Sub-tribe Stratos   作:ダンディー

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先に謝っておきます。
シャルロッ党の方々、本当にごめんなさい。


第14話

 シャルルが転入してきたことによって、男子生徒が三名。しかし、一部屋は二人分のスペースしかないために、ジルードの提案で、一夏とシャルルが同じ部屋、ジルードは一人部屋になることになった。

 

 

 一人になったジルードは、少しだけもの寂しさを感じながらもいつも通りの消灯時間で就寝した。

「………」

 しかし、目は閉じていても意識は覚醒状態のまま。そうなる原因は、ドアの外にある。

 意識をドアに集中すると、ゆっくりと開かれるような僅かな音が聞こえる。誰かが入ってきたことはわかるが、ジルードは寝る前に鍵を閉めたはず。この部屋を開けることができる鍵を持っているのは、部屋の鍵を持っているジルードと、マスターキーを持っている寮の職員くらいなもの。そして、寮の職員がこんな時間に個人の部屋に来るはずがない。つまり、何者かがピッキングなどで鍵を開けたということ。

 

 更に意識を集中する。足音がほとんどしないが、段々とジルードの寝ているベッドに近づいて来る。足取りは非常にゆっくりであるため、まだ十分に距離はある。それでもジルードは寝たフリを続け、相手の出方を探る。どんでもない化け物が命を奪いにこない限りは穏便に済ますつもりのジルードだが、悪意あるものには容赦をするつもりはない。

 あと一メートル。手を伸ばせばギリギリ届くか届かないかの距離。そして、相手を手が振り上げられ、ジルードの首を狙って振り下ろされた。

「何をしている?」

 振り下ろされた手を掴む。それも容赦なしに力を込めているため、相手は苦悶の表情を浮かべている。

「ぐっ…あぁ……」

 ブロンドヘアーに中性的な顔立ち。間違いなくその正体は、今朝転入してきたシャルル・デュノア。ジルードに握り潰されそうになっている手からは、鋭利なフルーツナイフが落ちた。

 しかし、シャルルは手の痛みに耐えながら、上体を起こしたジルードの顔面めがけて蹴りを繰り出した。ジルードは反対の手でそれを受け止めると、手と足を掴んだまま持ち上げる。

「うわぁあっ」

 軽々と持ち上げられたことへの驚きと、掴まれている部分の痛みのせいでシャルルは情けない声が出た。

 シャルルの行動から見るに、ジルードの命を狙っていたことは明らかである。しかし、こんな時間に事を荒立てるのは憚られた為に、シャルルの手を掴んだまま、椅子に座らせた。

 シャルルの表情は酷く沈んでおり、今にも泣きそうになっている。

「誰の差し金だ?」

「………」

「お前の独断か?」

「………」

 ジルードの質問に、シャルルは無言で答える。これでは埒が開かないと考えたジルードは、落ちていたフルーツナイフを拾い、シャルルの喉元に突きつけた。シャルルの表情は少しだけ恐怖の色を見せ、恐る恐るジルードの目を見る。

「誰の差し金だ?」

「……ぼ、僕の父さんから」

「何故私の命を狙った?」

「知らない……ただ、『IS学園にいる怪物を殺せ』って言われただけ……」

 シャルルは恐怖と緊張で舌が絡まりそうになりながら、質問に答えるようになった。

「……私はいつでもお前を殺せる。お前はどうしたい?」

「そ、それだけは……」

「命が惜しいか? 殺される覚悟もないのに、私を殺す気だったのか?」

「………」

 ナイフをシャルルの喉元に食い込ませる。そこで限界が来たのか、シャルルの瞳から涙がこぼれ落ちた。

「お、お願い……それだけは……許して……他の事なら、何でもするからっ!」

「………」

 これ以上シャルルに聞いたとしても、何故自分が殺されなければならないのかは分からないだろう。ジルードは警戒を解かずに、シャルルを解放した。

 シャルルは自分が一体何をされる事になるのか。その事を考えていた。命を奪われなくとも、それ以上の屈辱を与えられる可能性だって低くない。それでも、シャルルは自分の命を選んだ。

