GATE 古龍と共に、彼の地で生きる   作:始まりの0

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EP10 イタリカ防衛戦

 ~夜 南門~

 

 

「あっ……ぅう……はぁん!うぅ~!」

 

 ロゥリィが悶えている。

 

「これは一体どういうことなんだ?」

 

 突然、悶え始めたロゥリィを見て唖然となる一同。テュカに至っては顔を真っ赤にしている。

 

「これは近くで戦い、戦死した戦士者達の魂がロゥリィの身体を通してエムロイ神の元に召されているんだ。それが媚薬の様になってる………まぁ戦いに身を任せればいいんだけど………敵さんは東門の方に来たと……で発散できない訳だ」

 

 現在、龍人達のいる南門。恐らく此処に敵が来るだろうと思いピニャも此処に配置したのだが……実際に敵が攻めて来たのは東門だった。

 

「あぁん!りゅ……と……ぅうん!」

 

「俺に言われても困るが……伊丹、どうする?正直、このままロゥリィを放置しておくと……我慢できずにこっちに襲い掛かりそうなんだが」

 

「………分かった。行こう」

 

「よし、伊丹。城門の内の敵は手を出させない様にしてくれ……ロゥリィ。ちょっと我慢しろよ」

 

 龍人はそう言うと、ロゥリィと彼女の斧を抱えて天を仰ぐ。

 

「『我が名において命ずる!来たれ、雷の栽龍よ!』」

 

 龍人がそう言った瞬間、暗雲もないのに雷が発生し、彼の近くに落ちた。

 

「うわっ!?」

 

「雷!?」

 

 ―オオォォォォォン!―

 

 雷が消えるとそこに居たのは馬に似た生物。

 

「馬?いや違う……雷を纏って、角があって、龍みたいな顔」

 

「これってまさか……神獣・麒麟!?」

 

 伊丹達は驚いた、目の前に現れた生物は伝説上の神獣である麒麟に酷似していた。

 

「よっと……リン、向こうまで走れ!」

 

 龍人がその生物に跨ると、そう言った。すると古龍・キリンは駆け出した。

 

 

 

 

 ~東門~

 

「現実と頭で考える事はこうも違うのか……くっ」

 

 南門に攻めてくると思っていた敵が、現在、東門に襲撃してきた。

 

「それに味方が脆すぎる……」

 

 当然だ、此方の殆どの戦力は市民達だ。相手は元とは言え正規兵が殆ど、例え力押しで在ったとしても差は歴然である。ピニャはこれが初陣故に知らなかった……大義もなく戦いに身を委ねた兵士達の力を。

 

 門が突破され、賊達は柵内に居る市民達を挑発し始めた。味方で在った者達、身内だった者達の亡骸を弄び始めたのだ。

 

 ―オォォォォォォ!―

 

「アハハハハハハハ!」

 

 咆哮と狂気の笑い声と共に賊達の中心に何かが降って来た。

 

「なっなんだ?!」

 

「ウフフフ」

 

「子供?」

 

 近くに居た大男がハンマーを手にロゥリィに襲い掛かる。彼女はそれを避けると、斧で大男を殴り飛ばす。

 

「なっ……えっエムロイの神官か?!」

 

「なめとんのか、ガキ!」

 

「ばっバカ!待て!」

 

 賊達が一斉に襲い掛かるが、ロゥリィはそれを避け舞う様に大斧で反撃する。途中で栗林も参戦し、2人が賊を圧倒し始めた。

 

「このぉぉぉぉ!!!」

 

「おいおい、女を後ろから襲おうなんて戦士のやる事じゃないな」

 

 ロゥリィと栗林を後ろから切ろうとした賊はその言葉と共に吹き飛んだ。賊がいた場所には龍人が経立っていた。そして龍人は周囲に転がっている亡骸を見た、男も女も関係なしに嬲られている。

 

「本当に下種共が………戦場でならいざ知らず、平和な街でこんな侵略行為をした罪……友人の街を荒らした罪、重いと思え」

 

 龍人の身体が紫色のオーラに包まれ、近くに置いてあった人の頭くらいの大きさの石を持ち上げた。そして賊の集団の方に向かい投げる。賊はそれを回避する。

 

「はっこんなん当たるかよ!」

 

「キラークイーン……第一の爆弾」

 

 彼が右手をスイッチを押す様な動作をした瞬間、彼の投げた石が爆発した。その爆発に巻き込まれた賊達は跡形もなく消滅した。

 

「汚ねぇ、花火だ」

 

「おぉ~い!龍人くん!」

 

 龍人がそんな事を呟いていると、伊丹と富田がやって来た。そして彼等からある事を聞いた。

 

「そっか………リン!道を開けろ!」

 

 龍人は城壁の上に佇んでいたキリンに向かいそう言い放つ。キリンが天を仰ぐと、龍人達の道を塞いでいた賊達に雷が落ち、道を作った。

 

「ほらっ!ロゥリィ!逃げるぞ!」

 

「ちょっと」

 

 龍人はロゥリィを抱え、富田が栗林を抱えてその場を離れ始めた。

 

 数秒後、賊達に向かってヘリからのガトリング掃射が行われ、戦闘は終了した。

 

 

 

 ~領主館~

 

 ―なっ何なのだこれは………これが戦いか、これが戦場か。予期せぬ事が起こり、こんなにも無残な物なのか?

 

 それにジエイタイの空を飛ぶ天馬………人が抗えぬ圧倒的な力、禍々しく、凶暴な力。誇りも名誉も全てを一瞬の内に消し去ってしまう。これは……まるで女神の嘲笑だ。

 

 加えて、なんだ……あの龍人()は?先代やミュイ殿と知り合いらしいが……見た事もない雷を操る獣を統べ、謎の魔法を使う男。そう言えば炎龍を1人で撃退した少年と風貌が一致していたな………あぁ、こんな事が在っていいのだろうか?

 

 此度の戦いを見て分かった……ジエイタイにしろ、あの少年にしろ、我等とは戦いの次元が違う。もし彼等が敵となると言うのなら………妾は………―

 

「捕虜の権利は我が方にあるものと心得て頂きたい」

 

 ハルミトンの言葉で我に帰ったピニャ。

 

「と言っているぞ」

 

 ピニャ達の要求を龍人が訳して伝えると自衛隊はこう答えた。情報収集として数人を確保したい、こちらの習慣に干渉する気はないが人道的に捕虜を扱って貰いたいと。

 

「ジンドウテキ?」

 

「友人、知人に対する様に無碍に扱わない……こと」

 

 レレイがハルミトンとピニャにそう説明した。

 

「友人や知人が村、街を襲い略奪などするものか!」

 

 ハルミトンがそう言い返すが、ピニャは自衛隊の条件を飲んだ。

 

 そして伊丹が捕虜の中から数人選び、彼女達をアルヌスへと連れ帰る事にしたのだが……

 

「隊長……女の子だけ選んでません?」

 

「ないない」

 

「まぁ、女の子をこんな所に置いてはおけないのは分かりますけど」

 

 自分の部下達(女性陣)から冷たい目で見られたのは言うまでもない。




後々、龍人の詳細なステータスを出します。

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