと、はい……」

『……すまんな。警察は呼んだよ、もう』

「……大丈夫です。あと、ありがとうございます。私はここに残って見張っていますね。場所は西塔、三階廊下です」

 申し訳なさそうな豪邸の主に同情しつつ、通話を終わらせる。あと数分もすれば聞こえるであろうサイレンに思いを馳せながら、今日の朝食に頭を抱えた。

 ああ、今日も我が主、お嬢様は目を輝かせているのだろう――――と。

 護衛は苦難する。戦いの様子に胸を躍らせ、殺し屋のあらゆる殺し方に思考を巡らせているお嬢様に。

 お嬢様は一つ、とてつもない趣味を持っていた。

 

 最初に殺し屋を探し。

 名前を隠して依頼し。

 その情報は俺に来て。

 俺が何とか捕まえる。

 

 その一連の流れを楽しむ。それがお嬢様の趣味であり『楽しみ』だ。

 そして、何よりも厄介なのは―――――――

 

 殺しのターゲットを。

 

 自分自身……「お嬢様」、に指定することである。

 

 故に護衛は仕事を全うするため、お嬢様を守らなければならない。深夜も早朝も休憩時間も食事時もお風呂もトイレも気を抜けない。殺し屋ランクが高ければ高いほど彼はお嬢様から離れられない。

 はて、護衛はいつ、安らかな時を過ごせるのだろうか。

 それは何故か、護衛が一番知らないのであった。

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