~数日前 ~
とある村の、酒場。なんの変哲もない安酒場だ。しかし、疲れを癒す為に多くの人々が訪れていた。
仕事の愚痴、世間話、野郎共の下世話な話など様々である。だがこの日は違っていた、ある話題で持ち切りで在った。
「炎龍が撃退された!?」
「嘘だろう?!」
「そんなん絶対に無理だろ!?」
コダ村の住人を襲った炎龍が撃退された。それも緑の服を着た謎の傭兵団と、突然現れた白い龍、そして龍に乗った少年が撃退したと言う。
ある噂では、少年だけで炎龍を撃退したとか……実に馬鹿げた話であるが、実際に見たコダ村の生き残りと言う多くの証人がいる。だからこそ、酒場はこの噂で持ち切りなのである。
そしてこの酒場には、不釣り合いな鎧を着た4人組がいる。
「正体不明の傭兵団……騎士ノーマ、どう思われます?」
仲間の騎士に意見を求めた帝国の女騎士、ハルミトン・ウノ・ロー。
意見を求められた騎士、ノーマ・コ・イグルーは実際に証人が多くいるし、全くの嘘だとは言えないと言うが、炎龍を撃退したと言うのは信じられない。
「ホントだよお客さん。あいつは本当の炎龍だったよ。私はこの目で見たんだから」
ノーマの言葉を遮る様に、酒を持ってきた女給がそう言った。この女性もまた、コダ村からの避難民の1人である。
「それに、見た事も無い白い龍もね」
「アハハハハハ、ありえない。流石に話を盛り過ぎだ」
ノーマは完全に与太話だと思ったらしい。
「私は信じるから。良かったら、その龍を撃退した人達の事、詳しく教えてくれない?」
「ありがとうよ、若い騎士さん。じゃあ、とっておきの話を披露しようじゃないか」
ハルミトンは情報料として多めのチップを渡した。それで機嫌を直した女給は話し始めた。
まずは緑の服の人達の事、数は12人、女が2人。黒髪長身の美女、栗色の髪をした小柄だが胸の大きな美女。それを聞いた野郎共は歓喜の声を上げる。
女給は気を取り直して話を続けた。緑の人達の乗る荷車は頑丈で凄く速い、火を放つ不思議な魔法の杖を持っていた。しかしそれは炎龍には効かなかった。
なんだ、やっぱりと思うこの場にいる者達。
「そこで現れたのが、炎龍と同じ位の大きさの白い龍さ。翼とかはなかったけど、風を纏って飛んでいてね。最初はこれで私達も終わりかって思ったよ」
そりゃ、そうだと女給に同意する話を聞く者達。もし、その場に自分が居たら確実に絶望して諦めていただろう。
「でも白い龍は、まるで私達を庇うように炎龍と対峙してさ、白い龍が咆哮したと思ったら私達を包む様に風の壁が現れたんだ。すると、白い龍の頭の上から少年が飛び降りて来た!
少年が双剣を持って炎龍に対峙したんだ。それで炎龍が少年に対して炎を放ったんだけど……驚いた事に少年が双剣で炎を斬り裂いたんだ」
「「「「「はあぁぁぁぁぁ!?」」」」」
話を聞いている者達が驚いた。それは当然である、普通は炎龍の炎を受ければ確実に死ぬからだ。
「まぁ、私も驚いたけど……その他は風が強くなって良く分からなかったけどね。あっそうそう、後は鉄の逸物さ。特大の魔法の杖で『コホウノ・アンゼンカクニ』って唱えたら、とんでもない音がした後に炎龍の左腕が吹っ飛んだんだ!」
話を聞いた者達は当然の騒ぎ始める。そして騎士達は自分達の机を向き直った。
「と、とにかく。この話が本当なら、立派な者達です。如何でしょう、ピニャ殿下」
ハルミトンが凛とした気品をまっとた、見目麗しい赤毛の女性………自分達の主、帝国の第三皇女、ピニャ・コ・ラーダへと視線を向ける。
「妾はその者らが持っていた魔法の杖にも興味はあるが………唯1人で炎龍に対峙した少年と白い龍と言うのが気になるな。その様な者と龍は我等でも聞いた事がない……もし、それが本当ならその者に会ってみたい。女、その者の名は?」
「さぁ?……聞こうにも戦いが終わった後、少年も村人達の治療で忙しくてね。それが不思議でね、その少年が手を翳しただけで瀕死の者が元通りになったんだ」
「「「「えっ?」」」」
「それで白い龍が人になったり、緑色の液体を怪我に掛けたら一瞬で治ったり……私も訳が分からない事だらけでね」
ピニャは話を聞いて興味が沸いた。傷を一瞬で治すと言う液体、それも少年が齎した物だと言う。もし、その話が本当なら少年を是非とも帝国に引き込みたいと考えていた。
~車の中~
龍人は、翼竜の鱗を売る為にアルヌスより近い街・イタリカへ向かった。
メンバーは伊丹率いる第三偵察隊、レレイ、テュカ、ロゥリィだった。龍人は通訳として此処に居る。彼等は自衛隊の車両に乗り、イタリカへ向かっていた。
「いやぁ……車に乗るのは久しぶりだね」
「へぇ~、やっぱ普段は龍に乗ってるの?」
「まぁね……それよりも、何か煙が見えるな」
龍人の言葉に車を止め、双眼鏡で煙の方向を見てみる。
「ねぇ隊長、このまま行くと」
「十中八九、煙の発生源に行く事になるな」
「おっ……流石、軍用双眼鏡……良く見えるな。なぁ、同志・伊丹、これくれない?」
「まぁ……上に掛け合ってみます。それであそこが」
「イタリカだ。普段は平和な筈なんだけどなぁ」
「知ってるんですか?」
「あそこの先代とは懇意でね…………この世界では珍しい趣味の持ち主だったから。取り敢えず行こう、此処で止まっていても仕方ないし」
そう言って、目的地へと向かって車を進めるので在った。