今日は雪が降ってますし、本当に寒いですね。と言う訳でどうぞ。
~イタリカ 門前~
「それにしても……デカい門だな」
装甲車の中から、そう言う伊丹。
「あぁ、この辺では結構でかい街だし。まぁこれくらいは普通だな………それで、伊丹、向こうは姿を見せろと言っているけど?」
「じゃあ、私が話を付ける」
「しかし……」
「なら、俺が行こう。此処の前の領主とは仲が良かったから、知っている人間もいるだろう」
「「お願いします」」
龍人の提案に伊丹と倉田は揃ってそう言った。
「じゃ、行ってくる。伊丹は一緒に来て貰うぞ」
「えっ……」
「はい、行くよ」
龍人はそう言って車を降りた、伊丹は諦めた様に溜息を吐くと龍人の後について行った。
~門内~
「むむむ」
ピニャ、ハミルトン、そしてもう1人の騎士が外を見ていた。
「あっ誰か降りて来ました!………普通の少年です」
「確かに……だが、我等を油断させる為の変装かもしれん」
「続いて、緑の服の男と魔導師……それにエルフの様です!」
「エルフだと……しかし精霊魔法は厄介だな。油断している今の内に弩弓で――――あっアレは?!ロゥリィ・マーキュリー」
「アレが死神ロゥリィですか……」
「あぁ、以前国の祭祀で見た事がある」
「此処のミュイ様と変わりませんな」
ピニャが最も信頼する騎士グレイ・ゴ・アルがそう言った。
「アレで齢九百を超える化物だぞ!」
ロゥリィは亜神、姿こそ幼いが実際は900歳を超えている。
「しかしエムロイの使徒が盗賊なんぞに加わりますかね?」
「あの方達ならやりかねないのだ」
「?」
「神の行いは唯の気まぐれにさえ見える」
「その言葉、神官達の耳に入ったら事ですぞ」
「だろうな。だが、神の御心など出鱈目だ」
「し小官は何も聞きませんでした」
そう言ってグレイは頭を抑え、天を仰ぐ。
「どうしましょう、ピニャ様」
ピニャは小窓を閉めると、一度振り返る。そこには多くのこの街の住民がいた。
何故、彼等がこれほど外から来る者を警戒しているのかと言うと。先日より、この街は盗賊達に襲われていた……それも唯の盗賊ではなく、兵士達が敗残兵となり盗賊になった者達だ。普通の盗賊と違い戦い方を知っている為に、この街に人々も抵抗したものの籠城する事が精一杯……そこにピニャ達がやって来て指揮を取っていると言う訳だ。
「もしロゥリィ達が敵なら既にこの街は堕ちている筈……だが敵でないと言う確証もない」
そう言った時、門を叩く音が聞こえてきた。
「しかし!敵でないなら是非とも迎え入れたい!」
現在、街の者達の士気はかなり下がっている。正直、後1度耐えられるかも怪しい所だ……なのでピニャは是非ともロゥリィを味方に引き入れたい。彼女は門の閂を外した。
「姫!」
「えぇい!」
グレイの静止も聞かず、彼女は門を勢いよく開け放った。
「良く来てくれた!」
ピニャが見たのは少年、ロゥリィ、エルフ、魔導師が自分の脚元の方を見ている様子だ。彼女も視線を下に向けると……
「ぅ……ぅう」
「もっもしかして妾が?」
「「「「うん」」」」
一先ず、龍人は倒れた伊丹を門の中へと入れ回復薬を飲ませた。伊丹は直ぐに目を覚まし、直ぐに状況の説明を求め、ピニャが説明する事となった。
そして、龍人と伊丹達は領主の館へと案内された。因みに他の隊員達は待機している。
イタリカは国と国の間にある重要な城塞都市で、貴族であるフォルマル伯爵家が治めて来たのだが、先代が急死。その為に娘である三姉妹で後継者争いが起こった……だが長女と次女は既に他家に嫁いでおり、末女のミュイが後継者になる事になったのだが……後見人争いが起きたと言う。
そこで異世界出兵が始まった、当主が兵を率いて出兵。そして誰も戻って来ずにイタリカの治安が悪くなり始めたと言う。
「そして、この向こうにいるのが現伯爵当主、ミュイ殿だ」
ピニャが扉を開けると、大きな椅子に小さな少女が座っていた。
「久しぶりだな、ミュイ」
「えっ……もしかして、龍人様ですか?」
「おう……前に会ったのはコルト……お前の父親の死ぬ半年くらい前だったな。ちょっと見ない間にこんなにも大きくなって」
「そなたはミュイ殿と知り合いなのか?」
「あぁ、先代のコルトとは馴染でな。趣味が合って酒を共に飲む仲だったんだ。勿論、長女のアイリや、次女のルイも知っている」
「ぅ……うぅ」
知っている龍人を見て、安心したのかミュイは涙を浮かべる。
「よしよし、頑張ったな………もう安心だ」
「ぅぅぅぅ」
ミュイは涙を堪えている。当主とは言え、幼い身。指揮はとっていないものの、その小さい身には計り知れないプレッシャーが掛かっていただろう。そんな姿を見て、龍人は彼女を抱き締めた。
「子供がそんな、声を押し殺して泣くもんじゃない」
そう言われると、龍人の腕の中で泣きだしたミュイ。
「さて、俺の馴染の街に手を出した賊共………どうしてくれようか?」
そう言って龍人は笑みを浮かべる。それを見て、ロゥリィ以外はゾッとした。一先ず、ミュイを落ち着かせると本題に入った。
「それでお前達は妾達の味方をすると?」
「あぁ……伊丹、そちらはどうする?」
「俺達も参加しますよ、じゃないと死ななくてもいい人間が死ぬ事になりますし」
「よし!決まりだ!」
~夕方 南門~
「敵がこっちにくればいいんだが……」
龍人、伊丹達は一度破られた南門に来ていた。ピニャの指揮により、彼等は此処に配置されていた。
「ねぇ……龍人、なんで帝国のお姫様に味方するの?貴方、向こうの世界では帝国と戦ったんでしょぉ?」
「確かにな……一方的に蹂躙する輩は倒す。それが俺のモットーだ……今回もそれに触れたからだ。それに
「帝国の坊主共?」
「皇帝とか元老院の小僧共」
「あらっ、皇帝と知り合いなの?」
「まぁな……それに
どうやら、この街にはかなり思い入れがあるらしい。龍人が最後に見せた戦士としての顔を見たロゥリィは笑みを浮かべた。
そしてその時はやって来た。