カツカツと靴が床につく音が聞こえる。何の音だと思いつつ目を開いた。そこには、月明かりに照らされる1体の獣のような、人間のような、よく分からない何かの後ろ姿とその周りに月を見上げている4つの人型の何か、そして、横たわっている何かが見えた。近づこうと思った。倒れているソレが何なのか、何故血紅い液体が流れているのか知りたかった。だけど動けない。
(あれ・・・? なんでだろ・・・なんで動けねぇんだろ・・・)
そう思いながらまたソレの方を向くと、そのソレがすぐ目の前に立っていた。他の4つの何かはその場を離れてはおらず、ただこちらを向いて嗤っていた。その目の色はどこかで見たような気がする。だが、分からない。ソレの真っ白で長い髪と血の様に紅い瞳が視界に入る。ソレは口を開く。そして、聞き覚えのある声でこう言った。
「私の・・・姿を・・・見た・・・者は・・・生き・・・て・・・は・・・返さ・・・な・・・い・・・絶・・・対に。お前・・・は何れ・・・死ぬ。私・・・が・・・こ・・・ろすん・・・だか・・・ら・・・」
ソレの長く、鋭い爪が心臓の辺りを突き刺そうとする・・・瞬間、意識が遠のいていった。
次に目を覚ましたのは、薄暗い部屋の中。月光が差し込んできている。部屋の奥に置かれたベッドに狂華は横たわっていた。時計を見ると、時刻は午前0時を回ったようだった。
「あれ? 俺生きてる・・・のか? つか、あれは・・・夢だったのか? それとも現実だったのか?」
「どっちも違ぇよ。それは、いずれ現実になる夢だ。」
男の声が聞こえた。上半身を起こし、声の主は誰かと辺りを見回すと黒髪が向かいの壁に寄りかかって立っている。
「お前は・・・楓季・・・だったか・・・。それで、夢じゃないってどう言うことだ。」
「そのまんまだ。彼奴と関わる以上、必ずこれは起きる。次の満月の晩、彼奴はお前を殺すだろうな。されたくなきゃ、彼奴に信用されることだろうよ。じゃあ、頑張れよ、狂華。」
楓季が立ち去ろうとする。
「なぁ、ちょっと待て。幾つか聞きたいことがある。」
「・・・なんだ。」
扉の前で楓季が立ち止まり振り返る。
「1つ目、何故次の満月なのか。2つ目、何故お前があのことを知っているのか。3つ目、お前の言う彼奴が誰なのか。」
「・・・まず1つ目、彼奴が『能力解放』するのに満月の光が必要だから。まぁ、月の出る晩は大体いるな。2つ目、俺も経験者だからだ。茜や夏威、青華だってそうだ。」
楓季は一拍置いてから最後の質問の答えを述べる。
「これでラスト。3つ目、彼奴は芽瑠・・・と言いたい処だが違う。彼奴は、芽瑠の身体に住むもう1人の彼奴、名を桜華っつってな。芽瑠は『
「・・・『月狼』? 何だそれ。俺のいた所にはいなかった奴だな。」
「ほーん・・・まぁいいや。説明してやんよ。『月狼』ってのは簡単に言えば狼人間みたいなもんで、普通の狼人間と違うのは月が出る晩は満月じゃなくとも必ず現れる。髪は真っ白で個人差はあるだろうが、地面に着きそうなぐらい長かったな。目は血みたいに真っ赤。んで、芽瑠は他とはちょいとばかし違う。普通なら、月狼は他の血と混ざることなんてありはしない。だけど、彼奴は『月狼と人形の血を持っている』んだ。」
「・・・なかなかなイレギュラーなこって。」
「次の満月までそんなに日数ねぇから頑張ってこい。」
「あ、あぁ・・・ところで、その芽瑠は今何処に?」
「彼奴は数時間前に出掛た。今夜は綺麗な月夜だ。だから、きっとそこら辺をほっつき回してるんだろうよ。そんじゃあな。」
そう言って楓季は部屋を去った。狂華は楓季の後ろ姿を視て何か違和感を感じたが、それが何かは分からず、また眠りについた。
同時刻、月明かりに照らされ、短めの金髪を揺らしながらアリスは歩いていた。結局、レミリアとパチュリーが敵の手に渡ってしまい、咲夜達は重症を負ってしまった。彼女達を永遠亭に送り、途中で狼鬼と別れてたった今、我が家に戻ってきた。家の鍵を開けようと扉に近づくと、扉の前に籠が置いてあった。開けてみると、1体の白い髪を持つ、目を閉じた少女の人形と1通の手紙が入っていた。
「あら? この人形は誰の・・・腕が取れてるわね・・・で、この手紙には・・・」
『私の人形、壊れちゃって直せないんです。どうか、直してください。お金はちゃんと払います。次の満月の晩取りに行きます。』
「なるほどね、分かったわよ。ちゃんと直してあげるわ。貴女のとても大事な人形みたいだし・・・異変の真っ只中だけどやってやるわ。」
家に運ぼうと籠を上げる。人形は閉じていた瞳をそっと開け、紅い瞳を見せる。そして、少しだけ口角を上げ、家の中に入っていった。
久しぶりの幻想狩り執行者さんについて〜今回は夏威について
夏威
突然変異して魚人成分が現れた元一般ピーポー
ボケ&カオス担当
後先考えずに突っ走る為、後々他の執行者にシバかれる(だからそういう場面が出たら合掌してネ←)