Sub-tribe Stratos   作:ダンディー

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 この作品の一夏君は、原作よりも精神的に大人になっています。


第2話

 あれから、生き残っていた人間の治療をしたジルードは、あたかもその土地の神であったかのように賞賛された。彼が倒した女はというと、手足を縛られた状態で町を転がされていた。その光景には同情するものがあるが、虐殺犯にはお似合いであろう。この後に処刑されるとしても、それは仕方のないことでもあるかもしれない。

 

「言葉は通じない……困ったものだな」

 ジルードが習得している言語は、ドラゴニアの言語と日本語である。しかし、一度として村の外に出たことのないジルードには、自分の言語がどこで使われているものなのか、もしかすると使われていないのではないかと思っていた。

「焦りは禁物……だが……」

 このままでは、行き倒れる可能性だって否めない。どこか、人間と意思疎通のできる場所を見つけなくてはならない。その焦りから、歩きから走りに、走りから飛行と移動手段が変化していった。どこの誰に見られようが、人間のほとんどはジルードのような存在を否定すると、長老から聞いている。なればこそ、万一見られても見間違いと思われるだろう。その可能性にかけて、ジルードは上空へ飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、世界で唯一IS操縦者と育成するIS学園。日本にあるそれには、世界各国のIS操縦者の代表の候補、通称代表候補生が集まっている。それだけでなく、主に日本の学生が入学し、日々勉学にISの操縦を学習している。

 

 IS、インフィニット・ストラトスは、女性にしか扱えないと言われている。事実その通りで、誰一人として男で扱えた者は存在しない。世界的な大発明であったISは女性にしか扱えない。それが人間社会を大きく変えてしまった要因でもある。

 かつて、男尊女卑という風潮があった。それは、男が何においても偉く、女はいつも二の次三の次ということ。女は男に付き従い、男を立てることが役目であるとされていた。今はそれが逆転し、女尊男卑の風潮が世界中で巻き起こっている。何かにつけて女性が優遇され、男であるというだけで職を失った者も少なくない。それを良しとする風潮もまた、ISの存在があったからであろう。

 

 だが、ある時その風潮に歯止めがかかった。男性でISを扱うことのできる者の存在が明らかとなったのだった。彼は世界的なIS操縦者であった織斑千冬の実の弟であり、それ以外は何の変哲もないただの青年だった。

 世界はその彼に注目し、さらにISの研究を進めた。また、世の男たちは光明とも言わんばかりに青年の存在を喜び、自分もできるかもしれないと息巻く者も多かった。

 

 

 

 青年は、IS学園への入学が決まった。どこかの組織に手出しされないように。彼もそんな境遇に身を置かれて驚いていた。

 だが時間は残酷なもので、彼の心の覚悟が決まる前に入学式の日がやって来た。

 

「はぁ……」

 高校受験をしたが、受験会場を間違えた上に、置いてあったISになんとなく触れたら起動させてしまった。ついでと言わんばかりの実技試験が開始されるも、試験官がそのまま壁に突っ込んで戦闘不能。思考を働かせる暇もないまま、男である青年がIS学園への入学条件を満たしてしまった。

「俺一人かぁ……はぁ……」

 IS学園は、基本的にISを動かすことのできる者しか入学できない。つまりは女子生徒しかいないはず。その中に一人男が投げ込まれる。端から見れば羨ましいかもしれないが、当事者にとっては精神的にキツいものがあるだろう。

「……?」

 これからの学園生活に若干絶望しながら空を見上げると、何かが飛んでいた。鳥と思ったが、明らかに翼の形や大きさ、体のシルエットなどがおかしい。

「ぇ…えっ!?」

 よく見れば、人間と同じような手足がある。それが大きな翼をはためかせて飛行している。UMAなどの類を信じている青年は、驚きと興奮のあまりに走り出した。が、突如その飛行生物に一筋の光が降り注ぎ、頭から急降下を始めた。青年は野次馬根性でその落下地点を目指した。

 

 

 

 青年がたどり着いた場所には、一人の青年がいた。だが、様々な植物を編み合わせて作られたであろうその服装は、現代日本はおろか、どこかの少数民族でしか見ないようなものである。だが、それは些細な問題でしかなかった。

「人間に……翼?」

 人間の形をした生物に羽が生えている。少なくとも、そんな生物が実在したというニュースを聞いたことがない。ならば、これは新種の生物なのか。そう思って、鳥人間を思わせる生物に近づく青年だったが、背中の部分に怪我をしていることがわかった。

「お、おい。大丈夫、なのか?」

 青年は恐る恐る問いかける。すると、ピクリと反応を示した。

「う、動いた?」

「言葉が………通じる………のか………」

 絞り出すような声に、青年は迷わず駆け寄った。

「おい、しっかりしろ!」

「まだ…大丈夫だ………お前、名は何と言う?」

「織斑一夏だ」

「私はジルード。ジルード・レイヴァン」

 ジルードは塀に手をつきながら立ち上がった。

「一夏よ。初対面で済まないが、私のこの姿については他言無用にしてもらいたい」

「そ、それはいいけど……って、傷は大丈夫なのか!?」

「正直、辛いな。どこかに休める場所があれば良いのだが……身寄りも知り合いも、土地勘もないものでな」

 そう言われても、一夏にも頼れる人間は少なく、自身の目的地であるIS学園に急に連れて行けば騒ぎになることくらいは理解していた。それに、今から自宅に戻れば間違いなく遅刻する。入学式初日でそんなことはしたくない。しかし、一度声をかけた怪我人を放っておけるほど、一夏は薄情でも無責任でもない。

「と、とりあえず応急手当だけでも」

 そう言った時だった。空から何かが落ちてきて、二人の間に落下した。外見は通信機であり、電話の着信音らしき音が鳴り響いた。

 おおよそ電話というものを知らないジルードはどうしていいか分からず一夏を見る。一夏が通信機を拾い上げると、通話ボタンを押した。

「も、もしもし」

『ん? その声はいっくんか。ヤッホー♪ たーばねさんだよー♪』

 通話の相手は、知らない人はいないであろう、世界の大天災にしてISの開発者である篠ノ之束。現在は行方不明となっており、各国が全力で行方を捜していることもニュースになっているほどだ。そんな人物からいきなり電話がきたことに驚いた一夏であったが、自他共に認める天才に一縷の望みを持った。

「あの、束さん」

『うんうんOK,OK。束さんにはちゃーんと分かってるよー。いっくんが生まれてから今日に至るまでに食べた物からお風呂で体を洗う順番まで、ちゃーんと分かってるよー♪』

「いや、だからそういうことじゃなくて」

『まぁまぁそんなことはさて置いて捨てちゃって、そこに誰かいるでしょ?』

「は、はい。ジルードって言う人ですけど」

『じゃあ、IS学園に連れて行っちゃって。私がどうにかしておくから』

「え、ちょっと」

 一夏の返答を待つことなく、束は通話を切った。途方に暮れた一夏であったが、そろそろ自分も学園に向かわないと遅刻確定になってしまう。しかしジルードを放っては置けない。そうなると選択肢は一つ。束の言葉を信じてジルードをIS学園に連れていくことである。

「なぁ、ジルードさん。今から俺が行くところなら、なんとかなるかもしれない。歩けるか?」

「その位なら、なんとか」

 ジルードは翼を収納し、フラフラと歩き出す。それが見ていられなかったのか、一夏が強引に肩を貸した。

「無理しないでください。俺が肩貸しますから」

「……すまない」

 奇妙な出会いを果たした二人が、IS学園で共に過ごすことにになることは想像に難くない。

 

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