 

 これ以上は、シャルルの精神が持たないかもしれないと思ったジルードは、ナイフを床に捨てた。しかし、一度溢れた涙はすぐには収まらず、嗚咽となってジルードの耳に届く。

「何でもすると言ったな」

「………」

 ジルードがベッドに座り、シャルルに問いかける。今更発言を撤回しようなどとは考えてはいないが、もし自分の貞操が求められたら。自分はそれに素直に従うのか。

 考えただけでも恐怖が湧き上がる。しかし今発言を撤回しようものなら、殺される以外なら何でもするという約束を反故することになり、殺されるかもしれない。

 どうしようもないジレンマに脳内がパニックになっていくシャルルであったが、ジルードから求められたものは意外なものであった。

「お前に命令をしたという野郎の居場所を教えろ」

「……え?」

「教えろ。あと、私を殺すことによって、どのような益があるのかをな」

「……そんなことでよければ、いくらでも話してあげるよ」

 嗚咽の混じっていた呼吸が急に止まり、シャルルの目つきが変わった。

 

「僕の父さんは、デュノア社って会社を設立して、IS産業で世界シェア第三位なんだ。でも、第三世代の研究は遅れてて、そのせいで業績も段々落ちて来てるんだ。それで、業績を回復するためには、まず会社の事を知ってもらう事が重要だから、僕がIS学園に送り込まれた」

「……性別を偽ってまで、か」

「し、知ってたの?」

「人間の男と骨格が違う。それに、胸などを締め付けてごまかすのは無理がある」

「そっか……そこまでわかってるんなら、全部話してもいいかな」

 先ほどとは一変、シャルルの表情が和らいだ。その事を不思議に思いながらも、ジルードはシャルルの言葉に耳を傾けた。

 

「さっきも言ったみたいに、僕がIS学園に送り込まれたのは、会社の知名度を上げるため。でもそれだけじゃ不十分。他の国の代表候補生もいるから、フランスからやって来た事路でって話になっちゃうんだ」

「それで、男として入学する事で注目を集める、と?」

「うん………それは父さんからの命令。君を殺す事もね。どうしてそんな事をするのかは知らないけど、多分デュノア社にとって何らかのマイナスがあるんだと思う」

 そうやって話していると、ジルードはある事を思い出した。

「話は変わるのだが、私はおそらくフランスという国から来たという事になっている。人間の地理などは知らないから確かな事は言えないが……」

「フランスから……?」

「それと一つ聞きたいのだが、向こうではISで人を襲う事があるのか?」

「え……?」

「私が村から出た時、お前のと同じような形をしたISを装備した女を倒した。死人も多数出ている状況だったな」

 しかし、シャルルはそんな事を聞いた覚えがない。もしそんな事件があるのなら、世界中でニュースになっているはず。

「まぁそれは置いといて、だ。お前の父親は私が人間ないことを知っていた。だが、私たちの住処は知覚することができないようになっているはずだ」

 異種族の情報がそこまで出回っているわけではない。となると、シャルルの父親が知っていたのは、なんらかの特殊な繋がりがあると推測できる。

「……どうしてそこまで私に話す?」

「君なら、ちゃんと話を聞いてくれるって思ったから」

 そう言うシャルルの目は、普通の人間にはない濁りがあった。人間でないジルードでも、それが異常であることははっきりとわかった。あまりにも淋しそうで、それでいて誰も受け入れないような瞳。小さい時から過酷な環境で暮らしていなければ、そんな目はできない。

 ジルードは小さくため息を吐いて立ち上がると、シャルルの頭を撫でた。

「コーヒー、紅茶、ホットミルク。どれがいい?」

「え?」

「まだ話すことがあるのだろう? なら、一服しながらでもいいだろう」

 当然のような気遣い。しかし、シャルルにはその気遣いすら眩しいものに感じていた。

 

 

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